「採用・育成・活性化」を掲げる
藤田晋氏:(サイバーエージェントの)転機となった合宿以来、社内では「我々に重要なのは人材の採用・育成・活性化だ」と、「この3つ(が大事)だ」と言っています。
これも原体験がありまして、僕はインテリジェンスという会社に新卒で入ったんですが、社員数80人の会社が新卒を40人採用するように、そのころは人材紹介業と人材派遣業が急速に成長していたんです。
これは中に入ってよくわかったんですけど、ビジネスモデルはほかの人材派遣会社とまったく一緒だったんですよね。値段の差別化もできないし、むしろちょっと高いようなものだった。
なんでインテリジェンスだけが急成長したかと言うと、会社内の社員のやる気が違うんです。あとは採用している人材のレベルが高い。活性化させるのが非常にうまくて、会社内でも競争してやる気にさせる。要は採用・育成・活性化に強みがあることは、それ自体が強い競争力なんだというのを就職した会社で学びました。
なので、我々の会社でも「採用・育成・活性化」ということを言い始めました。これは社内でも非常に強く浸透しているので、採用・育成・活性化には惜しみなくお金を使うし、アイデアもどんどん採用して、いろんなものを試していく考え方がベースにあります。
とくに我々は大きな設備産業ではないので、インターネットがインフラとして普及したうえで、その中で広告をやったり、エンターテインメントのコンテンツを流したり、メディアを作ったりしています。
結局、競争力・技術力・アイデア・マーケティング力などは、ほとんどが人に付随するものなので、我々は人材の能力開発を非常に重要なテーマにしています。
会社のコアは、かつての新卒人材が担う
我々はまだたったの21年ですので、毎年新卒を採っているんですが、今では過半数が新卒で入った社員になっています。中途入社でも活躍してくれる人はものすごくたくさんいますけれど、やっぱり会社のコアになっている文化というか支えている人は、新卒で採用して自ら育成してきた人たちです。
社員数が約5,000人で勤続年数5年というのは短く感じるかもしれないですけど、これは先ほどの売上と一緒で右肩上がりに人が増え、採用数を増やしているので。平均するとこのくらいですが、長く勤務している社員も多く、決して離職率は高くないです。
離職率はだいたい8パーセントくらいが健全であると言われているらしいんですが、辞めなさすぎるのも不健全というか、会社に合わない人が辞められないというか。もちろん辞めすぎるのはブラック企業みたいな可能性もあるのでよくないのですが、サイバーエージェントはちょうど健全くらいな感じです。
毎年200人ほど採用していまして、これは5000人に対して200ですから、先ほどの(社員)80人で(新卒)40人採ったところよりはずいぶん比率は低く感じますけれども。やっぱり一人ひとりの名前とパーソナリティをちゃんと覚えるくらいしっかり見ていくという考え方があるので。
本当は150人くらいかなと思うんですけど、200人がMAXかな。それ以上採っちゃうと、もう誰がいるかわからなくなるという現象が起きるので、今は毎年200人ずつ採っています。
これは調査機関が出したのですが、現役社員にアンケートした20代の成長環境というものでダントツの結果が出ていました。
悲しいけれど、上がいないほうがいい
実際にどういうことをやっているのか、これから施策を具体的にご紹介していきます。
まずはこれ、YMCAというのは「ヤングマンサイバーエージェント」という……。
(会場笑)
普通の会社は若手というと30代くらいまでだと思うんですけど、サイバーエージェントだと20代が全社員の半分を占めているということもあり、20代の青年会議所みたいなイメージで作りました。社内の中のリーダークラスの人がYMCAの会長になる感じです。30歳になったら卒業するんですけど、20代だけで中を盛り上げていきます。
これは僕の中で気づきがあったからなんです。政治・経済・グローバルなどのテーマで次のリーダーを育成するG1サミットというイベントがあるんですね。
そこに若い経営者とかも参加するんですけど、ある日「G1U-40」というものができたんです。ちょうど僕が40歳になったときにアンダー40みたいなものができたので、なんか感じが悪いなと思ったんですけど(笑)。
ある日、そのG1サミットに招かれて、講演しに行ったんです。そこには次世代のリーダーと言われる政治家、小泉進次郎さんみたいな政治家やや若い経営者たちがいるんですけど、みんな目が生き生きしているんですね。
そこでは「自分はこの社会で、こういう社会問題をこう解決していきたいんだ!」「グローバリゼーションでこういうところが日本の課題だ!」と、自分の意見をハキハキぶつけ合っているんです。
なぜこれが起きているかと言うと、要は上の人がいないからなんですよね。もっと上の先輩がいると「青いな」という目で見られたり、否定されたりすると恥ずかしいから、意見を言えなかったりします。もちろん実績や経験が足りないと言えないんですけど、若者だけ集めるとこんなに議論が盛り上がるのかということを発見しまして。
アンダー40・アンダー30みたいなことをうちの会社ではどんどん取り入れているんですけど、だいたい当たりますね。「要は上がいないほうがいいんだね」というのが、悲しいけれどよくわかりました(笑)。
同世代だけで堂々と意見を言える環境をつくった
「CA24」もよくある幹部育成です。幹部育成は部長や課長とかになってからやるものですけど、これは入社4年目くらいから30歳前後の人たちを24人選抜して次世代の経営者育成として始めています。
これに選ばれたことをすごく誇りに思ってまたモチベーションも上がるし、選ばれなかった人は悔しいという思いもある。そういうことがあったりします。
「Battle Conference」、これもU30と書いてありますが、これは技術者向けのアンダー30のイベントです。技術者も先ほどと同じで、上の人がいないと自分の技術をすごくドヤる……って言うのかな。若者用語で(笑)。そんな感じでみんなに伝えようとするんですけど、これもやっぱり上の人がいると難しい。