商品開発のスタート地点は?

山本海鈴氏(以下、山本):では、次、手を挙げられていた方、お願いいたします。

質問者7:ふだんビールを買わないのに、ローソンで(「僕ビール、君ビール。」の)カエルと目が合って以来、冷蔵庫にずっと買い置きしています。

井手直行氏(以下、井手):まじですか! すごい! ありがとうございます!

質問者7:ありがとうございます。ちなみに作文も出しちゃいました。

井手:ありがとうございます。

質問者7:4月からメーカーで商品企画を担当することになりまして、東京に転勤になりました。よなよなエールは、味とコンセプトとパッケージがすごく合致してるなと思うんですけど、どこがスタートなのかなと。

商品開発するとなったときに、コンセプトありきなのか、味が作られていてそれに対してパッケージをあてているのか、スタートの部分がどこなのかをお聞きしたいです。

井手:それはよなよなエールに対してですか? ほかも?

質問者7:全部ですね。とくにカエルが好きなので、カエル(笑)。

ターゲットを絞り、その人たちのリアルな声を聞く

井手:最初は星野たちが中心にやってたので、いろんな高度な経営理論から入っていってたんですけど、それは私にはとてもできないので。

最近やってるのは、まずどういうニーズがあるか、というところから入るんです。カエル君(「僕ビール、君ビール。」)の場合でいくと、そもそもローソンさんが、「若い人がビール飲まないから(若者向けのビールを造ってほしい)」と大手さんにお願いしても、うまくいった試しがないと。

「ヤッホーブルーイングさんだったらやってくれそうな気がするからどうだい?」と言われて、「やったことないけど、やりましょう」というところからスタートする。

じゃあ、若い人がターゲットだなと。だけど、若い人といっても幅が広いから、僕らのお得意な、もっとターゲットを絞るんですよ。若い人のどこにしようかと言ったときに、僕らはいろいろ考えて、30代前後くらいの男性に絞ったんです。そのときは、若い人といっても、男性・女性だったら、女性は「水曜日のネコ」があるし。若い男性向けのビールはないから、若い男性にしようと。

20代前半と30代でもぜんぜん違うけど、20代前半はさらにビール飲まないんですね。ここを狙うよりは、あまり飲まないけど、それよりは飲む30代前後くらいの男性のほうがまだ同じターゲットのなかでも可能性があると言って、30代前後くらいの若い男性をターゲットにする。ここが先。

その人のインタビューをしようというのが、次のステップ。それも全部自分たちでやるんですよ。大手さんみたいに代理店を使って何千人とかやらないんです。友達の友達を3人くらい連れてきて、「君、ビール飲む?」「ビール飲まないですね」みたいな。「ふ〜ん」とか言って。

「お酒飲まないの?」「お酒は飲みますよ」「何飲むの?」「チューハイ」「なんでビール飲まないの?」「いや〜、だってビールっておじさんの飲み物じゃないですか」とかね。

いろいろ出てくるんですよ。「なんでビール飲まないの?」「おじさんの飲み物」「会社の上司に無理やり連れていかれるイヤな思い出がある」「苦い」「アル中の象徴」とか。

山本:すごい(笑)。

「僕ビール、君ビール。」が誕生するまで

井手:すごいのが出てくるわけですよ。だけど、お酒は好きなんですよね。お酒は好きだけど、ビールに対してイメージが悪い。味も苦いのが嫌い。上司に無理やり連れていかれるのがイヤだから、人との付き合いは嫌いなのかなと聞いたら、「いやいや、友達と一緒にいる時間は好きっすよ」と。

「居酒屋でなにしてんの?」「チューハイ飲みながら、みんなでスマホいじってます」「SNS大好きです」とかみんな言うわけですよ。友達は好きなんだな、と。

「ほかに好きなものない?」「ムーミン好きです」「ムーミン!」「あと、グーグルのキャラクターのドロイド君ってロボット好きっす」とか。そういう意見が出てくると、ゆるキャラが好きなんだな、と。

大手のビールのイメージを払拭する若い人好みの味付けからコンセプトのものがあったら……、しかもダサくない、ダサいと言ったら大手メーカーに怒られちゃいますけど(笑)。若い人がフックするようなコンセプトだったら、この人たちは振り向いてくれるんじゃないかという仮説を立てて。

ゆるキャラが好きだ。だから、カエルができた。カエルの前に5つくらい案出したんだけど、カタツムリ、ロボット、宇宙人とか、僕らなりに。

「大人のビールじゃなくて、君たちの世代のために造ったビールなんだよ」というメッセージが、僕ビール、君ビール。

味もふつうのビールの苦さをグッと抑えながら、あきらかに果実の香りがして、「これビールなの!?」と思うくらい違いを持たせていけば、振り向いてくれるんじゃないかなと思って。そういう味の指示をそこから製造に出して、製造はいろんな味のスタイルから、このへんがいいんじゃないかなと。

素性がよくわかる人たちの本音を深掘り

マーケティング部門は、それに合ったキャラクターをターゲットに、今度は10人か20人くらいに調査したら、カタツムリとかロボットとかいるなかで、カエルが8割くらいいいと言うわけですよ。僕はカタツムリがいいと思ったんですよ! 絶対カタツムリがいいと思ったら、カタツムリは気持ち悪いと言われちゃいまして(笑)。おじさんの意見はダメなんだなと思って。

(会場笑)

ここまで個性を絞った上で、8割が支持するというのは、これはすごいんですよ! これは、過去に例がないくらいで、このネーミングもすごくいいと言われたので、香りとか味も好きだと言われたので、このビールはすごく売れるだろうなぁと思って出したら、大ヒットした。

というのが開発のストーリーで、市場調査といっても、講演のときは「市場調査をやって!」と言うんですけど、だいたい「市場調査ね〜(苦笑)」みたいな。

実は、友達の友達に最初3人聞いて、2時間くらい深堀りして、仮説を立てたら、今度は星野リゾートの事務所に行って、ターゲットの人を10数人連れてきて……。全部知り合いからなんです。知り合いとか友達の友達。それで深堀りする。

その人の素性がわかっているから、「この人はビールあんまり飲まないよな」なんて、よくわかってるから。疑問点が出てきたら、追加インタビューをしたりとかってやって、生まれた商品。

そんなんでヒットするからおもしろいよね(笑)。という話を、いろんな講演のときとか、大手のデザインの方もいるなかですると、「おもしろいけど、自分たちの会社ではできない」と言われますよね。こんな感じでやってます!

質問者7:ありがとうございます。

これからもずっと飲み続けていいですか?

山本:ありがとうございます。では、あと、何名様いらっしゃいますか? 4名様。

井手:僕の話が長いんですね(笑)。もうちょっと的を射て話します。

質問者8:すごくどうでもいい質問なんですけど、いいですか?

井手:どうぞ! 待ってました!

質問者8:私、40代で、毎日ビール飲んで、ビール好きなんです。これからも飲み続けていいですか?

井手:いいとも! ありがとうございます!

(会場笑、拍手)

質問者8:あとで、「飲んでもいいぜ」みたいなサインがほしいです。

井手:サインします。

山本:サインのご希望です(笑)。

質問者8:以上です!

山本:ありがとうございます。