多様なファン層に向けて講演する難しさ

西野亮廣氏(以下、西野)これいつからですか? のぶみ展は。

のぶみ氏(以下、のぶみ):え?

西野:スタートいつから?

のぶみ:3日からはじまって。

西野:夏休みいっぱいですか?

のぶみ:お盆、明日までですよね。だから、過去最長なんですよね。今、こうやって大人がいっぱいいるじゃないですか。

西野:はい。

のぶみ:で、この昼間の講演見た人わかるけど、もう全員、子どもとママしか来ないんですよ。子どもとママで、俺講演会しないといけないんですよ。そしたら、ママ向きのことをやるのと、子ども向きのやつをやらないといけないのが、もう難しいんですよ。っていうのは、子どもが楽しいのと、ママが楽しいのって違うから。

西野:はい。

のぶみ:だから、難易度がね。すごい高いんですよ。

西野:それね、すごいわかって。自分が『えんとつ町のプペル』の作り方と届け方っていう議題で講演するときがあるんですよ。

のぶみ:はい。

西野:で、えんとつ町のプペルって、クラウドファンディングを使ってなのか、いろいろあの手この手で「こういう広告をうちましたよ」っていう、どっちかっていうと広告の話なんですよ、喋るのは。こういうふうにしたらお客さんが来て、こういうふうにしたら物が売れますよっていう、広告の話をするんだけれど。その題材がえんとつ町のプペルだから、子どもやっぱり来るんですよ。だから僕の講演会はそこがちょっと難しいときがあって。IT社長と子どもっていう……。

のぶみ:えー!

西野:「何を喋るんだ?」っていう。

のぶみ:子どもは何歳ぐらいの子ども?

西野:子どもは、こういう子たちですよ。

のぶみ:小学校低学年とかも来たりするの?

西野:そうです。で、僕は、そこの人もちょこっといていて。自分のファン層っていうか、ファンなんかいないですけど。おもしろがってくれる人は、そこのお父さんお母さんがいらっしゃるんですけど。けっこう、ビジネスマンが多いんですよ。

のぶみ:ビジネスマン多そう。

西野:ビジネスマンがもうめちゃくちゃ多いんですよ。

のぶみ:聞きたいもんねえ。

西野:なので、その子どもに、子ども相手に「クラウドファンディングの書き方はね」みたいな言うんですけど。「こう線引いて」とかって。

のぶみ:ぜったいわからないですよね。

西野:ぜったいわかってないですわ。だから難しいですよね。

のぶみ:「うわー!」ってなるよね。

西野:はい、もう最後歌います、だから(笑)。歌しかねえと思って、最後は。最後は歌うしかないと思って。みんなが楽しめるのは歌うしかない(笑)。

のぶみ:だから最後歌うのか。

西野:えんとつ町のプペルの作り方と届け方っていう講演会では、最後「オー・シャンゼリゼ」を歌うっていう。

(一同笑)

西野:もうこれがみんな幸せなんじゃないかみたいな。変な会になってますね。

6時間サインし続けると自分が誰だかわからなくなる

のぶみ:へえ……。西野さん毎日いろんなところに講演とか、漫才とかで行って、「もう人に会いたくない」なんて思うときないんですか?

西野:いや、私こう見えて、けっこう人が好きでですね。意外と好きなんですよ。

のぶみ:そうなんだ。

西野:はい。だから、地方に行くと飲めるので、それが良いですよね。

のぶみ:そうなんだ。

西野:飲めるのが良いですよね。

のぶみ:俺なんか、昨日、ずっとサインしてて疲れて。サイン会あと10名くらいのときに、隣に「シナボン」っていうシナモンロールのお店があるんですよ。

西野:ああ、はい。

のぶみ:で、ネットで調べたら、1個1,080キロカロリーあるのね。

西野:ええ。

のぶみ:で、それ買ってきてもらって。がーって食べて。ストレス溜まって。

西野:ストレス溜まるんですか!?

のぶみ:もう……。

西野:人と喋るのストレスなんですか?

のぶみ:なんかね、6時間ぐらいサインしてると、なんか誰が誰だかわかんなくなってきちゃうんですよ。

西野:わかる!

のぶみ:そうなんですよ。それで「なんでサインって欲しいんだろう?」とか「自分の名前は何だったんだろう」とかいろいろ思うんですよね。もう、なんだろう、「みんなで騙してんじゃないのかな」って思うときがあって。なんでサインってほしいんだろうとか。「そもそもここはどこ?」っていう感じになってくる(笑)。

西野:わかる、同じ作業をずっとやってるとね。あれ宛名はどうしてるんですか? 聞くんですか? その人に。

のぶみ:宛名は、子どもが多いんですよ。だから、(子どもの言い方を真似して)「なになにちゃん」って、言うから。

西野:言わないんだよ子ども! そう、本当あれむかつくんですよ。

のぶみ:もうひらがなで書いてもらうんだけど。書いてくれないお母さんとかもいるんですよ。

西野:はい。

のぶみ:あと、たまに来て、「のぶみさん、覚えてる?」って言われるんですよ。もうー!

西野:いや覚えてないって! 覚えてない、お前のことなんか。覚えてるわけがない。かわいかったら覚えてますけどね。

のぶみ:もう300冊くらい書いてるんですよ。俺、自分の名前もわかんなくなってるから。あなたが誰なのか……。「知ってる人だと思うよ」って言うけど。難しいんですよ。

西野:サインしてて、子どもに「お名前は?」って聞いたら、おっしゃる通り子どもはやっぱりもじもじするんですよね。

のぶみ:そう、「おにょにょちゃん」って(笑)。

西野:そう。でもお父さん、お母さんの気持ちもわかるんですよ。ここで、子どもに言わせたいっていう。

のぶみ:そうなのね。

西野:成長させたいってことですよね。でも、その子どもが名前言うまでお父さん、お母さんが微動だにしないんですよね。

のぶみ:そうなんだよ!

西野:それでもお父さん、お母さんは1回だからいいけど、こっちはこれ3,000回目やぞっていう。

のぶみ:もう、そうなの。

西野:もう早よ言うてくれってなる。ああわかるわ。

のぶみ:で、「ね、言えるよね、言えるよね」って(笑)。

西野:わかる、これ3,000回目! この「言えるよね」はお前は1回目やけどこっち3,000回目。

子ども相手のサイン会のつらさ

のぶみ:それで、もう思いもつかない名前だったりするときもあって(笑)。

西野:そう!

のぶみ:キラキラネームだかなんだか知らないけど。普通だったらゆうたろうなのに、「なんとかです」みたいなこと言って。え、そんな、何? その意味は。意味がまったくわからない名前のときもあるから。ぜんぜんわかんないよね。

西野:向こうが、「ゆうたろうです」っていうから、「あ、ゆうたろうね」って言って、ゆうたろうって書くじゃないですか。「ゆうたろうね」って1回僕言ってるんですよ。ゆうたろうって書くじゃないですか。そしたら向こうが、「ゆうまろうです」みたいなこと言って。

いや、でもやな、それわかるけどもやな、お前も1回聞き逃してるしやな。俺は1回「ゆうたろうね」って言ったの。で、お前そこで怒るんやったらお前の親に怒れ。そんなややこしい名前をつけた……。

のぶみ:もうゆうたろうにしてほしいよね(笑)。

西野:もうゆうたろうにしてくれ。

のぶみ:なんでゆうまろうにしたんだ。

西野:なんやゆうまろうってお前。「“ま”です」みたいなこと言われるんですけど。お前も俺が「た」って言ったとき1回も指摘せえへんかったやないか。そのときは「はい、はい」って。お前の耳も。

のぶみ:本当ですよね(笑)。

西野:お前の耳も故障してんのにやな。お前の耳もゆうまろうが聞き取れてないのにやな。なにをこっちに全部……。

のぶみ:なぜフォローしなかったのか。

西野:そうですよね。でもそれはもう、それが1回だったらいいんですよね。

のぶみ:はい。

西野:それが1回だったら、こうやって笑い話になってキャッキャでいいんですけど。

のぶみ:そうですよ。

西野:これ3,000回とかなるわけですもんね。ゆうまろうが。

のぶみ:もうずーっとやって、「なんでだろう?」って思うんですよね。

西野:わかるわあ。

のぶみ:この前も、あそこのサイン会ずっとしてたんですよ。そしたら、「“幼稚園頑張れ”って書いてください」っていうお母さんがいたのね。幼稚園行きたくないとか言ってるんでしょうね。で、「幼稚園行きたくないの?」って言ったら「幼稚園行きたくない!」って言って。何があったんだろう。「今幼稚園じゃないよ、今は幼稚園じゃないから」。「幼稚園行きたくなーい!」「今幼稚園じゃないからね」って。「ママ、ママといる!」「ママといるから」。幼稚園じゃないし、ママといる。もうずーっとそれが止まらなくて。

それでなんか俺が泣かせたみたいな感じになるじゃんか(笑)。「幼稚園行きたくない子なんですこの人」って。それで「俺じゃないんです」って(笑)。みんなに言わないといけないし。その子は幼稚園で何があったのかなって、いまだに謎だけどね。すごい、わかんないですよね。

西野:たしかにね、サインとかはなあ。ずっと続くとストレスですよね。

のぶみ:ずっとこうやって書いてて、サイン会って一見人気者みたいに見えるんだけど。ずっと書いててパッと顔上げると誰もいなかったりするんですよ。

西野:ああ、なるほどね、ありますよね。

のぶみ:なんか、利用されたなっていう気持ちになる。

西野:利用された(笑)。

のぶみ:なんかもう、ずっと使わされて、みんなの下僕となって書いて、書いた挙句だれもいないっていう。誰も最後、「わあ、おつかれさまでした」って言わないっていうね。

西野:はい。

のぶみ:でもすごい多いですからね、サイン会もね。