ステップバイステップでニーズを掴む

辻庸介氏(以下、辻氏):ゼロイチというのは真っ暗闇の中を走ってる感があって、当時は本当に恐いなって思っていました。その後、たまたまいろんなことがあってサービスが徐々に浮遊しだしたんですけど、そういった経験を踏まえた上で、大事なのはこの4つかなと思っています。

まず、はじめに「小さくテストする」っていうのが大事だなと思っていまして。当時ぼくたちは、6ヶ月くらい頑張ってかけてエリアでリリースしましたがダメでした。

これをもっと小さく、ステップバイステップにすればよかったという仮説があるんですよね。例えば「ユーザーはお金の情報をシェアしたいはずだ」とか、「ユーザーにはこういうカスタマーペインがあって解消したいはずだ」とか。その仮説を1個ずつクリアするようなことをしていくべきだったなと思います。

今回声をかけていただいた(GMOの)相浦社長に、前回リブセンスの村上さんが来られたってお聞きしたんですよ。村上さんってサービス業の天才だと思うんですけど、その村上社長に相談したときに「ああ、なるほどな」と思ったことがあります。機能って作っちゃって出してしまうとわからないじゃないですか。だから機能を出す前に、例えば機能が10個あるとしたら、ひとつひとつをさらにもう10個に細かく分けて、1個ずつステップバイステップで作っていくと。

そうすると、ある方向で進めたものに対してのユーザーの反応を見ると「ちょっと違ったな」とか「これはダメだな」とかがわかるんですね。もともとの10のコストをかけてやって失敗したときだと取り返しつかないんですけど、1くらいだったらまだなんとかなるんですよね。だから、なるべく細かくつくるというのが大事だなと思います。

それで、村上さんはすごいなと思ったのが、新機能を作るときWebページの上のほうに、「◯◯の機能について」みたいなリンクを張るんですよ。5分もあればできると思うんですけど、それがどのぐらいクリックされるか、ユーザーがどれくらい興味を持つかを見るそうです。

リンクを踏んで飛んだところに普通だったら機能があるんですけど、初めの場合「ところでこういうことを考えているんですけど、どう思われますか?」とかって厚かましく聞くんですよ(笑)。

(会場笑)

そうやってニーズをつかんでやっていくと。これはちょっと極端な例だと思うんですけど、それがステップバイステップになっていくというのがすごく大事だなと。これが1点目でございます。

本当に話を聞くべきユーザーとはだれなのか

2個目は「妄想を持たずユーザーに聞く」。ものづくり、サービスづくりする上で大事だなと思います。

ぼくたちって、固定観念があったり自分たちのこれまでの経験があるので、「これはいけるはずだ」とか「こういうサービスがほしいはずだ」とか、思い込みで作っちゃうんですね。思い込みで作ったら、だいたい外れます。ぼくも結局、それでサービスを作っちゃって大失敗するんですけど。

とにかく「自分の意見が正しい」なんて思わずに、ユーザーに聞き続けるというのがとても大事だなと思います。「カスタマーに聞きに行く」「街に聞きに行く」「ユーザーに来てもらって使ってもらう」とか、それを謙虚にやることが本当に大事で。

3つ目は「じゃあそのユーザーって誰なんですか」っていうところなんですけど、コアユーザーの行動だけを見るってすごい大事だなと思っています。

(マネーフォワードの前身である)マネーブックのソーシャルの要素を削って、現在のマネーフォワードというサービスにしたんですが、当時はプレゼンさせていただいても、やっぱりほとんどの人がこわいとか、使わないとかおっしゃっていました。

ほとんどの人にそう言われると「これはダメなのかな」とか自信無くなったり、ベンチャーキャピタルの100人をまわってもほとんど断られました。そこで、あるとき気付いたのが、みんなを幸せにしようとしているんじゃないかと。みんなから「いいね」と言われるサービスは、逆に言うと、もう世の中に存在しているはずであると。

だから、みんながいいねと思うサービスを作ってもたぶんダメで。本当に一部の人が、「すごくいいね!」と言うサービスをまず作ってみようと。Facebookもよく考えると、ハーバード大学の一部の人から莫大な人気が出て、そこから広がっていったと思うんです。

僕たちがコアだと決めるターゲットユーザーを見て、その人がどう言うかだけを聞こうと決めました。こわいという人たちは、マネーフォワードのサービスを見て「ありえない」とか言うんですけど、そういう人たちってFacebookもTwitterもやってなかったり。それに関わるところだと、昔は「クレジットカード決済ってこわい」とか言っていたなとか、いろんなことを思って。

ユーザーと同じ目線になるトレーニング

そうして、ぼくらが使って欲しい人を決めようと思いました。もう1人でいいと思うんですよね。何人か置くとややこしくなるんで。”この人”が田中さんだったとしたら、田中さんの意見だけを聞く。その人の意見だけを聞いてつくるっていうのを決めまして、機能とかを絞り込んでいきました。

だいたいサービスをつくるときに、あの機能もほしい、この機能もほしいってみんな機能を作ればいいと思ってるんですけど、本当に必要な機能って1つか2つだと思ってまして。そのコアになる機能はなにかっていうのを決めるためにも、やっぱりコアユーザーの行動だけを見るのがすごい大事なんじゃないかなと思いますね。

これはある程度サービスの規模が大きくなってくると、さらに大事になってきて。いろんな価値観とか、こういうの欲しいとか、いろんな思いを持つ人が出てくるんで。そうなってきたら、いつもいる5人の意見だけを聞いて、この5人のために作ろうと決める。そうすると議論がすごいフォーカスして、あれもほしいこれもほしいっていうのがなくなるというのが経験上あります。

なので「コアユーザーの行動」だけを見ます。そうするとマーケットが小っちゃいからじゃないかとか、そういう話が出るんです。でも、マーケットが小さかろうが大きかろうが、ユーザーに突き刺さるサービスを作らないとその小さいマーケットにすら届かないので。そこはステップバイステップで整理してやっています。

4番目ですが、みなさんもサービスを作られている中で、「ユーザーと同じ目線になる」って結構難しいなと思ってまして。その練習をけっこうやっています。例えばAという機能を出しますと。100人のユーザーがいたら何パーセントが使うかを書いて、ぼくが10パーセントの人が使うと思ったら10パーセントと書くんですが、例えばそこに企画の人が「いやこれは違う、20パーセントは使います」とか追加して書いていくんですよね。

それで実際リリースするじゃないですか。そうして1ヶ月後に答え合わせすると、見事にずれてます。やっていくとだんだんこのズレが減っていくので、いいトレーニングになってお客さんの気持ちがだんだんわかってくる。

ある時ぼくは、女性の予想が自分の予想とあまりに違いすぎて、これでは女性の行動がわからないと思って、それ以来プロダクトを開発するメンバーの中心に女性が加わりました。

そういう形で、自分のできるとことと、できないとこが少しずつわかってきます。この4つを知っておけば、ぼくも大きな失敗をせずにこられたんじゃないかと思っていまして、今日シェアさせていただきたいなと思った次第です。

ちなみにもう読まれてる方多いと思うんですけど、『リーンスタートアップ』と最近出た『スタートアップウェイ』という本を先に読んでいたら、あんな失敗しなくてよかったなとすごい後悔しました。

これは大企業も今使っていて、トヨタさんとかも使っている方法なんですけど、すごくいい本だし、プロセスもできると思うので、サービスをつくる人は必見じゃないかなと思います。

オープンであることと、ワクワクすること

家計簿から確定申告、メディア、請求書、給与、マイナンバー、金融機関様向けのマネーフォワード、クラウド経費、ファイナンス、通帳、決済など、この6年くらいでいろんなサービスをつくってます。

もちろんこの裏にはたくさんの失敗したプロジェクトがあります。ぼくが「これは絶対成功する!」って言ったサービスも、3ヶ月でクローズするという悲しいできごともございまして。そういうとき、社内における社長の信頼感の低下はすごいです。

(会場笑)

やっぱりリーダーは結果を残さないと、誰もついてこないんだなとわかりました(笑)。

また、当社が意識していることで「オープンである」とか「ワクワクすること」とかってすごい大事だなと思ってまして。経営者の方って、やっぱり社員をワクワクさせたり、夢とかビジョンを描かないといけないなと日々思っています。

今はもうAPIで全部つながる世界ですし、ネットですべての情報が拡散する世界です。ユーザーさん1人ひとりが発信力があるので、そういう前提で企業やサービスをつくらなきゃいけないと思っています。そういった時にはブランドがすごい大事だなと思っていて。

ブランドといっても「プロダクトがいい」とかじゃなくて、企業の姿勢とか、ちょっと大げさだけど「生き様とか理念とかに共感するか」というのがすごく大事な世の中に、ますますなってきていると思うので。経営者として、こういったことを常に頭の中に置いておかないといけないと思います。「こうやったらワクワクしてくれるかな」というのは、経営者のなかでよく議論しています。

プラットフォームは10年に1回変わる

(スライドを指して)「経営者として」ということでお持ちしたんですけども、この辺はちょっといろんな議論があって、これはぼくの勝手な思いなので間違ってるかもしれないんですけども。1つ目はスピードです。技術の普及速度って、めちゃくちゃ上がっているなと思います。先ほどご紹介した『スタートアップウェイ』にこの表があって、ああそうだなぁと思ってすごく今までのモヤモヤがスッとしたんですけども。

これが何かと申し上げますと、アメリカの人口の25パーセントまで普及するのにかかった年数です。例えば電力だと45年くらいかかってて、電話だと35年ぐらいかかってるんですけど、インターネットだともう8年くらい。スマートフォンだと3〜4年とかで、普及スピードは昔に比べて爆速的に上がってると。

IT業界って変化が速いじゃないですか、世の中が一気に変わっていく。ぼくも情報についていくので精一杯なんですけど。ガラケーからスマートフォンになった時にガラッと変わったように、プラットフォームのチェンジが少なくとも10年に1回は今後起こるんじゃないかと思っています。僕は今42歳なので、人生100年だとすると、あと60年はある。あと6回は大きなチャンスがあるので、1回ぐらい当ててFacebookとかGoogleみたいにになれないかなーと思ってるんですけど(笑)。

そういう意味で、我々にも大きなチャンスがあるんじゃないかと思っております。本当に技術の普及スピードが速くなってきているので、ぼくたちはこの外部環境に適応しないといけない。10年生き残る会社って4〜5パーセントで、20年だと0.3〜0.1パーセントしか生き残ってないっていうデータがありまして。これを見るたびに、普通のことをやってたら絶対生き残れないんじゃないかとすごい焦るんですけども、それもこういうことだと思うんですよね。

どんどん環境が変化しているので、自分自身たちが変わっていかないと絶対取り残されて潰れる、ということだなと思いました。なので、とにかく変わらないといけない。

先日リクルートさんの峰岸社長の講演をお聞きしたんですが、リクルートさんはあまりにも変わることが多いので、逆に変わらないことだけを決めたと。それは企業理念である、ということをおっしゃっていました。企業理念以外は全部変えていいっていう。リクルートさんには「圧倒的な当事者意識」などその理念は全部で3つあるんですが、そういうことを決められたとおっしゃっていました。