初対面だけど、お互い昔から知っている人のような感覚に

金亨哲氏(以下、金):それではトークセッションを始めさせていただきます。先にお二人のストーリーをおうかがいした際から、なんとなく「このテーマでお話ししていただくといいのかな?」ということについて整理したので投げかけさせていただきます。

まずは僕が聞いてみたいことからなんですけども、雅子さんと島津さん、お互いのご印象について教えていただけすか?

島津清彦氏(以下、島津):初対面の印象ですが、一言で言うと、初めて会った気がしないというか。すごく似ている気がするんですね。言葉ではうまく表現できないですけど、なんというか、本当に素というか。

武田雅子氏(以下、武田):不思議ワールドの話になってしまうかもしれないですけど、前世でも会っているみたいですよね。前から知っている家族とか、親戚のおにいさんみたいな。

:そっちのワールド入ってしまって大丈夫ですかね(笑)。

武田:そんな印象ですよね。

島津:そうですね。

武田:島津さんがあまりにも気さく過ぎて。今日も会場にいらしていますが、紹介していただいた紀伊さんからは「スターツピタットハウスの社長さんですよ」って言われていて、実際に名刺交換もしているんですよ。でも、目の前に本人がいるなかで、名刺ってジロジロ見られないじゃないですか。その日は楽しく飲んで、帰りの電車の中で、もう1回名刺入れをそーっと出して、「本当に社長さんだよね」と確認したのを今でも覚えているぐらいで。でも、すごくオープンで、最初に飲んだお店も有楽町のガード下のお店だったし。半分外みたいなところでしたね。

島津:ビールケースに座って初めて名刺交換してという感じでしたからね(笑)

武田:まさか大企業の社長がああいうところで飲んでいるとは、私も思わなかったので。本当に帰りにそーっと名刺を出して、不思議な人だったなと思いながら、帰ったんですね。

島津:はい(笑)。ピタットハウスって、女性が6割とか7割程度とすごく多いんです。女性のリーダーのロールモデルが当時はまだまだ少なかったので、確か初めて会った時に社内での講演会の講師としてオファーしたというね(笑)。

武田:で、受けちゃったという(笑)。

島津:「今度ぜひお願いします」みたいな。そんなことがありましたね。

年齢やキャリアに関係なく、持てるものはすべて共有する

:ありがとうございます。次のスライドをお願いしていいですかね。お二人とも20代、30代の時のうちから、年上の部下がいらっしゃるような環境にいらっしゃいましたよね。そんな年上の部下がいるなかでのチームづくりというテーマで、お二人にお話をうかがいたいなと思っております。

武田:最初は本当にわからなくて、私は本当に子どもだったので。どうしていいかわからず、毎日家に帰って泣いていたんですよ。もう本当に「今日辞める!」って、毎日思っていたので、当時付き合っていた彼氏が「もうそんなに嫌だったら辞めれば?」って言うぐらい毎日落ち込んでました。

ただ、どうにかしなくちゃいけないと。人とどう向き合うかというよりも、自分がどういうセゾンカウンターを作っていきたいかを考えるようにしました。当時は吉祥寺のパルコのセゾンカウンターにいたのですが、ファッションビルの中で、どういう存在のセゾンカウンターになっていたいのか、テナントさんのお役にどうすれば立てるのか。そういう話をメンバーにし始めたんです。

実際にパルコさんから期待されている業務だったり、数字だったりといろいろなことがありますから、そういうことをメンバーに伝え始めたんですね。そうすると、年上の方々は当然ご経験があるしキャリアもおありですから、逆に知恵を出してくれたりしましたね。途中からはもう上下とか考えてもないですし、お互いに持っている情報、持っている知恵、キャリアを共有するようになりましたね。

ゴールに近づくための本当に仲間として考えていたので、いろんな年齢の方のいらっしゃるチームでしたけど、あまり気にしたことはないですね。ただ、向かい合う時のリスペクト感が大事というか、この人はどんなことが得意な方なんだろうといったことは、いつも意識して向かい合ってます。

なにがあっても年上には敬語を使う

島津:僕が勤めていたスターツは、けっこう新卒中心の会社なんですね。そうするときれいなピラミッドというか、年齢的にも比較的指示というか統制が効きやすいんです。41〜42歳の時にビル会社の社長となった時は逆で、自分より年上の社員の方が多かったかもしれません。

役員でいうと、私が1番年下か、下から2番目ぐらい。言葉は悪いですけど、なかなか言ってもいうことを聞いてくれないというか、変な話、ミーティングに行くので明日の何時と言っておいたのに平気ですっぽかされるとか。若かったので舐められてたのかわかりませんけども「うーん、困った」と思った時に、僕の中では、その後いろいろ苦労した中で、やり方、スタイルを決めました。

とにかく絶対に敬語を使うということです。敬意を持ったうえで、強い言い方をしなければならないときも必ず敬語で言います。「これやっていただかないと困りますよ(語気強め)」と。こっちも絶対逃げないということですね。あと、本当にルール守らなかったり言うことを聞いてくれなかったりしたときも、「本当にこれやっていただかないと困ります(怒)」みたいな感じで言葉は丁寧だけども語気は強める、みたいな。こちらも覚悟の上で向き合っていました。

それと私も今は53歳なんですけど、このくらいの年齢になると、自分のやってきたことを若い人に伝えていきたい、遺していきたいという本能がありますよね、人間って本能をちゃんと捉えて、部下とか後世の育成にあなたの持っている専門性を伝えていってくださいってお願いすると、シニア層ってみんなやる気スイッチが入るんですね。「後輩の育成をお願いします」と言われることでだんだんやる気が出てくると。バーッっと変わっていく瞬間がすごく印象的ですね。

住職に初めて会ったその場で弟子入りを志願

:ありがとうございます。では次のスライドに行ってみましょうか。さきほど雅子さんの話でも、最初は泣いてばかりだったという話がありました。その中でどうやって自分と向き合っていたのかという話にも繋がるかもしれないですけど、禅やマインドフルネスとの出会いについておうかがいしてみてもいいでしょうか。

島津:先ほどもお話させていただいたとおり、6年前に青森の寺で得度をさせていただきまして。禅の清彦で「禅清」という僧名を授かっています。6年前にピタットハウスの社長を「エイ!」って辞めたんですが、そのきっかけは、自宅が新浦安にいるときに東日本大震災で被災したことです。1ヶ月半ぐらい上下水道がまったくだめで、仕事が終わったら家族で鍋窯もって、洗濯物持ってシャワーと洗い物とうのを、1ヶ月半ぐらい続けたんですね。

でも、会社に行くと都心部の復旧は早いわけです。どんどん指示を出して、会社のオペレーションをしていかないといけない中で、家の復旧はぜんぜん進まない。会社では社長として陣頭指揮をとっているという中で、どんどんギャップを感じていきました。人としてこれでいいのかなということに耐えられなくなってきたんですね。それは父親として、家族として、地域の1人として。

それで働き方や生き方を変えたくて思いきって会社を辞めて独立したんです。経営も最後は「人」に尽きると思っていたので、人材育成とか組織開発についてのコンサルで独立をして、その時に自分のマネジメントスタイルを棚卸ししたさっきご紹介した8ステップを作りました。いろいろ会社を回っていた時に、「これってすごく禅的だね」とか、「あなたの考え方って禅的だね」ということを言われて。ある時に青森の住職をご紹介していただいて、それこそピタットハウスの社長を辞めてまだ2ヶ月ぐらいだったんですね。

住職とはカフェでお会いしたのですが、今でも忘れませんね。会った瞬間に出家というか、得度の弟子入りを「お願いします!」みたいなことをしたわけです。当然住職(師匠)はびっくりしますよね。「なんだ君は?」みたいな感じで。でも、さすがに目を見てふっと思ったんでしょうね。「こいつは本気だ」と。そこから座禅に行くようになり、禅の本を読むようになりました。スティーブ・ジョブズとか稲盛和夫さんとか、いろんな方が禅に深く傾倒されていますよね。そこから本当に毎日毎日座禅をしていて、毎日毎日禅の本を読んで。ですから、なんとなく運命的な出会いみたいな感じでしたね。

メンバーが自分に優しくなったことで、その効果を実感した

武田:私は島津さんみたいにドラマチックではなくて。なんとなく、うっすら世の中で「瞑想っていいよ」「仕事に効くよ」「ストレス軽減の効果があるらしいよ」みたいなところから入りました。やっぱり人生ってストレスフルじゃないですか。実際に自分でも座り始めて、それから毎朝座るようになった時に面白かったのが、・・・メンバーがやたら私に優しいんですよ。なんでかわからなかったんですが。

一方で、これはクレディセゾンの時なのですが、当時のメンバーが「武田さん、最近やたらみんなにありがとうって言いますよね?」って言ってきたんですね。ぜんぜん意識してないんですけど、自分の中で感度かなにかに変化があって、いろんなことに「ありがとう」ってどうやら前よりも言ってたらしいです。「ありがとう」って言ってくるから、そのお返しとしてか、なんとなくみんなが私に優しくなってたんですね。

こうした良い循環が生まれたり、寝付きがすごくよくなったりと、自分でも体感できる良いことがいっぱいあったんです。もともと私はすごい短気で、小さい時はキレキャラに近いような少女だったんですね。でもマインドフルネスを知って座る習慣を持つようになってから、自分で気づけるようになったんですよ。「ああ、今沸点上ってきているな。まずいな」って。自分をちょっと客観視できるようになって。そうすると、当然沸点にいく前に自分でもコントロールができるようになりましたし、さっき人の鎧が気になり始めたって言いましたけど、周りの方たちの今沸点がここまで来ているな、みたいなことに気づけるようになるんです。

そういう周りの人たちの気持ちの変化みたいなものに自分で気が付くんですよ。「今こういう状態なのね、xxさんは」というように。これって自分にとってすごくメリットになりますよね。本当に仕事に効くことが多かったんです。これは自分だけじゃもったいなというので、会社でやってみようと。