凍った湖が燃える秘密

ハンク・グリーン氏:氷に閉ざされた湖は、まるで絵葉書のように美しいものですね。雪が降り積もった岸辺、裸の木々、どこまでも広がる凍った湖面は、まさに「ウィンターワンダーランド」です。

ところで、実は凍った湖には秘密があります。なんと、火をつければ燃えるものがあるのです。その犯人は微生物です。

冬の湖は、微生物レベルでは、思いのほか生命に満ち溢れています。これらの微生物は、夏の間は藻類をエサにしていますが、氷点下では死に絶えます。

このプロセスでは大量の二酸化炭素が放出されますが、「メタン菌」という古細菌の一種は、二酸化炭素を利用してさらにメタンを生成します。メタンは、非常に可燃性の高いガスです。そのため、メタン菌が含まれていてメタンの発生があれば、湖の氷に火をつけることができるのです。

極寒の湖での過酷な「放火実験」が増えている理由

事実、湖に放火する実験が行われています。科学者らは、湖から放出されているのが可燃性の低い別の気体ではなく、メタンであることを実証するために、放火実験をしているのです。つまりこれは、湖を研究するためのいち手段なのです。

しかし、こうした実験は、時に過酷です。湖の多くは、氷点下より気温が上がることは稀な北極圏よりも北に位置し、夜間は厳寒です。天候は不順であり、こういったフィールドワークは、冬季には単に寒いだけではなく、危険を伴います。

しかし、冬季の湖のメタンレベルを調査する科学者らは、近年増加しています。これには、理由があります。

温暖化が進み、氷結する湖は減りつつあります。完全に凍り付く湖は減少し、あったとしても、氷りつく期間が短期化しているのです。このような変動が、生態系に大きな影響を与える可能性があります。大気圏中に放出されるメタン量が増加し、気候変動に大きな影響を及ぼす可能性があるのです。

地球温暖化を食い止めるための凍結湖の研究

メタンは温室効果ガスです。その力は時が経過すると低下しますが、二酸化炭素の20年間の保温力の86倍です。

湖の温室効果ガスは、冬季には氷下に閉じ込められるため、通常であればあまり大きな影響はありません。細菌は、長い冬季間にメタンを気体から別の物質に変え、氷が溶け出しても放出されることはありません。

しかし、近年は氷結する期間が短くなり、より多くのメタンガスが大気圏に放出されるでしょう。場所によって異なりますが、将来的には放出されるメタン量は激増するでしょう。そうなると地球温暖化は進み、氷はますます溶け出して、メタンの放出量もさらに増えます。

もうおわかりですね。これは、「正のフィードバック・ループ」と呼ばれるもので、通常は状況の悪化を示します。これが、凍結湖の研究が重要である理由なのです。

探求は心躍りますし、大規模な火を燃やすのは楽しそうですが、それにもまして、温室効果の究明と、対策や防止策を練る必要があるのです。