2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
提供:サイボウズ株式会社
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柳原好貴氏(以下、柳原):次に、kintoneによって開発されたアプリの具体例を2例ほど紹介します。まずは和敬学園さんの「児童行動記録管理アプリ」です。和敬学園は主に社会や学校にうまく適応できない児童が入所して、自立に向けた支援を行っている施設です。
こちらでは、入所する児童の行動、日報などを記録して、さらに月報にまとめた上で自立支援段階を評価する業務がありますが、児童ごとに取りまとめて月報を作成するのに非常に時間かかることに危機感を持って、kintoneでの改善希望に応募をしたそうです。
この業務に関してはガブキン道場に参加いただいて、サイボウズさんにも協力いただきながら業務改善に取り組みました。
こちらはkintoneによる業務改善後ですね。行動記録から印刷・供覧、処遇記録(月報)の取りまとめ、自立支援段階の評価まで、すべてオンライン上で完結するアプリを作成しました。
最初にkintoneの記録アプリで児童行動記録を入力します。従来であればExcelに入力するので、この日誌の作成の時点で印刷・供覧といった作業が発生したんですが、kintoneの場合はすべてのレコードを全職員が閲覧できるので、この時点で印刷が不要になったところが1つです。
あとは一番の課題であった月報の取りまとめです。紙をすべて印刷して児童ごとにまとめて……といった作業があったんですが、アプリ上のボタンを1つ押すだけで勝手に児童ごとにまとまるようになり、非常に大きな業務時間の削減につながりました。
その後も、kintone上のプロセス管理によってスムーズに決裁・供覧が行えるので、全体を通して大きな効率化と業務時間の削減につながった事例になります。
業務時間の削減以外にも、もともと様式がいろいろあって「どれを触っていいのかわからない」「誰かが様式を上書きしてしまって正しいものがなくなる」といった問題点がありましたが、kintone上のアプリに集約されたことで、非常に使いやすくなったという声もいただいています。
こちらも実際に業務に携わる職員が不満点などをブラッシュアップしながら作成していけるという、システム内製化のメリットがよく現れた事例だと思います。
柳原:続いて年縞博物館の「予約情報管理アプリ」のご紹介です。年縞博物館は福井県にあります。年縞とは地層みたいなものですね(笑)。こちらはもともと、施設への団体さんの見学予約情報を管理していました。
その管理方法ですが、もともと旅行会社から電話かFAXで届いた予約情報を、手入力でExcelに入力し、入力した予約表を印刷して受付や案内員へ配布する業務を行っていました。
なぜ印刷する必要があるのか。受付あるいは案内を行うための職員が行政情報端末を所持していなかったので、このような非効率なやり方でした。
2023年度の5月に異動になった職員から「あまりにもアナログなのでなんとかならないか」という相談を受けまして、私からkintoneでの解決を提案した事例になりました。
こちらはトヨクモさんのプラグインを利用することで、入力から共有まですべてオンライン上で自動で完結するシステムを構築しました。最初に旅行会社がフォームで予約情報を入力し、それをkintoneのアプリに集約しますが、ビューワでカレンダー形式で予約情報を確認できるかたちになっています。
プラグインを利用して行政情報端末以外からもアクセスすることができますので、わざわざ紙へ印刷する必要がなくなりました。さらに入力の手間もなくなりましたので、全体を通してかなり便利になり、原課からも喜びの声をいただいています。
こちらは相談を受けたのが2023年7月頃ですが、約1ヶ月でアプリを構築し、8月からは実際に試験運用を開始して、業務改善のきっかけとなったモチベーションを冷ますことなく、すぐに改善に着手できました。
そういう点でkintoneの使いやすさやメンテナンスの容易さが大きく現れた事例でした。kintoneの便利さを実感するきっかけとなった、私にとって思い入れの大きい案件です(笑)。
柳原:最後に、この会場にも今ブースを設けられている、本県のkintone展開やDX推進に多大なご協力をいただいている株式会社ジョイゾーさまとの連携についてご説明します。
こちらは令和4年7月末に、ジョイゾーさまの無償提供によりkintoneを題材としたDX人材育成研修の「J Camp」を開催したことがきっかけです。
もともと本県ではkintoneの試験導入を行っていましたが、システムを広めていくためにはやはり先駆けとなる、パイオニア的な職員の存在が不可欠かと思います。kintoneの事例を最初に積み上げるには、kintoneの使い方の説明を行うだけではなくて、DX全般の業務改善のマインドを持つ職員の養成が必要と思い、J Campの開催を決めました。
さらにこちらの研修がデジタル人材の育成に非常に効果的だと判断し、2023年度も委託して同じ研修を開催しました。さらに全県的なDXの取り組みを推進するために、市町職員向けにも同様の研修を企画・開催しています。
それでは個別に詳しくお話しします。まずJ Campの概要ですが、こちらはDXの知識やデータベース、あるいはアプリ開発の考え方に関する講義を行ったあと、架空の業務についてこの4つの役割に分かれてkintone上で実際にアプリを開発するというロールプレイを通して、システムの内製化を体感いただく人材育成サービスです。
本来のパッケージは4日間ですが、本県は講義部分を1日に圧縮して開催しました。
幅広い業務や役職の方に受講いただくために全庁に通知し、担当業務やデジタルリテラシーによる制限を設けることなく、全職員を対象として募集しました。その結果、受講者も12人、2023年は20人と、どちらもほぼ定員通りの受講者を確保できました。
結果としても約9割の受講者から「DXによる業務改善に有用」であると評価いただき、実際にこちらのJ Campの受講者が「飼育管理アプリ」や「運転日誌アプリ」といったアプリを開発されている事例も数多くありました。
柳原:実際、J Campを受講しアプリを開発した職員の方にコメントをいただきましたのでご紹介します。まず1人目は水産試験場。これは水産物の飼育試験を行っているところです。
「もともとデジタルへの苦手意識がありましたが、ツールを使って所属の業務に貢献するため、思い切って受講しました。データベースの正規化など、システム開発の初歩からじっくり学べた点が大変勉強になりました」。
「ロールプレイでは、どの役割も難しく緊張しましたが、繰り返すうちに良いロールプレイができるようになり、その自信が後のアプリ開発のモチベーションにもなりました」とのことです。
その後、試験的に行っているアワビの飼育で飼育日誌をアプリ化するなどの取り組みを行っています。
続いて議事調査課の吉田さんのコメントです。
「庁内でDXが活発に呼びかけられていたことから、デジタルツールの活用方法を学びたいと思い受講しました。kintoneについて学ぶ前に業務改善の考え方をじっくり学ぶことで、DXの全体像を把握することができました」。
「ロールプレイでは、回を重ねるごとに自分の役割に求められるものをつかむことができ、特に、設計担当として業務の改善すべきポイントを見極めるという考え方は、実際に所属の業務の改善点を洗い出す際にとても役立ちました」ということで、こちらもその後、知事表彰の受賞歴を管理するアプリを開発しています。
このようなかたちで、もともとデジタルツールなどに詳しくない職員の方でも、一連のロールプレイなどにより実際にアプリを開発する体験を経て、アプリ開発の自信や知識、ノウハウを吸収し、実際にアプリ開発を実践するためのモチベーション維持に役立つ研修になったと考えています。
柳原:最後に、市町職員向けのDX人材育成研修についてご紹介します。
こちらは「市町DXブートキャンプ」と銘打っていますが、もともとの発案は本県が委嘱するDXの外部専門人材、「DX推進アドバイザー」という方です。
市町におけるDXのリーダー的な存在を養成するための研修で、内容はJ Campのメソッドを参考にしています。1日目に業務改善の考え方、進め方の講義を行ったのちに、各市町における課題の抽出と、その解決の方向性を検討するワークショップを実施し、kintoneの使用方法の簡単な研修も行います。
2日目はJ Campのロールプレイ部分ですね。架空の業務についてkintone上でアプリを開発するといったロールプレイを行って、システム開発のノウハウを吸収した上で、最終日に1日目で挙げた課題を解決するためのアプリを作成して、その成果発表という流れで実施しました。
こちらは11市町17名が参加し、短い時間にも関わらずそれぞれの課題に適したアプリを開発しています。各市町においてもkintoneというか、システム内製化の重要性を認識していただくきっかけになった研修でした。県職員向けのJ Camp及び市町職員向けの研修は、今後も継続していく方針ですので、福井県でも全県一体となったDXを推進していきたいと思います。
これで福井県の発表は終了とさせていただきます。自治体のみなさまなどとの連携も大きくありますし、ガブキンなどのコミュニティも活発に稼働していますので、こちら会場にお越しのみなさんとも連携して、今後kintoneを自治体により広めていけたらと思います。みなさま今後ともよろしくお願いいたします。
(会場拍手)
蒲原大輔氏(以下、蒲原):柳原さん、すばらしいご発表をありがとうございました。ここからは残りのお時間が許す限り、質疑応答をさせていただければと思います。トップダウンとボトムアップの両面で業務改善をしたお話がありましたが、まずトップダウンに近いお話からできればと思います。
ほかの自治体さんとのお話では、若手の方が現場で業務改善したいと思っても、そういった動きを管理職の方が止めてしまうシーンが多いとお聞きします。今のお話を聞いていると、福井県さんはむしろ後押しがあるのかなと感じたんですが、このあたりは実際にはいかがでしょうか。
柳原:福井県はもともと知事がDXに興味関心を持って強力に推進しているので、管理職向けにDXの必要性・重要性などを納得感を持って認識してもらう研修を頻繁に開催しています。
蒲原:とはいえ研修を実施しても、管理職からすると「ITのことは若手に任せてしまおう」みたいな感じで我関せずみたいなスタンスの方も多いかなと思います。管理職の方々をDXや業務改善にコミットさせるところは仕掛けが別にあったりするんでしょうか。
柳原:福井県では知事が中心となりまして、DX推進本部会議を毎年2回ずつ開催しています。知事及び各部局のトップ、部長が実際に出席して、各所属におけるDXの取り組みをその部長自身から発表いただく会議を毎年設けています。
そういったところで各所属の管理職においても、自らが発表することでDXへの関心や重要性などを意識する仕組みになっているかと考えます。
蒲原:ありがとうございます。確かに知事がいる場で部長自ら発表するとなると、そこで何も発表できないとすごく気まずいと思います。そこである意味、強制力が働いているのかもしれないですね(笑)。会場にいらっしゃるみなさまもぜひ、管理職の方々が自分ごとになるような仕掛けを考えていただければと思います。
蒲原:続いて、ボトムアップ寄りのご質問ができればと思います。kintoneを全庁で広げていきたいと考えて、いろいろな部局に「今トライアルしているので、何か業務改善しませんか」といった投げかけをされるケースは非常に多く聞いています。
とはいえ現場の方々も忙しいので、ぜんぜん手が挙がらない状況をお悩みとしてよく聞きます。福井県さんはどんどん手が挙がったような印象があったんですが、その背景にはどういった理由があるんでしょうか。
柳原:もともとkintoneを導入する前に、RPAツールなどのデジタルツールを利用した業務改善事例の蓄積が多くありました。そういったものを全庁に展開をしていますので、全体の職員も「デジタルツールを使えば業務改善ができる」といった意識自体はすでにできていたと感じています。
とはいえ、そういったツールですと、なかなか最初の利用のハードルが高いです。kintone導入時点では「デジタルツールを使うとものすごい業務改善ができる」とわかっていても、実際は使えず、ある意味くすぶっていた職員の方も多くいたと思います。
そんな中でkintoneという初級者でも使いやすいツールを導入したことがきっかけで、業務改善の希望が続出したと考えております。
蒲原:ありがとうございます。
蒲原:最後に柳原さんから会場にお越しの方々に、一言メッセージをお願いできますでしょうか。
柳原:はい。私自身デジタルの部署に来たのが2023年の5月からで、ほとんどデジタルの素養がない状況でした。
先ほど説明したような年縞博物館でのアプリ開発などで、異動直後でも特に問題なく触ることができましたので非常に便利なツールだと感じています。非常に使いやすく、さらに即時に利用もできる柔軟性の高いツールなので、こういったツールを利用していくことで行政もいろいろな事務の高度化ができると考えます。
とはいえ、kintoneの利用にあたっては先進的な方の取り組みを流用するところが非常にあると思いますので、みなさんと協力してkintoneの知見や活用事例を拡大していけたらいいなと思っています。みなさま今後ともよろしくお願いいたします。
蒲原:ありがとうございます。質疑応答は以上とさせていただければと思います。最後に私からみなさまにご案内がございます。1つはガブキンのご案内です。
自治体職員さま、省庁職員さま限定とはなりますが、柳原さんも参加されているユーザーコミュニティで、さまざまな情報交換ができますので、よろしければ登録のほどよろしくお願いいたします。
本日はお時間の関係でセッションは以上となりますが、このあと14時10分からの30分間、「行政職員交流スペース」を開設させていただきます。今みなさまがいらっしゃるクロネコステージから反対側で、少し距離が遠くて恐縮ですが、出口付近の配信コーナー近くに交流スペースを設けております。
こちらにお越しいただけましたら柳原さんや、先ほどのランチセッションに登壇されていた三原市の方々もいらっしゃいますので。そこでぜひ意見交換やご質問等いただければと思っております。
では本セッションはすべて終了となります。みなさま、ご清聴いただきましてありがとうございました。
(会場拍手)
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