子どもへの愛は「理屈じゃなくて一方的でいい」
元インテル西岡郁夫氏の教育論

『一流マネジャーの仕事の哲学』発売記念イベント #7/8

インテル社長などを務め、日本のパソコン市場開拓の立役者としても知られる西岡郁夫氏の著書『一流マネジャーの仕事の哲学』の発売記念イベントが開催。後半は、株式会社ユーザベースの共同経営者である新野良介氏を迎え、ビジネスパーソンのキャリアやマネジメントについて語りました。

「なぜわからないんだ?」と押しつけてはだめ

司会者:じゃあ、みなさんからの質問を。手を挙げていただいたら、そちらまでマイクを持ってまいりますので、お2人に聞きたいことがあるという方、挙手をお願いいたします。

西岡郁夫氏(以下、西岡):どうぞ。

質問者1:お話、ありがとうございました。最後のところで人間力のお話をされました。自分も娘がいるんですが、昨今の受験を見ていると「本当に日本が、そういう教育システムで再生していって世界で戦えるの?」とすごく思っています。まさにおっしゃったお話を聞いていると、「本当、日本沈没じゃん」という確信のほうが強くなったんです。

そうは言っても、年々、自分も若手が入ってくるので、少なくともうちらは死んでもいいけど、若手ぐらいは生き残ってほしいと思います。感受性とか、これまで習ってきていないので、いきなり西岡先生の本を渡しても、ちょっと響かないかなと思いまして。今日買って、ちょっと読まそうとは思うんですけど。

西岡:あなたがまず読まなあかんやん。

(会場笑)

西岡:責任を転嫁したらあかんで。

質問者1:そうですね。「隗より始めよ」っていうことで、やらせてもらいます。その感受性というのは、そうは言ってもこれから戦力になってもらわないと困るので、どうやって自ら気づいてもらうか? どう仕向ければいいのか? 知らず知らずのうちに仕向ける策はありますか?

新野良介氏(以下、新野):いまの若い人には伝わらないのじゃないか、というお話でしたが、その背景には、自分は分かるが若手にはわからない、なぜなら、若手には自分がもっている感受性がないから、という自分のメンタルモデルがあるように思います。しかし、まずはその自分自身のメンタルモデルを1回相対化して、自己認識してみることが大事な気がします。

まずはそれをしないと、自分のメンタルモデルで、相手に「なぜわからないんだ?」といくら押しつけたところで、自分も同じように上の人からやられたら嫌ですよね。

自分とは違う見方があり、違うやり方があるんだという前提に立って対話を始めないと、聞く気がないということかなと思うので、相手を変えるにはまず自分を変えるようにしないといけないんじゃないかなということが、私のいつも気にしているところですね。

愛して、愛して、愛し倒すこと

西岡:大賛成です。これ、本に書いていますけど、「相手は変えられない、自分は変えられる」。講義のなかにあるんですけど、講義の後は必ず評価表といって、その講師をきちっと評価するために、みんなから感想を取るんですね。

そのなかで、12期生だったと思うんですけど、「私は娘が2人いまして、家内から言われて勉強を見させられます。それで、長女のほうが苦手なんです」と。それで、どうしてもこの長女はお父さんを斜に見ていますと。それがわかるもんだから、どうも自分も長女が苦手で、勉強を教えるんだけども、ついつい終わるときには必ず大声で怒鳴ります。そしたら、奥さんが横でさびしそうな顔をしています。

その繰り返しでした。今日もそうなりかけました。そのときに、「相手は変えられない、自分は変えられる」ということを思い出して、「あ、そうだ」と思って、その日に限っては自分は笑顔を絶やさずに、やさしくやさしく接しました。

そうすると、なんといつも斜に構える娘が、うれしそうについてきます。最後まで爆発することなく、「お、がんばるな」と終えて、そのときの妻のうれしそうな顔が忘れられませんと書いてある。僕はうれしくて、みんなに見せ合いをして、うちの業界で、「こんなん書いとるで」と言って。

そしたら、彼はその後ずっとうまくいってまして、こないだもメールが来ましたけど、「2人で3日間の連休を釜石かどっかのボランティアに行ってきました。ずっといい感じが続いています」と。

だから、あなたが言うように、日本の教育はめちゃめちゃ。本当にこれは最悪だと思うんだけど、だからといって文句を言っても始まらんと思う。そしたら、親がいったい子どもをどう愛を持って育てるか。理屈じゃなくて、一方的でいいんだよ。愛して、愛して、愛し倒すことだと思うね。そういう気持ちで、それしかないと思う。

新野:同じ問題を海外のメンバーと接するときに感じます。信じて、正しいと思って一生懸命伝えたことが、持っている情報空間もメンタルモデルもまったく違うので伝わらないことが多々あります。たとえば、「素直さが大事だ」とかフランス人に言っても、なかなか理解されないわけです(笑)。

このテーマは普遍的なテーマです。さっきのイノベーションやダイバーシティのことであれば、そもそも自分の方を変え、試す。ただし、そうやってくると、今度は自信がなくなってくることもあると思うんです。「やっぱり俺のほうが間違ってるんじゃないかな」と。

それでもなお、やらなきゃいけないというか、伝え続けなきゃいけないこともある。そのPDCAを回すという感じなんですけど、最終的に私の答えは、今のところ、それでもなお伝え続けなきゃいけないことは、西岡さんがさっきおっしゃった、子どもで言えば愛と同じように、事業では情熱です。

「とにかく俺は間違っているかもしれないけど、これをなんとかしたい気持ち(情熱)は、一番ある。お前のほうが合ってるかもしれない、俺のほうが合ってるかもしれないけど、お前もなんとかしたいという気持ち(情熱)は同じなんだろ? じゃあ、学び合い、試してみようじゃないか」と、引かないようにする場面は思いを通す。そこを引きだすと、途端に向こうはそれにフックをかけてきて、「だから、日本人だからわからないんだ。グローバル経営がわかってない」となります。

質問者1:ありがとうございます。

新野氏の部下への任せ方

質問者2:今日はどうもありがとうございました。いわゆるトップが経営判断をした場合に、やはり経営を大きく左右するような状況になるかもしれないわけです。

そのときに、どうやって暴走を止めたらいいのか? そういうことを私も経験したので、結果的にやめになってしまったということもあります。

西岡:それは方法ないですよ。自分がどこまで会社に対する情熱を共有しているかによると思うんです。だから、ものすごく自分のふつふつとした思いがあれば、そんなんついていかないと思う。あんたの社長、誰だったの?

質問者2:○○です。

西岡:あ、○○さんか(笑)。

質問者2:議論になったときにですね、やっぱり彼が株、メジャーを持っているわけですよね。

西岡:それはそうだよ。

質問者2:そうすると、周りの役員が「いやー、○○さんが持っているから、俺たちはちょっともうこれ以上は言えないな」みたいな感じで引いちゃうんですよ。

西岡:それは彼が権限を持ってるからね。やむをえないじゃん。

質問者2:そうなんですよ。

西岡:それをなんとかする方法はないよね。

質問者2:ないですよね。

西岡:あの人だしな(笑)。

質問者2:そうです(笑)。

西岡:自分で言い出したら聞かないんだから。それはもう、やるべきことをやる。それだけじゃないかな。そういうことだと、ちゃんと次を考えますね。

質問者2:ありがとうございました。

質問者3:今日はありがとうございました。新野さんにおうかがいしたいのですが、先ほどの部下にどう対するかとの話で、西岡さんのお答えは聞けたと思いますが、たぶん新野さんも自分なりのお答えを持っていらっしゃると思うんですけが、それをちょっとおうかがいしたいです。

新野:介入するか、任せきるかの話ですけど、この意思決定はものすごく再現性のあるテーマなので、自分なりの原則を持ってやっています。

まず最初にやることは、これから任せる仕事が会社に及ぼすリスクが最大限発現した時に、それが自分でコントロールできる範囲のことなのか、つまり、自分で巻き取れるか、ちょっと損を出したとしても、会社の屋台骨を揺るがさないかを判定します。それがないままで任せきると、それは無責任かなと思うので、まずそうします。

それがコントロールできる範囲だったら、1回目は任せきるんですが、当然うまくいかないこともある。そのとき、2回目は一緒にやります。2回目で一緒にやっても、1回目よりも成長カーブが上がってこないと、「向かないんじゃないかな」という仮説を持って、違うチャンスを与えるよう努力します。

それは何度も何度も悩むのが非効率的なので、一定の原則、ガイドラインとしてやっていますけど、先ほど西岡さんがおっしゃってくれたように、一人ひとりの個性も違うので、ガイドラインでしかなく、それでもなお任せる、ということもあります。

西岡:しかも、彼は経営者だからね。課長が下を見るのと、また違うかもしれないな。一番悩むよね。

質問者3:そうですね。

西岡:悩まなしゃあないわ。

質問者3:ありがとうございました。

西岡:(会場を見渡して)はい、どうぞ。ちょっとぐらい(延長しても)いいんやろ? ここの会場、出ないといかんのか?

司会者:21時20分ぐらい……。

(会場笑)

西岡:だそうですから、20分で一瞬でサーッと出たらいい(笑)。どうぞ。

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