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プリントシール機とガールズトレンド(全1記事)

今、人気の写りは? 女の子が追い求めた“盛れる”プリ20年の歴史

“プリクラ”が登場し、約20年。女の子たちの可愛く綺麗な姿で写りたいと言うわがままに応え、その画質や加工技術は日々進化してきました。現在、プリントシール機でトップシェアを誇るフリュー株式会社の稲垣氏が、その歩みについて解説を行いました。「目を大きく」「美白に」「痩せて見えるように」「脚を長く」…女の子たちの要望はさまざまですが、その時代のトレンドに適した「写り」があると稲垣氏は言います。実際のプリ画像を比較してみると、その違いは一目瞭然。絶えず変化を続けてきたガールズトレンドの面白さについて話されています。

プリの写りにもトレンドがある

稲垣涼子氏(以下、稲垣):それでは「プリントシール機とガールズトレンド」、プリの「写り」から考察する「女子の流行」について、フリューの稲垣から発表させていただきます。よろしくお願いします。

本日ですが、このような内容をお話させていただきます。

その前に、独特な言葉を使っていることが多いので、まず用語を説明させていただきます。

「プリ」とか「プリ機」、「プリントシール機」と言ったりしますが、こちらはすべて皆さんご存知のプリクラのことを指しています。プリクラというのは、元アトラス様、現セガホールディングス様の登録商標になりますので、フリューとしては正式名称としてプリントシール機と呼んでおります。

話が変わって、「写り」という言葉がタイトルにも書いてありますが、プリを撮るとシールとか携帯画像がもらえるんです。その仕上がりのことを総称して、「写り」と呼んでいます。主に顔のことで、「このプリ機、写りいいね」とか、そういう感じに使います。

また、久保先生の発表でもたくさん出てきましたが、「盛れる」というのが、実際よりも理想的に加工できる道具に対して使う言葉です。「盛る」だと行動で、「盛れてる」だと状態になります。

例えば、たくさんプリ機が並んでいるなかで機種を選ぶ時に、「このプリ機、盛れるらしいよ」と言うと、道具であるプリ機のことを説明しているので「盛れる」と言っています。プリでは写りが選べたり、明るさが選べたりするんですけど、その時に「明るさは美白で盛るのが好き」だと、行動のことを表現しているので「盛る」という言葉になります。でき上がったシールを見て、「いい感じに盛れてる」と言ったりしますが、それは、状態のことを示しています。

このようにわかっていないと少し難しいと思いますが、女の子は皆すごく当たり前のように使っている言葉になります。

プリントシール機トップシェアのフリュー

簡単に、フリューの紹介と稲垣の自己紹介をさせていただきたいと思います。フリュー株式会社の企業理念は「人々のこころを豊かで幸せにする良質なエンタテインメントを創出する!」のもと、たくさんのエンタテインメントを生み出している会社です。

今日はプリントシール機、のお話をさせていただくわけですが、他にもUFOキャッチャーの中に入っているぬいぐるみや、フィギュア、携帯のサイトやゲーム、コンシューマー向けのゲームなどを作っております。プリントシール機は、現在トップシェアであります。

私の自己紹介ですが、ガールズトレンド研究所所長とご紹介していただきました。ガールズトレンド研究所というのは、社内の調査研究機関になります。「すべてのGIRLSをHAPPYに」というコンセプトのもと、プリントシール機の企画開発などを通して、女の子の価値感やトレンドを研究しております。

もう1つ肩書きがありまして、プリントシール機事業部の企画部部長を兼任しております。2005年に入社して、そこから商品企画に11年ほど携わっております。

2005年に入社した時は、女の子に気に入ってもらえるプリを全然作れていないメーカーだったのですが、そこからトップシェアになるまでの過程を見てきております。

現在はマーケティング、企画、デザイン、プロモーション等57名のメンバーと一緒に、「フリューのプリ」を作り上げています。

プリはガールズカルチャーとして定着

続きまして、現在のプリントシール機について少しご説明します。その前に少し質問させていただきたいのですが、このなかで「人生で1度もプリクラを撮ったことがありません」という方、差し支えなければ手を挙げていただいていいですか? 

(会場挙手)

少し……やっぱりいらっしゃいますね。手を挙げられてない方は撮ったことのある方だと思うのですが、逆に「ここ1年ぐらいの間に撮ったことがあります」という方、いらっしゃいましたら手を挙げていただいていいですか? 

(会場挙手)

ありがとうございます。けっこういらっしゃいますね。

でも、やっぱり「(過去に)撮ったことはあるけど、最近撮ったことがない」という方が多いので、今、最新のプリがどうなっているのかを少し紹介します。

現在のプリントシール機と書いているんですが、一番右側が2014年なので、ここからまた新し異機種も出ております。「プリを作っています」と言うと、「まだプリクラってあるんですか?」と言われたりしますが、プリは今もとても元気です。

ここに記載しているように、女の子の流行とともに機械や写りそのものが変化して、女の子の文化としてしっかり定着していると考えています。入り口でお配りしていた『ガールズトレンド』という小さい冊子の42ページ目に、もっと詳細な20年の歴史が載っておりますので、ご興味のある方はぜひ見ていただければと思います。

プリの「写り」20年の歩み

今日は「写り」の話なので、「写り」に関係するところだけピックアップしてここに並べています。

1995年にプリが誕生しました。この時はまだ、画像の加工はありませんでした。

1999年に美白だったり、白ギャルと言われた浜崎あゆみさんがとっても人気だったころ、プリにもストロボが付いて、美白に撮れるようになりました。

2007年ごろ、ちょうどギャルや読モの全盛期ですね。今のプリで目が大きくなるのをご存知の方も多いと思うのですが、「目ヂカラ」という表現で、「盛れる写り」の先駆けの機械が出たのもこのころになります。

2011年ごろ、アイドルブームで黒髪やナチュラルメイクがそろそろ流行りだすかなというときに、プリも同じくナチュラルに盛れる、日本語としては意味がわからない感じになるんですけど(笑)。「ナチュラル盛り」の写りの機種が人気になりました。

2014年ごろにはSNSがかなり一般的になり、女の子が多様化してきたと考えています。そのころにはプリでも目の形が選べたり、その女の子がなりたい理想の顔になれるプリが人気になりました。

今年はプリが生まれて20周年だったのですが、女の子のわがままを叶えていった結果、20年の間にプリは大きく変化しました。

機械は大きく高価に シールの形状も変化

先ほども少し紹介しましたが、元祖プリント倶楽部がこの(画像左の)様なイメージの機械でした。「もっときれいに」とか「全身を撮りたい」とか「並びたくない!」とか、いろいろな女の子のわがままを叶えた結果、今はこの右側(画像中央)のような大きい機械になっています。

(画像右に)撮影ブースと書いてあるのですが、機械の中に入ってみると、こういう照明がたくさん付いて、とても明るくきれいな空間になっています。

機械は、体積で約10倍、値段で約3倍になりました。

出力物はというと、懐かしの……これはイメージで作ったものなのですが昔の「プリント倶楽部」のシールは、こういうイメージでした。

それが今は、シールは切れた状態で2枚出てきたり、それぞれ好きなデザインを選べたり、携帯画像がもらえるようになっています。そんなにわがままを叶えているのに、プリ料金は100円しか値上げしていません。ということで、女の子にやさしいプリになっております。(笑)

もう1つ、よく「プリって女子中高生のものですよね」と言われるのですが、実は今はそんなことはありません。かなり幅広い方に撮っていただいていて、画像を取得するための弊社のサイト利用者数が約1000万人おります。

グラフを見ていただくと、18〜21歳、22歳以上、かなりざっくりまとめていますが、大人もたくさんいることがわかっていただけると思います。

今、女の子に人気の写りはどれでしょうか?

それでは、プリの「写り」についてお話していきたいと思います。

まず実験を行いました。2010〜2015年の5年間のプリの「写り」の調査をしようと考え、同一人物が同日同条件の下、できる限り同じ角度、表情で、過去5年間のプリ機で撮影しております。その画像を用いて、私が「写り」を比較分析してみました。

ここで、また問題を出したいと思います。2016年現在、市場で1位、2位、3位の機種の「写り」を持ってきています。全部違う機械の写りになります。

女の子は今、プリを選ぶ時に「写り」で選ぶことがほとんどです。どれが女の子にに人気の「写り」か、わかりますか? 手を挙げていただきたいと思うので、1番人気なのはどれか考えてください。わからないという選択も用意しようと思います。

それではAだと思う方、手を挙げてください。ありがとうございます。Bだと思う方? ありがとうございます。Cだと思う方? ありがとうございます。わからないという方はいらっしゃいますか? ありがとうございます。

答えを言うと見せかけて、言いません(笑)。その前に2010〜2015年のプリ機の写りを見せたいと思います。商品ごとの違いだったり、移り変わりを見ていただきたいと思うのと、新商品が市場で一番人気になることが多いので、その時代の人気の写りだと考えていただいてもいいと思います。

少し補足ですが、基本的にはシールだったり、画像で見るということで、大きさがぜんぜん違います。また、プロジェクターを通したり、資料は紙に印刷したものになりますので、見ていただく「写り」はあくまでも参考であることをご了承ください。本日シールも持ってきていますので、ご興味ある方はまた後で見ていただければと思います。

6年、18パターンの写りを比較

それでは、いきたいと思います。2010年春、夏、冬。2011年の春、夏、冬。2012年の春、夏、冬。2013年の春、夏、冬。2014年の春、夏、冬。2015年の春、夏、冬、という移り変わりになります。

今見ていただいたものをズラッと並べたものが、こちらになります。こうして並べてみると、少しずつ変化していることが分かっていただけるのではないかと思います。

2010年ごろ、左上の「写り」ですが、このころはこの「写り」が一番盛れてると私も思ってました。でも今見ると、やっぱり加工感が強くて平面的で、ぜんぜん盛れてないなと正直思います。

そこから右に進んで2011年の夏、右上ぐらいですね。自然な立体感のある写りの人気が出だしたころになります。2段目の右側、2013年春ごろから色味が少し変わってきて、写真系のすっきりとした色味の写りが主流になってきております。

一番下の段、2014年ごろになると、先ほども申しましたようになりたいイメージで、それぞれの女の子が選ぶ理想の顔作りというのが、プリの「写り」の定番になっております。

今度は、今お見せした「写り」の変化で、一番最初と最後だけをピックアップしてみました。先ほどは少しずつと言いましたが、こうして見るととても大きく変化していることがわかっていただけると思います。

左は全体的にオレンジっぽかったり、パーツがはっきりしなかったり、のっぺりしていて平面的な印象かなと思います。それに対して右のものは、自然な色で肌色は肌色らしく、髪の色も自然な色になっていて、パーツもはっきりしています。輪郭だったり、まつげも実は写っていたりと、はっきりしています。またも質感があって、人間の顔が立体であることがわかるのではないでしょうか。

まとめると、この5年で大きく変わったのは色味の再現性、画質の鮮明さ、そして立体感です。それでは、先ほどのクイズの答えにいきます。

こうなります。Aが一番多かったので、みなさんすごくわかっていただいているのかなと思いました。Bが2位と書いてますが、僅差で、BもCも今人気の商品なので、どれも女の子に人気のある「写り」だと考えていただいていいかと思います。

変化しないと廃れてしまう

それでは、まとめに入ります。

まず1つ目。プリの2016年現在の人気の「写り」は、大人が見るとその差はわかりにくいと思います。ですが、女の子は明確に判断して選んでいます。

2つ目、5年間の「写り」を並べると、少しずつ変化していると感じると思います。当時は革命的な「写り」の変化であった機種も混ざっているのですが、振り返って、こうして並べてみると、少しずつ変化しているように感じます。

3つ目、5年前と現在の写りを比較すると、大きく変化していると感じます。

ここで、プリの写りから女子の流行を考察してみました。女子の流行は少しずつ変化して、長い期間で大きく変化するのではないかと考えています。変化し続けることは重要だと考えております。

変化していかないとやっぱり廃れてしまうと思います。プリがもし加工がないままの「写り」だったら、携帯に送ることができないままだったら、たぶん今の世の中に残っていないのではと思います。

逆に、変化が急激すぎるとついて来ない、もしくは「すぐには」ついて来ないと考えています。

これはいろんなことに言えると思うのですが、例えばファッションとかメイクの流行、ガウチョパンツとか太眉とかありますが……。「じゃあ、流行りますよ」と言われた年から全員がやるかというと、なかなかやらなかったりします。流行に敏感な人から徐々に、時間をかけて浸透するのが通常かなと思っています。

これから取り組みたいこと

「今後の課題」と書かせていただきましたが、「GIRLSをHAPPYに」し続けたい!、とガールズトレンド研究所では考えています。それに向けて、研究所所長として具体的になにをしていきたいか考えてみました。

女子の流行が変化によるものだと書きましたが、そのあたりもう少し掘り下げていきたいです。「なぜ変化を求めているか?」だったり、「周期はあるのか?」など。ファッションが12年周期だというような話もありますが、そういったところが実際にあるのかなど考えていきたいなと思います。

2つ目は、バーチャルがリアルに与える影響を見ていきたいと考えています。こちらについては本日ぜんぜんお話していないのですが、プリを撮ることで女の子がどんどんかわいくなっていくと考えています。久保先生ともよくそういう話をしているのですが、果たして本当にそうなのか? 見ていければと思っています。

そして最後に、メーカーの人間として、やはり女子が求める究極のプリを探していきたいなと思っています。今日お話した内容からすると、究極のプリを探し、そこにたどり着く小さな変化を積み上げることが大事なのだろうと考えております。つまりは、プリ文化を継続していきたいと考えております。

以上で、発表を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。

(会場拍手)

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