人材が組織に定着、成長し、成果を出すための「期待値合わせ」

石黒卓弥氏:2つ、持ち帰っていただきたいということでお伝え申し上げたんですが。1つめが、ミッションとバリューによる組織経営。

ミッション・バリューというのが、組織のOSとして成り立っていきますよね。自律型人材を輩出する、もしくは成長する、もしくは行動が制限されない組織を作る中では、組織OSが必要だよねという話をしたんですが。

もう一つが、彼ら彼女らがその後も継続して、組織の中で定着していったりだとか成長していく。もしくは大きな成果を出していく、または大きな失敗をしにくいようにするというのは、期待値を合わせるというところかなと。

エクスペクテーションアライメントという言葉で。これは私が人事をやる中でも、常に意識している言葉ではあります。これもメルカリに私がいた最後の1年半ぐらいの経験なんですが「採用に強いメルカリ」から「人が育ち成長するメルカリ」へ、という転換期がございました。

採用、わーっと優秀な方をたくさん採ったところではあったんですが、採用した方々がどうやったらもっと自律的に成長して、組織の中で成果を出せる人材となるのか? というお話を、常に議論していたところでございました。

EX=従業員体験と、EA=期待値合わせ

やっぱり従業員体験、EX。EXと社内では言っていて、EAというのは「期待値を合わせる」と。そこをキーポイントにして、さまざまな人事策を打っていきました。

エンプロイーエクスペリエンスという言葉があって、(スライドを指して)この図自体はさほど意味があるものではないんですが。パフォーマンスが高いものであり、eNPS、従業員の満足度が高い、と。ここの人材がたくさんいたらいいんですけれども。

でも大事なものってなんだっけ? といったら、基本的に会社にとってはパフォーマンスができる人材を大事にした方がいいよね、と。(スライドを指して)一見、(パフォーマンスが低く)eNPSが高い人材を大事にしそうなんですけれども、こちら(パフォーマンスが高くeNPSが低い)にちゃんとフォーカスしていったらいいんじゃないの? という話をしています。

この方たちに、ミッションとバリューをちゃんと定着させていけば、しっかりこちらの人材(パフォーマンスとeNPSがともに高い)が増えていくよね、というようなところでエンプロイーエクスペリエンスに注目したという。

従業員っていろんな会社の中でイベントがあって、最後はExit、例えば退職した。また入社するかもしれませんけど、こういうJourneyの中のEmployee Experienceが大事になるし。Employee Experienceの中で、Expectation Alignment、要は期待値をちゃんと合わせることが大事だよねと。

ある人事部門のマネージャーのお話

最後にお時間も迫ってきたので、1つ、小話の共有なんですけれども。これ、ある人事部門のマネージャーのお話で。採用チームですごい実績があって、最大20名ぐらいをマネジメントしてたメンバーなんですけど。マネジメントスタイルが最初は「背中を見て自走してくれ」というスタイルだったんですよね。

先に答えを言っちゃうと、これは私のことなんですけども。自分自身は採用のリクルーターとして成果を出していて、人が足りないからバンバン採用して、20人近いマネジメントをするんですが。「週末は海外採用、平日は国内で面接を1日5本」みたいな感じで、ほぼ疲弊しまくっている。「ただ背中を見て自走してくれ」みたいなスタイルだったんですね。

当時、40人か50人くらいマネージャーがいたんですけども、組織開発の中に「じゃあマネジメントのサーベイしよっか」っていった時に、それは自分の主管部門なんですけど、私が下から2番目ぐらいのスコアで。目も当てられないような状態だったんですよ。

今でこそなんかニコニコして話してますけれども、僕にとってはすごく辛い体験だったし。自分としては「会社のためにやってきたのに」という思いが、正直あって。これを開示できるようになったのは、正直、2年ぐらい経ってからというところではあります。

上長から自分へのFBを、一言一句そのまんま、チームに見せる

一方で、そこをどんなふうに乗り越えたか? とか、自分なりにどうしたらいいんだろう? というのを試行錯誤する中で、とてもよかった自分なりの取り組みがあったので。それを共有できればと思っています。

それが自己開示の中でも、上長から僕へのフィードバック。要は当時の上長である役員からマネジメントをやっていた僕へのフィードバックを、一言一句そのまんまチームに見せるんです。

これってなんかケロッと言ってますけど、けっこうみなさん自分で考えるとドキドキするんじゃないかなと思っていて。自分へのフィードバック、いいところを見せるのは簡単なんですけど、ネガティブなところとか改善点も含めて全部見せる。

そうすると「どういう目標設定をしていて、どういうフィードバックがあって、次に何が期待されてるか?」が見えるわけです。私はチームの成果を最大化するというミッションを持ったマネージャーなので、私への期待値がメンバーに伝わると「なるほど。石黒さんはこういう期待値を受けていたんですね。だったら俺たちはこれをやればいいんですね」というのがわかる、と。

なので「情報を透明に」といって、会社の議事録とかをなんでも公開するんですけれども。もしかしたら一番大事なところって、僕への期待値だったりするので。僕への期待値を見せた(公開した)ことで、メンバーがすごく自律して動くようになったので。

「期待値、期待値」って、さっきから「EA、EA」って言ってますけども。僕自身への(会社からの)期待値を開示することで、チームのメンバーが自律して動くようになったというお話です。

振り返ってみるといい話だなと自分なりに思ったので、ここに書かせていただいているですが、本当に当時はしんどくて。なにやってもしんどいなという時に「まあ別に失うものはないから、これを見せるか」と思って見せたのが、最初のきっかけだったんですけども。

そしたら「石黒さん、あれいいね。私もやってみるわ」というマネージャー陣が増えたのはすごく、僕自身はおもしろい自分の取り組みだったなと振り返っています。

自律型人材が活躍する組織OSを作るためのポイント

まとめですが、大きく2つですね。自律型人材が活躍する組織OSを作るためのポイント。ミッションとバリュー、向かう方向を定めて意思決定基準を揃えるというのがミッションとバリューの話。

もう一つがExpectation Alignment。期待値をちゃんと合わせて、その後もズレてないかというのを継続して確認し続ける。この2点を大事にすることで、自律型人材が活躍する組織を作れるのかな? というお話をさせていただきました。この後のディスカッションを楽しみにしております。ご清聴ありがとうございました。