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「推し」が「仕事」になった起業家のストーリー(全2記事)

開発したサウナで目指すは、日本式「ととのう」の海外定着 好きで起こした会社を「趣味事業」にしない2つのポイント

「推し活休暇」を設ける企業が話題になるなど、企業が従業員のモチベーション喚起や向上の一環として、従業員の「推し活」をサポートする動きが見られます。そうした中で、特に若い人たちを中心に「推し」「自分が好きなもの・夢中になれるもの」に関連した事柄を仕事や事業にする人も現れています。
今回は、サウナ好きが高じて、多くの人が自宅で楽しめる無煙家庭用サウナ「IESAUNA」を開発・販売する株式会社Vanwaves代表の深田渚央氏に、好きで始めた事業を継続するために意識していることなどをお聞きしました。

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好きで始めた事業を継続するために大切にしていること

ーー好きなことを仕事にする際の苦労としてはどういったことが挙げられますか。

深田:今はやっとある程度軌道に乗りましたが、めっちゃ具体的なことで言えば、資金です。最初はそんなに数字が伸びず、投資したけれどできなくなったこともあって、事業として存続できるかとか。本当に大変でした。

お金で悩み始めるとエネルギーを奪われ、行動力も低下し、メンタルも弱まる。すべては資金繰りというかキャッシュ・フローであると肌で感じました。

考えは変化していいと思うんですが、僕はもともと自分の半径何メートル以内の人たちを豊かにしたり、自分も含めて幸せにする。そういうふうに生きていきたいという考えがありました。

借入はしたとしても、外部から投資を受けたりすると、いろんな制限がかかって自由にやることができなくなる。なので自己資本でやるということには、わりとこだわっています。

ーー好きなことで起業をした深田さんが、事業を継続するために大切にしていることは何でしょうか。

深田:自分に合わない行動とか、自分がそんなに得意じゃない領域のことをする必要はないかなと思っています。自分らしさを最大に活かせるところで、自分の「快適だな」というコンフォートゾーンをちょっと抜けるぐらいが、新しい景色を見られると思うので。そして、それが仕事につながるのではないかと思います。

そんなに得意じゃないことや、持っている思想と逆行するようなことは途中でしんどくなって続かないと思うんです。

会社員時代に身に付けた「三方よし」の考え方

ーー起業をしてから「役立っているな」と感じる会社員時代の経験はありますか。

深田:会社員時代にやったことは、店舗を増やしていく多店舗開発や、きちんと数字を上げていくことです。例えば店舗を増やす時は、デベロッパーに家賃など諸々の条件を交渉します。その時、デベロッパーの人も我々も来てくださるお客さんも「みんなが果実を取れるように」というのは意識していました。

例えば家賃なら、定額より歩合のほうが、自分たちががんばったらディベロッパーの人たちも数字が伸びる。そうすると、ディベロッパーの人たちも我々の売上が上がるように「イベントを一緒にしましょう」「地域の子どもたちを呼びましょう」とか、いろいろ連携ができたりします。

なので「三方よし」じゃないですけど、そういうのがちゃんと仕組みとして成立するように意識しながら交渉していました。

今のサウナやキャンピングカーについてもそうです。パイを奪い合うのではなく、みんなで業界全体をもっと広げて、文化として定着させていく。「パイを広げる方向でがんばろう」という姿勢や考え方につながっていると思っています。

「1回立ち止まる」ことの重要性

ーー先ほど大変なこととして資金のお話がありましたが、売上を上げていくために意識されていることはありますか。

深田:好きなことをやる時って、けっこう感覚で突っ走ってしまうんですけど1回立ち止まること。立ち止まるというのは本当に重要だと、やっていく中で思いましたね。

「本当にそれは課題なのか」「課題の深さはどれくらいなのか」「それを課題として感じる人はどれくらいいるのか」というのを調査しないと、仕事にはならないと思っています。

顧客を知るために、例えば今だったら100件でも、200件でも簡単にアンケートが取れます。そういった課題を調査し、自分たちだけの独自の価値提案ができるのか。

また、継続した売上がないとビジネスとして存続できないので、単純に物やサービスを売るだけでなく、そのあともしっかり価値提供して、報酬を得る。ストックでの収益もきちんと作る。

ちゃんと顧客のことを分析して、長期視点で物事を見る。この2つが売上を安定的にして、仕事の継続につながるのかなと思いました。

僕も単純にIESAUNAをやりたいというより、「サウナがある暮らし」を、新しいライフスタイルとして定着させていく。「サウナを軸として、他の周辺環境をトータルプロデュースします」というかたちで展開の範囲を広げ、法人の人たちにも扱ってもらって、ショールーム的なところから広げていくというかたちがあると考えています。

趣味事業とか道楽事業にならないように、スケール感を大きく持って、ちゃんと社会の課題を解決して、価値を継続的に生み出すことが大切だと思っています。

目指すは、日本式「ととのう」の海外定着

ーー最後に貴社の今後の展望をお聞かせください。

深田:自分の好きなことを他の人たちに知ってもらって、「あ、これいいね」って言ってもらったら本当にうれしいので、その数を増やしていきたいという思いがあります。

また、今は国内でやっていますけど、海外にも展開したいという思いもあります。日本式の「ととのう」みたいなフォーマットって、海外ではあまり認知されていなかったりするんですよね。サウナに入って、水風呂に入って、外気浴してという1つのフォーマットを海外展開できればと思っています。

僕は、ほっと一息できる時間というのは、日本とか海外とか関係なく人間にとって根源的に必要で、特に今の時代だからこそより求められると思っています。

「ととのう」という言葉を「Kawaii(カワイイ)」みたいに海外で定着させる。それくらい大きいことを成し遂げて、価値を生み出せるようにしていきたいと思っています。今は着実に一個一個進めていき、そういうところに進んでいきたいですね。

ーー貴重なお話をたくさん聞かせていただきました。本日はどうもありがとうございました。

深田:ありがとうございました。

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