虫は光源を月だと思っている?

ハンク・グリーン氏:夜に電気を点けて外にいると、虫が明かりに向かってどんどんやって来て群がるじゃないですか? それにはちゃんとした意味があるのです。

いったいどういうことなのかって? どういうことかと言うと、誰もはっきりしたことはわからないんです。

でも、電灯や火など、明るく光っているものが、虫の本能を混乱させる可能性があると言っているいくつかの説があります。

明かりに引き寄せられる虫は正の走光性です。そして、その行動の背景には、こういった虫が夜に行動するときに月の光を頼りにしているという説があります。

こういった虫は夜行性である傾向が強く、多くは移住性です。だから、長距離移動で迷わないようにするために、月に対して一定の方向にいようとするのです。

そこで先ほどの説ですが、「こういった虫が暗闇で見つけた電灯のような明かりをすべて月と勘違いしてしまうんじゃないか」ということなのです。これは特定の虫が電灯の周りを狂ったようにぐるぐる回る理由も説明できますね。

虫は一度月だと思い込んだ光る物体に到達すると、光源への方向を激しく変え続けて、その結果、自分たちが文字通りループを描いちゃってるってことですね。

でもこの説にはいくつか問題があるのです。

1つは、正の走光性を持った虫がみんな移住性というわけじゃないし、みんなが移動するときに月を指針にしているとは限らないということ。その上、これはなぜ虫が明かりに向かって行くのかの説明にはなっていません。だって虫は月に向かっていくわけじゃないんですからね。

そこで、長距離ナビゲーションよりではなく身を守ることに関わる別の説があります。

キャンプファイヤーを食料源だと勘違い

明かりは遮るもののない道であるという印にもなります。それは捕食者から逃げようとしていたり、単にB地点に行こうとしていたりする場合に役立つものですよね。

そこで、もし虫が明かりを邪魔者がいないエリアだというサインと考えるならば、なぜ虫が明かりに向かって行こうとするかがわかりますね。

そしてそれはまた、なぜ虫が電気虫取り器や火に飛び込んで行くかも説明しています。なぜなら虫は光源がそんなに近いとは思っていないからです。

もう1つ考えることがあります。多くの虫たちは紫外線を検知することにとても長けているのです。花が虫を引き寄せるために紫外線を反射するときに利用される能力ですね。

だから正の走光性の虫が、あなたたちのランプやキャンプファイヤーに向かって行くのは、本能的にそれが自分たちの欲しているもの、たとえば食料源だと思うからなのです。

もちろん、それについては彼らを本当にかわいそうだと思いますよ。

でももし今度ランプに突進して来る虫を見たら、昆虫学者でさえなぜ虫がそんなことをするのかはよくわかっていない、ということを覚えておいてほしいですね。おそらくもう少し研究が進めば、そのうちわかるようになるでしょう。