21世紀のお金の役割はどうなるか

中山亮太郎氏(以下、中山):マクアケの中山です。このセッションは、「21世紀に求められるお金の役割」という題材です。壮大なテーマだなと思っていまして、取っ散らかりそうな気がするんですが、なんとかまとめていけたらなと思っています。

一番気になるのが、お金かなと思っていて、いまどういうベクトルで流れているかという話を今回できればなと。

20世紀は車を作って「ほしいですか?」「買います!」というように、お金と物の1対1の関係だったものが、なんとなく21世紀はお金の流れ方がすごく変わってきているなと思っていて。このまま加速していくと、どうなっていくのか。お金のベクトルみたいなところをお話しできればと思っております。

まずは我々3人がいま何をやっているのかを、若干紹介できればと思います。

林篤志氏(以下、林):Next Commons Labの林と申します。冒頭で何をやっているかという話をしたいなと思っています。僕たちは、日本の地方などをフィールドにしながら、起業家の育成をやりたいと思いました。

けっこう幅広くやっているので、まずローカルで何をやっているのかというお話をしつつ、最後にお金の話につながるようないまの活動。次のお金の使い方であったり、どういう経済圏のあり方にしたいかを、説明させていただきます。

「ポスト資本主義社会を具現化する」というビジョンを掲げてやっていて、「いまの社会って何なんだろう?」から考えたいんですね。いろんな課題がある中で、たぶん今日ここにいらっしゃるみなさんも、僕自身も10年ぐらいいろいろ、ソーシャルビジネスやローカルの現場でいろんなことをやってきたんですが、「社会ってなかなか変わんないよね」というのが、大きな課題として立ちはだかってるんです。

「いまの社会とは何なのか?」と捉えたときに、巨大な1つのシステムだと思ってるんですね。下は国家だし、もう1つは資本主義という、巨大なシステムの上で、我々はのっかって生きているし、課題もいっぱいそこに散らばっています。ここに対して「社会を変えていこう」「課題を解決していこう」と、いろんな人たちがアプローチしてるんだけれど、「なかなか変わらないよね」と。

変わるかわからないものに対してアプローチし続けるぐらいだったら、そもそも社会をゼロベースで作っていくオペレーティングシステムみたいなものを作れないか、ということをやっています。

大きなものを作る必要はなくて、それぞれが作りたい社会の構造を作っていこう。そして、それに対してそれぞれの通貨が生み出され、それぞれの経済圏が生み出されていくような、新しいレイヤーを作っていこう、ということをやっています。

そういったことを概念的に(説明します)。実際にテクノロジーを使いながらもやっていますし、地道に地域の自治体に入っていって、地域資源を活かして起業家を生み出していくといったこともやっています。いまは2020年までに全国100ヶ所にそういう拠点を作っていこう、ということをやっていまして。

これは第1号で始まった岩手県遠野市です。1つのエリアにだいたい10名から15名ぐらい、全国から起業家を選抜して、集団移住させるということをしています。集団移住させて、そこにある地域資源を使って、新しい社会システムや新しいビジネスを作るためのサポートをするということを、全国各地でやっていると。

遠野の1つのプロジェクトで、例えば街のど真ん中にコミュニティブリュワリーができたり、そういったかたちで、いま全国10拠点で29のプロジェクトが始まっていると。その中にはシェアリングエコノミー的なものもありますし、ソーシャルビジネス的なものからスモールビジネスみたいなものもあると。だいたい65名の起業家が全国でやっていて、今年100名ぐらいのメンバーに増えつつある。そういったネットワークをいま持っています。

新しい社会の構造を作れるか

:一方で、今日のトークセッションにつながる話として、「どうやったら新しい社会の構造を作っていけるか?」ということをテーマにやっていきたいと。要はCommons OSというサービスをいま開発している段階なんですけれども、誰でも簡単に経済圏を伴った小さな社会を作れる。

もっと言えば、「国家を作れるような仕組みを作ろう」という考え方です。理論的に言えば、たぶん誰でも貨幣が作れるようになった時代、経済圏を作れるようになった時代。次にどうなっていくかと言うと、誰でも国家が作れるような時代になっていくと思っているんですね。

いま国連に登録されている国家の数はだいたい200ぐらいあるんですけれども、僕たちのチームの中では、2030~2040年ぐらいにかけて、国家の数が数十万人から数百万人に増えていくんじゃないかと考えています。

このCommons OSを導入する先として、どういったところを想定しているか。いま決まっているのは国内の自治体ですね。石川県加賀市に導入が決まったり、名前は伏せますが、信者が80万人ぐらいいる宗教法人さんからお声がけいただいて。80万人というのは国(の規模)なんですよね。

中山:そうですね。ちょっとした県レベルはありますね。

:そうそう。要は物理的に線引いて「○○市」という概念ではなくて、共通の価値観やビジョンを伴った経済圏が生まれ、それが国になっていく時代になると考えています。

いまの法定通貨をベースにした経済圏ではなく、ブロックチェーンを使って、例えば共通の価値観をベースに、いろんなものについて価値交換のスピードが上がっていくような、独自の経済圏が無数に生まれていくようなものを作っていく。

シェアリングエコノミーで大きなプラットフォームを1個作って、大きな経済圏を作る考え方ではなくて、それぞれが立ち上げたい経済圏を、それぞれの価値観ベースで作っていく。それに必要なオペレーティングシステムを、オープンソースで提供していくプロジェクトです。

具体的にはウォレットであったり、地域通貨やコミュニティトークン専用の取引所であったり、実際にその社会関係資本みたいなものをビジュアライズするダッシュボードみたいなものを、いま開発しています。

「ベーシックアセット」という新概念

:一方で、たぶん後半で議論に入っていくと思うんですが、「お金ってそもそも必要なのか?」という話ももちろんあって。我々が持っているリソースを、もっと最適に配分をしてしまえば、「そもそも働かなくていいんじゃないか」「そもそもロボットがやってくれるからいいんじゃないか」という世界が、もう5年、10年という未来の中で現実化していくと僕たちは思っています。

僕たちは「ベーシックアセット」と言います。もっと言い換えれば、「人生定額で生きられるよ」という言い方を僕たちはしていて。

千葉孝浩氏(以下、千葉):携帯プランみたいな。

:そうそう。「人生定額プラン」と言っています。ですので、限界費用ゼロ的な視点で、要は食糧生産、エネルギー、居住空間みたいなものは、基本的にはフリーで提供できる。

だって、日本全国、廃戸だったら6,000戸持っているんですよ。空きもめちゃくちゃあるんだけれど、新築の家がバンバン建っていくという、よくわからないおかしなことになっているわけです。フードコストだってそうですよね。食糧はめちゃくちゃ余っているんだけれど、みんな働いてお金を払って食べ物を買っているわけなんです。

要は放ったらかしにして私有財にしているぐらいだったら、みんなで管理をしてみんながアクセス可能な公共財にしてしまおう、というプロジェクトをいまやろうとしていまして。これをいま、国内の人口数十人のある島を舞台に、そういう未来モデルを作ろうということで、実証実験をスタートしようとしています。

こういった動きを作りながら、先ほど言ったような、誰でも共通の価値観を持っている人と独自の通貨を生み出して、その通貨のデザインをして、そこの経済圏から生み出されたものを、また自分たちのコミュニティに再還元していくような仕組み作りをCommons OSというものを通じて、自治体や宗教法人、エコビレッジや国単位でも導入を進めていくことを、いま順次やっていまして。

それをただどんどん広げていくだけではなく、日本のローカルみたいなフィールドをうまく活用して。やっぱり個人でやると消費しか進まないんだけれど、ただ消費だけではなく、自分たちが一人ひとり、人間として生産活動にコミットできるような世の中を作っていきたいことを考えているプロジェクトです。以上です。

中山:ありがとうございます。それだけのテーマで、僕はものすごく語り合いたいなと思ったので、今度飲みに行きましょう、という感じなんですが(笑)。

(会場笑)

:はい(笑)。

中山:やっぱり村だったり、同じ価値観で、距離関係なく集まっていくということは、僕もすごくテーマかなと思っているので、深く堀っていきたいと思いました。

「信用」の定義は変わってきた

中山:では、千葉さん、お願いします。

千葉:TRUSTDOCKの千葉と申します。よろしくお願いします。私、前職はガイアックスという会社に長くいて、いろんな新規事業をやったりして、いまは、TRUSTDOCKという事業をやっております。

僕らはいま何をやっているかというと、この本人確認をやっています。とくに誰かわからないオンラインのIDについてリアルな人が誰なのかという、オンラインのIDの本人性を担保する技術をしています。

これはプラットフォーム事業者の裏側に入って、例えばPayPal、Stripeのように決済ペイメントゲートウェイというかたちで、本人確認のAPIをお配りして。もしかしたら実は、みなさんが免許証をアップロードされているサービスの裏側で、僕らがやっているかもしれない。

例えば、シェアエコからFinTechまで、いろんなサービスに入っています。今日はシェアエコのイベントなので、シェアエコ系を並べてみていて。例えば買取アプリ、C to Cといった、いろんなところに入っています。僕らはすでに毎月、いわゆる金融機関さん並みに本人確認をしていて、5ケタ以上という非常に多くのトランザクションを毎月さばいております。

本人確認していくと、僕らのアイデンティティ、とくにこのオンラインのIDは、例えば1人1個であるべきなのか、人間の多面性をどうやってオンライン上でデザインするかが非常に問題になる。このあと(話題に)あるかもしれないですが、「このIDの人は信用できるの?」「信頼していいのかな?」といったところを、非常に考えながら日々ビジネスをしています。

やはり、いまもみなさんは個社ごとに免許証をばらまいていると思います。免許証画像がいろんなところにばらまかれることは、僕自身もすごく気持ち悪いなと思うんですよね。僕らはインフラとしてリアルな免許証を提出しなくていい未来を作っていきたいと思っています。

中山:ありがとうございます。さっき言った、いわゆるKYC(顧客確認)的なところだったり、その派生で、信用みたいなところが、中国などではすごく当たり前化されすぎている、いきすぎてしまっているのかなというぐらい、ちょっと怖い未来もあったり。今日は、そのあたりの信用みたいなところも、みんなで深く掘れればなと思っていたりします。よろしくお願いします。

千葉:よろしくお願いします。

お金を生み出すプロセスの変化

中山:改めましてマクアケの中山と申します。ビジョンは「世界をつなぎ、アタラシイを創る」。「すばらしいアイデアのお蔵入りを撲滅する」と考えて、そのためにあるハードルを全部外していくことを、1個1個やっていきたいなと思っています。

仕組みとしては、例えば新製品であれば、プロトタイプや試作品ですね。マクアケでは量産する前のタイミングで、予約販売ができる仕組みになってます。普通だったら、量産して、在庫を作って、小売に売ってもらって初めてユーザーに届くんですね。

ユーザーの反応が見られるまでに、とてつもなく長いジャーニーをしなければいけないんですけれども、デザインと試作品の段階でいきなりユーザーに予約販売ができるということで、いきなりもう「買うよ!」というような反応が返ってきて、しかもお金も普通に入ってくるので、そういったかたちで予約販売を量産前にできてしまうということが、いま製造業にものすごく刺さっていると。

大企業も中小メーカーもスタートアップのメーカーも、いったん量産前にマクアケに全部出して、顧客の反応をダイレクトに見てしまって、テストマーケティングやプロモーションなどをしつつ、売上金が先に入ってくるので、そのお金を使ってちょっと金型を買ってみたり、工場にロットで発注したりというかたちになっています。

いままでの生み出し方のプロセスが、ゴロッと1個変わってきたなと感じていて、ここはすごくマーケットフィットしたなと思っております。飲食店などでは、オープンする前の物件が決まって作っている最中は、すごく暇だったりするじゃないですか。というところで、オープンする前に、ここで会員権やお食事券を販売できてしまうというかたちで。

普通だったら、オープンしてからぐるなびやホットペッパーに出して、ようやく集客して、東京カレンダーに載ったらラッキー、という感じで、しばらくやっぱり赤字で進んでいく、という感じです。

でも、オープンする前にロイヤルカスタマーを何人も抱え込んでしまえば、オープン初日からその人たちが友達を4、5人連れてきてくれたりするので、飲食店にとっては、オープンする前にロイヤルカスタマーを囲い込めてしまう。とても効率的な手段というかたちで、いまマクアケを使っていただいている感じです。

なので、よく「マクアケって資金調達なの?」と言われるんですけれども、資金調達に関しては、一義的にはもう使われていないという。僕らもやってみてわかったことは、マーケットにフィットするのはどっちかと言うと、資金よりお客さんがいることのほうが前に進めることが出てきて、なんとなくお金の相対的価値が下がってきているのかな、と少し感じている今日この頃です。