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社会を変える「体験」を作り出す これからの時代のUXデザインとは?(全2記事)

2023.08.28

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顧客の「本当はこういうことがしたくて」を知るために リクルートがプロダクト開発で大事にする、顧客インサイトへのアプローチ

提供:株式会社リクルート

株式会社リクルートのグループ横断ナレッジ共有イベントである「FORUM」に選出された案件を題材に、トークイベントが開催されました。『UXデザインの教科書』の著者、千葉工業大学の安藤昌也教授をゲストに迎え、これからのUX設計のプロセスや事業開発手法、UXデザイナー・プロダクトマネージャーに求められるケーパビリティについてトークセッションが行われました。全2回。前半は、飲食店における入り口のオペレーションを効率的にするための取り組みと、その工夫についてお伝えします。

セッションテーマは「社会を変える『体験』を作り出す」

反中望氏(以下、反中):みなさん、こんにちは。「FORUM Deep Live Session」を始めます。私は本日モデレーターを務めます、リクルート経営コンピタンス研究所の反中です。よろしくお願いします。

今日のセッションは、「社会を変える『体験』を作り出す」と題してお届けしています。

私たちプロダクトの人間がやっているのは、プロダクトを通じて新しい体験を作り出すことです。その体験を通じて、人と人、人とサービス、技術をつないでいく。そこの新しい出会いを作っていくことではないかなと考えています。

今日は、「体験づくり」にフォーカスして、お届けできればと思っています。

登壇者の自己紹介

反中:社内外から1名ずつお越しいただいております。1人は「FORUM」で受賞した案件を担当された柴田さんですね。

柴田直幸氏(以下、柴田):柴田と申します。今は飲食店向けのプロダクトとして、『ホットペッパーグルメ』や『レストランボード』、今回FORUMで選出された『来店ディスプレイ』などを中心に、プロダクトのマネージャーをやっています。よろしくお願いします。

反中:よろしくお願いします。

そして、社外からスペシャルゲストですね。千葉工業大学の安藤先生にお越しいただいています。

安藤昌也氏(以下、安藤):どうぞよろしくお願いします。千葉工業大学の安藤です。これまでFORUMの「ENGINE」の審査員などをやらせていただいていて、リクルートの挑戦的な案件にいつも驚かせていただいています。

今日は、新しいお話をうかがえると聞いて、楽しみにしております。よろしくお願いします。

反中:よろしくお願いします。

柴田:よろしくお願いします。

反中:安藤先生は、みなさんご存じかと思いますが、『UXデザインの教科書』という本を出されていたり、言わずと知れた、UXデザインや体験デザインの専門家です。さらに、FORUMの審査員をやっていただいていて、リクルートのこともご存じなので、今日のテーマに本当にぴったりじゃないかなと思っています。よろしくお願いします。

安藤:よろしくお願いします。

飲食店における入り口のオペレーションをより効率的にするための取り組み

反中:本日の進行です。全体を通じて、リクルートでのUXデザイン、あるいはリクルートに限らず、これからの時代、どういった体験作りが求められていくのか、そういったところが垣間見えるセッションになればいいなと思っています。

では、柴田さんから、何をやったのかを簡単に教えていただけますでしょうか?

柴田:一番イメージが近いものからお話をさせていただきます。やりたかったことは、飲食店の店内での入り口のオペレーションを、より効率的にしていくことで、飲食店にとっての業務支援と、リクルートにとってのプラスのメリットを出していくところをもともと志向しているものです。

具体的にお話しすると、回転寿司は、飲食業界の中ではDXが一番進んでいる業種とよく言われています。お客さんからすると、入り口で来店人数を入れると、券が出て、入り口で待たされないでスムーズな来店体験ができ、店舗からすると、お客さんが来た時に業務が分断することを防げています。

回転寿司以外の飲食店、例えば、居酒屋、ダイニングバー、中華料理屋など街中にあるようなところでも、プロダクトで同じような価値を提供できないかと検討していました。

やはり僕らも、『ホットペッパー』や『レストランボード』などを中心に、飲食店との接点を持っているという点から、日々いろいろな業態の飲食店の方とお話しすることが多いです。

特に、コロナ禍になって、みなさんと働き方などをどう変えていくか? というお話を​よく​させてもらっているのですが、その中で、いわゆる入り口の配席や、どこにお客さまを案内するかというのは、けっこう人のスキルに依存していることがわかりました。やはり適当にお客さまを案内すると、空いている席がぜんぜんない、席が埋まってしまうということもあれば、逆にすごくゆったりしている時間帯なのに、端っこのすごく小さな席に案内されるなどが起こってしまう。たぶんお二人も経験があるかなと思いますが、そういうことがきちんとできるスタッフを育てるのにはすごく時間がかかります。

また、コロナ禍により、もともと飲食店で働くことが好きだったけれど、働けなくなってしまい、別の業態に人が流れていく中で、新しくホールのスタッフを採っていくのがそもそも難しいという問題があります。

やはりスタッフのみなさんも、飲食業一本でやっていくのは難しいとなり​、​いろいろなバイトを掛け持つようになっていて、今までよりも修練するのに時間がかかるという声ももらっていました。

そんな状況から、一部の業務をきちんとシステム的にDXすることになんとかトライしたいという声をいただいていました。

反中:そういった、来店・着席というところを支援していくために、先ほどのような来店ディスプレイを構想されたのですね。

柴田:そうですね。

難しかったのは、前提条件によってオペレーションが変化するところ

反中:ありがとうございます。今のを聞いて、安藤先生はどのような印象を持ちましたか?

安藤:すごいなと思った点がいくつかありました。大手だと、やはり規模もあるし、自分たちのオペレーションがわかっているので、そのDXやシステム化は、容易にできると思います。

ですが​、​あらゆるお店においては、ぜんぜんオペレーションが違うわけですよね。そこに導入するためには、よほど磨かれた仕組みでないと使われないんじゃないかなと思います。それにチャレンジしていこうというところが、まずすごいなと思いました。

だって、座席は店によってまったくバラバラなわけですし。

安藤:座席にもやはり意味があるわけですよね。先ほどおっしゃったように、「ここの角はちょっと狭めだから、混んできたらお客さんを配置しよう」みたいなことは、きっとお店ごとにある。それをシステムに載せようとすると、やはりだいぶ苦労があったんじゃないかなとか思いますが、どうなんでしょう?

柴田:そうですね。言葉を選ばずに言うと、回転寿司など、いわゆる大手さんは、店内のレイアウトやオペレーションを組んだ上でこのシステムがあるんですよね。

それこそ、予約をあまり考えないというか、来た人順にさばいていくというところがあると思います。

僕らが相手にしている飲食店は、そうではなくて、店内のレイアウトもビルによってぜんぜん違ったり、オペレーションもぜんぜん違ったりします。

一番大きかったのは、やはり予約の概念を持っていることです。「この席は何時までしか使えない」とか、逆に「予約が入っている6人掛けの席は、予約が入っている時間の前までは使っておきたい」のように、回転をより回していくために、そういうところも組み合わせたいというところがあります。

1個の席を取っても、どういうシーンなのか、どういう前提条件を持っているのかでどういうオペレーションになるかがけっこう複雑に変わってくるので、そこをどう乗り越えていくかは、おっしゃるとおりにチャレンジポイントだったかなと思っています。

安藤:今日は体験の話だと思いますが、一般の来客は、店側の予約の都合のことは別に知らなくてもいいですよね(笑)。

(一同笑)

安藤:来店客の体験も良くしつつ、きちんと全体最適というかオペレーションとしても成り立たせなくてはいけないという、この両方の課題を解決していくというのが、そもそもハードルが高かったんだろうなと、うかがっていて思いました。

柴田:そうですね、実際に僕らもこのプロトタイプを作っていく中で、大きく検証ポイントを2つ設けていました。

1つが、お店側にとって配席のロジックが、自分たちの日頃やっているものと同格なのか、というところ。

先ほどおっしゃっていたもう1つの観点から見ると、どんなに配席ロジックが良くても、結局お客さんがプロダクトを触って席まで行けないと「この席どっちですか?」とか。

安藤:そうなると、結局スタッフが介入してしまいますもんね。

柴田:なので、どっちかというと、配席ロジックよりも、お店に来たお客さんがいかに待たずに自分の席まで行けるかという時間をKPIにして改善を重ねていました。

安藤:なるほど。やはりあくまで、スタッフがサポートしなくてもいけるというところが第一目標ということですね。

柴田:おっしゃるとおりです。

「自分で席に行く体験」を実現するための工夫

安藤:そうなんですね。ちょっと質問してもいいですか?

柴田:ぜひぜひ。

安藤:いつも店内が見渡せるお店ばかりではないわけですが、紙が出てくるんですか?

柴田:そうです、そうです。

安藤:レシート的なやつが出てくるわけですよね。そこに、席が書いてある?

柴田:そうです。

安藤:「行く体験」を実現するのは、けっこうハードル高いと思うのですが、どんな工夫があるんですか?

柴田:一番近い業態としてホテルを想像していただけるといいかなと思うのですが、ホテルはどこに自分の部屋があるか、聞いただけではわからないじゃないですか。だけど実態は、ほぼ迷わず部屋まで行けているなと思っていて、そこの部分を僕らはけっこう参考にしています。

まず、どっちの方向に進めばいいよというのを、発券の時に示しています。やはりやらなきゃいけないことは、まず自分の席がどこにあるのかを、マップの中で視認してもらうこと。視認した上で、とりあえず進んでくれさえすればよくて、あとは通路に、「AからCはこっちですよ」とか「10番から20番は左に行ってください」のような分岐点を置きました。

なので、どちらかというと、最初の一歩がやはり難しかったというか……どっちに行けばいいのかがわからないから、けっこう端末の前で止まっちゃうとか。

あとは、そもそもこれが入り口で受付をするための端末であることをカスタマーに認識してもらわないといけませんでした。カスタマーが入り口に入ってずっと待っていることが、けっこう最初はあったので、まずは一歩を踏み出してもらうために何をしていくんだっけ? というところをけっこうやっていました。

安藤:それ、めちゃくちゃおもしろいですね。

柴田:いろいろなところに工夫をしています。例えば、今出ていますが、マップの色と矢印の色をそろえています。

要は、赤で左と出ると、やはり(矢印が)左向きに赤い図のほうが探せると思うんですよね。例えばマップに色が何もついていなくて、「左です」と言われて、上から探していく時に、ショートカットできる視覚誘導を考えると、色などを組み合わせることで、見ていかなきゃいけない検索範囲を狭めていくというところを意図的にしています。

反中:実際にプロトタイプを作って、お店に置いてもらって検証しながらというかたちでやっていたんですよね?

柴田:そうです。

新しいシステムを入れる=スタッフが大事にしていることと競合するところが出てくる

反中:スタッフの中での受け入れられ方はどうだったんですか?

柴田:やはり、配席を効率化していきたいとか、人がぜんぜん足りないからきちんと回るようにしたいとか、もともとそういう課題があるから、検証にも協力してくださいました。ただ、既存のオペレーションとの差分がけっこうあるお店もあって。入り口にお客さんがいると、どうしても行きたくなるのが従業員の心情というか(笑)。

反中:(笑)。

柴田:そういうところを、どうグッと堪えるかが1つ大きかったですね。

やはり、お客さんが機器のところで止まっていると、どうしても案内したほうがいいんじゃないか、お客さんが困っているんじゃないかと思ってしまう。そこで親切心で行くと、逆にプロダクトとしてきちん使えなかったりするので、そこの葛藤を調整してもらうみたいなところがありました。

あと、今まではお客さんを案内して席まで行って、その場で注文を取るという流れだったところを、「システムによって着席してもらう」になるので、その後のファーストオーダーをどう取っていくんだっけ? というような、どちらかというと、席案内をした後のオペレーションをどう変えていくとこれにフィットするのかを考えました。既存の業務にこれ(プロダクト)を当てはめにいったというよりは、これをベースにした時の新しいオペレーションはどうなるか? というところを一緒に模索しながら作っていったというのが大きいかなと思っています。

安藤:すごくおもしろい指摘だなと思います。

私は最近、これから人工知能が全盛になっていく時代に、どういうふうに人間中心なシステムを作ればいいかという研究をやっています。システム導入によって起こる変化をあらためていろいろな場所で調べていくと、今お話ししていただいたように、言ってしまえばスタッフが大事にしているところと競合するところが出てきてしまうんですね。

例えば介護のシステムで、入所者のベッドでの動きをセンサーでセンシングしていて、ちょっと危険な動きをしたらすぐに通知する、あるいはカメラで撮って、端末で目視ですぐ確認できるというシステムを導入したとする。

すぐに行かなきゃいけない、という気持ちでいたのが、目視で確認できるようになって楽になると思っていたのですが、やはりスタッフは、機械で見ているだけというのに対して、そういう介護の仕方でいいのか? という葛藤があったりする。

あるいは同じように、学習塾でも、人工知能で生徒の本当に弱いところを見つけて、その問題を出していく中で、中学校なのに小学校の問題をやっていたりするんですね。

そうすると、塾の先生は、目の前の中間試験の点数を取らせてあげたくなっちゃうんですね。だからそこよりも、すごく小手先を教えたくなっちゃうという話があって。

そんな中でどこかグッと我慢しなくちゃいけない。それを乗り越えないと、やはり新しいシステムと、システムを活かしたバリューあるビジネスを作り直すことができないというのが、どこでも起こっているということが、いろいろ調査する中であらためてわかってきたんですよ。

お店に合わせてオペレーションを最適化させていく

安藤:今のお話もそうだなと思うのですが、逆に、新しくシステムを活かして価値を出すためにはどういう関わり方をしていくのが一番いいんでしょうね?

作る時は一緒に作ったかもしれませんが、これをサービスとしてやっていくとして、どのあたりをサポートしないとダメなんですか?

柴田:そうですね。たぶんこれから出てくる事例もそうなのですが、やはり、既存のものをオマージュしたプロダクトというよりは、新しい働き方や本来理想とするものはこうだよねっていう、どちらかというと、まだないものをどうしても作っていく関係にある以上、サッとそれを受け入れられるお客さんであれば何もサポートしなくても大丈夫だと思います。

アーリーアダプターだったらぜんぜん問題ないかなと思いますが、飲食店は変えにくいところがあります。

どちらかというと、いいプロダクトを作るというよりも、既存のオペレーションとの差分を新しいオペレーションにどう適合させていくかというところのサポートを、いかに1店1店に合わせて根気強く作っていくかが、実はけっこう大事なテーマなんじゃないのかなと、最近思っています。

安藤:そこができるのが、リクルートのすごいところなんだと思いますけどね(笑)。

柴田:そうですね。営業接点も、昔は商品を売るというところが強かったと思いますが、やはり最近は、お店に合わせてオペレーションを最適化させていくというところで、営業接点の価値の転換期に来ているのかなとは思います。

プロダクトチームと営業における協業で工夫したことは?

反中:そういう営業接点と、一方で柴田さんのようにプロダクトを作っていくというところと、役割がいろいろある中で、営業接点やクライアント接点を持っている営業と、プロダクトマネージャーの協業において、どんな工夫があるんですか?

柴田:やはり『来店ディスプレイ』など、店内の業務に影響を与える商品はイケてなかったら使われなくなります。元のオペレーションのほうが便利だとどうしてもそうなってしまうので。そこで、スタートから営業接点を一緒に使って、お客さんのニーズだったり、いわゆるどこまでの検証ポイントが必要なのかというところを綿密に設計する。そうすることで、最初に出した時からきちんと業務が成立するプロダクトを作りにいくということが、目指す上では大事かなと思っています。

反中:この案件も、机上で作るのではなくて、協力してくれるクライアントを探して、本当にラフなところから一緒に動き出している感じなんですか?

柴田:そうですね。僕らだけで集めきるのは難しかったので、それこそ営業やサポートスタッフの方に手伝っていただきながら、どの店舗だったらフィジビリティができるのかを考えました。

僕らとしても、特定の業態だけ検討してもあまり意味がないというか……例えば「回転寿司業態でやります」と言ったら、絶対うまくいくと思うじゃないですか(笑)。

(一同笑)

柴田:そういうところを、例えば中華の料理店でうまくいくのか? とか、席規模はどのくらいのレンジだと成立するのか? というところを、一定セグメントを切りながら仮説を持って、このぐらいの数がないと検証できないよね、と一緒に集めにいったりしました。

ですが、「やはり、ないものを説明するのはけっこう難しいな」と思っていたので、お客さんのところに行って、こういうことをやりたいですと。営業担当者に任せきるのではなく、僕やプロダクト側から説明するということを、今回の取り組みではやっていました。

“プロダクトとして最低限実現すべきこと”を定義した

反中:新しいものを作って、新しい体験を作っていくというところで、やはり現場に入り込んでやるというのは、すごく大事なんだろうなと思います。

入り込んでいった時に、先ほどおっしゃっていたような、「ここが検証ポイントだよね」みたいな話があるじゃないですか。

「ユーザーが使ってくれるかどうかがポイントだよね」とか、「配席ロジックがポイントだよね」みたいな、このプロダクトがうまくいく、このオペレーションがうまくいくキーはここだよねと、キーを見つけるのって、それはそれで難しいなと思っています。そのあたりは、今回はどういうふうに見えてきたんですか?

柴田:往々にして、プロダクトの価値に対して、たくさん盛り込みたいのがプロダクト側だなと思うんですよね。

例えば、僕らのこのプロダクトも、発券した後にQRとかをくっつけて、いわゆるメルマガの登録とかもお知らせしたら……

(一同笑)

柴田:いわゆるCRM的な価値もここにつけられるんじゃないか? みたいなことも考えていました。

そもそもプロダクトとして最低限がどこなのかを定義していくと、別にCRMはこれじゃなくても手段あるよねとなる。来店の体験をどう良くしていくのか? という時に必要な要件は、やはり配席に納得感を持ってもらうとか、カスタマーがきちんと席に行けるよねというところです。

なので、ほかにもやりたい検証ポイントを洗い出した上で、ミニマムはどこなのかとか、優先度として、いわゆる業務支援としての商品をベースに価値として出すのか、その上で販促を出すのかというところを今回は考えています。

業務支援として成立することがわかれば、それで売れるし、それが成立しないとか、そこで金額が取れないのであればプラスで販促価値を出していけばいいだろうというところで、価値を定義するための最低ラインはどことどこなのか、というところでやっていました。

安藤:検証すべき仮説はたくさん出てくるので、その中でどこに絞り込むのか。ここがやはり肝ですよね。

現場に行くと必然的に優先度が見えてくる

安藤:今回お話をうかがっていると、やはり現場で繰り返し検証していくという作業をいとわずにやるという、そこなんじゃないかなと思うのですが、実際はどうですか?

柴田:そうですね。検証は5店舗ぐらいでやっていたのですが、訪問は1店舗、例えば週3回やっていました。あと実は、カスタマーがきちんと席まで行けているかというのは、チームメンバーに「実際に2時間くらいお店に座って」と言って、何組ぐらい迷わず行けているかとか、何組ぐらい入り口で止まっているかというところを全部きっちりカウントして、どこで止まっているかを見ていましたね。

安藤:やはり、現場で見ていくと、必然的に優先度が見えてくると思うんですよね。机上で考えると、いろいろな思惑が入ってくると思いますが、そこをそれだけ丁寧にやられたというのは、すばらしいなと思います。

柴田:やはり、プロダクトを使うのは店舗で、僕らが使うわけでもなければ、僕らの経営陣が使うものでもないので。リクルートらしさはあるかもしれませんが、「お客さんがこう言っているから」とか、「n=1はこうなっているから」みたいなところを、プロダクトを作る上ではけっこう重視しています。

机上でなにかするよりも、見聞きしてきたものや、その奥をインサイトすることが大事だと思います。お客さんはこうやりたいと言っているけれど、建前上そう言っているだけ、ということもやはりあるので、そのあたりを何度も通い詰めていく中で、知っていく。「こう言っていたけど、本当はこういうことがしたくて」というところが出てくることは、やはりあるなと思っています。

(次回へつづく)

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