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第26回1周年記念ヒーロー特集第一弾! 『21世紀のヒーローはどこにいる!?~ニコニコ漫画の開拓者、春原ロビンソン初登場スペシャル!!』(全6記事)

「本当のヒーローは、うしろにいるおっさん」 漫画『戦勇。』の作者が描くヒーロー像

漫画家の山田玲司氏が漫画、映画、人生について語るニコニコチャンネル『山田玲司のヤングサンデー』。第26回目を迎える今回のゲストは、漫画家の春原ロビンソン氏。『戦勇。』や『ヒーローハーツ』といった、ヒーローや勇者をテーマにした作品を描いてきた春原氏。彼は、「本物のヒーローとは、うしろにいるおっさん(制作者)」だと、自身のヒーロー像について語りました。

春原ロビンソン氏の作品にかける本気度は?

山田玲司氏(以下、山田):ここ聞いてみたかったんだけど、本気度は? 君の中の。俺はヒーローとか『ゼブラーマン』とか描くときに、もう臆面もなく本気なんだよ、ずっと。だから、ちょっとやるよ。バタっと倒れたりとかちょっとギャグで外すことあるんだけど、基本的にその量が少ない。

「本気で男は戦うんだ!」って言ってるっていう。だから全開で恥かいてる。だけど君の場合はそれが出てくるんだけど、必ずそれを「なんちゃって」ってやるじゃん。ぽーんと。だからその、気持ちの感じはどうなってるの? どこまで本気でものを語ろうと思っているの? もしくは語ろうとしないのか。

春原ロビンソン氏(以下、春原):本気で……なんか、自分の感情とかを漫画に落とさないですね。「ヒーローとはこうあるべきだ」みたいな感じにしないで、この話はこうなってて、このキャラはこういう性格でだからこうなって、次、コイツがこういうことをしたらコイツはこういうことするなあ、みたいな。繰り返しをしてるだけで。あんまないっすね。

山田:でも、ロスが笑ってないって、あのくだりのちょい前。けっこう本気っぽいこと言うじゃん。

春原;なんか、わかんない……急に『戦勇。』がシリアスになったんですよ。多分僕が飽きてきたんだと思うんですよ。

山田:おい(笑)!

春原:なんかギャグをやり続けてきて、なんか違うのやろって思ったか、もしくはオチは決まってたんで、あのオチに持ってくためにはシリアスになってったら……。

乙君氏(以下、乙君):どんだけボンヤリしてんだよ(笑)。自分の作品に。

春原:なんか勝手にそうなるんですよ。

キャラクターを矢印で考えていた理由

山田:この話、したいなと思って。キャラの作り方。読者からの質問なんだけど、「だいぶ前にTwitterにてキャラクターを矢印で考えているとおっしゃっていましたが、あの矢印の大きさや方向など具体的に何を意味していたのか教えて下さい。今も矢印でキャラクターを考えていたら『戦勇。』や他作品のキャラクターはどんな矢印なんでしょうか?」。

春原:これは昔考えたんですけど最近やってないですね。コイツは赤色で上に大きな矢印だろーなーとか、コイツは青色で横にぼんやりいくなとか。

山田:これ、すごくいいと思う。

春原:昔は描いてたんですけど、今は普通に頭の中にあるって感じですね。

山田:あれでしょ、キャラクターの性格を抽象概念で書いてるんだよ。

乙君:あー。まっすぐじゃなくて斜めなんだ、アルバは。

山田:横でなんとなくって、このロスのキャラクターもなんとなくわかるじゃん。

乙君:だからコイツは正義感が強くて、どうでこうでって言語化するんじゃなくて、感覚的に、熱量とかベクトルをキャラクターでやっといて遊ばせる。その矢印が交わるところでボケとツッコミがあるし。

山田:これけっこうおもしろいと思う。俺あんまやったことないな。

乙君:斬新ですね。

山田:どこから思いついたの、こんなこと。

春原:最初自分でメモってたんですけど、性格を。なんかめんどくさくなって、こうだなって。コイツはこうだなって。

乙君:すぐ飽きるでしょ。

春原:すぐ飽きます。なんでも。なんでもすぐ飽きます。

山田:それで先に進めればそれで良いんじゃない?

乙君:へー、おもしろいなー。

春原ロビンソン氏の描くヒーロー像

山田:ヒーロー論にここからちょっと入っていくけど。ロビンソンのヒーロー論を。原則的にはこの人の漫画って俺から見ると、本当コンテンツとランドと、見てきたものーゲーム、アニメ、いろんなことっていうのが自分の中で完全に消化されきってて、それを肉体的な感覚で出せるレベルになってる。

全部の表現が。だから「ドン!」とか、「ザッ!」とか、お約束っていうものを全部体感として身につけたうえで、それをちょっと斜めから見てる。で、やりながら「なんちゃってね」って照れと斜めからくるっていう。

だけどその中に、背景にあるのが、不安だったり、怒りだったりっていうのがチラチラと見え隠れする。戯言のなかに一瞬だけチラッとコイツの怒りとか不安とか悲しみとかが垣間見える。で、「垣間見えちゃったー!」と思った途端に「とかね」とか言ってすぐ閉める。このメンタリティーが今の人たちとすごく近いところにある。だから見せたくないっていう。

春原:あー。

山田:違う? 近くない?

春原:合ってます。

乙君:なんかグレンラガンから熱血抜いたみたいな感じなんですけど。

山田:あー。だから、系譜で言えば島本先生とか、グレンラガンとか、多分そうなんだよ。なんちゃって系譜なんだよ。「熱くなってるぜええええ! ……とかねー」みたいなやつなんだけど。

乙君:それおもしろい

山田:これは80年代の1つの形式というか。その系譜から来てる。だから一歩も外に出てない人の「とかね」なんだよ。ただ(家から)出ちゃった人はまた違うことになるんで。だからこの人はこの後おもしろくなるっていう。「とかね」の後に人生は続くんで。な! 応援すっから、俺。超応援するから。

春原:いろいろ話を聞いて、話を聞いてる感じになって、途中から自分の考えに夢中になって聞いてなかったです(笑)。一生懸命咀嚼してて。

山田:いいよ、また飲み行こう。君に頼んでたやつあるんだよ、ヒーローとは何かって。限定(有料)に変わる前に。

春原:僕が思うヒーロー。最初、「テーマ何すか」って聞いたらヒーロー論って言われて、ヒーローとは何かみたいな。「わー、俺、ヒーローとか全然興味ないぞ」ってまず思ったんですよ。

乙君:それがほんとねー、すごいですよね。一番身近なテーマがただヒーローだったってことじゃないですか、それって、コンテンツ化するときの。

山田『ヒーローハーツ』って漫画描いてるの誰ですか。あなたヒーローのハートについて描いてるわけでしょ。

乙君:勇者の物語延々やってるわけでしょ。

春原:勇者は……クライアントの指示だったんで。

乙君:でたー! スーツ野郎だったんだ(笑)。

山田:スーツはしょうがないんだよ!

春原:だから、「ファンタジー世界のギャグ漫画、友情をテーマでやってください」って言われて「はい、わかりました」って。

乙君:あー、なるほどね。

山田:でもそれはしょうがないよ、そういうことは多いよ。

春原:『戦勇。』ってタイトルすら僕考えてないですからね。

乙君:ええ!? そうなんだ。

春原:あ、でも僕はタイトルは人に考えてもらう方が良い。担当とかに考えてもらう方が良いです。

山田:ヒーローハーツは?

春原:ヒーローハーツは考えてくださいって言ったんですけど考えてもらえなかったんで。

山田:じゃあヒーローについて語ろうよ。

真のヒーローは制作者

春原:で、ヒーローについて何だって考えたんですけど、「俺だな」って。

山田:お前か!

春原:ヒーローとは俺なんすよ。なんか、結局仮面ライダー好きとかで、楽しいじゃないですか。でその仮面ライダーという存在がいるわけじゃなくて、仮面ライダーのうしろに見えないおっさんがいっぱいいるわけですよ。本当のヒーローは仮面ライダーじゃなくて、見えないおっさんなんですよ。

山田:はいはい。

春原:俺も、僕の漫画で誰かが楽しんでくれるとしたら、その漫画のうしろにいるおっさんが俺なんですよ。

山田:あなただ。

春原:だから俺がおっさん……じゃないやヒーローなんですよ。

乙君:おっさんこと俺。

春原:お兄さんこと俺。

乙君:イケメンお兄さんこと俺?

春原:(笑)。

乙君:でも、それ完全同意。俺が仮面ライダーとか戦隊物とかに没入できないのそこなんですよ。作ってる奴のほうがすげーじゃんっていう。だからリアルな方が良い。イチローとか、長渕とか。

山田:長渕とか。じゃあ俺、このあと限定(有料)でヒーローについてちょっと。俺、ヒーロー問題について考えたらヒーロー対プリンセス問題だなと思って。バーサスですよこれ。欲望と欲望の問題ですねこれ。

俺、思ったんだけど「ヒーローとは何か」って話に女の子はすごく引くと思います。どういうことかっていうと、プリンセスについて女の子が語ったら俺たち引くでしょ? 女の子がお姫様について語ってたら俺たち入れないじゃん。「はあ」ってなるでしょ。

乙君:まあ、その現場に遭遇したことないけど。

山田:だからこの問題かなーと思ってこのあとやります!

有料放送に続く)

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