2024.10.10
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教育ニュースレター「Discover Edu!」の創刊記念イベントが開催され、『自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方』著者の島村華子氏と、『夢をかなえるゾウ』シリーズ著者の水野敬也氏が登壇しました。本記事では、時間に追われる現代社会において、心の余裕がない時に子どもとどう接するか、その解決策を探ります。
島村華子氏(以下、島村):(子どもの)癇癪に対してどう声をかけたらいいのかに関しては、「できない」ってすぐ言う子には「しなやかマインドセット」を育ててあげることがすごく大事です。その時に、「今はまだできないだけだね」って言葉を変換するのが大事なんですよ。
しなやかマインドセットは、英語では「グロースマインドセット」と言われてるんです。要は、チャレンジとか困難に対処する時に、柔軟性を持った心のあり方のことなんです。
「できない」って決めつける人は努力をすることも諦めるし、「もう1回やってみよう」というチャレンジ精神もなくなってしまうので。もしお子さんがそういう傾向にあるんだったら、「今はまだできないけど、できるようになるかもよ」と周りが声をかけてあげるのは、すごく大事なことだったりはしますよね。
水野敬也氏(以下、水野):なるほど。その一言、重要ですよね。公園で娘が逆上がりをやっていて、運動神経が良いのでできるんですが、怖いのかワッと(勢いよくは)はいかないんですよ。
だからその場でYouTubeで「この蹴り上げだ」って動画を見て(笑)。動画で理論武装もできたし、僕としては「よっしゃ、今日は逆上がりやるぜ!」みたいな。
島村:(笑)。
水野:でも「怖くてやりたくない。できない」みたいになると、「いや、できるできる!」って親はなっちゃうんですが、「今はできないだけだよ」というワンクッションセリフを持ってるだけで、ちょっと対応が違ったなと。YouTubeで「ほら、この蹴り上げだ」ってやってる自分の愚かしさというか。
島村:いや、そんなことない(笑)。でも、できるようになったんですよね?
水野:逆上がりに関しては、まだそのまま。
島村:まだなんですね。
水野:そうなんですよね。またちょっとタイミングを見計らって、みたいな感じではあるんですが、すごく良い言葉だなって思いました。
島村:そうですね、良い言葉だと思います。
島村:親御さんもグロースマインドセットを持てるかどうかというのも、結局は子どもへのイメージとつながることなんです。
「この子は今はこうだけど、こうじゃないかもしれない」「今はできないけど、できるようになるかもしれない」って、余白を残して信じてあげることにもつながるので。そういう柔軟な姿勢を大人が持っていることに対しては、子どももけっこう敏感に感じたりはするので、大事な言葉だったりはしますよね。
田中亜紀氏(以下、田中):ありがとうございます。乱暴な言葉を使ってしまうとか、「そんな言葉言わないで」と教えていても、感情が高ぶると反射的に使ってしまうことに悩まれている方も多くいらっしゃいました。お子さんが乱暴な言葉を使った時に有効な声かけはあるでしょうか?
島村:そうですね。水野さんは、お宅ではどうですか?
水野:「〇〇すんじゃねえ」みたいなことを(子どもが)言うと、「言葉使いが良くないぞ」と。でも今度は妻が悪い言葉を使ったら、子どもがめっちゃ突っ込んだりしてますね(笑)。
我が家ではそれの堂々巡りですが、「言葉は大事だぞ」とはすごく言うんですよ。言葉は心とつながってるから、きつい言葉を使うと心も荒んじゃうぞ、みたいな。
島村:確かに。
水野:ただ、注意は絶対にするようにしてます。注意というか、きつい言葉があった時に放置すると「悪貨は良貨を駆逐する」じゃないですが、強い言葉って強いんですよ。
だからそこは止めないと、実は目に見えないマイナスがすごく大きいなと。言葉遣いは大事にはしてるんですが、注意しちゃうんですよね。
島村:そのままやり過ごしてしまうと、子どもたちも「どこまで境界線をプッシュしていいのか」がわからないと思うので、やはり「ダメなものはダメ」って伝えるのもすごく大事だと思います。
きちんと「こういうのはダメだよ」という境界線を見せてあげるのは、子どもが安心するためにもすごく必要なことなので、水野さんがやってらっしゃることはすごく大事なことだと思います。
島村:たぶんこの(質問者の)ケースだと、本人も感情のコントロールができずにすごく苦しんでるんだろうなというのが伝わってきます。「反射的に出ちゃう」ということだったので、本人も言いたいと思って言ってるのではない。
なので、こういう場合に頭ごなしに言っても、本人は感情のコントロールがまだあんまり育ってない状態なので、まず効果はないんですよね。だからまずは、本人がすごく怒ってるという気持ちを認めてあげるのもけっこう大事なことなんですよ。
「〇〇したかったのに、できないからすごく怒ってるんだよね」と言って、本人に感情を表現するほかの方法を教えてあげるのは大事なことです。やはりお子さんはまだボキャブラリーがなかったり、いろんな感情を処理する仕方を知らないので。
たぶん大人でも、自分の怒りをどうやって処理したらいいのかわからない人は多いと思います。まずはお子さんに「自分の感情を認識するような方法」を教えるところから始めるのが第一歩かなと思います。言葉や声かけでコントロールするのではなくて、まずは自分の気持ちを認識するところから始める。
オンラインにもフリー素材があるんですが、「うれしい」「悲しい」とか、いろんな言葉が書いてある「気持ちカード」みたいなものを使って、感情を認識する練習をしたり。
お子さんが経験している状況に気持ちの言葉を添えてあげて、表現方法を丁寧なかたちで教える。子どものロールモデルになるということを、繰り返しやる必要があるんじゃないかなと思います。「ダメだよ」って言ったところで、たぶんあんまり効果がないと思うので。
「あなたが感じてる気持ちはこうかもしれないよ」「この中のどれを感じてるのかな」と、本人がわかるところからコントロールは始まるので、本人もわかってないものはコントロールできないんです。まずは感情認識を練習するところから始めたらいいんじゃないですかね。
田中:ありがとうございます、大変勉強になりました。
田中:次の質問にいきましょう。「ついつい急かしてしまう、親がイライラしてしまう」。これもよくあるかと思います。切り替えが苦手な子どもに怒ってばかりなど、親自身の感情のコントロールをどうしたらいいですか? というご質問が寄せられています。お願いいたします。
島村:水野さん、どうですか?
水野:本当は親って、「時間は無限にある」という状態や心持ちでいたほうが、絶対に子どもにとってはいいなと思うんですよ。仕事であったり、常に親も時間に急かされてるんですよね。でも、子どもたちは今この瞬間を生きてるので時間がない。
それを理解できれば(感情のコントロールを)する理由もあるのに、こっちが「早く早く」っていう気持ちがあるので。本当は「時間は無限にある」という、時間リッチな状態にあることが理想なんですが、疲れていたり、現実問題できないよねという。
朝、走れる時は走るんですよ。朝6時に起きて運動して、7時に一番上の娘を起こすんです。走ったあとだとイライラしないので、「俺いけてるわ、毎日朝走ればいいんだ」と思うと、夜泣きで寝れなくて朝起きれない、みたいな。
島村:(笑)。
水野:「俺は運動できねぇ、あぁもうだめだ!」みたいな(笑)。いつもだったらイライラしないのに、めっちゃイライラするみたいなことの繰り返しで。
島村:そうですよね。ムダに時間があるっていうメンタリティでいられたら、本当にどんなにいいでしょうね。
水野:まさにミヒャエル・エンデが『モモ』で書いた「時間泥棒に時間を奪われてる」。でも、時間泥棒と共存していかないと生きていけないじゃないか、仕事できないじゃないかと。現代社会の子育ての難しさのすごく大きな1個の部分として、時間の問題はあると思いますね。
島村:本当ですよね。
島村:おっしゃったとおり、時間に追われているのは子どもじゃなくて、大人が追ってるだけですからね。だから「早くしてよ」って言ったところで、そんなに早くできない。ただ「おやつあるよ」って言った時のあの早さを考えると、できるんじゃないかなって思ったりはするんですが(笑)。
水野:(笑)。
島村:ただいつも思うのは、声かけですべてを解決しようと思う必要はないと思うんですよね。なので、無理に叱るとか無理に褒めるという意識よりも、どうしたら具体的な行動で子どもをサポートできるかを考えた方がいい。
この場合だと、「早くしてよ」と言っても直らないのであれば、お子さんも次に何が起こるのかを予測できてない時もあるかもしれないです。
「トランジション」といって、次の活動やタスクに移動するのがすごく苦手な子がいたりしたら、「ピクチャーカード」というのを作ってルーティンを見せてあげるんですね。「朝ご飯」のあとに、矢印で「着替え」というカードを用意しておくんですよ。これを一緒に子どもたちと作ったりとか。
子どもたちが目で見て「次に何が起こるのか」をわかるようにしてあげることで、いちいち「次はこれしなさい」って言う大人の手間も省けたりします。「次は何だったっけ?」って思い出させてあげるだけでよかったりもするので、そういう道具に頼るのもありです。
こういうふうにクリエイティブになるのって、イライラしてる時や心の余裕がない時は確かに難しかったりはするんですが。それこそあまり動かない子に対しては、例えば水野さんだったら「水野トレイン、発車します」「乗車券見せてください」みたいな感じで(笑)。楽しい要素を取り入れて、子どもを巻き込んで一緒に行く。
やはり、そういう工夫をする必要はあるのかなと思います。ただもちろん、イライラしていたり急いでる時に工夫をするのは、けっこうエネルギーがいるので大変だとは思うんですが、よく先生たちが使うやり方ではありますよね。
水野:なるほど。
田中:ありがとうございます。めちゃめちゃ自分でもやってみたいなと思っています。
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