ほとんどの哺乳類は「二生歯性」である

ハンク・グリーン氏:歯が抜けることは、ザ・ポーグスのボーカルを見ても思いますが、あまり格好の良いものではありませんね。

しかし幼児の歯が抜けた笑顔はかわいいですよね。なぜ人類は幼児の歯が生えてきて、そして抜け替わるのでしょうか。これは変な、本当に変なことですよ。

人類と、そしてほとんどの哺乳類は二生歯性、つまり人生の中で2セットの歯が生えるようになっています。永久歯という大人の歯と、乳歯という幼児の歯です。乳歯は小さくて数が少ないです。なぜなら幼児のあごは小さくて、32本の大人の歯が収まりきらないからです。もし大人の歯が生えそろったら、幼児はとても怖い外見になってしまい、だれも近づきたくなくなってしまいますよ。

そのため、子供には小さめの20の歯が、生後6か月ごろから生えるようになっていて、2歳半ころには乳歯が生えそろうようになっています。

ちょうど永久歯と同じように乳歯もペアで生えてきます。つまり、下顎から2本生えて来たら、もう2本の歯も上あごからすぐに生えてくるのです。そうすることで均等に噛むことができますし、顎も均等に成長することができるのです。

そして成長すればさらに大きな歯が必要になります。さもなければ歯の間の隙間が開いてしまいます。

そこで、既存の乳歯の間に新しい歯が生える代わりに、乳歯一式が抜けて、新しい歯が一式生えてくるわけです。ですから乳歯は「デシドゥアス」(注:抜け落ちるの意)と呼ばれ、落葉性樹の葉のように、成長過程で抜け落ちるのです。

人類の顎は縮小してしまった

5、6歳の時に4つの新しい奥歯が生えてくると、前歯の乳歯が抜け落ちます。そして永久歯に生え変わります。思春期になるころには、28の永久歯が生えそろいます。

残りの4本の歯は後から生えてきて、それは「親知らず」と呼ばれる奥歯のことです。1億年前には人間のあごは今より大きかったので、「親知らず」も役に立ちましたが、進化の過程で人類のあごが縮小し、奥歯がそのほかの歯を押しやり、痛みを引き起こすこともあるので、多く人は「親知らず」を抜いてしまうのです。

二生歯性は最善ではないかもしれません。いつでも余分に何かをもう一式持っているのはいいかもしれませんが、我々は人生の中で、たった2組の歯しか生えてはきません。「げっ歯類」は歯が何度でも生え変わってくる動物のことを言います。ワニや魚、哺乳類でも象は6回まで歯が生えてくるといわれています。

それで何年も楽しく草をかみ砕くことができるわけです。しかし我々の2番目に生えてくる歯は時間が経つにつれ、欠けたり減ったりしてしまうので、手入れができる間は大切にしましょう。その歯しかないのですから。