「成果を出す人」と「成果を出し続ける人」の違い

越川慎司氏(以下、越川):今回は「いつも余裕がある人の時間配分術」ということで、『仕事は初速が9割』という書籍の中身をみなさんにご紹介したいと思います。

みなさん、やる気はありますか? 「やる気がある時だけ仕事をして、やる気がない時は仕事ができない」だと安定した成果は出せないですよね。

成果を出す人と成果を出し続ける人の違いは、やる気に頼らないことですね。やる気があってもなくても、体調が良くても悪くても、手掛ける。「常に初速が早い状態」を、どう作り出すかなんですよ。

「でもねコッシ―さん、嫌なことがあって、昨日深酒しちゃって」ということもありますよね。行動習慣(ルーティン)を作っても、変化に対応できない時もありますよ。大雨とか、嫌なことが起きた時とか。悲しいことやうれしいことは外から降ってきちゃうから、避けられないし、感情は変えられない。

そんな時に、初速を早めるためにはどうしたらいいか。まずは心理的なハードルを下げることがすごく重要だと思うんですよ。

「これ、嫌だな。苦手だな」「分析するの嫌だな」「この分野、知らないから調査できるかな」と言って、ちょっとハードルが上がると行動ができない。手を止めてしまう。

わからないから目の前のアーモンドチョコ食べちゃう。パクっみたいな。明日までにやらなきゃいけない、どうしよう。グミをガブッみたいなね。

ハードルを高めると、「仕事を始める」というスタートが遅くなります。なので、家事でも育児でもそうですが、自分の行動ハードルを下げてみることが大事です。

例えば、みなさんどうですか? 「アンケートに答えてください」よりも、「たった2分のアンケートに答えてください」のほうが、「だったらやるか」という気になりませんか?

この「たった何分」を、自分に言い聞かせるんですよ。終わらなくてもいいの。仕事って、どうしても終わらせなきゃいけないけど、終わらせることをゴールにしちゃうと遠い。「富士山の頂上に行くよ」と言うと、遠いですよ。

富士山の頂上に行く前に、「富士山に登るために準備をしよう。よし、モンベルの服をバックに入れよう」です。バックにモンベルの服を入れることを、まずはスモールステップとしてやってみるんですよ。

やる気スイッチの入れ方

僕は最近ランニングを始めたんですけど、ランニングの習慣をつけたい方は簡単です。ランニングウェアを畳んで用意しておくだけです。「ランニングに行かなくてもよし。でもランニングのための服を用意しよう」と言って、用意する。タンスからハーフパンツとウェアを取ってきて、あとはランニングウォッチを充電して、靴を玄関に置いておく。5キロ、10キロ走るよりも、時間もエネルギーも少なくて済むでしょ?

でも、これにはサンクコストがかかるので、「準備した時間がもったいない」になるんですよ。朝眠いけど、「昨日靴と服を用意したから着ちゃおうか」と言って着る。外に出る。「ちょっと気分が乗らない。体調が悪い。今日は着るだけにしておこう」。それでも、ぜんぜんいいんです。ランニングを習慣にしたいんでしょ? 着て外に出るだけでいいです。ダメだったら戻る。

「今日は走れそうだ。10分走ってみようかな」「10分辛かった。10分でも息が上がっちゃう。やっぱり体力落ちたな」。戻ってもいいです。走れたら、次は15分にしてみる。

こうやって、どんどんステップアップすればいい。いきなり行動ハードルを上げて、「よし、半年ぶりに20キロ走るぞ」というのは、意気込みはあってもそれがプレッシャーになって、服を準備する間にくじけちゃいますからね。

仕事もそうです。例えば、報告書を作る。海外の現地法人との交渉結果を報告書にまとめる。「英語でまとめるのが大変だな。どんな内容だったっけ? 思い出さないとな」みたいに手間取っちゃう。やめるという選択肢がある。目の前のグミに手がいっちゃう。

なので、2分だけやってみる。仕事を終えることじゃなくて、「2分手掛けてみることをゴール」にしてみるの。報告書を書くためには、まず記憶を定着させる。「ノートはどこにあったかな。ちょっと持ってこようかな」。「翻訳は何を使えばいいかな。ちょっと検索してみようか。ChatGPTでも翻訳がいけるね。今までGoogle翻訳でやっていたけど、ChatGPTでやってみようかな」と。これだけで2分です。

「2分、終わった。メモしたノートが見つかった。翻訳のやり方もわかった」。これでスイッチが入る確率が高いんですよ。そこで1回、グミを食べてもいいですよ。コーラを飲んでもいいですよ。コーヒーを飲んでもいいです。

モチベーションが高まるメカニズム

「よし、やろう」と。ちょっとやってみると、「意外とできそうだな」「こうやればわかるんだな」というプロセス、「How」がわかるから不安にならないんです。

やってみた。「Google翻訳よりChatGPTのほうがぜんぜんいいじゃん。メモ帳、スマホでカメラを撮ったら文字認識できるじゃん。それをコピぺしてChatGPTで構成してもらって、翻訳もしてもらおう」。

乗ってくると、モチベーションが上がってくる。これが「作業興奮」なんですよ。モチベーションが高まってから仕事をするんじゃなくて、仕事をしていたらモチベーションが高まってくるんです。このメカニズムを理解してください。

最初の2分でこじ開けちゃいましょう。2分ならできるよ。アンケートはどう? 「50分のアンケートに答えてください」。無理でしょ? だから「2分だけのアンケートに答えてください」と思って仕事をしてみる。調子が乗らない時、初速が高まらない時、初速を高める行動習慣をつけたい時。すべての時に2分だけちょっとやってみる。ぜひ、小さな行動実験としてやってください。

この「2分だけちょっとやってみる」を続けていると、やめるのがだんだん辛くなってくるんですよ。「2分乗ってきたからやめるの嫌だ」みたいな。その経験が重要なの。「2分やると、自分は作業興奮、ドーパミン、さらに興奮物質であるアドレナリンも出てくるんだ」。「なんだ、僕は2分を超えればいいんじゃん」。「私は3分だ」って。それを見つけるのが重要なんです。自分を理解することが、もっとも効果的な超タイパ仕事術です。

初速を上げるために、初速を高めるために、出だしを早くするために、心理ハードルを下げる。心理ハードルを下げるために、「ちょっとこれ、2分だけやってみよう」を、ぜひトライしてください。