起業のモチベーションは?

長谷川敦弥氏(以下、長谷川):ちょっと聞いてみたいのですけれども、最初、僕もITの会社に入って、ITの企業の先輩に話を聞いたりすると、起業のきっかけはお金がすごく欲しいみたいな人って、意外にいたりするんですね。

でも、お2人って、また違うモチベーションでやられているのかなという気がしていて。それぞれどんなモチベーションでそんなリスクをとってチャレンジしているのか、お伺いしたいな。

山田淳氏(以下、山田):僕は頭の8割ぐらいは山のことしか考えていないので、起業という形よりも……。学生のころ思い描いていた姿というのは、自分の人生の時間の使い方として、例えば3分の1くらい自分の時間があって、3分の1ぐらい登山ガイドができて。

僕はガイドという仕事がすごく好きで、人を連れて行くのがすごく好きで今でも行くのですけれども、それプラス3分の1ぐらいでお金、生活できていくものを、基板となるものができるような姿になればいいなと。

その基板となるものも山絡みでできればベストだなと思っていて。だから、このテーマと全然離れてしまうのですけれども、僕は別に起業が楽しいとか、創業が楽しいと思ったことはあまりないんです。

経営者をやっていても、別に経営者が孤独とか、経営が楽しいとかと思ったこともあまりなくて。昼もちょっと話していたのですけれども、自分のサービスを使って、それがきっかけで山登りしましたとか、例えばレンタルというサービスがあったから、ようやく富士山に行けましたとか……。

うちの社員なんかはうちのフリーペーパーを読んで、山を始めようと思って、レンタル屋さんがあるとネットを調べて見つけて、レンタルして、僕のツアーに来て。どれもつながっていると知らなくて、八ヶ岳で酒を飲みながら「全部おまえか!」「全部おまえの仕業か!」みたいなことになって、結局入社したんですけれど(笑)。

そういうのがすごく楽しいんです。会社の売上が上がるとか、利益が上がるとかは、僕はあまり……。バイトからも「本当にお金に興味ないですよね」と言われて「いや、そんなことない、僕はお金好きやで」と言うんですけれども、本当に突っ込まれると、どうかよくわからないみたいなところはあります。

結果に結びつくかは、モチベーションの総量次第

柴田陽氏(以下、柴田):山田さんにとって、あくまでも手段という感じなんですね。

山田:そうですね。だから、例えばマッキンゼーに行ったときに、アウトドア系の企業がクライアントでいて、そこを通じて登山人口を増やせたら、僕はそれがよかったと思うし、そういう意味でいうと手段です。だから、起業したいと思ったことはないです。それは違う……?

柴田:いや、1番最初は全然違いました。もう本当に起業はかっこいいなと。2005年って藤田社長の、『渋谷で働く社長の告白』という本がベストセラーになった年なのですけれども、僕はミーハーなので、すげぇかっけーと思って(笑)。これ、なりてぇと思ってなったのが最初のきっかけです。

お金がモチベーションという話、これはすごく面白い話だと思っていて、僕はパフォーマンスと動機の種類は最終的にはあまり関係ないと思うんです。

ただ、金銭モチベーションは、実はあまり大きいモチベーションではなくて、もちろん人によってお金が大好きな人もいるかもしれないのですけれども、どっかでサチる可能性がすごい高いなと思っていて。

「もっと世の中変えたい」とか、「これ必要だと思う」みたいな動機のほうが多分モチベーションの総量として大きくなる可能性が高いのではないかと思っています。

結果に結びつくのは、本当にモチベーションの総量だと思うので、金銭動機でも別に全然構わないけれども、それよりはもっと強い動機があるんじゃないかと思います。

社員を犠牲にしてまで社会を変えるべきか

山田:それは金銭動機じゃない人のほうが、結果的に勝ち残りやすいということ?

柴田:いや、だから、本当にすごく好きで、もう幾ら持っていても、幾らでも欲しいと思えるのだったらいいと思うのですけれども、ただ凡人はそう思えないと思うんですよね。数10億円、貯金があったら「もうしばらくいいや」というふうに、おなかいっぱいになると思うんですよ。使えないですし、大体。

山田:確かに。

柴田:なので、そうなったときに、モチベーションがサチってしまうので、そうではないことのほうが、ずっと頑張り続けられるのかなと思います。

山田:逆に、長谷川さんは、そのポジションが降ってきたわけですよね。

長谷川:そうですね。

山田:その中でのモチベーションというのは、最初の頃と今とで全然違うんですか。

長谷川:ベースが僕は、焼き肉屋さんにすごく期待をかけてもらって「社会を変えていきたい」とか、「日本をよくしたい」というのがもともとすごく強いんですね。だから、社会問題の解決というところに異常に燃えてしまうという気質が本能的にあるので、それはずっと変わらず持っているのですけれども。

会社を経営しだして変わった部分は、社員を大事にしたいなという気持ちで、これは経営しだしてから初めて、正直感じたことです。それはモチベーションになっていますね。

孫正義さんとかはすごいじゃないですか、もう社会をどんどんどんどん新しいイノベーションを仕掛けて変えていっているけれども。結構、そういうイケイケ系の会社さんの社員さんは疲弊してたりとかするようなところがちょっと……。

見方を変えたら、少し犠牲になっている部分もあるのかなと思っていて。それまでは、どちらかというと、僕はそれでもいいと最初は思っていたんです。

正直、社員が犠牲になっても社会を変えることのほうが大事だというふうに思っていた部分がだんだん、経営して、みんながすごく頑張ってくれているのを見ると、そのあたりは変わってきました。

起業家がもつ3つの役割

小林雅氏(以下、小林):なかなかいい話になってきたので、後半戦に突入という前に、やはり皆さんから質問を受けたいなと思うのですが、どなたか質問ありませんか。

質問者:スタートとイグジットのタイミングについて柴田さんにお聞きしたいなと思っております。お願いします。

柴田:まずそもそもイグジットするとどうなるのかというのは、皆さんなかなか肌感として湧きにくいと思うので、どうなるのかというお話をすると、株主が変わるんです。自分とかVCで持っていたのが、買収した会社、大概100%その会社というのになるのですね。

起業家って、ここにいる方も全員そうなのですけれども、実は3つの役割、帽子を持っていて、1つ目の帽子が先ほど言っていた組織のリーダーとしての立場、社員を引っ張っていかなければいけない、そういう責任がある。そういうリーダーシップが1つ目。

2つ目は自分がやっている事業とか、サービスとか、製品の最終的なプロダクトの責任者というかプロダクトマネジャーとしての帽子、これが2番目。

3番目が資本金を株主から預かっているという、会社の台所。会社の預金通帳をお金で満たしておくという帽子があって、イグジットすると、この3つ目に関しては人に下駄を預けた形になるので。

これはいわゆる雇われ経営者という状況なのですけど、1つ目と2つ目のロールはそのまま残るのだけれども、3つ目がなくなる。なので、つらさ的には3分の2ぐらいになるというのがイグジットされた状態なんです。

ではそれは置いておいて、どういうときにそういうタイミングを選ぶかというと、僕自身はその1番目と2番目の役割として、社員にとっても製品にとっもいいタイミングかどうかというのが大事だと思っています。

買収されないで上場までするということは、独立性を守るということなのですけれども、これのために、1番目と2番目が犠牲になってしまっては元も子もないと僕は思っています。

今、僕がやっているのは来店ポイントのサービスなのですけれども、例えば製品を伸ばすために、すごく強力なポイントを持っている会社と一緒になると、サービスの価値はすごく高まるんです。それを売っている営業の社員とかもすごく楽にどんどん世の中を変えていける。

同じ動きをしても、世の中に与えるインパクトの量は全然変わってくるので、僕はこういうときは株主を変えるタイミングかなと思っています。なので、その1番目と2番目の部分を成長させるために、外から中立的にお金を集めてくるのがいいのか、何か色のついたお金を集めたほうがいいのかが、ジャッジのポイントだと思います。これが経営者として見た場合の判断の基準だと僕は思っています。

質問者:ありがとうございます。

ゴットファーザー型とオーシャンズ11型

質問者:スタートのタイミングのときからイグジットというものを考えてスタートしているのですか?

柴田:シナリオとしては考えたほうが僕はいいと思っています。これは人によって違うと思うのですけれども。実は会社のつくり方は、大きく分けると2パターンあると思っていて、1つがゴッドファーザー型と僕が呼んでいるもので、もう1つがオーシャンズ11型と呼んでいるものなのですけれども、両方ともヤクザ映画、ギャング映画ですけれども、組織のつくり方は全然違うんです。

ゴッドファーザー、名作なので皆さんも見たことがあるかもしれないですが、あれはファミリーなんです。ファミリービジネスで、家族を繁栄させていくためだったら、ビジネス、しのぎの中身は何でもいいんです。

最初はオリーブオイルを売っていたのですけれども、最終的にはラスベガスのギャンブルをやる。これは何でもいいんです。ファミリーが繁栄していけば何でもいい。この場合は、組織を守るということが資本の中立性を守ることにかなり密接に結びついているので、この場合はイグジットを考えるべきではないと思うのですけれども。

オーシャンズ11型は、最初からプランがある。どういうサービスを、どういうロードマップでつくっていくかというある程度イメージがある。

こういうときはわりと、ここまで行けば上場できるし、こういうふうに世の中が推移したら、バイアウトしたほうがいいかもしれないし、こういうふうに万が一なってしまったら、そもそも製品を変えたほうがいいかもしれないというイメージがある。あるいは会社を解散したほうがいいかもしれないみたいな、そういうシナリオは考えたほうがいいかなと。

これは会社を何のためにつくるかとか、どういうモチベーションでつくるかとか、どういうチームを集めるかというのが大きく2パターンあることから来ているのかなと思います。

質問者:ありがとうございます。