「1回やってみないか?」コンビニ販売のチャンス到来

井手直行氏(以下、井手):インターネットだけに特化してそこだけ一生懸命やっていたら、営業してないのにインターネットの評判を聞いて、そういう問屋さんとか酒屋さんが「くれ」と言い出す。不思議だなぁと思って。

ぷしゅ よなよなエールがお世話になります

だけどインターネットだと少しの労力で、見ようと思ったら全国どこからでもホームページが見られるわけじゃないですか。

「そういえば、インターネットがなかったら僕らのきっかけにはならなかったな」と。だんだん人気が出てきて、ちょうどローソンさんの目に留まって、「ローソンで扱いたいんだけど、ただ売れるかどうかわからないから」と。

業界では「スポット配荷」と言うんですけど、1回だけ仕入れて売り切れたら終わりというね。

三浦崇典氏(以下、三浦):スポットって言うんだ。

井手:そうなんです。ふつうは「定番」と言って、ずーっと置くんですけど。こういうものは1回だけ仕入れて、売り切れ御免みたいなね。

三浦:もしよかったらまたやるかもしれないと。

井手:そう。よかったらまたやるかもしれない。だけど基本的には、「1回だけちょっとやってみよう」。それで、「うわっ、これはチャンスだ!」と思ったんです。

大事な案件なので、東京の星野(佳路氏)に長野からテレビ会議でつないで、「ローソンからこういう話が来たんで、今度やりますから」と言ったら、「絶対ダメ!」って言うんですね。

三浦:え~っ!

「コンビニを信用するな」星野氏と大喧嘩

井手:「コンビニを信用しちゃダメだ」と。

(会場笑)

井手:昔、コンビニでひどい目に遭ったんですよ。「買います」と言われたと思ったら、ぜんぜん売れないし、返品の山だったり。彼らは欠品したくないからすごく多めに注文するんだけど、ガサーッと返品が来る。

三浦:(会場の)みなさんがすごくうなずいてる。

(会場笑)

井手:そういう苦い経験があったので、「あいつらはひどい」と。だからそのコンビニで、しかも、「よなよなエール」がせっかくインターネットで売れてきたのに、ここでコンビニで売れなくなってカットされたとかあると、悪いイメージがつくから。

「口車に乗せられたらダメだ」と言われて。なるほどと思いますけど、僕もそれで頭にきて「そんなことやってるからよなよなエールはダメなんだ!(机をたたく)」。

「あなたがそんなことやってるから、この体たらくなんだよ!」と言ったら、「なに言ってるんだ、この!」みたいなね(笑)。

当時はけっこうなカリスマ社長になってきてて、(星野リゾートが)全国規模になってきたんですよ。だけど僕にとってはたまにしか会わない非常勤の社長なわけです。「ビールのこともよくわかんないくせに!」とか思って。

「井手さん、コンビニと組む時は、コンビニにうちのビールを育てていく覚悟があるかどうかを確かめてほしい」とか。「そんなコンビニないよ!(机をたたく)」。

(会場笑)

語り継がれる“ローソン事件”

井手:昔と違って、今はインターネットでけっこう売れてきてて、すぐ検索で引っかかるようになってきてるから、もしコンビニで売られなくなっても、ファンはインターネットで「よなよなエール」って検索したら楽天市場が出てくるからフォローできます、と。

三浦:確かに。

井手:だけど「イメージが悪くなるからダメだ」と言われて。「いや、もうダメって言われてもやりますからね」とかって言って、「誰が許可するか!」なんて言われて。

「時間です」とアシスタントが止めに入ってきたんですけど、「会議は終わってない!」とかって言って。

「社長、次の会議です」って連れて行かれて。「井手くん、僕は許さないからね!(バンバン)」「お前の話なんか聞くか!」みたいな。

(会場笑)

井手:カリスマ社長にそう言われて。もう子供の喧嘩ですよ(笑)。

山本海鈴氏(以下、山本):え~っ(笑)。

井手:今は20個ぐらい会議室があるけど、当時は1個しかなかったんですよ。会議室の周りが全部オフィスで、事務所の人に聞かれてて。

日頃は社長が怒鳴って、感情的になってるのを見たことないから、「社長を怒らせてるのは誰だ?」「ヤッホーの井手さんらしいよ」「井手さんクビだ!」みたいな。

(会場笑)

井手:これが「ローソン事件」と言って……。今、思っても頭にきちゃうんですけど、もう語り草になってます。

その夜、届いた星野氏からのメールに衝撃

三浦:結果的に売れたということですよね?

井手:それで頭にきて、もう無視して売ろうと思って。基本的に社長の言うこと聞かないんです。自分がいいと思ったら、カリスマ社長がなんと言おうとも、テコとして動かないですね。

そしたら、その日の夜、星野からメールが来たんですよ。「このやろう、俺は絶対に曲げないぞ」と思って! 当時も頭カッカしてるので、夜まで。

どう言い訳しようと思って、パッとメールを開けたんですよ。そしたら、「いや〜、井手さん、今日はおもしろかったね〜」とか書いてあるんですよ。「はぁ!? おもしろかった!?」みたいな(笑)。

(会場笑)

僕はカンカンなわけですけど、彼は冷静になって、おもしろかったなぁなんて。久々に熱い議論をして、昔の所長は宮井さんていうんですけど、「宮井さんと熱い議論をしてた10年くらい前を思い出しちゃったよ」とか言ってて。

「あのときはああ言ったけど、井手さんの言うことも一理あるね。ちょっとその方向性も考えてみようか」みたいなことも言っていて。

「こいつすげぇな」と思ってね!(笑)。

この切り替えの早さ。一時は感情的になってたけど、パッと切り替えて。クビになってもおかしくないんですけど、「おもしろかったね、また考えてみよう」と。もうすごい人だなと思いました。

三浦:井手さんも商品のことを真剣に考えてるということが伝わったんですね。

井手:いや〜、どうでしょうね。

ローソンの定番商品として定着

ちょっと長くなっちゃったんですけど、それで、結局ローソンに入れていいということになって。そこから、たまにスポットが来るようになって、今では何年も定番で、ローソンの棚の1列くらいがうちのビールです。

ちなみにローソンさんのビールで4つだけ定番商品があるんですよ。絶対置きなさいと言われている商品。フランチャイズのお店は、置いても置かなくてもいいよと。

その4つの銘柄は、アサヒスーパードライ、キリン一番搾り、サントリープレミアムモルツと、「僕ビール、君ビール。」なんですよ!

(会場驚きの声)

井手:エビスとかサッポロ黒ビールは外れてるんですよ!

前は、よなよなエールだったんです。よなよなエールで1年くらいそうなって、4つしか選べないから、これ(僕ビール、君ビール。)が出たら、こっち(僕ビール、君ビール。)のほうがローソン専用で売れるようになって。

すごいですよねぇ! 星野の言うこと聞かなかったから!

(会場笑)

山本海鈴氏(以下、山本):井手さんの、そこは絶対いくぞっていう(お気持ちがあって)。

三浦:そこから今度は海外進出なんですか。

井手:海外進出は、5年くらい前からやり始めましたけど、本当に力を入れだしたのは、この1、2年くらい前からです。

今、アメリカはすごくいい感じで。アメリカのうちの提携のインポーターさんもすごくやる気になって、ブワーっとシェアが上がってます。