酸素が私たちに及ぼす影響
ハンク・グリーン氏:酸素は好きですか? 私も好きです。でも酸素が私たちを殺すって知ってました?
地球の大気に酸素は20パーセントしかありません。私たちは、窒素といったほかのガスも吸っているわけです。しかし細胞を働かせるために動物界には必須なのです。
呼吸の際、肺を通して空気から酸素を取り入れ、細胞に運びます。いわゆる細胞呼吸ですね。食べた物をエネルギーに変えるのもそうです。
酸素はずっと地球に存在していたわけではなく、地球の歴史の半分ほどの間しか存在していません。
生物を支える酸素が存在しだしたのは6億年前で、原初の生物には酸素が必要なかったということになります。つまり現在の私たちは、過去の人類とは無縁だった問題に直面することになります。つまりそれが、酸素の危険な側面なのです。
みなさんも鉄のさびや、古くなったリンゴが黄ばむのを見たことがあると思います。あれが酸素です。酸素と化学物質が反応して起こる現象、つまり酸化です。
酸素というのは、オクテット則(原子の最外殻電子の数が8個あると化合物やイオンが安定に存在するという経験則)に基づいた小さなエレメントに過ぎません。
通常8個の電子が必要なのですが、酸素の原子は6つしかありません。そのためあと2個を求めて水素と結合します。この活動によって、人間は呼吸で糖分をエネルギーに変換できるわけです。
“フリーラジカル”に要注意
しかし科学者によれば、2パーセントの割合で酸素が不完全な状態になるといいます。そうして活動が荒くなり、そうなった状態はフリーラジカルと呼ばれます。
その状態になると、細胞のなかの脂肪やタンパク質、さらにはDNAまで、なんでもくっつけようとします。そうして分子を変化させ、時には傷つけさえします。
タンパク質や赤血球がそんなフリーラジカルにやられた場合、免疫機能によって安楽死のような状態にさせられます。こういった現象がガンを引き起こすとも言われています。
つまり、酸素で体内が錆びるわけです。この現象を、酸化ストレスと呼びます。これが老化に深く関係しているという科学者もいます。
白血球がフリーラジカルを使ってバクテリアを殺したりもするので、フリーラジカルが悪いとは一概には言い切れません。また、細胞同士の連絡をとり持っているとも言われています。
フリーラジカルのダメージを最小限に留めようとするのですが、抗酸化物質を用いて酸化ストレスと戦う方法がまさにそれです。
多くの食品に含まれるビタミンE、ビタミンC、ベータカロチンは、中和することによってフリーラジカルから体を守ります。
酸素……。やはりなくては生きていけません。