21世紀の働き方と規制について議論

吉田浩一郎氏(以下、吉田):みなさん、こんにちは。先ほど自己紹介が抜けていたのですが、私自身がシェアリングエコノミー協会の理事をさせていただいていますので、その関係で私がモデレーターを務めさせていただきます。

今日はSHARE SUMMITということで、まず1回目のセッションになります。北海道の件や大阪の空港の件などございます(注:2018年9月に関西国際空港で台風被害、北海道の胆振地方で地震)が、東京からまた元気にできるように、精一杯やってまいりますので、よろしくお願いします。ではさっそく小柴さんから自己紹介を含めてお話をお願いします。

小柴美保氏(以下、小柴):こんにちは。小柴と申します。私は、Mirai Institute株式会社という、一応インデペンデントシンクタンクと呼んでいるんですけども、そこで「みどり荘」というシェアオフィスの運営をやっております。

みどり荘ですが、中目黒にある(植物の)緑に覆われた建物をはじめとして、2011年からやっております。多くはクリエイターやフリーランス、独立したての人、小さな始めたばかりの会社、海外から来た人、そういう仲間たちが集まって働いている場所を中に作っています。また表参道のCOMMUNE246では、遊休地をうまく使って、「みどり荘2 」というのをやっております。

そして(会場の)GRIDビルの5階にもあります。ここは一昨年の秋から始めておりまして、だいたい100人前後の会員メンバーがいます。いろんな国の人が1つの場所に集まってコミュニティを作りながら働いている場所を運営しております。私たちは、みどり荘で「働く状況をいかに作っていくか」というのをテーマに、日々やっております。よろしくお願いいたします。

吉田:よろしくお願いします。

(会場拍手)

WeWorkが持つ、コミュニティ機能

吉田:続いて、またグローバルのほうですけど、今度また「働くスペース」ということで、小柴さんと高橋さんの対比にもなると思いますが、両方おうかがいしていきます。

高橋正巳氏(以下、高橋):みなさん、こんにちは。WeWorkの高橋と申します。私、前職ではけっこう真剣にシェアリングエコノミーに関わる仕事をしておりましたので、久しぶりにこういう場に戻ってきたなという感じです。

吉田:(高橋氏を指して)元Uber Japanの社長です。

高橋:だいぶ事業が変わっていて、今はWeWorkというニューヨーク発のコミュニティ型ワークステーションの日本事業に携わっています。今年の2月に日本で事業を開始しまして、はじめは六本木一丁目のアークヒルズサウスでオープンしました。2月から先月まで、合わせて6拠点オープンしております。

個人の方から大企業までさまざまな業種をまたいで、日系・外資系の企業が同じ場所に集まって、そのコミュニティを作る。そういった事業を展開しております。我々のミッションとしては、そこで働く一人ひとりの方が、生きがいややりがいといったものを感じながら、お互いに意見をぶつけあったり、新しい情報を得たり、いろんな刺激を受けながら仕事をする。そういった環境を提供しております。

今、全世界で事業を展開しているんですが、世界中に約300近い拠点がありまして、今25万人以上のメンバーがWeWorkのメンバーになっています。また、世界のどこかの拠点でWeWorkのメンバーになっていれば、例えば出張や旅行でも、Wi-Fiがあるカフェを探したりといったことをせずに、WeWorkのアプリからポッと予約すると、世界中どこへ行ってもそこの拠点のワークスペースやミーティングルームが使えるという状況になっています。

その中には、個人だけではなく、いわゆるエンタープライズといわれる大企業もたくさん入っております。そういう企業と個人が接点を持つ。そのような機会が生まれてきています。

そのコミュニティの促進をどのように行っているのかには、いくつか(方法が)あるんですが、その1つに、各拠点にコミュニティマネージャー、コミュニティチームというのがいまして。そのメンバーたちがそこを実際に使っている企業や個人と日々接点を持って、どういったニーズがあるのかを吸い上げて、さまざまなイベントなどを開催しております。

この背景に大きくあるのが新しい働き方なのかなと。これは世界的な動きなんですが、とくにミレニアル世代の台頭があります。彼らはSNSを当たり前として育ってきていますので、よりオープンな環境、より人と接点を持つ、よりコネクションをつなげる・強くする、そういったものを求めています。なので、そういった世代にも適用しているような環境を提供しております。

吉田:ありがとうございます。

(会場拍手)

住友生命保険「Vitality」の可能性

吉田:続いては、また切り口が違い、生命保険からそういう個人をどのように支援しているかということで、堀さんに自己紹介をお願いします。

堀竜雄氏(以下、堀):みなさん、こんにちは。住友生命保険の堀と申します。今ご紹介いただきましたけれども、「なんで保険会社が?」と思われるかもしれません。まさに私どもとしましては、仕事もそうですけど、シェアワークのみなさまに健康で豊かなご自身の生活を、しっかりと「保険」というかたちでお支えしたい、サポートしたい。いわゆる福利厚生的なサポートをさせていただきたいということで参加をさせていただいております。

弊社はいわゆる生命保険会社ですので、例えば亡くなったり、病気をされたり、お怪我をされたりしたときのリスクに備える補償を提供するということをずっと生業としてきたんですが、直近においては大きく方向性を転換しています。もちろん補償は同じなんですが、非常に少子高齢化が進んで日本の平均寿命がどんどん伸びていくなかで、シェアワークのみなさまに限らず、必ずしも健康寿命が延びているわけではないというところがあります。

なにかあったときの補償ももちろんあるんですが、なにかが起きないようにリスクを減らしていくために、お客さまの健康増進をサポートする取り組みにより力を入れていきたいということで、最近スタートしました。やはり「身体が資本」というところがおありだと思いますので、いわゆる健康増進型の保険でシェアワークのみなさまのお役に立てないかな、と。

それは南アフリカのDiscoveryという総合金融会社が20年間かけて育ててきた「Vitality」という保険で、日本では唯一住友生命が直近7月の終わりからお客さまにお届けできるということでスタートをしています。これが非常におもしろい内容です。

もちろん保険ですから補償はあるんですけれども……例えばご加入いただいたお客さまが健康診断を受けられたり、あるいは1日8,000歩、1万歩、1万2,000歩……と歩くと、歩数に応じてポイントがつくようなかたちになっています。またはマラソン大会に出るとか、がんの予防検診を受けるといったことをお客さまが意識をすることでもポイントがつき、そのポイントに応じて提携した11の企業の割引を受けられます。

楽しみながら健康に取り組み、万が一のことがあったら補償があるという「Vitality」をスタートいたしますので、ぜひシェアワークのみなさまに健康を意識していただきながら、リスクにも備えていただくというかたちでお役に立てないかということで、今日はまいりました。よろしくお願いいたします。

吉田:よろしくお願いします。

(会場拍手)

経産省で「働き方改革」を推進

吉田:続きまして、伊藤さん、よろしくお願いします。

伊藤禎則氏(以下、伊藤):あらためまして、経済産業省の伊藤です。私は2年半、政府で「働き方改革」に深く関わってまいりました。「働き方改革」という言葉を毎日のように聞かれると思うんですけども、「『働き方改革』ってなんだっけ?」ということをここで考えたいと思うんです。

どうしても「働き方改革」というと、労働時間・長時間残業の問題、ここにフォーカスが当たると思うんですね。日本で1947年に「労働基準法」ができてから、労使が合意をすれば、つまり組合がOKすれば、残業時間は無制限に青天井に設定することが可能でした。

これが変わります。もういよいよ上限を規制(する)ということで労働時間にキャップがかかる。でも、これは労働時間を減らすことが別に目的ではないんだと思うんですね。

ボーリングで言うと、それはファーストピンかもしれないが、ストライクではない。ストライクとは、1つには生産性を上げること。でも、これもまた少し違っていて、生産性のために仕事をする人はいないんですね。

自分もそうですが、働く個人の立場からすると、やっぱりモチベーションだったり働く喜びだったりエンゲージメントだったり。「それを支えるのは何か?」ということをずっと突き詰めて考えてきたんですけど、やっぱり「選択肢」だと思っています。

今、本当に、働く人のニーズとか価値観が多様化しています。もちろん出産・育児、そして昨今はとくに介護の問題。「一億総活躍」という言葉が踊っていますけれども、やっぱり「一億総制約」。ある意味では、みんななにかしらの制約を抱えながらそれぞれ働くと。そういうなかで「働き方」も多様化しなければいけない。

テレワーク、フリーランスという働き方をしてみたい。兼業・副業したい。限定正社員。いろんな働き方が出てきていると思います。だけど、やっぱり日本では、1社専業というかたちで長く働くことがデフォルトになっています。これはいろんな国の制度、そして企業の慣行もそうです。

2016年から、まさに吉田社長さんたちとご相談をしながらなにをしてきたかと言うと、もう徹底的にいろんな制度で、働き方に中立的な制度をどうやって作っていったらいいのか、あるいはフリーランスという働き方、兼業・副業、そういったことを選ぼうとしたときに、なにが問題なのか、なにがハードルなのかということをある意味で浮き彫りにしてきました。

2018年3月に「モデル就業規則」を改定

伊藤:フリーランスの研究会、兼業・副業の研究会、それが1つの大きなスタートとなって、霞が関全般、厚生労働省も動きました。公正取引委員会も動きました。今、政府をあげて働き方ということに正面から向き合っています。その一例として、兼業と副業。日本の大企業ではまだ兼業を禁止している企業が多いんです。それはどういうふうに禁止しているかというと、就業規則・雇用契約で禁止しているんです。

ところが、実は国で「モデル就業規則」というのを作っていて、そこにご丁寧に書いてあるんですね。「労働者は、許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」。これをほとんどの企業が踏襲しているから、兼業禁止なんです。実は今年の3月にこれの改定をしまして、すでに「 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」とされています。表現としては本当にちょっとした違いです。でも、原則と例外がまるで逆になりました。

もちろんそれぞれの企業で、兼業・副業を認める。さらに言えば、働く人が実際に兼業・副業するかどうかは、個人の自由、企業の自由です。

吉田:これは意外に知られていないんじゃないですか。3月ですね?

伊藤:そうなんです。これは3月にもうすでに変わっているんです。したがって、よく「兼業していいの? しちゃいけないの?」というような議論があるんですけど、実はそのフェーズはもう終わっていて、あとはむしろその企業で「兼業禁止」と言ってもいいと思ます。

では、その会社の経営リーダーが、どういうかたちでその社員なり働く人の成長を確保していくのかということの説明責任を負うようになってきた。こういう変化が今生じています。

経済産業省では、「次官・若手プロジェクト」というちょっと話題になったレポートがありました。ご存じの方もいらっしゃるかもしれません。私の後輩たちがいろんなことを言っていたんですが、訴えていたことの1つは、「昭和の人生すごろく」というような働き方や結婚、いろいろなロールモデルがあったと思うんですが、(それが)もう変わってきているということなんです。

キャリア観で言えば「キャリア論」ですごく重要な概念としてのキャリアラダー、はしごですよね。あるいはすごろくでもいいと思います。サイコロを振って、コマを1つ2つ進めていって、最後はアガリという労働のモデル。ある意味でのキャリア観というのは、私もそうなんですけれども、けっこう多くの方に根強く染み付いていると思います。

でも急速に変わってきているのは、考え方によっては『Pokémon GO』と書いているんですが、いろんなステージに出かけていって自分の持ち札を増やすこと。その持ち札には、経験もあるし、スキルもあるし、人脈もある。『Pokémon GO』なので、なんでもかんでもいいということではたぶんなくて、自分の専門性の核ということだと思いますが、「自分なりのレアカードをどう探すか?」「その専門性の核を補完するような持ち札をどう増やしていくか?」。今、こういうキャリア観に変わってきているんだと思います。

今日はSHARE SUMMITにお呼びいただいて本当にうれしいんですが、やはりシェアリングエコノミーの本質が、眠っている資産をマネタイズして有効に活用することだとすれば、それは私どもからすると、日本で眠っている最大の資産は人材だと思っています。

そういう意味では、このシェアリングエコノミーという人材、兼業・副業もフリーランスもそうです。いろんな働き方ができるということが、このシェアリングエコノミーの一丁目一番地になってくるんじゃないか。そんな気がします。

吉田:なるほど。ありがとうございます。

(会場拍手)