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第25回夏期特別講習!『俺たちはピクサーに勝てるのか!?~ハードコア性善説の偉大なる衝撃スペシャル!!』(全5記事)

少女を娘として描くピクサー、アイドルとして描く日本 国内外のアニメの違いを解説

ピクサー作品は、可愛らしいキャラクターを使いながらも、リアルな問題を描いていると、漫画家の山田玲司氏は語ります。また、少女や女性の描き方は日本のアニメとは異なり、性的な目線は排除。親から見た娘のように描いているといった特徴が見られます。山田氏は、日本とアメリカでアニメの描き方に差が出るのは、戦勝国と敗戦国の立ち場の差があるからだと分析。トイ・ストーリーの主人公ウッディが象徴するものとは……? ピクサーファン必見の内容となっています。

日本人がこじらせた原因は「敗戦」

山田玲司氏:日本のこじらせ方ってやっぱり、「負けた国」なんだよ。戦争に負けて、戦っちゃダメって言われて、「だけどいろいろとあるよ俺たちだってさ」っていうこんな(絡まった)やつなんだよ。焼け野原の時は良かったんだよ。さっき言ってた『ガンバの大冒険』みたいなやつ。

乙君:あー、さっき打ち合わせの時に。

山田:打ち合わせの時『ガンバの大冒険』の話してたじゃん。俺ガンバだって話してたじゃん。それはだから「負けるもんかい!」みたいな「へっちゃらだい、オイラ! 食べなくても大丈夫だい!」みたいな(笑)。

そういうので生きてる時代っつーのがあって、『ど根性ガエル』の頃ですわ。あの頃は良かったんだよ、そうやって。そういうメンタリティで頑張れたから。

乙君:そうですね。

山田:だんだん豊かになってきちゃうと「一体なんなんだ」みたいな。ポケモンになるともはや昆虫採集ですからね。昆虫採集で育てた昆虫で代理戦争みたいなさ。だから痛みなきバトルみたいなさ。もしくは『遊☆戯☆王』になるとカードが戦っちゃったりしてさ。なんかもう、遠いんだよな。こう。

乙君:まあまあ、自分の問題ではないですからね。

山田:最近の私小説だと『進撃の巨人』も多分私小説。ひたすら「怖いよー」。

乙君:あれは私小説っぽいですね。

山田:「怖いよ、怖いよー。どうなるかわからないよー」っていうのにひたすら共感してるっていう。だから、結構その辺キツイなーと思って。

ウッディはアメリカを表している

山田:ピクサーがやっているのって、ちゃんと着地をさせるの。つまり、勝った国って「俺らについて来い」って言っちゃった以上答え出さなきゃいけないんだよ。

乙君:あ~!

山田:だからウッディですよウッディ。ウッディ困ってるでしょこれ。みんなついて来なくて。

乙君:そうですね、リーダー。

山田:「俺は最高のリーダーだ!」「ウー、お終いだー」「大丈夫だ!」。

乙君:それでカウボーイなんだ。

山田:そう。これアメリカマッチョ。マッチョイズムみたいなのが乗ってんの。これはウッディに、アメリカの「俺達が勝ったから俺たちが何とかしなきゃ」っていうのが乗っかってんだよ。俺たちはウルトラマンに任せちゃうわけ。

乙君:永遠にヒーローをやらなきゃいけないっていう。

山田:それで、『モンスターズ・インク』になると「モンスターだって、怖いんだよ」て言い出す。だからさ、そうするとこれ、ズルいんだよ。だってさ、「アメリカふざけんなコラ!」みたいに思うじゃん。

「大変なんだよあいつらも」って言っちゃってんだよ。これ見て、うんうんって思ってるとまんまとやられてこいつらの気持ちになってるから。

乙君:まあ確かに、僕は一番これがおもしろかったですね、ピクサーでは。

山田:そういうことがあり得るなあっつーのがあって。

乙君:あーでも、そっち側から見たことはなかったからすごい斬新ですね。

山田:うん。俺、別に映画評論家じゃないから。

乙君:(笑)。こんだけ語っといて! 逃げます? そこ。「俺、いち漫画家なんで。映画とかそんな詳しくないんで」って(笑)。

山田:だってマニアの人が語ったらキリないでしょ。で、お前わかってない問題になるじゃん。そう。わかってないんですよ。わかってないんだけど、俺はこう思うんでーす(弱気)、みたいな。

乙君:しみちゃん、「個人の感想です」ってパネル出した方が良いよ(笑)。

はぐれた羊の心を表現するのが文学

山田:でも、俺、言いたいよ。日本だめかっつったらそんなことなくて、敗戦国の子どもたちは孤独な羊の心を照らすわけよ。要するにさ。

乙君:……んん!?

山田:要は、文学って何すかって言った時に、群れの中にいれない、はぐれた羊の心を表現するのが文学っしょ。だから日本のコンテンツの系譜はやっぱりつよーく文学なんだよ。それは何かっつったら、俺たち負けたけど生きてかなきゃいけねーんだよってやつなんだよ。

乙君:悲しみの中でしか芽生えない、

山田:そうなんだよ、そうなんすよ。それで、じゃあ「戦うべきなのか? 戦わないのか?」「改憲して戦うべきなのか?」ってそうじゃないんだよ。良いんだよ。コンテンツあるから生きてけんだよ。なんだかんだ、ごまかして生き残れば良いんだよ。そして恋をすれば良いんだって! 

乙君:(笑)。

山田:幻の中に逃げたって良いんだよ! そして、そういう場所を作れることが多様性の価値じゃねーかって話なの。だから俺は『エヴァ』も否定しないし『まどマギ』も否定しないし『進撃』も否定しないの。

乙君:『ジュラシック・ワールド』も否定しないし『ワンピース』も否定しない。

ピクサー作品は戦勝国の子供の苦悩

山田:そう、いろいろあって良いんだよ。だけど生き延びるために一旦、良いんだよ『ラブライブ』に逃げて良いんですよ。今は「プリパラおじさん」で良いんですよ。

さっき言ってた、戦勝国の子どもたちは逃げらんないだよね。「逃げられない・勝っちゃった国の子供たちの苦悩」っていうのがピクサーにあるなーって思います。これが言い訳できない世界のリーダーなの。「だって俺たち世界の警察官だから」みたいな。「俺達が守るから」みたいな。

乙君:結局そこでまとまるしかないっていう、アメリカのジレンマですよね。

山田:だから理想国家として作って、「USA! USA!」ってやっても、でもそれもともと破綻してますから。それで支配階級と支配される階級にわかれてるし。様々な矛盾を抱えながら「でも、やってかなきゃいけねんだよ、俺たち。勝っちゃったからさ」。

乙君:そう。アメリカのアイデンティティって結局勝利なんですよ。

山田:まあまあまあ、そうね、勝つ・友情・勝利。

乙君:それを証明し続けないと国が崩壊しちゃうんですよね。負けるっていうことを認められないから。

山田:どう生きんの、どう着地すんの俺たち、どーすんの。リア充って大変、ピクサーですから。「俺、リアルタイムで生きてていろんなこと起きちゃって、彼女と付き合っちゃったら、こんなことになっちゃって、結婚するって。

嘘、信じらんねーよやべーよ、どーすんだよ。一緒に住めねーよ」みたいな。そういうことを全部このおっさんたちは物語にして出していく。

乙君:「やべー、あの娘生理こないってどーしよー」みたいな。

山田:「子供できちゃったよ!」「うわやべー! 子供ってさ、食わねーと死ぬんでしょ!?」みたいな。「アァ〜」みたいな。これですよこれ。だからどっちがモンスターじゃい、みたいなやつですわ。

ピクサーが扱うテーマは「リアルな問題」

山田:これ、実を言うとこの人たちスーツを入れないんです。トップがやってんの。それでとっても民主的なの。

乙君:はいはい。

山田:だからしゃべり場なんすよ。で「どうすんの?」「俺たちどうすんの?」ってやってコンテンツ作ってる。だからこれ普遍性持つんだよ。俺達みたいな人間にも。やっべーなーつって。

乙君:だから、リア充たちがこぞって作るから、テーマの選び方とか着地点自体がもうすごいリアリティがあるんですよね。だからそれを、こういうふうにエンタテイメントで可愛いキャラクターとかに託してるけれども、扱ってる問題はすごい地に足のついた、親目線でもそうだし、リアルな問題だってことですよね。

山田:そうそうそう。最もよくテーマにしてるのが「死」ですからね。

乙君:死。

山田:『トイ・ストーリー』は正に死をテーマにしてるから。

乙君:……そうだっけ?

山田:「いつかは俺たち飽きられるんだよな」「捨てられるんだよな」って一作目から言ってるの。これ、あとで(有料放送で)ちょっと説明するけど、3作目に至ってはいよいよ死が来たって。

どうすんの? って話しなの。俺2が一番好きなんだけど、生きてるじゃん、こうやって。「いつか死ぬんだよね」っていう。「この気分どーすんの?」ってやつですよ。

ビッグサイト系アニメ職人は実人生がクソ

山田:それで、はいこれ。分けました。これピクサーがFacebook系アニメ職人ね。リア充ですからこの人たち。こっちがビッグサイト系アニメ職人ね。

乙君:ビッグサイト系ね(笑)。

山田:ビッグサイトです! あのね、ランドでコンテンツの世界に生きてる生き物たちですね。こういう孤独な羊たちがコスなプレイをしたりなんかりしますね。そういう人たちの職人だって。ビッグサイト系はですね、共感ポイントが1つあります。「実人生がクソ」。

乙君:あ、ネガティブで繋がる人たちね。

山田:だから「Facebook、F○CK!」て思ってます。Facebookなんかしませんよ、実人生クソですから。だからこれ一番おもしろい……。

乙君:大丈夫か炎上(笑)。

山田:大丈夫だよ! 俺も仲間だから大丈夫だ! そんでだよ、これはっきり言うけどアニメーションに女の子が出てきたら日本だったらどうしますか?

乙君:アニメーションに女の子が出てきた場合。

山田:アニメーションに女の子が出てきたら、これ絶対可愛くなくちゃだめなんだよ。

乙君:まーそうでしょうね。

山田:バタ子さんだけだから、許されるのは。

乙君:まあバタ子さんとサザエさんくらいですよ。

山田:ワカメちゃんもな。基本的に性的視線みたいなの入りますから。

乙君:あー。

山田:ヘンタイの国ですから。代々ヘンタイですから。おじいちゃんもひいおじいちゃんもヘンタイですから。

乙君:まあまあ、平安時代からヘンタイなんで。

少女をアイドルとして描く日本、親から見た娘として描くピクサー

山田:少女っていうのは、子供ではなくセクシーアイドルなのね。日本人のビッグサイト系にとっては。だからセクシーなアイドルでいて欲しいんだよ。親目線なんかないですから。親とかないから、親なんてイナーイ、イナーイみたいな。ラブライブのこの子には親なんかイナーイみたいに、なってますから。

乙君:そうですね。そりゃそうだ。

山田:そして、その子を娘として見る場合は非常にややこしい娘として見ます。いろんなことがアリの形で。

乙君:ああ〜(笑)。

山田:こういう文学的なヤバいやつなんだよね。なんだけど、これおもしろいことに、ピクサーはヒロインですよこれ。

これカールじいさんの中の、奥さん。亡くなる奥さんが初めて、少女時代にカールさんと出会うシーンで、これですからね。で、こないだの『インサイド・ヘッド』。

普通、少女が主人公。そこそこ綺麗にしますよね。これ、ビミョーな感じにしますから。わかる? このビミョーな、歯の欠けたこの感じとか、これは、親から見た娘なんだよ。

乙君:あー。

山田:だからこれパンツ見ちゃいけないやつなんだよ。

乙君:あー! なるほどね。

山田:わかります? だって娘だから。

乙君:性的要素を削ぎ取ったってことね。

山田:ポニョポニョみたいな感じじゃないですからね。そういうなんかトトロ的な感じもないですから。そういうのじゃないですから。「メイちゃーん」みたいなのないですから。そういうの一切ないですから。お父さんですから。

乙君:メイちゃんをそんな目で……?

山田:ちょちょ、待った!

それで『レミーのおいしいレストラン』。たった1人の、厨房にいた女の人のビジュアルはこれですっ。もうねー、これアリにする!? わかるこれ? 奥野さん。これアリですから。だけどこれね、見てるとねー素敵なんだよこの人ー。

おっく:まあ格好良い女の子ですよね。

山田:格好良いんだよ。バイク乗っちゃうんだよ。でもまー、セクシーエンジェルに見えない(笑)。でもこの人パリジェンヌですから。だから内面の美しさがあってそれが味に出ますからね。

で、これがお馴染み『インクレディブル』ですね。

乙君:フッ(鼻で笑う)。

山田:これピクサーに「俺これやりたいんだけどー」って言って外から来た人がピクサーに頼んだやつなんで、一緒に仕事して作った作品なんで、ちょっと毛色が違うんだけど。

ここで出てくる娘さん! これ、バイオレットっていう娘さん。これ一番おいしいとこなの。お父さん、お母さん、弟、赤ちゃん。ここ、美少女ポジションじゃないですか。

乙君:うん。

山田:もープロポーションからしてこんな感じ(笑)。

乙君:まーそれはアニメだからね。

山田:て思うじゃん。まあ、ヒーローのときはこんな感じかなって。普段は可愛いじゃないかと思うじゃん。

おっく:と、思いきや?

山田:普段これですから。これ結構閉じこもってますよ。で、これがですよ!

ちょっと誰が描いたかわかんないんですけど、ビッグサイト系が描くとこのヒロインがこうなりますからね。日本に来ると。

乙君:(笑)。

山田:舐めんなよ! 日本を!

有料放送に続く)

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