すべてのダイヤモンドが「無色透明の光り輝く石」ではない

マイケル・アランダ氏:ダイヤモンドは象徴的な存在であり、無色透明の光り輝く石として描かれることが多いですが、必ずしもそのようなものではないとわかりました。時にダイヤモンドは「緑色」をしています。さらに不思議なことに、放射線の影響で緑色になるものがあるのです。

言うなればダイヤモンドは、炭素原子の特定の配列にすぎません。その配列は「格子(lattice)」と呼ばれる規則的な繰り返しパターンですが、この格子が崩れるとダイヤモンドは異なる色になります。

この不思議な現象の起源は、多くの場合、地下から始まります。ダイヤモンドは、自然界に存在するウランやトリウムなどの放射性元素を含む鉱石のそばにできることがあって、ウランやトリウムなどの放射性元素は、原子の中心に不安定な原子核を持っています。このような放射性元素は、時間の経過とともにより安定した元素に崩壊する傾向を持っていて、その過程で「電離放射線」と呼ばれるエネルギーを放出します。

放出された粒子は、近くにあるダイヤモンドの格子構造に到達し、その原子の1つに衝突します。そして、十分なエネルギーがあれば、原子全体をノックアウトすることができます。叩き出された原子は、格子内の他の原子の間に詰まって、完璧な炭素パターンに欠陥を生じさせます。つまり、炭素原子があるべき場所に炭素原子がないということになります。

「炭素原子があるはずの場所に炭素原子がない」。これは大したことではないと思われるかもしれませんが、結晶内部で光が跳ね返る際には、この炭素原子の違いが大きな意味を持つことがわかります。ダイヤモンドは慎重にカットされているので、光が入ってくると内部でちょうどよく反射して、光が外に逃げていき、白く輝く外観になります。

超レアな、全体がグリーンなダイヤモンド

しかしダイヤモンドに欠陥があると、話は少し違ってきます。光はただ反射するのではなく、格子の隙間にある原子に吸収されたり、時にはほかの欠陥と一緒に吸収されたりします。これは、近くにある原子が、以前ほど格子の構造に強く束縛されていないからです。

そのため、少しずつ動き回ることができて光波のエネルギーを運動エネルギーとして吸収することができるのです。特に欠陥は、可視光線のうち赤や青の部分を吸収する傾向があります。赤や青の光がないと、ダイヤモンドから反射される残りの光には、緑の光が比例して多く含まれます。その結果、ダイヤモンドの表面は緑色に見えるのです。

自然放射線の影響でこのような鮮やかな緑色になるダイヤモンドは、1000個に1個もない超希少なものです。しかも、グリーンダイヤモンドの中には、表面だけがグリーンではなく、ダイヤモンド全体がグリーンになっている超レアなものもあるのです。

その代表例が、自然放射線によって形成された有名な「ドレスデン・グリーン」です。なぜ全体が緑色なのかはまだ議論されていませんが、特定の地質条件や放射線源に起因するのではないかと言われています。自然からヒントを得て、科学者たちは実験室でダイヤモンドを緑色にする方法を発見しました。

20世紀半ばから、電子線などの人工的な放射線を利用して、普通のダイヤモンドを緑色にする研究が行われています。「グリーンダイヤモンド」の中には放射性物質が含まれている可能性があり、少し危険な感じがするかもしれません。

しかし、アメリカでは、このように宝石に放射線を照射するプロセスは厳しく規制されています。万が一、ダイヤモンド自体が放射性物質を含んでしまったとしても、安全なレベルまで放射能が下がて安全に保管されているので幸運にも「グリーンダイヤモンド」を手に入れた方は、身につけても何の害もありませんので安心してください。

ただし、友人の目まで「緑色」にしてわざわざ嫉妬を買う必要はないでしょうね。