サイボウズ株式会社の青野社長が登壇

水野梓氏(以下、水野):それではみなさん、お待たせいたしました。みなさんご存知のサイボウズ株式会社 代表取締役社長の青野さんをお呼びしたいと思います。どうぞ拍手でお迎えください。

(会場拍手)

青野慶久氏(以下、青野):今から30分ほどお話をさせていただきます、青野といいます。よろしくお願いします。(前説で)「withnews」さんのお話もされていましたが、私ももちろん、存じていますよ。

選択的夫婦別姓の話で、お子さまのニュースを書いていただいて大変ありがたいです。今日はそういうご縁もありまして、今から30分ぐらいお話をさせていただきたいと思っています。ご紹介いただいたとおり、青野慶久といいます。今、子どもを3人育てながら社長をしています。

よくみなさんに「奥さんの写真がないじゃないですか」「青野さん、シングルですか?」とか言われるんですけど、いますよ。(スライドを指しながら)ほら、ちゃんとね。ただ「顔を出すな」と言われているので、今日はハートマークをつけてきました。これは2週間前に撮った写真なので最新のものですけど、一応妻もいまして子どもが3人、我が家は5人で成り立っております。

今日はこんなテーマでお話をしてほしいというリクエストをいただいておりまして、1つ目が別姓裁判の話。2つ目が会社の話ですね。これは経営的、組織論的な話。3つ目は男性の育児という1人の男性としての話。一応こういう流れでお話をしたいと思っております。

仕事とプライベートで姓を使い分けることのストレス

まず1つ目の別姓裁判です。(「選択的」の文字に)カッコをつけたのは、「選択的夫婦別姓」なので「別姓がいいよ」ではなくて、「同姓でも別姓でもいいよ」ということになります。

実は、私がこの問題に関わったのはけっこう前からです。結婚したのが18年も前で、そのときに私は子どもの頃から使ってきた「青野」という名前を、「西端」という妻の苗字に改姓しました。妻が希望したこともあって、こう変えました。

正直、そんなに抵抗がありませんでした。だって仕事で「青野」を使い続けられれば、僕は自分の好きな「青野」を使って生きていけるわけだから、「何も問題はないだろう」と思っていたんですけれども、これが細かいストレスの連続でした。

最初は、パスポートとか大事なものから変えていったんです。そうすると飛行機に乗るときに「パスポートとマイレージカードの名前が違うから、マイレージがつかない」と言われて、「えー!?」と思うようなことが起きたりしました。

そんなことをやっていたら、今度は文京区の図書館のカードまで、「これは免許の名前と違うので使えません」とか言われて、プライベートは全部「西端」に変えました。その辺の手間も嫌だったし、今も使い分けるのが大変なので、いろんなところでぶつぶつと言っていました。

これは10年も前の『産経新聞』ですけど、賛成派と反対派みたいな記事を書いたりしながら、陰でぶつぶつ言っていました。陰ってこともないか(笑)。

「青野さん、原告になりたいと思いませんか?」

とはいっても、これはみんな気づいているからね。みなさんもご存知かと思いますけども、2015年に最高裁まで行きまして、5対10で負けるという非常に惜しい裁判になりました。(最高裁の15人の判事で)違憲と言ってくれたのが5人いたんですけど、合憲だと言ったのが10人もいて、裁判で負けてしまいました。このタイミングでは立法化されなかったということになります。

これがまた頭に来てブーブー言っていたら、『報道ステーション』さんと『NEWS23』さんがいらっしゃいまして、「もう本当に最悪っすわ!」ということを言って。ただ、これは言っていても変わらないのがわかっていたので、「これは、なんで動かないんだろう?」と自分なりにちょっと動き始めました。

この裁判では、最高裁のほうで「これは『違憲』とは言えないけど、ちゃんと国会で議論されて判断されるべきだった」という判決が出ているわけですよ。普通、(最高裁が)これを出したら国会で議論するでしょう? 最高裁が言っているわけですよ。「最高裁がこう言っているわけだから、ここから議論するだろう」と思ったら、そこからずっと放置ですよ、放置。

「すげえな! 国会議員って、ぜんぜん最高裁の言うこと聞かないんだ?」と、だんだんフラストレーションが溜まってきまして、自分なりに調べたりして作戦を考えていたときです。この裁判で負けた原告の一人で、加山恵美さんというライターの方から連絡がありました。それは何かというと、岡山の作花知志さんという弁護士が、もう1回別の切り口で訴訟を起こそうとしているということでした。

「青野さん、原告になりたいと思いませんか?」と言われて、お話を聞くことにしました。これは偶然ですけど、作花さんはこの最高裁で負けたほうじゃなくて、同日に判決が出た「再婚禁止期間に関しての男女平等」の訴訟で、違憲判決を取った弁護士さんです。めちゃすごい敏腕弁護士なんですよ。

日本人同士の結婚では、別姓という選択ができない

「彼が言っているんだったら、ちょっと話を聞きたい」と言って聞いたら、これがもう、勝てるんじゃないかと思って、すぐに原告になることを決意しました。その理屈は、この四象限で書いているんです。今は、日本人同士が結婚すると同姓に変えないといけないんですよ。別姓という選択ができない。

ところがその後、夫婦によっては別れるじゃないですか。別れたときには基本的には旧姓に戻るんですけど、戻さないという選択肢もあるんですよ。そういう届け出をする。これ、すごくないですか? 「夫婦別姓」はできないんだけど、「夫婦じゃないのに同姓」はできるということなんですよ。生活上のいろいろ不便が出るから、夫婦ではないのに同姓にしても構わないということです。優しいね。

さらに、外国人と結婚した日本人は基本的に別姓になるんですけど、それもやっぱり不便だとか、かわいそうだろうということで法改正がされました。届け出をすると、なんと外国人と結婚した人も名字を変えられるんですよ。例えば僕がレディー・ガガと結婚しますと、「ガガって苗字、いいよね!」みたいなことで届け出をすれば、「ガガ・慶久」になれるわけですよ。一体感がある感じだね。

そして残念ながら破局してしまったときに、「せっかく『ガガ』を名乗り始めて、定着もしてきたから使い続けたい」と届けを出したら、別れた後でも合法的に「ガガ・慶久」でいられるんですよ。この戸籍姓って、けっこう優しいね。にもかかわらず、結婚したときだけ別姓はだめというのは、法律的に穴が空いているでしょうという理屈なんです。

「すべての国民は個人として尊重されて、法の下に平等である」と憲法が定めているにもかかわらず、「外国人と結婚した人だけ得をしてないか?」「日本人と結婚した人のほうが損しているっておかしくないか?」ということになります。

また憲法には「夫婦は同等の権利を有する」とある。そして「この憲法は国の最高法規」、つまり民法や戸籍法はある意味、憲法の下の法律だから、憲法に則してないんだったらそれは直さなきゃいけないと、ちゃんといいことを書いているわけですよ。

それに沿って考えれば、「今回の裁判に負けるわけない!」と思って、訴訟を起こすことにしました。正直、そんなに問題になるとは思っていませんでした。

メディアの注目を集め、世論を動かした夫婦別姓の訴訟

2015年に裁判で負けているわけですから、「もう1回誰かが東京地裁に提訴しても、そんなに話題にならないだろうな」と思ったんですけど、これを『毎日新聞』さんが最初に取り上げて、Yahoo! ニュースがぼーんとその記事をトップに持ってきました。するとメンバーが私のところに来て、「青野さん、「Yahoo! ニュースのトップに出ていますよ」と言われまして、「お前、何をやったんだ!?」ってなりました。

そのときは、もう本当にわけがわからなかったです。なぜ自分が「Yahoo! JAPAN」のトップにいるのか。見たら「別姓サイボウズ社長提訴」とある。「うおー!?」みたいな。その瞬間、「サイボウズ社長」は検索ランキング1位です。「サイボウズ社長って、誰だ?」ということが起きました。これにはびっくりしました。

その後もキー局がテレビで全部取り上げてくれましたし、『朝日新聞』さんをはじめ、数々の新聞で社説として取り上げていただきました。しかも、すべて賛成意見ということで「うおー! これは、提訴した甲斐があったな」と思いました。無視している新聞もいくつかあるようですが。

(会場笑)

けっこう反論も来まして、いろんな人にいろんな反論を受けました。なので、それに対して僕なりに反論していこうといって、反論への反論を書いたりしました。

「青野は左翼だ」とか書かれましたね。私は左翼ってなんのことかよくわかっていなくて、「いや、僕は野球をするときは右投げ左打ちです」とよくわからない返しをしていたりします。これもすごく話題になって、また少し世論が高まった感じがしました。こういうのを受けて、反対派の人が賛成派に回るのもたくさん見てきました。

典型例が、この自民党の稲田朋美という議員さんです。これはすごいんですけど、2010年に出版された本の中で、「夫婦別姓運動はまさしく、一部の革新的左翼運動、秩序破壊運動に利用されているのです」とおっしゃっています。……こわっ!

その人がこの1年くらいの間に、「いや私はね、どうかなとは思っていたんですけど、この通称、旧姓と戸籍と名前を2つ持つ人が出てくるって社会が混乱するよね」とおっしゃっています。やっと気づいたか!

それで彼女も今や、賛成派に回っている。社会が動いているということですね。