機内の空気の循環はどうなっているのか

オリビア・ゴードン氏:長時間のフライトの翌日か2日後に具合が悪くなったことはありませんか?

その原因は明らかに思えるかもしれません。「機内では空気を循環させているため、誰かの持つ細菌がほかの人へと循環するからではないか」と思うでしょう。

しかし、仮にフライト中に具合が悪くなったとしても、それは飛行機が細菌の巨大な培養基になっているというわけではありません。

そういう事態になってしまう空気の循環がどんなものか考えてみましょう。

例えば10列後ろの席にいる人から拾い上げた細菌が、送風口から顔に吹き付けられるかもしれません。ある意味でこれは正しいと言えます。

実際、飛行機では循環させた空気を一部使っています。ほとんどの飛行機では、機内の空気の半分は何度も何度もフィルターを通して循環させている空気です。

残りの空気は、エンジンのコンプレッサーを通ってきた飛行機外の空気で、機内の空気と混ぜ合わされてから機内に出てきます。

空気が循環されているからといって、それが病気の伝染する温床になっているわけではありません。実際、ほとんどの飛行機ではHEPAフィルターという高い吸着力を持つフィルターを備えています。

これは手術室やICUといった、バクテリアや細菌から隔離する必要のある場所に用いられているフィルターです。

このフィルターは小さな穴が開いていて、空気は通しますが、ホコリやバクテリアといった粒子はせき止める、いわば水切り器のような仕組みになっています。

HEPAフィルターの認証を受けるためには、0.3マイクロメートル、つまり1000分の3ミリの粒子を、最低でも99.97パーセントせき止めることが求められます。

飛行機内では1時間に20から30回空気が循環され、何度もフィルターを通るようになっています。さらに頭上の送風口から送られる空気は、壁の周りや自分が座っている列のあたりにとどまる設計になっています。

これはつまり、空気が前方や後方に流れることはない、というわけです。

こう考えると、吸い込む空気には、となりに座る人以外のバクテリアやウイルスは含まれていないことになります。

もちろん、隣に座る人がくしゃみをして、その結果体によくないものを吸い込むリスクは大いにあり得ます。しかしこのリスクは人と近くなるほかの状況、バスや電車、学校や職場とさして変わりません。

もし飛行機に乗って具合が悪くなったら、空気を恨むのではなくてその席に座ってしまったことを恨みましょう。