2024.10.10
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『一日の休息を最高の成果に変える睡眠戦略 世界のビジネスエリートが取り入れる「7つの眠り方」』
の刊行を記念して開催された本イベント。睡眠と疲労回復の最前線で活躍する角谷リョウ氏が登壇しました。本記事では、12万人以上のビジネスパーソンの睡眠を改善させた角谷氏が、朝型にシフトするコツや、寝れない原因の1つにある体温の低さについてお伝えしました。角谷リョウ氏(以下、角谷):ではフレックス睡眠の話をしていきます。
「時間をずらすと何がいいか」と言うと、特に朝に(活動時間を)ずらすと、自分主導で生きやすくなるんです。夜は意思力が下がっていてどうしても受動的になってしまうので、欲しくもないのに買い物しちゃったり、あんまりしたくもないのにゲームをしちゃったり。コントロールしにくいので、早く寝たほうがいいんです。
あと、体内時計は平均で24時間10分だとわかっています。ほとんどの人は24時間8分から12分ぐらいの間に収まってるんですけど、ちゃんと朝にシフトしていかないと、どんどん概日リズム(約25時間周期で変動する生理現象で、ほとんどの生物に存在する)はズレていきます。
なので、自分である程度リセットのスキルを身につけないと、どんどん夜型になっていきます。朝はすっきりして主体的な活動がしやすいので、やっぱり朝に活動するほうがいいですよね。
ここで覚えておいてほしいのは、朝に起きるのが難しい場合に、この活動ホルモンと幸福ホルモンを出しましょうという話です。セロトニン(脳内物質)がメラトニン(睡眠ホルモン)になっていくので、朝にセロトニンを出しておかないと、夜にメラトニンになりません。そのリズムを作るために、ここがポイントになってきます。
あとは、朝から活動できるかどうかは、このコルチゾール(副腎皮質から分泌されるホルモンの1つ)と体温が重要なんですね。これを見てわかるとおり、朝方って体温も上がらないし活動ホルモンも出ていないので、朝起きたって何にもできない。だから「自分は朝型じゃない」と思って、ほとんどの人は挫折しちゃうんです。
でも、このコルチゾールと体温が自然に上がるようにすれば活動できます。なので、ここを自分で意図的に上げることをすれば、ほぼほぼ朝からの活動が成功します。朝に体温を上げて、セロトニンを出すことをルーティーンに入れていくと、コルチゾールが上がります。
角谷:コーヒーを飲んで無理やりコルチゾールを出すとかじゃなくて、自然に出していかないと、朝型になりません。夜にやってたことを朝に持っていくテクニックがあるんですが、大事なのは朝に自然に動ける動線作りです。
例えば、朝は頭が回ってないしコルチゾールも体温も低いので、夜のうちに自分が着る服を用意しておいて、朝に寝ぼけながら着ます。
コップを用意しておいて白湯を飲むとか、すぐ掃除ができるように掃除道具を用意しておくとか、起きてすぐの体温が低い状態からの動線を作っておく。そうすると、だんだん目覚めるようになっていきます。
そうするとコルチゾールの出方がだんだん速くなってきて、(コルチゾールの量が)上がっていくので、自分で仕掛けていくことがすごく大事なんですね。フレックス睡眠は、短眠と違って睡眠時間をそのままシフトするだけなので、1週間で楽になります。成功確率も高くて、ちゃんと本を読んでやれば、9割以上の人がけっこう楽に成功します。
ただ、このリズムは「今からすぐ変わります」ってことはなくて、1週間ぐらいかかるんですね。だから1週間で間違いなくコルチゾールを上げていければ、この体内のリズムも変わっていくので、普通に1時間とか1時間半はずらすことが可能です。
では今日のまとめをします。最初に言ったとおり、現代ではストレスや変化が多くてダメージが大きいんだけども、ちゃんと回復すれば能力がアップします。睡眠で不調だったら、マイナスをゼロにするだけでもすごくいいので、まず十分な睡眠を取りましょう。
さらに言うと、今日みたいな睡眠戦略を使って、自分に合う睡眠を意図的にできるようにしていきましょう。本の中では7つのやり方を紹介しているので自分に合ったものを選んでください。正しいやり方をわかっていれば、成功確率は相当高いです。
角谷:最初に言ったんですけど、さっきのテストで「危険」だった人は、リセットプログラムで睡眠をよくしてください。無料版と有料版があって、無料版は軽い30分ぐらいの動画なのに対して、DAY8まである。
改善手順はDAY6までなんですけど、DAY6までやってだめだった時の対処の仕方まで書いてあります。有料版だと数値的にはかなり変わるので、お高くないし、こういうステップの認知行動療法だったり光療法も織り混ぜながらやってますので、睡眠を学びたい人にもいいと思います。というわけで、いったんここで終わって、小林先生に戻します。
小林亜希子氏(以下、小林):ありがとうございました。テストでみなさんの半数が「危険」だったのが、けっこう衝撃でした。「睡眠戦略以前のところも、取り組まなきゃいけないかな」なんて思ったかもしれないですね。こういったマイナスの人がいたら、本を読んだりプログラムを受けたりするのが、角谷先生のおすすめする流れですか。
角谷:睡眠戦略って、睡眠時間を分割したりスライドしたり、短くしたり、いろいろあるじゃないですか。でも基礎ができてないのに、分割したり短くするって、リスキーでしかないので。やっぱり、最低限ゼロベースまでいってからやるのがいいと思います。
そこから睡眠戦略をするんですけど、フレックスとか二分割は練習としてはいいとは思います。事情があれば短眠もぜんぜんありだと思うんですけど、フレックスと二分割は成功率がめっちゃ高い上にリバウンドがないので、超おすすめです。
リバウンドというのは、例えば短眠だったら、さっき言ってたようにホルモンバランスがイケイケになってしまって、「あいつちょっといきってるよな」とか周りに言われる場合もあるんですけど。二分割とフレックスはほぼないので、メリットしかないです。
小林:なるほど。順番としては、マイナスの人だったら、まず睡眠プログラムを受けたり、『働くあなたの快眠地図』のような本を読むといいんですかね。
角谷:そうですね。それで今日やったプログラムだったら、ビフォーアフターを取れるので。
小林:わかりました。わかりやすいお話を、ありがとうございました。みなさんのほうからも睡眠についてご質問がありますか? 私から聞きたいのは、角谷さんはマインドフルネスもされているということで、睡眠との関係で言うと、どんなふうに活用してらっしゃいますか。
角谷:これはすごく悩んだんですよ。実のところ、寝る前にマインドフルネスをしたほうが寝れる日と、別にしなくても寝れる日があるんです。逆に、寝れそうな時に瞑想して寝ると、「うわぁ、寝るタイミングなくしたな」みたいなこともあったりするんですね。
だから、「必ずマインドフルネスをしなくちゃいけない」というよりは「今、この状態だと寝れないな」という時に瞑想をしよう、と使い分けている感じですね。
小林:なるほど。今のところ、どんな使い分けをされていますか?
角谷:例えば仕事でストレスがあって、「切り替えができへんな。ちょっとあかんパターンに入ってるな」と思ったら、その時は瞑想します。でも「今日はやりきった感があるなぁ」とか「今日は自分の中で満足だ」と。
ルーティーンで「感謝のワーク」をやっているんですけど、ワークを終えて、ストレスよりも感謝が上回ればしない。感謝よりも、自分のダメージが上回った時には、この差分でマインドフルネスをしています。あくまで、目的のためにマインドフルネスをしてるって感じです。すいません。こんなことを言うと、マインドフルネスの専門の人に怒られそうですけど……。
小林:いや、大丈夫です(笑)。
小林:より戦略的にパフォーマンスを発揮するためだったり、仕事をやりやすくする上で、瞑想や睡眠はどうなさってるんですか?
角谷:睡眠をゴールにしていたら、意味がないというか。例えば睡眠スコアを測りますよね。70点・80点になったからと言って、「何の意味があるんですか」と、個人的には思っています。
例えば、僕はこのGarminの「Body Battery」(ボディバッテリー:身体的エネルギーの残量を測定できる機能)を使ってるんですけど、これは睡眠がよければ僕のバッテリーが100まで戻るんですよ。要は、何のために寝てるかと言ったら、翌日に一番いい状態を確保するためなので、睡眠って手段なんです。
別に睡眠が悪くても仕事のパフォーマンスが100点ならいいんだけど、年齢を重ねると回復しないので。僕としては、パフォーマンスが100点じゃないとこなせない仕事を入れているから、いい睡眠をとって翌日に100点になるようにしないといけない。例えばパフォーマンスが50点でも(仕事が)できる人は、別に睡眠が悪くたって、改善する必要はないんじゃないかなと。
小林:なるほど。パフォーマンスを上げる上で、瞑想はどうしてますか? けっこう使ってらっしゃるようにお見受けするんですが。
角谷:瞑想に関して言うと、パフォーマンスを上げるよりは、例えば自分は昭和世代で、「イエス」か「ハイ」しかないみたいな、即「やります」みたいな仕事のやり方をするじゃないですか。30代〜40代の前半ぐらいなら、それでもやっていけたかもしれないですけど、やっぱり今はそれだとパンクしちゃう時があります。
イメージで言うと、僕は仕事を卓球みたいにガンガンガンガンってやるんですけど。すいません、表現が悪いんですけど、そういうやり方でいい時と、よくない時があるんですね。落ち着いて判断しなくちゃいけない時に、「このモードで判断して返事をしたら、あんまりいい答えが出せそうにないな」って時に、瞑想をしてから返事するようにします。
瞑想のいいところって、心を落ち着かせることだと思っています。僕はADHDだし、けっこうハイになるので、わちゃわちゃしちゃう人には、瞑想がめちゃくちゃ有効だと思います。
小林:これはありますよね。特にADHD傾向がある人は散漫になるから、ちょっと瞑想するとクリアな思考が手に入るので、効果を感じやすいですよね。
小林:質問が来ています。「途中で目覚めてしまうのを防ぐために、できることを教えていただきたいです」。
角谷:ありがとうございます。中途覚醒って言うんですけど、年齢がいくと、意外とみんなあるんですね。その時にスマホを見る人がいるんですけど、スマホを見て情報が流れてくると、中途覚醒の度合いが高くなってしまうんです。
そこで見るのが時計なら、「今○時か。まだ寝ようかな」ってなるので、スマホを見るか見ないかで、中途覚醒の回数と長さがまったく変わります。なのでアドバイスとしては、夜枕元にスマホを置かず、時計を置く。時計を見て、寝れなくて考え事をしてしまうんだったら、もうしょうがない。ただ、不用意にスマホを見て中途覚醒を引き起こす必要はないのかなと思います。
小林:ありがとうございます。同様に、「寝る前のスマホはめちゃくちゃ睡眠の質を下げますか」。
角谷:下げますね。これはスマホのブルーライトとかじゃなくて、見る内容がSNSとかバッドニュースだと入眠に影響します。あと、韓国系ドラマやNetflix系って、「次どうなるんだろう」って終わり方にデザインされてるんですね。でも例えば『水戸黄門』なら、(最後に)「印籠じゃ!」となる展開がわかっている。そういう構成のものだったら、寝る前に見ても大丈夫だったりするんです。
同じドラマでも、水戸黄門のような完結型で、1話を見て「はぁ~」って終わるのか、「うわぁ~! 次も絶対見たい!」ってなるのかは、めっちゃ違う。あとショート動画をバーっと見たら、もうずっとオン状態でオフにならない。だから「オフになりやすいか」ってところが、すごく重要だと思います。
スマホをやめるのは難しいと思うんですけど、「スマホをやめて何をするんだ」って話ですよね。読書に切り替えられたらいいんですけど、今『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』というベストセラーが出ているように、やっぱり本を読むと疲れると思うんですよね。やっぱりそうなると、スマホで見る内容が大事です。
小林:ありがとうございます。だいぶ時間も押してきたんですが、次の質問です。「ストレスで過覚醒気味の時に、いい睡眠を得るのに有効な手立てはありますか」。
角谷:そうですね。マインドフルネスの大先生の前で言うのもなんですけど、僕のクライアントの場合、過覚醒になっている時は、夜に瞑想しても収まらない人が多い。何が言いたいかと言うと、過覚醒を抑えるには、どれだけ副交感神経に振れるかだと思います。
それを瞑想や脳にアプローチするのは向いてなくて。やっぱり体に一番いいのは入浴ですね。入浴ってちょっと異次元で、お湯に浸かることで、体がまったく違うものに切り替わるんですね。
入浴すると体温が上がってから下がるんです。女性が寝れない理由の1つに、体温が低いことがあります。体温が高いところから下がる時に眠くなるのに、元の体温が低くて、さらにうたたねとかして体温が下がってるとなると、そこから寝るのは難しい。入眠はメンタルの問題だと思われてるけど、体温の問題だったりするんです。
だから、お風呂に入って体温を上げてから下げる。ここでスマホとか見て「寝るのがもったいない」って踏ん張って体温が下がると、もう寝れないです。そうなったら、もう1回風呂に入るなり、甘いものをちょっと食べて、クッて体温を上げるとかしないと、寝れなくなっちゃいます。みんな過覚醒とか言うんだけど、女性の場合は体温をちゃんと調節して、お風呂で切り替えると眠れますね。
小林:ありがとうございます。特に暗闇のお風呂がいいんですよね。
角谷:そうですね。暗闇風呂はおすすめです。
小林:あと「朝の瞑想と寝る前の瞑想では、睡眠の観点からはどちらがおすすめですか」。
角谷:僕は個人的に朝の瞑想がすごく好きなんで、朝に瞑想しています。これは個人の趣味というか、夜はあんまり瞑想をするとイライラするので、朝にしています。素人っぽい回答ですみません。
小林:いえいえ、ありがとうございます。「あと副交感神経を優位に切り替える方法として、米軍式睡眠法やボディスキャンは有効ですか」と。
角谷:いやぁ、実際の現場の話をさせてもらうと、あんまり有効じゃないですね。あんまりやる人がいないというか。そもそも極端な話、米軍式って流行ってるしネットでも言われているし、紹介した時期もあったんですけど。やっぱりしっくり来ない。
米軍みたいにハードにやってたら効くのかもしれないですけど、たぶんみなさんの寝れない状況って、米軍の人たちの緊張や種類とは違うと思っています。たぶんあんまり合っていないと思うので、一般的な現場では有効じゃないです。
小林:もう1つ。「寝すぎて体がだるくなるのですが、寝すぎを防ぐためにはどういった対策がありますか」。
角谷:さっき言ったような、起きた後にどうルーティーンを作っていくかという、やることの動線を作ったり、光を当てれば起きられるんじゃないかなと。
あとは「寝すぎがよくない」と自分の中でわかっていればいいのかなとは思いますけど、難しいですね。寝すぎって深い話なので、あんまり単純に言うと、その人がショックを受けちゃうかもしれないし、いろいろ事情があって寝てると思うので、これは答えられないです。ごめんなさい。
小林:最後の質問です。「運動は朝と夜、どちらがいいですか」。
角谷:これは諸説あります。夕方に運動するのが、一番睡眠や人間の機能的にもいいんですけど、仕事も忙しいし家事もあるので、夕方に運動できる人なんていないと思うんですよね。そうなると、朝に運動するのがパターン化しやすいと思います。
ただ、朝に運動しちゃうと、もうやる気がなくなっちゃうとか、特に運動が好きじゃない人が朝にやると、もう1日だめになるみたいな。体力がない時にやると、朝にエネルギーを使っちゃって昼にパフォーマンスが上がらないので、基礎体力がない人が朝にやるのはよくないです。なので夜にちょっと運動して、基礎体力がついたら朝に持っていくのもいいかと。
これも本当に人によるんですけど、朝しか時間がないんだったら、ウォーキングとか軽めのものにして、体力が上がってきたらもう少ししっかり運動するのでも、ぜんぜん大丈夫です。
小林:続々と質問や感想が来ているんですが、今日のところはここで終了です。角谷先生、どうもありがとうございました。
角谷:ありがとうございました。
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