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『税金のことが全然わかっていないド素人ですが、相続税って結局どうすればいいのか教えてください!』発売記念【オンラインイベント】(全3記事)

妻の「へそくり」も相続税の対象になる? 会社員の夫と専業主婦の妻によくある、相続財産の注意点

『税金のことが全然わかっていないド素人ですが、相続税って結局どうすればいいのか教えてください!』の刊行を記念して開催された本イベント。対象になる財産やならない財産、相続税の計算方法など、いざというときに慌てないための相続税の基本を解説します。本記事では、相続専門の公認会計士/税理士 兼 社会人落語家の石倉英樹氏が、相続税に関するよくある間違いについて語ります。

不安を抱える人が多い「相続税」について専門家が解説

石倉英樹氏:今日は私からお話をしていきます。初めての方が多いと思いますので、簡単に自己紹介をしたいと思います。私はもともと公認会計士でして、その後に税理士になって、有限責任監査法人トーマツに4年ほどおりました。

その後都内の会計事務所に勤めまして、今は独立をして開業しております。埼玉県大宮の石倉公認会計士事務所です。ちょうど今年で11年目を迎えた、相続専門の事務所でございます。

今日はやりませんが、ふだんは落語を交えて相続の話をしています。ちょっと変わった税理士として、最近テレビ、新聞、ラジオに呼んでいただく機会が増えております。自己紹介はこれぐらいにいたします。

突然ですが、今日ご参加いただいたみなさまは、相続税が気になるとか心配な方が多いと思うんです。最初にちょっとだけ、みなさんに質問をしてみたいと思います。イメージでけっこうですけれども、相続税って、だいたいいくらぐらいかかりそうだと思います?

「すごく高い」とか「けっこう安いんじゃないか」とか、「何百万も持っていかれるんじゃないか」とか。ちょっと頭の中でイメージしていただいて。「相続税のイメージはどうですか」とうかがうと、「相続税はけっこうかかるんじゃないか」と特にご年配の方によく聞かれます。

よくテレビとか、新聞とか雑誌で「相続税は高いですよ」とやっていますので、半分ぐらいお金を持っていかれてしまうのではないかと、心配している方がけっこう多いです。

実は10人中9人は相続税の課税対象にならない

この間も80歳ぐらいのお母さまから、「もう相続税のことが心配で眠れません」と電話がかかってきたんですね。それで実際はどうかと言うと、まったく違います。今映しているこのデータは、国税庁が毎年出しているデータです。

日本全国でどれぐらいの方がお亡くなりになって、そのうち相続税の申告が必要な方がどれぐらいいたかという、統計データになります。これは日本全国版ですね。例えばスライドの赤い枠で囲った①の「被相続人の数」とは、亡くなった方の人数です。

令和4年を見ていただくと、156万9,050人。約150万人の方が、毎年亡くなられています。そのうち②番が、亡くなった人の中で申告が必要だった人の数です。これを見ていただくと、令和4年だと15万人いたんですね。例えばその前の年を見ていただいても13万人です。

③番で課税割合が載っているんですけども、令和4年で9.6パーセント。その前の年も9.3パーセントなので、だいたい9パーセントぐらい。ということは、相続税の対象は100人中9人ぐらいですので、約10人に1人の割合です。

だから約1割の方が相続税の対象になっています。逆に言うと、10人中9人は相続税の心配がいらないということになります。これを初めて見た方は「へぇ」という感じですよね。イメージとちょっと違うんじゃないでしょうか?

なぜかと言うと、相続税には非課税枠があります。この影響で、相続税がかからない方がけっこういらっしゃるんですね。初めてこれを見る方は、簡単な計算式ですので、今日覚えてください。

非課税枠、専門用語で基礎控除額と言いまして、3,000万円+600万円×法定相続人の数という計算式になります。簡単な足し算と掛け算ですね。

例えば相続人が1人の方は600万円×1ですので、それに3,000万円を足して3,600万円。遺産の額が3,600万円を超えた方は、相続税の申告が必要になる。だけど超えない方は、申告も税金を払う必要もない。

相続人が増えれば増えるほど、この非課税枠が大きくなっていく計算になります。これがあるので、(相続税が課税されるのは)全国平均で10人中1人ぐらい。

相続人になれるのはどんな人?

なお、相続人になれる人は、民法でルールが決まっております。誰でも相続人になれるわけではないですね。

例えばこの絵(家系図のイラスト)を見ていただいて、赤い点線で囲っているところがあります。これが亡くなった方(被相続人)ですね。例えばお父さんが亡くなってお母さんがいる場合は、籍を入れている配偶者の方は、まず無条件で相続人です。

それ以外の方は順番がありまして、配偶者の下を見ていただくと、長男・次男・長女。つまり、お子さまがいる場合は、第1順位の相続人になります。つまり、お父さんが亡くなったとすると、相続人は配偶者であるお母さま。あとは子どもがいれば、その子どもたちが相続人です。

例えば、お子さんがお父さんより先に亡くなってしまっているケースもあるんですね。その場合は、亡くなった方に子どもがいれば、つまりお父さんから見たらお孫さんがいれば、その方も相続人になる。

これは代襲相続と言うんですけれども、こうやって相続人が決まっていきます。「うちは子どもがいないんだ」という方は、第2順位(に相続されます)。もしご存命であれば、おじいちゃんおばあちゃんが相続人。だけど通常は親御さんも亡くなっているケースがあります。その場合は、第3順位の亡くなった方の兄弟姉妹が相続人になります。

「兄弟姉妹も亡くなっているよ」という場合は甥っ子姪っ子。こういったかたちで相続人になれる人が決まっております。今みなさんに見ていただいているスライドの、画面右下に本の絵が書いてあって、P23と書いてあります。

こんな感じでページ数が書いてあるものは、私の本の該当箇所を示しています。もし本を見ていただく時は、このP23に同じ挿絵が入っていて、さらに解説が加わっております。

親が都心に持ち家を持っている人は相続税がかかる可能性が高まる

さて、先ほどの非課税枠のスライドに戻りますね。法定相続人の数が増えれば増えるほど、この基礎控除額が増えていきますので、相続税のかかる人は、全国平均で見ると少ないです。

ただし、都心はちょっと状況が変わってきます。先ほどは全国平均の国税庁のデータを見ていただいたんですけれども、今スライドに映しているのは、東京国税局管内に絞った統計データになります。

先ほどと同じ令和4年分の①番、亡くなった方の数を見ると、約32万人。そのうち、相続税申告が必要だった方がどれぐらいいたかと言うと、4万8,000人ですね。③の課税割合という比率は15パーセントです。先ほどの全国平均は9パーセントだったんですね。

なのでやっぱり、東京、神奈川のようなちょっと土地の値段が高いエリアに関しては、相続税申告が必要な比率が6人〜7人中1人。先ほど日本全国で見たら10人中1人が相続税の対象だったんですけれども、割合が高くなってきています。

なので今日ご参加いただいている方で、親御さんが都心に住んでいる方。例えば戸建てやマンションを持っている方は対象になる可能性が高くなることが、このデータから見て取れます。

そもそも相続税の対象になるものは?

今はどれぐらいの方が相続税の対象になるかというお話だったんですけれども、みなさんにもう1つ質問です。そもそも相続税がかかる財産、つまり相続税の対象となる財産はどんなものがあるか、イメージがつきますでしょうか?

普通の考えでいきますと、亡くなった人が持っていた預金や株や不動産ですね。例えばご実家の土地とかが相続税の対象になるんじゃないかと。これは普通の考えです。

つまり、故人名義、亡くなった人名義の財産が対象になります。例えば今お話しした亡くなった日時点の現金、いわゆるタンス預金も含みます。そして預貯金の残高。あとは生命保険で、死亡保険金が支払われた場合。実はこれも一部非課税枠はありますけれども、相続税の対象に入ってきます。

あとは不動産、株、宝石や貴金属ですね。特に値の張る、高価な貴金属をお持ちの方は、これも評価の対象になります。あと自動車を持っている方も対象です。ここに挙げたのは、亡くなった方名義、つまりお父さんが亡くなったらお父さん名義の預金、不動産、車、株などが相続税の対象だと。

配偶者名義の財産には注意が必要

これ(故人名義の財産)は、みなさんもなんとなくイメージがつくと思うんですよね。そりゃそうだという話ですが、実はそれだけではないんですね。相続人の方の財産も、ちょっと注意が必要になります。つまり亡くなった方名義以外の財産も、相続税の対象になる場合があります。

特に亡くなった方の配偶者名義の財産、預金は注意が必要になります。図でわかりやすく描いてみたんですけれども、例えばお父さまが現役時代は会社員として働いて、お給料を毎月もらっていた。

奥さまは特にお仕事はされていなくて、いわゆる専業主婦です。夫である会社員の方が、毎月給料をもらって、それを奥さまに生活費として渡す。よくあるパターンですね。それで奥さまは当然、生活費を全部使わずに、一部貯金として残しておく。

いわゆるへそくりなんて言ったりもしますけれども、これが、例えば奥さま名義の通帳に生活費の残りとして残っていたとすると、名義は奥さまです。ですが、夫である会社員だった方が亡くなった時に、奥さま名義の預金も相続税の対象になるという考え方があります。

専門的にはこれは名義預金と言います。税務署はどう考えるかと言いますと、「確かに名義は奥さまのものだけど、このお金を結局稼いでいたのは誰ですか」という話になるんですね。

奥さまは専業主婦で家を守っていて、給料でお金を得ていたのはご主人です。であれば、名義は奥さまだけど、それは亡くなったご主人の相続財産ですということで、これも申告対象になるケースがあります。

なので、お父さん名義の財産を積み上げていったら、基礎控除額を超えなかった。だけど、この奥さま名義の名義預金を足したら、超えてしまうケースはやはり少なくないです。なので、実際はこのへんも注意をしていく。

当然、奥さまだけではなくて、この会社員の夫からお子さまに、同じようにお金が移動されていて、それが贈与ではなかった場合、お子さま名義の通帳の預金も相続財産になる可能性があります。税務署の方はこのへんを特に注意して見ているなと感じております。

「タンス預金」の申告漏れで税務署から指摘されるケースも

さらにもう1つ、先ほどお話をしましたタンス預金にも注意が必要です。例えば、ある方が亡くなったと銀行に伝わると、預金が凍結される。これはみなさんも聞いたことがあると思います。凍結されてしまうと、例えばご葬儀費用とか、亡くなった後に病院代の精算をしないといけない時に、お金が出せなくなってしまうんですね。

なのでどうされているかと言うと、亡くなる直前に、預金からまとまった額を引き出して、タンス預金としてご自宅に置いておく。それで実際に亡くなられた後に葬儀費や病院代を払っている方が少なくないんですね。

ですが、この現金も相続税の申告の対象になります。これを申告書に載せないと、チェックされますので、タンス預金にも注意が必要です。

これは昨年のNHKのニュースです。今回大変な震災がありましたけれども、北陸3県の相続税申告漏れが約74億円あったと言われています。(申告漏れが疑われる)220件を詳しく調査をしたら、そのうち196件で申告漏れがあった。

なんでこんなことが税務署でわかるかと言いますと、税務署は税務署で個人の方の預金の動き、例えばどれぐらい移動があったのかや、亡くなる直前でどれぐらいお金を下ろされているのか、取引を独自に確認することができます。

みなさんが通帳を出さなくても(税務署のほうで)確認が取れると(いうことです)。申告が漏れている方には税務署から「漏れていますよ」という指摘が入るケースが多くなっています。

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