クラウドワークスが描く働き方と政府の施策

原隆氏(以下、原):今おっしゃった中で、「働き方革命」っていう言葉があったと思うんですけど、今、日本の政府が何を進めているかというと、どちらかというと、正社員化というか。

派遣法改正で、正社員化を進めましょうって動きがある中で、逆にクラウドワークスが描こうとしてる世界というのは、一人ひとりが働き方を自由に選べるという世界で、ちょっと政府が向いている方向とクラウドワークスが向いてる方向とズレがあるのかなって気がするんですが、その辺はどうですか?

吉田浩一郎氏(以下、吉田):そうですね。政府の施策については、いろんな見方があると思っています。おっしゃるように、2018年まで派遣の契約のままであれば、原則正社員にしてくださいっていう動きで。去年スターバックスとかユニクロさんが、地域限定正社員っていうのを前倒しで採用されてますね。

そういう、地域限定正社員という意味でいうと、正社員って名前はついていますけど、その拠点がなくなるっていう意味においては有期なんですよね。無期ではなくて有期雇用なんですよ。

実は政府の話って両面があって、正社員化を推し進める一方で、正社員と非正社員のギャップをなだらかにするような施策をいくつか打っている。その1つの現れが、安倍首相の提言してるテレワークですね。もちろんテレワークは日本全国で始まっています。

我々も横須賀市と一緒にやらせていただくことが決まりました。そういった意味では、厚生労働省の在宅就業者支援事業。あるいは経済産業省の、クラウドソーシングに関する助成金っていうのを見てもですね。実はそっち側にもはってはいる。

:正社員になりたい人には、ちゃんとなれる制度を。自分で働き方を選びたい人は、受け皿としてクラウドワークスみたいなクラウドソーシングのサービスを利用する。二極化ではないですけど、選択肢が増えるということ?

人間の仕事とロボットの仕事

吉田:働き方の面でいけば、今の話の通りだと思うんですけど、労働に関しては、ロボットとAIの部分を加味しないとこれからはやっていけないと。ソフトバンクのPepperがショップの店員をやるときに、何が一番いいかというと、教育コストがかからないということ。

人間に比べて、コンピューターのほうが記憶力があるわけじゃないですか。人間は記憶力ではコンピューターに勝てませんと。「人間が人間として働く意味はなんですか」というのを問われる時代になってきてる。

じゃあこれは、過去に無かったのかというと、製造業にそれが起きてる。前は家内制手工業だったものがオートメーション化されて、さらに外部化が進みましたね。

それでシャープにとっての鴻海(ホンハイ)みたいな形で、工場が外部化して、それが独自に肥大化していった。今、それのホワイトカラー版が起きていると。だから、ホワイトカラー版の鴻海(ホンハイ)を我々は目指していると言ってるんですけど。

いろんな企業にとっての中間のところを、我々がやることによって、企業さんは、もっとアイディアとかデザインとか、何をすべきかと。人間が人間らしい仕事に集中できるような環境を整えるみたいなイメージなんですけどね。

日本のSI業界の危機意識

:今クラウドワークスの仕事の中身で、一番発注が多いのはどういったものですか。

吉田:今はやっぱり、Web周りのコンテンツ作成とかデザインですとか、比較的簡単な開発。単体のアプリケーションやアイフォンアプリの開発ですとか、Web周りの開発。

逆に高度なシステムエンジニア、いわゆるSIの世界のようなところの外部化っていうのは、まだそこまで進んでないと。それは海外のクラウドソーシングとの大きな違いだなと思います。

:海外だと例えば1千億とか。その前にクラウドワークスが目指してるのが100億で。その差分っていうのは、それだけなんですか。

吉田:そうですね。それは1つ大きな要因としてあるかなと思います。アメリカのUpworkっていうoDeskとElanceっていう大手が合併したところですね。

あるいは最近、Gigsterっていうサービスが出てきましたけども、これは基本的にはSIの中長期開発をオンラインで行うっていう。インターネットの向こう側に、プロマネがクラウドワーカーとして存在してやっていくみたいな。これも1つ大きな市場になるかなと思っています。

:どうやったらそういう仕事まで受けられるようになるんですか?

吉田:日本でも、もう正社員をすべて内部に抱えるほど市場が右肩上がりではないということは、既存の大手のSIさんも認識していますと。やっぱり大手の3強、4強さんに呼ばれて勉強会をさせていただきますけど、危機意識はあるんですよね。

ただ正社員を抱えちゃってるんで、そこから変革するっていうのは……私は新卒でパイオニアに入っています。パイオニアやシャープ、パナソニックとかが経験したようなことが、これからSIに5年10年かけてやっぱり起きるのかなと。

その後に我々っていうのは、本当の意味で伸びてくる。やっぱり、ある意味外圧がないと変わっていけないっていうのは製造業で証明されているので。

海外と国内の競合との関係性

:逆に、クラウドワークスで海外に打って出るみたいなことは頭の中にあるんですか?

吉田:そうですね。今、いろんな話をさせていただいてます。インターネット上に人のスキルが上がるっていうのは、さっきのFacebookとかAmazonとかと同様で、別に国は関係ないというわけですよね。だから当然、グローバルもクラウドソーシングのプレイヤー。

オーストラリアでFreelancerが上場して、今、時価総額700〜800億くらいあるんですけど。そういった方々と話をしていって、当然「世界をとるために、協力しようよ。1つになっていこうよ」という可能性はあると思っています。

:あの……ランサーズとは仲がいいんですか?

吉田:(笑)。

:前に取材させていただいた最後がランサーズの社長との対談だったと思うんですけど。

吉田:さすが原さん、ぶっこみますね。一応解説までになんですけど、業界ではランサーズっていう競合がいて。この2社のオフィシャルな対談を設定したのが原さんでして……あれは2年くらい前でしたっけ?

:炎上したときですね(笑)。最近もまた炎上したみたいですが……。

吉田:いやいやいや(笑)。そうですね、クラウドソーシング協会というところでコミュニケーションしたりとか、三木谷(浩史)さんがつくってらっしゃる新経済連盟の幹事でもご一緒させていただいてますので。良きライバルという感じです。

クラウドソーシング協会の活動

:つくった協会というのは具体的にどういった活動をされてらっしゃるんですか?

吉田:協会の意義って攻めと守りの2つあって。攻めのところは、事例の共有で市場を拡大するために啓蒙を世の中に図っていきましょうと。

防御はどうかというと、違反がないとか、不正がないとかっていうガイドラインを1社でやってもあれなんで、足並みを揃えていきましょうと。

今は前者のところの市場拡大ってところに注力していて、経済産業省の中小企業のクラウドソーシングに関する助成金も1社で受注っていうのは公平性の面からできないですから、クラウドソーシング協会をメインにさせていただいて。

全国で今年ですね……800社。経済産業省の後押しで800社の企業が、クラウドソーシングの発注体験をするんですね。これは去年100社だったので、そういう意味では確実に増えていますね。

:発注の内容を見てると、前だと「問題があるんじゃないかな?」みたいなものが結構あったんですけど、今は無くなってるんですか? 例えば口コミをつくるとか。ああいうのはもう今は一掃されてるんですか?

吉田:そうですね。1つ事実として、久しぶりなのでアップデートさせていただくと、上場から今まで、契約者同士が法的なトラブルに発展したっていうのは一件もないんですよね。

そういった意味では、そこのガイドラインっていうのは、他の業界に比べると安定的に運用されているのかなと。

やっぱり、我々もフィルタリングのスキルっていうのはデータとしてどんどん溜まっていきますので、過去の不正の可能性をどうやって排除するかっていうのは、やればやるほど蓄積されますので。