2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
よなよなエールのヤッホーブルーイング・井手社長に聞く!愛されるヒット製品を生み出す秘訣とは?〜天狼院×よなよなビアフェスタ〜特別にビールもご用意しております!(全6記事)
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山本海鈴氏(以下、山本):では、次、手を挙げられていた方、お願いいたします。
質問者7:ふだんビールを買わないのに、ローソンで(「僕ビール、君ビール。」の)カエルと目が合って以来、冷蔵庫にずっと買い置きしています。
井手直行氏(以下、井手):まじですか! すごい! ありがとうございます!
質問者7:ありがとうございます。ちなみに作文も出しちゃいました。
井手:ありがとうございます。
質問者7:4月からメーカーで商品企画を担当することになりまして、東京に転勤になりました。よなよなエールは、味とコンセプトとパッケージがすごく合致してるなと思うんですけど、どこがスタートなのかなと。
商品開発するとなったときに、コンセプトありきなのか、味が作られていてそれに対してパッケージをあてているのか、スタートの部分がどこなのかをお聞きしたいです。
井手:それはよなよなエールに対してですか? ほかも?
質問者7:全部ですね。とくにカエルが好きなので、カエル(笑)。
井手:最初は星野たちが中心にやってたので、いろんな高度な経営理論から入っていってたんですけど、それは私にはとてもできないので。
最近やってるのは、まずどういうニーズがあるか、というところから入るんです。カエル君(「僕ビール、君ビール。」)の場合でいくと、そもそもローソンさんが、「若い人がビール飲まないから(若者向けのビールを造ってほしい)」と大手さんにお願いしても、うまくいった試しがないと。
「ヤッホーブルーイングさんだったらやってくれそうな気がするからどうだい?」と言われて、「やったことないけど、やりましょう」というところからスタートする。
じゃあ、若い人がターゲットだなと。だけど、若い人といっても幅が広いから、僕らのお得意な、もっとターゲットを絞るんですよ。若い人のどこにしようかと言ったときに、僕らはいろいろ考えて、30代前後くらいの男性に絞ったんです。そのときは、若い人といっても、男性・女性だったら、女性は「水曜日のネコ」があるし。若い男性向けのビールはないから、若い男性にしようと。
20代前半と30代でもぜんぜん違うけど、20代前半はさらにビール飲まないんですね。ここを狙うよりは、あまり飲まないけど、それよりは飲む30代前後くらいの男性のほうがまだ同じターゲットのなかでも可能性があると言って、30代前後くらいの若い男性をターゲットにする。ここが先。
その人のインタビューをしようというのが、次のステップ。それも全部自分たちでやるんですよ。大手さんみたいに代理店を使って何千人とかやらないんです。友達の友達を3人くらい連れてきて、「君、ビール飲む?」「ビール飲まないですね」みたいな。「ふ〜ん」とか言って。
「お酒飲まないの?」「お酒は飲みますよ」「何飲むの?」「チューハイ」「なんでビール飲まないの?」「いや〜、だってビールっておじさんの飲み物じゃないですか」とかね。
いろいろ出てくるんですよ。「なんでビール飲まないの?」「おじさんの飲み物」「会社の上司に無理やり連れていかれるイヤな思い出がある」「苦い」「アル中の象徴」とか。
山本:すごい(笑)。
井手:すごいのが出てくるわけですよ。だけど、お酒は好きなんですよね。お酒は好きだけど、ビールに対してイメージが悪い。味も苦いのが嫌い。上司に無理やり連れていかれるのがイヤだから、人との付き合いは嫌いなのかなと聞いたら、「いやいや、友達と一緒にいる時間は好きっすよ」と。
「居酒屋でなにしてんの?」「チューハイ飲みながら、みんなでスマホいじってます」「SNS大好きです」とかみんな言うわけですよ。友達は好きなんだな、と。
「ほかに好きなものない?」「ムーミン好きです」「ムーミン!」「あと、グーグルのキャラクターのドロイド君ってロボット好きっす」とか。そういう意見が出てくると、ゆるキャラが好きなんだな、と。
大手のビールのイメージを払拭する若い人好みの味付けからコンセプトのものがあったら……、しかもダサくない、ダサいと言ったら大手メーカーに怒られちゃいますけど(笑)。若い人がフックするようなコンセプトだったら、この人たちは振り向いてくれるんじゃないかという仮説を立てて。
ゆるキャラが好きだ。だから、カエルができた。カエルの前に5つくらい案出したんだけど、カタツムリ、ロボット、宇宙人とか、僕らなりに。
「大人のビールじゃなくて、君たちの世代のために造ったビールなんだよ」というメッセージが、僕ビール、君ビール。
味もふつうのビールの苦さをグッと抑えながら、あきらかに果実の香りがして、「これビールなの!?」と思うくらい違いを持たせていけば、振り向いてくれるんじゃないかなと思って。そういう味の指示をそこから製造に出して、製造はいろんな味のスタイルから、このへんがいいんじゃないかなと。
マーケティング部門は、それに合ったキャラクターをターゲットに、今度は10人か20人くらいに調査したら、カタツムリとかロボットとかいるなかで、カエルが8割くらいいいと言うわけですよ。僕はカタツムリがいいと思ったんですよ! 絶対カタツムリがいいと思ったら、カタツムリは気持ち悪いと言われちゃいまして(笑)。おじさんの意見はダメなんだなと思って。
(会場笑)
ここまで個性を絞った上で、8割が支持するというのは、これはすごいんですよ! これは、過去に例がないくらいで、このネーミングもすごくいいと言われたので、香りとか味も好きだと言われたので、このビールはすごく売れるだろうなぁと思って出したら、大ヒットした。
というのが開発のストーリーで、市場調査といっても、講演のときは「市場調査をやって!」と言うんですけど、だいたい「市場調査ね〜(苦笑)」みたいな。
実は、友達の友達に最初3人聞いて、2時間くらい深堀りして、仮説を立てたら、今度は星野リゾートの事務所に行って、ターゲットの人を10数人連れてきて……。全部知り合いからなんです。知り合いとか友達の友達。それで深堀りする。
その人の素性がわかっているから、「この人はビールあんまり飲まないよな」なんて、よくわかってるから。疑問点が出てきたら、追加インタビューをしたりとかってやって、生まれた商品。
そんなんでヒットするからおもしろいよね(笑)。という話を、いろんな講演のときとか、大手のデザインの方もいるなかですると、「おもしろいけど、自分たちの会社ではできない」と言われますよね。こんな感じでやってます!
質問者7:ありがとうございます。
山本:ありがとうございます。では、あと、何名様いらっしゃいますか? 4名様。
井手:僕の話が長いんですね(笑)。もうちょっと的を射て話します。
質問者8:すごくどうでもいい質問なんですけど、いいですか?
井手:どうぞ! 待ってました!
質問者8:私、40代で、毎日ビール飲んで、ビール好きなんです。これからも飲み続けていいですか?
井手:いいとも! ありがとうございます!
(会場笑、拍手)
質問者8:あとで、「飲んでもいいぜ」みたいなサインがほしいです。
井手:サインします。
山本:サインのご希望です(笑)。
質問者8:以上です!
山本:ありがとうございます。
次の方、ちょっと遠くになってしまうので、マイクで大きめのお声で喋っていただけると、福岡の方につながるかなと思いますので、お願いします。
質問者9:年間会員2年目です。
井手:お〜! ありがとうございます! 年間契約という通販のサービスがあるんです。
質問者9:いろいろあるんですけど、1つ。経営者として参考にしていらっしゃる経営者とか会社とか、経営者以外の人とか。なにかあれば教えてください。
井手:一番手近なところで……手近と言うと怒られるな。
(会場笑)
星野(佳路)と三木谷(浩史)さんは、すごく距離が近いので、そしてすごい人たちなので、とても勉強になっています。大いに刺激を受けていて、2人が有名じゃないときから、三木谷さんは僕らが売れだしてから、交流を持てるようになったんですけど。
起業したのも同じ年で、楽天市場も三木谷さんがうちに営業に来てた。星野リゾートも当時は軽井沢の企業でしかなかったのが、今はけっこう全国に出ていて、そういう知名度がないときの2人をずっと知ってて、大きくなっているという道筋や足跡というのは、とても参考になっていて、彼らができるんだったら、自分にもできるんだというのは、すごく感じます。
あとは、稲盛(和夫)さんは、人としても経営者としてもすばらしいなぁといつも思っていて、いつかお会いしたいと思っているんです。
あと、グーグルのラリー・ペイジとか、最近はテスラモーターズの電気自動車やってるイーロン・マスクとかというのは、もうぶっ飛んでて、すごく尊敬してます。イーロン・マスクという、テスラという車を作ってる経営者はすごいんですよ。ロケット事業もやってるんですけど。
山本:そこに本(『イーロン・マスク 未来を創る男 』)が。
井手:ありますね。彼のミッション、将来の目的は、人類を火星に移住させることなんです。
三浦崇典氏(以下、三浦):火星に行く、じゃなくて、移住させるんですもんね。
井手:そのためにロケット事業をやっているんですよ。もう「えぇ!?」みたいな。そういう人がいるんだと思うと、まだまだだなと思って、とても参考にしております。そんな感じで。
質問者9:わかりました。ありがとうございます。
山本:ありがとうございます。では、お次の方、いきましょうか。
質問者10:ありがとうございます。よろしくお願いします。先ほどから、若い人は20代が一番多いという話が出てて、採用はどうなっているんだろうなというのがすごく気になりました。どのポイントを一番見てるのか。こだわっているポイントがあったら、ぜひ教えてください。
井手:それは言いにくいなぁ。なぜなら、採用試験を受けた方が何人かいるんですよ、ここに(笑)。
三浦・山本:えー!
井手:うち、評価制度というのがありまして、9項目の評価制度があるんです。達成志向性とか、顧客志向とか、計数管理、戦略的行動とか、そこに定義がいろいろあるんですけど。それで社員を評価しているんです。
それは結果重視じゃなくて、行動評価なんです。こんな行動を取ったら顧客志向というのがA評価だとか。実は、採用面接もそのまま使ってるんです。
社員を評価している同じ9項目の基準で、うちの社員で取ったら、この人はBとかCとか平均値が出るわけなんです。うちの社員がこれくらいなのに、新しい新卒でも中途でも、その基準がわかってるから、そこですごい人たちがいると、この人すごいなと。
僕らの9項目の基準で評価したら、すごく高い点数になって、これは僕らがよしとする評価を面接の段階で高得点を取っているので、うちの会社に来てもスムーズに成果を出してくれるだろうという。そこで見てます。
あとは、根本的には、経営理念にすごく共感してくれている人じゃないと、どんなに優秀でも採ってないです。
説明会や面接を通していろんな話をしたなかで、そこに共感してる人じゃないと採らないです。ただ、「ビール好きだから」と言ったら、どんなに優秀でも採ってないです。同じ方向を向けないので。そんな感じでやっています。
山本:ありがとうございます。では、最後の方のご質問いきますね。
質問者11:非常にトガったことをされている会社だなと思っていますので、その上で、要望というかお願いがあって。私、お酒飲めないんです。(会場で)今日ももらったんですが、飲めません。2口くらい飲むと真っ赤になって寝てしまうくらいなんですけど。
今、みんなのなかで話題なんですよね。コンビニ行くと、「これ、見るよね〜」と。ということで、今ずっと話をうかがっていると、ビールを飲まない人に対して市場開拓をしていくというのが1つで、ビールを飲めない人、アルコールを飲めない人になにかアプローチはしないのかなと。そういうトガったところを。
井手:よく言われるんですけど、結論から言うと、将来はわからないですけど、現時点ではまったく考えてないんです。そこは、大手さんがノンアルコールビールとか、そういうのはいっぱい作られているから、それは大手さんがやれるところかもしれないなと思って。
だけど一番の理由は、アルコール分をなくしておいしいものを作れる自信がないんです。僕らは、アルコールとして、味わいとか香りがあるものはおいしく作る自信があるんですけど、アルコールをなくすと、味わいがだいぶ落ちちゃうんです。
人によっては、それでも十分おいしいという方がいらっしゃると思うんですけど、僕らの基準でおいしいと思えるものができてなくて。だから、そこに労力をかけるよりは、まだまだビールとして僕らのことを知らない方が日本中に山ほどいるので。
ちっちゃな会社なので、いろんなところに経営資源が向けられないので。まずはそっちにもっともっと飲んでもらい、広めることを中心にしながら、ただ、もっと技術力が上がっていったり、そこもいっぱいになったら、そういうところも考えようかなと思っています。
今はまだビールとして届けられていない方に届けることを最優先で考えているので、もうちょっと後というか……。将来的にそういうところは、ぜひいきたいなと思うんですけど、現時点では、力不足もあって、まだ考えておりません。申し訳ありません!
質問者11:楽しみに待っています。
井手:はい、ありがとうございます。しかと覚えておきます。
山本:最後、福岡でもう1名いらっしゃるので、その方で最後にしていきたいと思います。お願いいたします。
質問者12:ヤッホーブルーイングさんのビールを買い始めて6年くらいになります。
井手:ありがとうございます!
質問者12:今までのシリーズ、だいたいシーズナルバージョンのやつとかも全部とってあるんですね。
井手:すごい。
質問者12:ほかのみなさんが経営方針とか聞かれててすごいんですけども、単純にファンとして聞きたいことがいくつかあります。
1つ目は、バーレーワインをもっとやらないのかなと。バーレーワイン、私けっこう好きだったんです。私、醸造酒が好きなんですけど、日本ワインとか日本酒が好きで。杜氏(日本酒醸造の職人集団)さんのなかにもふつうにビールファンの方がいらっしゃるので、一緒に飲んだりして、そこで酒造りの時期に酒床に持って行って、ヤッホーブルーイングさんのビールを持ってって、「これおいしいですよ」って紹介したことあるんです。
井手:あはは(笑)。ありがとうございます。
質問者12:「おいしい」って言ってくれて、バーレーワインとかもおいしいなと思うので、主流ではないかもしれないんですけど、バーレーワインの熟成のタイプとかやっていかないのかなというのがちょっと気になっています。以前、「バレルフカミダス」とか出されてましたけど、それも最近きてないなというのがちょっと気になっています。
2つ目が「軽井沢高原ビール」のシリーズ、いろんなタイプを出されているのって、どういうふうに決めて毎年出されているのかな、と。タイプがいろいろ出てますよね。それをどういうふうに出されているのかなというのが2つ目です。
井手:ありがとうございます。
バーレーワインは「ハレの日仙人」のことですか? 「バレルフカミダス」のほう?
質問者12:仙人のほう。
井手:ハレの日仙人は、今、造ってなかったっけ?
スタッフ:毎年、造ってます。
井手:今、売ってるかな。ハレの日仙人はシリーズとして毎年レシピを変えて造っていて、売り切れてたまに欠品になったりするんですけど、基本的にはこれはやりながら。
バレルフカミダスもね。バレルフカミダスという樽熟成のやつがあるんですけど、これを出してないのは単純な理由で、忙し過ぎて!(笑)。
あれ手作業なんですよ。ウイスキーとかバーボンとかワインの樽を海外から持ってきたり、国内のウイスキー屋からもらってきて、そこに1、2年熟成させたバーレーワインを漬け込んで造るんです。樽がなかなか入手できないというのと、手作業なので、忙し過ぎてできないという。
ただ、この間、樽をいくつか入手してきたから、「秋くらいにバレルフカミダスを何本かやりたいね」と言って。秋になります。バレルフカミダス! だけど、瞬殺なんですよね(笑)。インターネットで販売して、5分、10分くらいで全部ソールドアウトしちゃうので。告知しますから、頑張って競り落としてください(笑)。
(会場笑)
井手:あと、軽井沢高原ビールのレシピは、みんなが、「来年のシーズナルなににする?」と言って、適当にみんなが案出して、そこからおもしろそうなのを議論で詰めていって決めてます。
基本は、全部がマーケティング指向だとおもしろくないから、シーズナルは全面的にうちの製造部門、醸造を中心とした人間が、醸造がやりたいのやっていいよという。売れるかどうか考えなくていいから、製造中心に考えてるのが、軽井沢高原ビールのシーズナル。
マーケティングからきてるのが、この全国版の「僕ビール、君ビール。」とか、「インドの青鬼」とか「水曜日のネコ」というふうに分けているので、製造の人間がアイデアを練って。
だけど、一応参考にしたいから、全社員に募って、そこで出たものを製造がいろいろ絞って、スタイルを2、3個選んで、それのモデルとなる試験ビールを造ったり、海外のビールでそのスタイルのビールを取り寄せて、有志でテイスティングして、意見を聞きながら絞りこんでいるっていうのを、毎年やっています。
売れるかどうかはあまり気にしてないです。軽井沢高原ビールのシーズナルはバラエティを提供して、ファンにこんなビールもあるんだよってお知らせするスタイルなので。いろいろやり方を変えてやっております。
以上でございます! ありがとうございます。
山本:ということで、予定時間は15分までだったんですけど。
井手:本当だ。すみません、ベラベラしゃべりすぎちゃって。
山本:とんでもないです! すごくたくさんのお客様に来ていただきまして、大盛況で。暑かったかもしれませんが。
お時間としてはここで1回終了ということで。このあとは、本もございますので、サインなど。
井手:ここのお店は何時までなんですか?
山本:こちらは22時までやっておりますので、まだビールとかお飲みの方は、飲んでいただいて。
三浦:ガンガン飲んでください。
山本:ということで、一旦ここで終了とさせていただきます。本日は、みなさん、お越しいただきありがとうございました。井手社長、本当にありがとうございました!
井手:いえいえ、みなさん、どうもありがとうございました! 福岡のみなさんもありがとうございました!
(会場拍手)
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