CAのゲーム事業部を支えるPRデザイン室の仕事

青山文吾氏:みなさん、はじめまして。サイバーエージェントの青山と申します。よろしくお願いします。今日は僕だけデザイナーなので、クリエイティブを作る側からどう企業文化を作っていくかをご説明させていただければと思います。

こういう場で登壇するのは初めてなので、不手際があったら大変恐縮です。あたたかい目で見守っていただけるとありがたいなと思っております。

まず自己紹介ですが、青山文吾と申します。サイバーエージェントのゲーム事業部 SGE統括本部というところでデザイナーをやっております。経歴としてはコンシューマー系のゲーム会社のあとにデザイン事務所を経て、2009年にサイバーエージェントに入社しました。今ちょうど10年目くらいですね。

まずゲーム事業部について簡単にご説明させていただきます。サイバーエージェントは大きく3つの事業があります。

AbemaTVが今話題になっているメディア事業と、創立当初からずっと続いているインターネット広告事業、そしてゲーム事業という3つの柱があります。ゲーム事業の一部の子会社が所属する組織を、社内ではSGEという名称で呼んでおります。Smartphone Games & Entertainmentの略ですね。

ゲーム事業は子会社制をとっております。SGEだけでも10社以上あり、従業員も1600人くらいいる、比較的大所帯な組織です。この組織の中で子会社制をとっているのは、決断を早くしてスピード感のある事業を展開していくという部分。あとは子会社ごとに溜まったノウハウやナレッジを共有をすることで、いろいろな組織力、大会社力というのも活かしてゲームをヒットさせていこうという方針をとっております。

これを統括しているのが、副社長の日高です。日高からの組織全体の方針の共有や、各社を超えた横軸の施策を伝える時に、周知しなければいけない情報やいろんな制作物が出てきます。このデザインをしているのが我々PRデザイン室になります。

クオリティの高い制作物で、組織にカルチャーを浸透させる

PRデザイン室はほぼ社内クリエイティブ専門の横軸組織で、現在デザイナー2名で内製しております。今回初めて数えたら、これまで3年間で約300点くらい作っていました。ということは年間100点くらいクリエイティブを作っているという感じですね。

SGEにおいてのPRデザイン室の役割についてご説明します。大きく2つあって、1つは制作物のクオリティを上げていく、底上げするということ。もう1つはカルチャーを組織に浸透させることです。

まず制作物のクオリティを上げるというところからご説明させていただきます。はじめに行ったのが、組織のロゴをリニューアルすることでした。先ほどから出ているこのロゴです。

制作する上で気をつけていたことは、新しいロゴになったことで「おしゃれになりました」「昔のロゴよりもおしゃれなロゴに作り直しました」というコミュニケーションを、組織のメンバーになるべくしないように、別のかたちできちんとクリエイティブに向き合うスタンスをなるべく伝えようと思って、いろいろメッセージづくりをしました。

これはなんでかというと、ゲームを主に作っている部署なので、各会社でいろんなチームがいろんな価値観で、自分たちが作っているものが「かっこいい」「おしゃれ」であると思って、いろんなタイトルが制作されているという現状があります。

ものづくり組織にはいろんな価値観があるので、そこを強要するというか、「これがおしゃれなので受け入れるべきだ」というようなコミュニケーションではなく、別のかたちで「これがなぜいいのか」といいますか、クリエイティブというものを今後どう捉えていくべきなのかを伝えていきました。

実際に作ったのが、このロゴのガイドラインです。

社内でしか使わないロゴですが、ことあるごとにいろんな部署でSGEのロゴが欲しいというときには、ロゴのデータと一緒に例えばこういうガイドランも一緒に渡していくんですね。

社内でしか使われないロゴですが、「ガイドラインがあって、きちんとした使い方をしてもらわないと困ります」みたいなことを記載していることで、邪険にできなくなるというか。ロゴ1つ取っても、きちんとした使われ方、クリエイティビティを感じていきながら使ってくださいねという思いで、我々は社内のものも作っています。そしてこのスタンスを明確にしました。

これは表彰のトロフィーです。

こういう既成のもの、成り合いで作っていたものなども、きちんと特注で仕様書を切って制作しました。

簡単にいうと、今まで作っていなかったものをきちんと作ることで、我々はビジュアルとしてのブランディングの底上げをこれから図っていくのだということを全体に訴求した、啓蒙していったという感じですね。

「自分たちの組織は、自分たちで作る」という精神

もう1つは、カルチャーを組織に浸透させるという方です。もともと私たちの組織は、「自分たちの組織は、自分たちで作る」というカルチャーがあります。これは「当事者意識をもって行動しましょう」という意味でもあります。当事者意識を持つというのは、わりとSGEの中では組織の成長や成果につながる1番の方法であるということになっています。

当事者意識を持つということを、我々PRデザイン室は組織にどんどん浸透させなければいけないので、それに関する1番簡単なアウトプットは当事者に出てもらうことなんですね。

このポスターは一体何かというと、ただの大掃除のポスターです。ただの掃除なんですけど、ただ掃除するだけだとおもしろくないので、各社でどれだけきれいになったかを競い合いましょうという施策にしました。それを、各社の掃除の代表というか責任者に出てきてもらってポスターの演者になってもらうと。

ここでのポイントは、常に人とセットでデザインしていくこと。社内で1番多い制作依頼の内容というのは、ロゴとポスターのセットがけっこう多いです。とにかくインパクトを出したいと。今まで貼られているものよりも、インパクトのあるものにしてほしいみたいに言われるケースが多い。本当にとにかくインパクトを出してほしいと言われます。

あと、おしゃれなだけのデザインだとあんまりウケないですね。要は、おしゃれかどうかの美的センスを知りたいわけではないということだと思うんです。どんな施策で、どんな気持ちでこれに取り組むべきなのかということが明確にわかっているデザインのほうが意外とおもしろく、注目されたり浸透しやすい傾向があります。

その結果、世の中に流通しているものよりも、けっこうアクの強いというか、クセの強いアウトプットが多い傾向にあります。だいぶ濃いめのダシが効いているアウトプットに、だんだんなってきてるんじゃないかなと思っています。

当事者が体を張って参加することのメリット

(スライドを指して)これは、新規タイトルを3社間で、3本の矢に例えてナレッジを共有しながら作っていきましょうという意味を込めたポスターですね。今出ている人たちは各社の新規タイトルのプロデューサーです。プロデューサーが自分たちで責任を持ってこのミッションをやり遂げようということで、出てもらっています。

ここに参加してもらっている、各メンバーはとくにモデルでもないし、俳優さんとかでもないので、たいていコスプレをさせたりすることで、ミッションがどういう役割なのかというのを視覚的に説明する傾向がけっこうあります。

このポスターは逆に、新規タイトルではなくて、運用タイトルを大晦日から正月までのお客様がよくログインされるタイミングで、どう安定的でお客様に満足してもらえるサービスをずっとやっていくかということを、これもまた競い合う。紅組、白組に担当する子会社が分かれて参加していくという施策のポスターです。このときは紅組の会社は紅組を上に、白組の会社は白組を上に、オフィスに貼ってくださいというかたちで制作しました。

これが次の年になると、もうタイトルもそうで、もはや社外の方にどう説明していいかわからないような世界観に突入してきてました(笑)。

(会場笑)

当事者が体を張ってこうやっていくことによるメリットというのは、まずそもそも参加する人の当事者意識がすごくアップする。あと誰が責任者かすぐわかるということですね。

先ほどの掃除のポスターに関しても、誰が各社の掃除の責任者なのかというのがすぐわかるので、実際に掃除のときにも運用しやすく、実際にやりやすかったりする面もあるんじゃないかと。

あとはビジュアル化することで、まじめな施策なのか、ノリノリで参加してもらうような楽しい施策なのかみたいなものだったり、責任者の人柄みたいなものをどう読み取っていくかみたいなことも伝わりやすいんじゃないかなと思います。

子会社の社長の経営層になると、より参加してもらうハードルがどんどん高くなってきます。(スライドを指して)これはスローガンポスターで、ライオンにさせられたりとか、トラにさせられたりとか、最近だと原始人になったりとかしてもらってます。

社長という職務も全体の中での役割の1つであって、その中ではこうやって「体を張ってやっていくことは普通である」というのが会社のカルチャーであるので、意外と積極的に参加してくれます。

言葉では表現しにくいことをビジュアルで伝える

次のポイントになります。一言でまとめづらいメッセージをうまくビジュアルで表現できたりするんじゃないかというところ。毎回、半期ごとにスローガンを掲げて、その目標で全体でがんばっていこうというカルチャーがあります。

あるときのスローガンに「地力」がありました。これは副社長が考えたのですが、要約するところは、各々が各々の持ち場で底力をつけてこの半期がんばっていきましょうみたいな、わりと概念的な話だと思います。

また別に、SGEのキーワードで出てくる個人・チーム・プロダクトという3つの単位と、地力という今回のキーワードを足してポスターで啓蒙していこうとしました。例えば体を鍛えている社員に参加してもらって、個人の地力のときに、個人、SGEのプレーヤーとしてどういうことが求められていくのかみたいなことをキーワードで書き出しています。

チームの地力に関しては、チームワークが取れていると全社で評判のチームでどんなことをやっているのかという、みんなが見習うべきキーワードをまたここで出してみたりします。

プロダクトに関しては、体を張るとかガテン系とか、力技と言うんですかね。

マッチョな地力の出し方ではなくて、勤勉さであるとか知識を吸収するとか、もうちょっと座学的な地力の出し方もあるんじゃないかみたいな話から、マーケティング担当になぜか二宮金次郎の格好をさせています。いろんな知識を得ながらも、歩きながら常にスマホをいじって新しいものに目を向けているみたいなポスターを作ったりしました。

このときの地力というキーワード自体が会話に織り交ぜやすいのもあり、比較的このキーワード、スローガンは社内で浸透して、ふだんの会話とかメールとかでも目にするようになったりしました。ちなみに作り方もけっこう地力が必要で、とくにスタジオとかで撮影してるわけではなくて、オフィスの椅子に立たせて、ちまちまと合成して作っています。