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UTokyo Future TV ~東大と世界のミライが見える~ Vol.13 「教えて、渋澤さん!お金ってミライをどう変えるの?」(全4記事)

経済成長の低迷ゆえ「日本ダメダメ論」で育った若者たち 渋澤健氏が若い世代に問う「お金」の価値とは

東京大学基金アドバイザーである渋澤健氏がナビゲーターを務めるオンライン対談シリーズ『UTokyo Future TV』。今回はゲストに東大の学生2名を招き「お金はミライをどう変えるのか?」という問いをテーマに対話を行いました。本記事では、若い世代が描く“理想の姿”について語りました。

「お金の使い方」は4つある

渋澤健氏(以下、渋澤):4つのお金の使い方がありまして、1つは「お金を使う」こと、2つ目が「貯める」こと、3つ目が「寄付」という話をしましたが、4つ目は何だと思いますか?

竹内誠一氏(以下、竹内):4つ目と言われると「投資」なんじゃないかなと。いきなり答えを言ってしまって申し訳ないですが(笑)。

渋澤:なんか打ち合わせしたような感じの答えでしたけど(笑)。

竹内:ばっちり。

渋澤:ばっちりですね。確か、学生の頃に投資の勉強をしたって川崎さんが……。

川崎莉音氏(以下、川崎):勉強と言うほどではないかもしれないんですが、株式投資をしてみるというのは経験があります。

渋澤:どんな印象でした?

川崎:すごくおもしろいなとは思ったんですが、失敗するとお金がけっこうなくなってしまったりして、リスクがあるのでちょっと怖いなというイメージもありました。

渋澤:じゃあ、あんまり良い子がやることではないみたいな印象を受けましたか?

川崎:そうではないかもしれないですが、そんなに気軽に手を出せるものではないなという気持ちはすごく感じました。

渋澤:そうなんですね。先ほど「Meのお金の使い方からWeのお金の使い方」ってあったじゃないですか。今のは「自分が怖い」とか、Weがぜんぜん入っていなかったですよね。

川崎:はい。すごくMeの考えです。

渋澤:Meの考えでとどまっていましたよね。

“現金を知らない世代”に、お金の実感を持たせるには

渋澤:なぜWeが大切かというと、例えば小さなお子さん向けの話ですが、世の中にはたくさん素敵な会社があります。子どもたちから見ると、自分のお父さんやお母さんみたいな方々が一生懸命仕事をする姿が見えるわけですね。

そして、その会社はお客さんがよろこぶような製品やサービスを提供しています。そうすると、当然お客さんたちはよろこんで「ありがとう。これを探していたんだ」と、購入するわけですね。そこで代金を払うと、会社側は「ありがとうございました」と受け取るわけですよね。

じゃあ、受け取ったお金をどうするか。子どもから見ると、自分のお父さんお母さんが一生懸命働いているので、「毎月ご苦労さん、どうもありがとう」と言ってお給料を払うわけじゃないですか。するとお父さんお母さんたちは「どうもありがとうございました」ってお給料をいただくわけですよね。

こういう話を展開すると、小さなお子さんでも、お金ってただポロンと落ちてくるわけではなく、親はATMではない(ということがわかる)。そしてゲームでもなくて、実はお金は社会に巡り回って、自分のところに来ているんだと実感することを期待しているんです。

そして、そのお金が世の中に循環、巡り回る時に必ず存在しているものがあると思うのですが、それは何だと思います?

竹内:巡り回る時に必ず存在するもの?

渋澤:必ず存在するものだと思いますよ。

竹内:人間同士の関係とかですかね?

渋澤:そうですよね。じゃないと回らないですよね(笑)。

川崎:ぜんぜん見当がつかないです。

投資とは「ありがとう」の気落ちを応援すること

渋澤:先ほどクラウドファンディングの話をしていただいた時に、みなさんに何て言いました?

川崎:共感していただく。

渋澤:そうです。共感していただいた方にどういう言葉を返しました?

川崎:「ありがとうございます」。

渋澤:ですよね。先ほどの話だけど、お客さんも「ありがとう」、会社も「ありがとう」、働いても「ありがとう」、会社も「ありがとう」じゃないですか。私が思うには、この「ありがとう」の連鎖によってお金は社会に巡り回ってくるんじゃないかなと思うんですよね。

「ありがとう」が増えればよろこびが増えるじゃないですか。よろこびが増えることには価値があると思いますよね。ですから先ほどのWeの概念で考えると、よろこびが増える、価値が増える、「ありがとう」が増えることを応援することが投資なんじゃないかなと。

もちろんこれは小さなお子さん向けの話なのでそういう展開になるんですが、感謝によってお金が社会に循環すること、そしてそれを応援するのはなぜかというと、価値が生まれているから。これは大人でもわかるべき投資の考え方なんじゃないかなと私は思うんですが、お二方はどうですか?

川崎:すごくしっくりきました。

渋澤:本当ですか。

川崎:今の話を聞くと、投資をやってみようかなって。

渋澤:本当ですか。

「投資」と「寄付」の共通点

渋澤:私はコモンズ投信という会社をやっておりまして、会社を立ち上げる時にも月3,000円から積み立てることができるようにしたのは、学生でも1回飲み会を我慢すればそれくらいのお金は浮くと思うので、学生さんでも始められる。

先ほどはWeの話をしましたが、長期投資と寄付も同じなんです。大事なことはいろいろあると思うんですけど、共通点は何だと思います?

川崎:その先がどうなっていくかをちゃんと見ること。

渋澤:それはそうですよね。イマジネーションで実現したい未来があるので。

竹内:投資と寄付の共通点、どうなんですかね。あんまり考えたことがなかったかもしれないです。

渋澤:じゃあ、寄付や投資はどういう人がやると思います?

竹内:自分のお金に余裕があって……。

渋澤:お金持ちで、こういう感じの人たちですよね(自分を扇ぐジェスチャーをしながら)。

竹内:はい、そのイメージです。

渋澤:ですよね。先ほどのクラウドファウンディングは、みんなこんな感じの人たちがボンとお金を入れました?

川崎:いや、そんなことはなくて。本当に1,000円とか3,000円を、それこそ学生さんも入れてくださっていました。

渋澤:先ほどの積立投資も同じですよね。その中で大事なことは、1,000円、2,000円だったら426万円にならないじゃないですか。どうやって426万円になったんですか?

川崎:たくさんの方に寄付していただいた。

渋澤:たくさんですよね。だから1つは、たくさんの人が参加することが共通点であって、それも普通の方々ができるということですよね。

あと今はNPOでも、寄付金をドカンといただくことも求めていることだと思うんですが、毎月少額を(寄付する)マンスリー会員みたいな方々がたくさんいること。あとは長く付き合っていくことが大事ですよね。そこに共通点があるんじゃないかと思うんです。

東大生が描く、数年後の“理想の自分”

渋澤:少額でも始めることができるけど、多くが集まって長く継続するといろんなことが展開できると思うんです。お二人は、私と比べるとこれから長い人生があると思うので、そういう意味では長い時間をぜひ活用していただきたいなと思います。

川崎:がんばって活用していきます。

渋澤:今日見ているほとんどの方と比べると、間違いなく若者のほうが時間価値があるんです。これから長い時間があって、その中でいろんなことを体験することができると思います。未来ってすごく遠いんですけど、お二人は3年後、4年後、自分の未来にどんなイメージを描いていますか? 何をしていたいですか?

川崎:私は警察庁に入りたいと思っています。

渋澤:おぉ、もうちょっとピシッとしないと(笑)。

川崎:少しでも日本の犯罪をなくすために、貢献できているといいかなと思います。

渋澤:そうなんですね。なんで警察になりたいと思ったんですか?

川崎:もともと犯罪予防に興味があったので、それができるのが現状では警察庁が一番近かった。特に女性や子どもが被害に遭いやすいような、ストーカーや性犯罪の予防に携われるといいかなと思います。

渋澤:そうなんですね。これから気をつけます(笑)。

竹内:自分もお世話にならないように、気をつけないといけないなと思いながら。

「日本ダメダメ論」の中で育った今の若い世代

竹内:自分は今、大学の4年生なんですが、大学院に進学をする予定なので、3年後どうするかをちょうど本当に迷っている時期です。将来修士を卒業して就職をするのか、ドクターまで進んで博士を取るのかをすごく悩んでいて、どうしようかなと考えている段階ですね。

渋澤:いいですね。私もいつも「どうしようかな」と思っています。それが40年以上続いている感じがして。だけど、なんとなく行きたい方向ってわかるんですか?

竹内:すごく抽象的な言葉にはなるんですが、自分自身がもっと人間的に成長をしたいなという欲求はやっぱりあって。1つ視野に入れているのは、海外のどこかの大学院に博士の学生として留学をして、そこでドクターを取れるといいなと漠然と考えている段階です。

渋澤:なるほど、いいですよね。ここから話を展開したいキーワードを出していたんですが、「成長」という言葉を使っていたじゃないですか。みなさんが生まれてきてからの時代は、日本がぜんぜん成長していない時代があって、それがダメなんじゃないかということで、「日本ダメダメ論」がずっとあったわけじゃないですか。

そういう現実でみなさんは生まれてきて、生活していて、「成長」って何なんですかね。なんでそんなに成長を求めるんですかね?

竹内:どうなんですかね。自分がもっと成長したいなと思ったのは、いろんな大人の方とふだんの生活の中で接していく中で、「この人すごいな」とか。

何がすごいかと言われると、具体的に言語化するのはすごく難しいんですが、ただなんとなく「こういう大人になれるとなんかかっこいいよな」「こういう人になりたいな」という憧れとか。そういったところに近いもので、「自分も周りからこう思われる人になりたいな」というのが自分の原動力なのかなとは思っています。

国の豊かさはGDPだけでは表せない?

渋澤:川崎さんはどうですか?

川崎:今、解決されていない社会課題が本当に山ほどあって。そういうのを一つひとつ解決していくこと、1人でも苦しんでいる人がいなくなるように努力していくことが、成長なのかなと思います。

渋澤:なるほど。2人とも答えが素敵ですよね。大人に聞くと「いや、GDPでしょ」「GDPが何パーセント上がるか」という話になると思うんですが、経済成長についてはどうですか?

竹内:経済成長の指標だと、確かにさっと思い浮かぶのはGDPやGNPなのかなと思いながら、そこだけですべてを評価するのも、それはそれで危険なんじゃないかなという気もしています。GDPが高い国のほうが豊かな国であるという理論は、一般的にもちろんあるとは思うんです。

けれども、そこで暮らしている人間が「自分の国はすごく良いところだ」と思いながら、自分自身の生活にちゃんと満足して生活できているのであれば、GDPが低かろうが高かろうが、そんなに差異はないんじゃないかなと自分としては思う。単にGDPだけを成長の指標にするのは、自分はあんまり賛成はできないかなと。

渋澤:なるほど、そうなんですね。いかがですか?

川崎:GDPも見るべき1つの指標だとは思うんですが、その裏に隠されている「実は格差があります」というものにも、ちゃんと目を向けていくことは必要なのかなと思います。

渋澤:そうですよね。

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