飛び込みの際にお腹を打ってしまうと痛い理由

マイケル・アランダ氏:滑らかな飛び込みとは異なり、飛び込みの際に腹を打ってしまう音は、プールの反対端からでもよく聞こえてしまいますよね。「パン!」という大音響がしますし、本人は水の上に浮いているしで、誰かやらかしたかはすぐにわかります。恐らくお腹は、痛々しく真っ赤になっていることでしょう。

ありがたいことに、腹打ち飛び込みをしても、深刻なダメージを受けることはありません。しかし、ちゃんとした方法での飛び込みよりも、はるかに大きな痛みを伴います。これはすべてアイザック・ニュートンの責任です。

いいえ、違いますよね。実はこれは物理法則が原因です。それも、ニュートンが発見した運動の法則により説明がつくものです。

ヒトの身体大の量の水が、プールに飛び込んだ際に瞬間的に移動すると、腹に大きな圧力が加わります。身体が、同じスペースの水と入れ替わる必要があるからです。

ニュートンの運動法則によれば、ヒトの身体が水を押しのける圧力に関与するものは、2つあります。身体が押しのける水の質量と、速度です。速度に影響を与えるのは、主に飛び込み台の高度です。高い位置の台から飛び込むと、水に衝突する速度は速くなります。つまり、水が逃れようとするスピードが速くなります。

しかしこれは高度に限った話です。上手な飛び込みと、腹打ち飛び込みとの違いは、これだけではありません。実際に関係してくるのは、移動する水の量です。

上手で優雅な飛び込みで移動する水は、指先のものだけで、大きな量ではないため、移動にかかる圧力はたいしたものではありません。上手な飛び込みと等しいスピードで飛び込んだとしても、身体の前半分が一度に水と衝突する腹打ち飛び込みと比べると、残りの身体全体が後から来ても、それは少しづつの移動であり、微々たるものだからです。

腹打ち飛び込みでは、10から20倍の量の水が、10から20倍の圧力を伴い、同等の時間での移動を要します。ヒトの身体が水に及ぼす圧力と等しい圧力が、身体に跳ね返ってくるのです。これは、ニュートンのもう1つの運動法則です(第三法則を示す)。つまり腹打ち飛び込みでは、上手な飛び込みよりも、最大20倍もの圧力がかかるのです。

これほどまでに強大な圧力が、ヒトの胴体のように柔らかくて潰れやすい物に、瞬時にかかった場合、大きな痛みを伴って当然です。

ですから、今度飛び込みに失敗した場合は、アイザック・ニュートンさんに文句を言ってあげましょうね。