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ソクラテスカフェ:西野亮廣(芸人)(全5記事)

学校の先生はつまらない仕事? キングコング西野が教育の問題点に迫る

学校の先生の仕事はおもしろいのか、つまらないものなのか。東京デザインウィーク2015の中で行われたトークイベント「ソクラテスカフェ」でキングコングの西野亮廣(キンコン西野)が会場の参加者と話し合っていきます。教員免許を持ちながらも「学校の先生の仕事はつまらないから、何かもっとおもしろいことをしたい」と語る大学生。それに対して会場にいた現役教師は「実際の現場はおもしろいことも、おもしろくないこともある」「通知表などの評価がなければもっと授業がおもしろくなる」と話します。また、西野は美大で芸術家として生きる方法を教えてくれる先生がいない問題点を指摘。授業の内容や先生の考え方など、教育現場はさらなる改革が必要になりそうです。

学校の先生はつまらない仕事?

参加者1:僕は今、教育大学に通ってる者でして、教員免許も取っています。けど、教員にはならないつもりなんです。

西野亮廣氏(以下、西野):へぇ。そういう方もいらっしゃるんですね。

参加者1:実際、先生側になるっていうのはつまんねえなぁって思いまして。やっぱり学校の先生は公務員なんで、「お仕事」なんですよね。たとえば「何年生の4月から6月まではこれを教えて」っていうのは決まってて、おもしろくないんですよ。

しかも小学校から高校、大学までそこそこ勉強できた人たちが教員になっていくので、他の世界を知らない人たちがどうしても多いんですよ。

でも、SNSでいろいろ検索してみたりすると、同じように「なんかおもしろくないな」って疑問を感じた人が自主的に起業とかをしたりしていて、自分もやっぱりおもしろいと思う道に行きたいなと思っています。

このままだと学校はどうしてもつまんなくなるなって思いました。

西野:ちなみにこの中に、今「実際に先生やってます」っていう方いらっしゃいます? あっ、いらっしゃる。先生やられてみてどうですか?

参加者2:私も学生の時に同じような考えを持っていて、実はオーダーメイドジュエリーの会社で職人をやったあと、2年前に教員に転職しました。

西野:そうなんですね。

参加者2:で、先生の世界に入ってみて、やっぱりおもしろくない点も多いなぁと実際には思います。

西野:おもしろい点とおもしろくない点、聞かせてもらってもいいですか?

参加者2:おもしろくないところは、すごく制約が多いところです。

西野:「制約」っちゅうと、どういうものですか?

参加者2:授業の内容もそうですし、保護者とか地域の人とか、周りからの目みたいなことも気にしなきゃいけないので、理想通りにはやれないところです。

授業をつまらなくしているのは、通知表の評価

西野:なるほど。逆におもしろいところは?

参加者2:おもしろいところは、やっぱり子どもたちがすごくおもしろいので、私にとっては授業はとっても楽しくて幸せな時間です。

参加者2:私は小学校で図工を専門に教えています。

西野:図工楽しいじゃないっすか。僕やりたいっすわ。それ。図工むっちゃ楽しかった。

参加者2:私は、学校でもしも「評価」がなくなったら、すっごいおもしろい授業がたくさんできるなぁと思うんですけど……。

西野:評価って、どういうことですか?

参加者2:成績をつけるということです。

西野:通知表みたいなことでしょ?

参加者2:はい、そうです。通知表をつけないといけないので、「こういう授業をやらなきゃいけない」ということになっていて、とにかくつまんないなぁって。

西野:あ~、なるほど。

参加者2:例えば図工だったら、2時間ずっと砂遊びとかでも、子どもたちはいっぱい学ぶことがあると思うんですけど、それだと評価ができないので、そういう授業はできないということになるんですよね。

西野:それおもしろいですね、通知表なくすっていうのは。彼(参加者1)も実はそういう学校に行かれてて、教員の免許を取られてるということですけど、最終的には何をされるんですか? 「何をしようかな」とかあるんですか? 学校の先生になるんですか?

進路相談で起業の話は出てこない

参加者1:今はとりあえず大学を休学しています。休学してる間に、やっぱり人がおもしろいなぁと思って、ヒッチハイクをしました。住んでるのは仙台なんですけど、仙台から屋久島まで。

西野:へぇ~!

参加者1:ちょっと制約をつけて、1万円で行こうと思って。そしたら1万円どころか、1円も使わずに屋久島まで行けたんですよ。

西野:えっ、屋久島まで1円も使わずに行ったんですか?

参加者1:鹿児島のフェリー乗り場までは1円も使わずに行ったんですけど、さすがに屋久島に行くフェリーでお金がかかっちゃって。

西野:それ、交通費で1万円っていうことですよね?

参加者1:食費も全部です。

西野:食費も? それ、どうしたんですか?

参加者1:白米持っていって。サービスエリアの横で火を焚いて、米炊いて食ったんです。

西野:それでいけるんですか。へぇ~。

参加者1:で、お金そこそこ使うかなと思ったのに0円で行けたんで、ちょっと調子こいて漁師のところへ行って「乗っけてくれませんか?」って言ったらすげぇ怒られて……。

(会場笑)

参加者1:さすがに「油代で4、5万円かかるんだぞ」って怒られて。そういう感じで、人と会うのっておもしろいなと思って。その時就活とかしてたんですけど、やっぱりどうしてもそっちのほうはおもしろくないなと思ってしまって……。

「就活とかやめても、なんとかなるだろう」と思って。今一応大学5年生で、来年の3月卒業の予定なんですけど。もっとおもしろいことをしたいです。

西野:でも先生にはなられないということですよね?

参加者1:いずれなりたいという気持ちはありますけど。とりあえず今まで大学までで勉強してきたことの中で自分が教えられることは、他の方々と一緒で、さっき言ってたような軍隊教育しかなくて。どうせなら世界に行ったりして、いろいろ見てきたものを、「こういう世界もあるよ」って教えられるほうがいいなぁと思って。

西野:あれ、いいですよね、バックパッカーの人の独特な強さみたいなのってあるじゃないですか。小谷もそうですけど、あの強さちょっとほしいんですよね、僕。

参加者1:大学卒業して、海外ブラブラして帰ってきてから先生になった時に、「別に公務員とかにならなくても、海外ブラブラしてても生きていけるよ」っていうことを教えられたりできればいいですね。

でも、高校の進路相談とかでは、将来の職業の話で「起業」っていう単語が1回も出てこなかったんですよ。

西野:確かに、なかったなぁ。

参加者1:先生方も当たり前に軍隊教育されてる人たちなので、「起業」っていうことに全く触れずに生きてきたのかなと思って。

アーティストとして大成している人は美大の先生にならない

西野:最近大学の講義みたいなのにちょいちょい行かせていただくんですよ。おもしろそうだなと思って。で、「クラウドファンディング」ってあるじゃないですか。

クラウドファンディングのことについて、ちょっと経済に関係してる大学とか行ったら、8割ぐらいは知ってるんですよ。でも、美術の大学行ったら、99パーセント知らないんです。

自分がクラウドファンディングやってるんで思うんですけど、美大の生徒こそ知っとけよと思うんですけど、知らないんですよ。なんで知らないのかっていったら、先生が知らないからです。教えようがない。

だって絵を描いて生計を立てていこうと思ったら、個展をしないといけないし、個展しようと思ったらお金がいるし、っていうことを考えていかなければいけないんだけど、先生が知らないんですよ。

じゃあなんで先生が知らないのかなっていったら、要はそういうことができなかった人が先生になってるから。できてる人はアーティストとして大成してるから、先生やってないんですよね。これなるほどなと思って。

お兄さん(参加者1)のおっしゃってることと、まさに同じことだと思うんですけど、そうなんですよ。学校の先生が知らないから教えようがないんですよね。起業もそうですけど。

だからこれ、わかんないけど、美大とかああいうところの大学の癌だなと思っていて。生徒が卒業した後のことを一切教えないというか、教える能力のない人が先生になっちゃってるっていうのが、ちょっとこれ危ないなと思います。

絵の描き方はすごく教えてるし、素晴らしい先生ではあるんですけど、それで生きていく方法を先生が教えられないっていうのは危ない仕組みだなぁと最近思いましたね。ここ1、2年でいろんな学校に行かさせていただいた時に、クラウドファンディングをリトマス紙として「知ってる?」って聞いた時、美大の人、本当に知らないです。

だから、先生になられるとしても、いろんな経験をするのは無駄じゃないかもしれないですね。「こういうのもあるよ」っていう提案をしていただけるっていうのが。

小谷真理(以下、小谷):(窓の外に向かって手を振る)

西野:ちょっと! 僕、お2人の意見をまとめてるんですから!

(会場笑)

小谷:茂木(健一郎)さんが通ったから。

西野:茂木さんが通ったから手ぇ振ったんかい!? なんや、茂木さんって通るんやな。なかなかないよな、「茂木さんが通った」っていう日本語。茂木健一郎さんも通るんやね。

(トークイベント会場の外から爆音が聞こえる)

西野:お話が加熱してたんで、みなさんは聞いてなかったかもしれませんが、外で演奏している、音楽聞いたんですけど、「ぶっ殺すぞ!」って言ってましたね。

(会場笑)

西野:アカンって、そんなもんにしたら! フードコートの横でそんな音楽流したらアカンって。「ぶっ殺すぞー!!」って言ってましたよ。家族で来て「アート楽しいな」ってやってんのに……。東京デザインウィークでロックは合わんと思うなぁ……。音楽の審査をしないと、ちゃんと。「アーオゥ!」って。怖かったぁ~。

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