この4年間で起こった変化

大久保幸夫氏:リクルートワークス研究所の大久保でございます。よろしくお願いいたします。今、3つの課題のお話がありましたが、これはずっと長く古くからあり、かつとても重い課題です。

でも、先ほどの藤澤秀昭さん(経済産業省 経済産業政策局 経済社会政策室長)のお話にもありましたし、私も「ダイバーシティ経営企業100選」(平成27年より「新・ダイバーシティ経営企業100選」)の審査員を4年間務めているなかで感じているのですが、この4年の間で劇的に変わってきています。

長い間、私は雇用問題を担当していますが、女性活躍については昔から言われていたのにも関わらずほとんど変わってこなかったんです。ときどき景気がよくなると変わりそうな雰囲気が出てくる時もありますが、景気が悪くなった瞬間にくるっと元に戻ってしまうんです。そういうことを繰り返してきたので、長くこの問題に関わっている人は、3年ぐらい前までは「また同じでしょう。どうせまた一時的な話で、きっと景気が悪くなったら、元に戻るんだよね」とみんな言っていたんです。

ただ、今回は違うみたいです。もう明らかに、この4年間で変化が起こってきました。最初に変わってきたのが、東京にある大きい会社。ここがずいぶん変わりました。

逆に言うと、今は、東京と地方、あるいは大きい会社と小さい会社の差が広がってきた感じがあります。けれど、確実に変わってきている。もう一押し、そんなところまで来ているような気がしています。

ですので、このチャンスが到来している間に3つの課題を本格的にどうにかするために、課題を構造化、可視化することにチャレンジしてみました。これは午後のお話につながっていく内容になると思いますのでみなさんに共有したいと思います。

どうして仕事を辞めてしまうのか?

では、パワーポイントを見ていただきたいと思います。「『はたらく育児』3つの課題」ということでお話をしたいと思います。

まず、1つ目の課題です。妊娠・出産で仕事を続けられないという課題です。これは先ほど言われたとおり、妊娠をしたときに働いていて、出産してから1年経った段階で仕事をしていないという人が、出生動向基本調査によれば62パーセントになっている。

この数字はたびたび引用されていますが、実はこれは2010年のデータです。この次の結果はもう少しで出てくる予定ですが、少しよくなっていると思います。それでも、62パーセントは相当重い数字です。

さらに、先ほどの紹介にあったとおり、これはリクルートワークス研究所で実施した調査ですが、第一子を産んだあとに仕事を辞めてしまった女性の41パーセントが「辞めなければよかった」と後悔している。この構造をなんとかしたいというのが1つ目のテーマです。

では、「なぜ妊娠・出産のタイミングで辞めてしまうのか?」ということです。左側のほうにありますけれど、一番パーセンテージが大きいのは、「しばらくは育児に関わりたかった」という回答で43パーセント。そして、体調が不安定で、その後に育休があることはわかっていたけれど、その前で「もう無理だ」と思って辞めました、というのが21パーセント。

これは価値観の問題だったり、体調の問題だったりするので、こういう理由がすべてなのであれば、ある意味、致し方ないことだろうと思います。

でも、そうではない理由もけっこう多いです。この緑の枠で囲っているところを見ていただきたいのですが、「働ける環境ではない」というのが41パーセント。これは具体的には、労働時間が非常に長くて、さすがに育児しながら続けるのは無理だ、などということです。

あるいはもともと、どちらかというと、男性中心の職場で女性の働く環境があまり整っていないなかで、さらに子育てをしながらだとあまりにもハンディがあって、そこに付いていくのは難しいと感じる。そのようなことが理由になっているようです。

「働ける仕事ではない」というのは、たぶん「働ける環境ではない」ということと重なっているところもあると思うのですが、おそらく周りに出産後も仕事をしている人がいる職業分野ではないという意味合いが入っているのだと思います。これもけっこう多いですね。

妊娠を機に契約が打ち切られる、雇用の問題

もう1つ。けっこうショッキングなのは、「産休・育休取得条件を満たしていなかった」という人が34パーセントいることです。制度の面については、これほど整ってきたと言われているにも関わらず、34パーセントの人が「育休等の条件がその会社、働く場では整っていなかった」と言っています。

実はこれは雇用形態の問題と密接に結びついています。内閣府の別の調査である「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)レポート」というものを見ると、妊娠していたときに正社員で働いていた人の52パーセントは出産後も仕事を続けていますが、妊娠していたときにパートタイマーで働いていた人では18パーセントしか仕事を継続していません。

62パーセントの仕事を辞めた人すべてが出産を理由に辞めているわけではないのです。これはデータでもわかるのですが、けっこうな数の人が「期間契約満了」で辞めています。その人自身は、子どもを産んだあとも働く気だったかもしれないけれど、会社側から「もうこれでおしまいです」と言われた。つまり契約更改してくれなかったということですね。

この雇用形態の問題も、実は密接にこの34パーセントというところが示しているのだろうと思います。

もう1つ、黄色く囲っているところがありますが、これはなかなか重いデータです。もともと妊娠した時には仕事をしていて、そのあとに仕事を辞め、辞めたあとにそのまま非就業のままか、もう一度仕事に就くか、それがこの就業者と非就業者の違いを示しています。

いったん辞めたあとも、育児をしながら働ける環境の会社を探して、就職をして、仕事をした人もいるわけです。

この違いは何によって一番説明できるかというと、家族が賛成しているかどうかです。就業した59パーセントの人は、配偶者が働くことに賛成していたんです。でも、そうではない人が40パーセントいます。

もっと大きいのは父母です。ここには義理の父母を含みます。就業している人では、42パーセントが賛成ですが、非就業者では22パーセントしか賛成がいない。この違い、これもやはり実際に仕事を続けられるかどうかということに、かなり大きく結びついているのだろうと思います。

長く言われてきたことですが、この父母のスコアが低いですよね。これを見るとやっぱりいまだに「3歳児神話」が生きていると感じます。

「母親がそばにいなければ」根強い3歳児神話

「3歳児神話」はご存知ですか? 3歳までは子どもにとって大切な時期なので、母親がそばにいたほうがいいというものです。本当は母親でなくてもよくて、誰かがきちんと面倒を見ればいいのですが、「母親がそばにいなければいけない」という考え方があります。1998年の厚生白書で、この「3歳児神話」には科学的根拠はまったくないということが発表されましたが、いまだに根強く信じられているんですね。

こういうことが重圧となっているので、仮に女性が働き続けたとしても、その父母が「いや、母親は子どものそばにいたほうが良い」と思っていたり、言っているかもしれません。

なにかちょっと子どもに問題があると「母親が働いているからだ」と、すぐ働いているせいににされてしまうので、意地でもそうしたくないとか、弱音を吐けないみたいなことになってしまい、最後は女性本人のストレスの問題に関わってしまう。そういうことにもつながっている感じがします。

ここまでが1つ目の問題。「どうしたらいいですか?」ということを午後のパートでみなさんに議論をお願いしたいと思います。

働く母親たちのストレスの中身は?

次は、先ほど言った、ストレスについてです。仕事と育児を両立している人の8割がストレスを感じているという話がありました。この実態を明らかにしようと、「働くマザーのストレス調査」を、2015年にリクルートワークス研究所で実施しました。

おもしろい発見がありました。比較対象のために、子どものいる男性、働くファーザーと比べてみたところ、働くファーザーはストレス項目のほとんどが仕事に関するものでした。

反対に、働くマザーのストレスについては、仕事とプライベート、いわゆる家庭と生活の問題がちょうど半々になっている。これは、その分だけストレスが大きくなっていると理解してもらって構わないと思います。

そのストレスはどんなストレスなのか? 考えられるストレス項目をぜんぶ並べて、「どのぐらいそのストレスが重いのか?」ということと、「あなたはそのストレスを感じていますか、経験していますか?」ということをセットで調査しました。

そうしたところ、日常においてストレスを感じることが因子として8項目。そして、時々起こる、我々がライフイベントと呼ぶものにおいてストレスを感じることが6項目。いっぱいありますよね。