15歳で農業をやっている人は日本全国で約10人

小泉進次郎氏(以下、小泉):もう1つ、今日みなさんと一緒に考えたいなぁと思うのは、最近言われている「生涯現役」という言葉です。確か読売新聞の特集でも「生涯現役」があります。じゃあ、「現役」は何歳から何歳まででしょうか?

現役というと必ず使われるのは、生産年齢人口です。生産年齢人口は何歳から何歳までかというと、15歳から64歳までのことを言います。(スライドを指して)この下の図は、生涯推計でよく使われるものです。

私は毎回疑問だったんです。15歳から64歳。いわゆる現役世代ですが、15歳で働いている人はどれくらいいるでしょうか? 64歳で働くのをやめている人も、本当に大多数でしょうか? となると、私はこの区切り方に根本的な問いを持っていて。

農林部会長をやっていた時に「よし、これは調べてもらおう」と思って、「15歳で農業をやっている人は何人いますか?」ということを、農水省で調べてもらったんです。そうしたら、約10人でした。

(会場笑)

日本全国の中でです。64歳で本当に働くのをやめている人はたくさんいるだろうか? と考えたら、「人生100年時代に、現役が15歳から64歳のままで本当にいいんですか?」と疑問に思いませんか? この定義を変えずに将来を考えるとどうなるか。今から約30年後の2045年には、この現役世代が約半減するんですよ。

人口減少を嘆くよりも、時代に合わせた発想が必要

(スライドを指して)これが1973年・2015年・2045年(の推移)で、この薄いグレーの棒グラフのところがまさにそれです。1973年から比べると、(生産年齢人口が)52パーセントのところまで16パーセント減ります。これが今の定義です。

私は、今自分の周りで見ていて、現役は何歳から何歳ぐらいまでかを考えたときに、仮に18歳から74歳と置いてみました。そうするとどういう景色になるのかを表したのが、(スライドを指して)この黒いほうです。そうすると、73年に69パーセントだったのが、2045年になっても3パーセントしか減らない。

これでなにが言いたいかというと、今の時代に合わせた考え方をすれば、景色が変わるんですよ。今から「生涯現役」「働く時代が長くなる」と言われた時には、こういう発想が必要なのではないかと思います。

人口は絶対に減りますから、「減る」と嘆くのではなく、減る中でどういう社会を作っていくかを考えることが、結果として人口減少を食い止める社会の動きになっていくと私は考えています。

そこで、この働き方も含めて、今は人生100年型の年金制度を作っていくことに取り組んでいます。そして、その紙を印刷し忘れるという……こういう大きなポカをやっちゃうんですね(笑)。

(会場笑)

年金受給開始年齢によって支給額が変わる

まずは、受給開始年齢の柔軟化をやっています。(スライドを指して)イメージとしてはこういうことです。こっちのほうがわかりやすいかな? 今日いらっしゃっているみなさんは現役世代の方が多いと見受けられるので、今の基本的な制度について、聞いてみたいんです。

年金をもらうのは60歳から70歳の間で、何歳からもらうかは自分で選べるということを知っている人、手を挙げてください。

(会場挙手)

半分もいないですよね。じゃあ、60歳でもらい始めると、65歳でもらうよりも30パーセント減額で支給をされて、70歳まで我慢をすると42パーセント増額で支給されることを知っている人。

(会場挙手)

さらに減りました。いったいなにが問題なのか。「これが知られていない」ということが問題なんです。(国は)毎年「ねんきん定期便」とか、年金関係書類をみなさんに届けていますが、なんと、この情報は書いてありません。

(会場笑)

これが問題なんです。だから私が部会長になってからは、まずこのねんきん定期便の見直しから、すぐに動かせるところ・できるところからやろうと取り組んでいます。

このねんきん定期便の見直しは、ただの書類の見直しではなくて、人生100年時代に選択できる社会保障への第一歩だという思いでやっています。

70歳から年金を受け取る人が1パーセントである理由

この見直しには3つポイントがあります。1つ目は文字数を半分に減らして、グラフを使い、もっと見やすくすることです。2つ目は選択肢をわかりやすく示すこと。これでよく指摘をされるのが、今、70歳から年金を受け取る人は、約1パーセントなんですね。

私がこの話をしていくと、「いやいや、約1パーセントの人しか選んでいないんだから、そんなことをやったって微々たる影響しかないよ」と言われるんですよ。だけど私はそうではなく、知らせていないから1パーセントなんだと思っているんです。

だから、まず「その選択肢がありますよ」「60歳は3割カット、70歳だと42パーセントアップ」という選択肢を、わかりやすく提示することをやります。

この記事は無料会員登録で続きをお読み頂けます

既に会員登録がお済みの方はログインして下さい。

登録することで、本サービスにおける利用規約プライバシーポリシーに同意するものとします。

SNSで会員登録

メールアドレスで会員登録

パスワードは6文字以上の文字列である必要があります。