「どうやって小説家になればいいのかわからなかった」作家・鈴木光司氏が『リング』を書き上げるまで

小説家 鈴木光司さんの根っこ #1/2

小説家 鈴木光司さんの根っこ
に開催

『リング』シリーズや『仄暗い水の底から』などで知られる作家の鈴木光司氏が、シナリオ・センターの公開講座で講演。デビュー前の経験から『リング』を書き上げるまでについて語りました。

スピーカー

鈴木氏が覚悟を決めたきっかけ

鈴木光司氏(以下、鈴木):先ほど紹介されたように、僕は、文壇の松岡修造と。誰が言ったんですか。俺が言ったんですけれどもね(笑)。

職業として、完璧に、小説家になるというふうに決めたのは、大学に入る前。そして、大学は文学部に進学して、文学部の中でも潰しの効かないフランス文学というものを学んでいました。でも、実作がしたくてしょうがなかった。

そして、1つ大きな悩みがあったんですよ。それは、俺は絶対小説家になりたい。しかし、どうやってなればいいのかが、まったくわからない。これは、小説家になる、あるいは、シナリオライターになるとなったときに、みなさんそれぞれがたぶん抱えているんじゃないかと思う大きな悩み。

とりあえず新人賞を取ればいいということだとは思うんだけれども。

どのように考えたのかと言うと、小説家としてやっていける力があるのかどうかを見極めるためには、書くしかないわけだ。1人で書いていてもダメなんですよ。人の目に触れさせないと。

そして、人の目によってどのように評価されるか、これをやる場として、シナリオ・センターが一番最適ではないかと考えた。

ここの基礎を出て、本科に入って。本科のときは、20本のテーマを最短で駆け抜けていきます。大学生がシナリオ・センターに払う月謝、とにかく1本たりとも無駄にしない、月謝は1円たりとも無駄にしないというのが、僕の流儀でした。来る限りにおいては、絶対に書いて来る。月4本は必ず書いていた。だから、5ヶ月で終了です。

非常に褒められたことがあるんですね。「鏡」というテーマがあったんですよ。その鏡のときに、僕はなんと古代ローマ帝国のことを書いたんですね。アルプス越えをして、今からローマに攻め入るというときに、刀をバンって抜いて、自分の顔を映すんですね。

そしたら、ベタ褒めしてくれました。「なんてかっこいいんだろう」っていう感じで。鏡の使い方として、見たことも聞いたこともない。しかも、時代が古代ローマ帝国のカルタゴのハンニバルの話。そしたら、僕は気をよくして、ナンバー2を書き始めたんですよ。

僕は、そこから小説を書くようになりました。森先生と出会うことによって、僕はここに、シナリオ・センターに来た目的が徐々に果たせてきた。

「一体、自分はこのまま小説家を目指していいのだろうか」という疑問はずっとあったんですけれども、森先生が「オッケーだよ」というようなことを、直接は言わないんですけれども、僕はそれを察知しました。

ここまで来たら、もうこの道で行くしかない。自分で覚悟を決めたというところです。作家集団になると、もうテーマもないし、期限もまったくないわけです。あとは、作家デビューを目指すということになるわけなんだけれども。

ちょうど今くらいの季節、春のことだ。桜のシーズンだったと思うんですけれども。右斜め方向から、ものすごいインスピレーションがやってきました。とりあえず俺はワープロの前に座って、書き始めました。

そのときには、プロットとかあらすじは一切決めてないです。この先の展開はどうなるんだって、知るためには自分が書くしかない。自分が一体どのような小説を書くのか、その楽しみで書いていたようなものです。誰にも催促されなくても、自力で、ドーンとブルドーザーで行くように、書き上げていきました。

ここのゼミ形式ですよね。10人、15人くらい。読みながら、僕は、みんなの反応を見るわけです。今、俺が読んでいるのが、みんなにウケてるかどうか。ダイレクトにわかるわけですよ。「今日もウケた!」「今日もウケた!」という感じで、それをまた次の週に書くエネルギーに変えて、5月、6月、7月の3ヶ月で書き上げたのが、『リング』だったんです。

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