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DXプロジェクトは「人」が創る 〜ビジョンを描き、社内から納得感を得るために必要な「人材」とは〜(全2記事)

2023.05.22

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実はDXしなくても「困ってない」企業も ゴールが見えない“DXっぽい案件”に踊らされないための勘所

提供:ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ株式会社

「世の中を変えるファシリテーターである」というミッションを掲げ、特定の業界・領域に特化せず、さまざまな企業でコンサルティングを行うケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ株式会社。そんな同社の代表取締役社長である榊巻亮氏が、DXプロジェクトを成功させるカギを明かします。本記事では、DXプロジェクトが難しい本質的な理由や、最も重要な「ビジョン」設計のポイントを解説します。

「DX」を成功させるカギはどこにあるのか

榊巻亮氏:今日のテーマは「DXプロジェクトは『人』が創る」です。最初に、今日の位置付けとゴールをお話しします。

「DXのプロジェクト」「DXの案件」と、言われて久しいですよね。3年も4年も「DX」と言われていますけど、我々が考えている、DXをうまくやるために必要な要素をいくつかお話しできるといいかなと思っています。

「これが絶対的な正解」とか、「これをやれば全部うまくいく」と言うつもりはぜんぜんないんですが、我々としてはこのへんが押さえるべきポイントだなと思っているので、みなさんの活動のヒントになればうれしいなと思っています。

せっかく時間を使っていただいているので、終わった時に「確かにこれはそうかも」「これをちょっと試してみようかな」というものを1つでも持って帰っていただけたら、1時間参加していただいた価値があるかなと思っていますので、そのつもりで聞いていただけるとありがたいです。

大きく、DXとは何で、何が難しいのかという話と、我々が気にしている「7ヶ条」をかいつまみながらお話ししていきたいと思います。

領域・業界を限定せず、プロジェクトを成功に導く

あらためまして、榊巻と申します。ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズという会社でコンサルタントと代表の仕事をしています。

「ケンブリッジとは何者か?」というのを、知らない方もけっこう多いのかなと思うんですが、変革をお手伝いするのが我々の仕事です。

(スライドを指しながら)こんな感じで、何か変化したいと思っている企業さんをお手伝いするのが、我々のやっていることです。それがたまたまITだったり、「新しい事業を作りたい」とか、業務変革だったりします。

僕らの特徴については、「プロジェクトを成功させるのが得意だ」という言い方をしています。「AIを専門に」みたいに、ある特定の領域で勝負しているわけではなくて、変革プロジェクト全般のお手伝いをしています。

(『日経コンピュータ』の調査によると)「プロジェクトが成功するのは半分だけ」という、成功率はぜんぜん高くない事実もあって、領域・業種・業界を特定せずに、上流から下流まで、「変革すること」をターゲットにお手伝いしているのが我々のスタイルです。

なんで、領域・業種・業界を特定せずにできるのかというと、「変革したい」「こういう姿になっていくべきだ」というみなさんの意思や熱量を引き出して、一緒に実行までつなげて走っていくというスタイルをとっているからです。

顧客と共に伴走する「ファシリテーション型」の支援

指示する・指導する・教えるという「先生型」ではなくて、一緒にやっていくという意味で「ファシリテーション型」と言っているんですが、我々はここを専門にプロジェクトを前に進めていきます。

「DXとはこういうもので、こういう定義で、こういうふうにやるべき」という先生型じゃなくて、今日はここの視点(ファシリテーション型)に立ってお話しすることになると思います。

どうやったらみなさんの「変えたい」というエネルギーを束ねられて、変革をちゃんと進めていけるのか。そんな視点でお話ししていきます。

ということで、前段はこれくらいにして、今日はこんな感じで3つに大きく分けながらお話ししていきたいと思っております。繰り返しですが、今日お話しすることはあくまでケンブリッジが大事にしていることです。

さっきも言いましたが「先生型」ではないので、我々がなんとかしてDXのプロジェクトを成功に導いていくために、「こういうことを押さえながらお客さんと一緒に進めています」という話をすることになりますので、うまく(自分たちの立場に)置換してほしいんです。

「ここは使えるかも」「ここは使えないかも」「なんで使えないんだろうな?」「使えるとしたらどういうシーンで使おうかな」というふうに捉えて、うまく置換をしていただきたいなと思っています。

「DX」の定義は非常に曖昧

どうしたらDXがうまくできるのかという話の前に、最初にDXとは何か、DXはどういうものなのか、どう捉えるべきか、何が難しいかという話をしたいなと思っています。

そもそも、DXは定義がすごく曖昧なんですよ。(Wikipediaの引用によると)「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念をDXと呼びますって、めちゃくちゃ広いじゃないですか。

世の中でITが関わっていない領域なんか、ほぼないわけです。だとしたら、すべての変化はDXなんですかね? みたいな(笑)。そういうふうにも読み取れますし。

もうちょっと狭く言うと、「(企業が)テクノロジーを利用して事業の業績や対象範囲を根底から変化させる」という概念なんだと言っている場合もあります。

ガートナーによると、「仮想世界と物理世界が融合されていく」とかいろいろ言ったりするんですが、何が言いたいかというと、とにかく領域が広いし定義が曖昧です。

業務のデジタルシフトもビジネス変革も、すべてDX

抜本的なビジネス変革のことをDXだと言う人もいれば、日々のお仕事がちょっとデジタルに変わっていくのもDXに含んでいいんじゃないの? と言う人もいます。どっちでもいいんですけど、いったん今日は広く捉えたいなと思っています。

左側(抜本的なビジネス変革)に絞っちゃうと、話が大きくなってわかりづらくなったりしますので、右側(日々のお仕事のデジタルシフト)もDXなんだなぁと捉えながらお話しします。

例としてはわかりやすいので、「日常のお仕事をデジタルにシフトする」というのを引き合いに出しながら、お話をしていこうと思っています。

なので、左側の領域(「抜本的なビジネス変革」)で勝負している方々は、右側の話(「日々のお仕事のデジタルシフト」)をうまく左側に置換しながら聞いていただけるといいかなと思っています。

社長命令で「とりあえず」始めるDX

(DXは)定義が曖昧だという話をしましたが、我々はコンサルティングの仕事をしていますので、いろんなところから「DXを始めたいんだけど」「ちょっと相談に乗ってほしい」というご相談をたくさんいただくんですね。

定義が曖昧だからかもしれないんですが、みなさんが迷っているのがよく読み取れるなと思っています。

我々がいただく相談をいくつか類型化してみたんですが、よくあるのはだいたいこんな感じですね。

「社長からDXをやれと言われて」「DXって何だ?」「組織ができたんですが、何も決まっていなくて」とか、中身がぜんぜんわからないんですね。だけど、社長命令なのでとりあえずやらなきゃいけなくて、何から始めたらいいんですかね? というお話をめっちゃいただくんですよね。

僭越ながら、我々は勝手にこれを「とりあえず症候群」という名前を付けさせてもらって、これは困りますよねという話をしています。

企業から寄せられる“DXっぽい案件”の相談

もう少しだけ具体的になると、「顧客情報を統合して活用するつもりなんです」「情報を一元化したい」「デジタル化で場所と時間を選ばずに働けるように、次世代のワークスタイルを作りたい」とか。「何かやれ」って言われているよりは、ちょっとだけコンセプトがありますよね。

でもね、これも「それっぽいコンセプト症候群」だなって思っちゃうんですよね。情報の一元化はしないほうがいいっていう会社は、たぶんあり得ないですよね。顧客情報を統合しないほうがいいなんていう会社は、たぶんないですよね。

顧客情報統合はほとんどの会社で受け入れられるというか、どの会社にも通用する話なんですよ。「それっぽいコンセプト症候群だなぁ」というふうに思ったります。

3つ目はさらに具体的になってくるんですが、「電子化・ペーパレス化をしたい」とか「マーケティングオートメーションとAIを組み合わせて、効果的な1to1マーケティング」。……なんかそれっぽいですよね。

これはこれで、上に書いてある2つの症候群よりはずっと具体的なんですが、もっとソリューション寄りだなと思うんですよ。これを我々は「ソリューションください症候群」という言い方をしたりしていて、手段にすごく寄っているなというふうに思います。

相談内容の共通点は「困ってない」ということ

いくつか紹介してみましたが、DXは定義が曖昧なので、DXっぽい案件の相談をたくさんいただくんですけど、だいたいこんな感じなんですよ。

これは別に「症候群ですね」と言いたいだけじゃなくて、ここから見える、共通している事象があるなと思っています。

それは何かというと、「困ってない」ということなんですよ。どれもそうです。「とりあえず」「それっぽいコンセプトがありまして」「ソリューションが欲しいんです」と、全部困っていないんですよ。伝わりますか? これ、すごく大事なところなんです。

従来型のプロジェクトは困っていたんですよ。例えば、3社合併した直後で業務がバラバラで、手間も時間もすごくかかっているし、ミスが出てしまってお客さんにも迷惑がかかっている。それをなんとか健全な状態に戻したいんだ、みたいなプロジェクトが従来型ですよね。

システムの保守期限がもう切れちゃうので、健全な状態、大丈夫な状態に戻したい。マイナスの状態をプラスマイナスゼロに戻したい。困っている状態、怪我をした状態を元に戻したいというのが、従来型のプロジェクトの特徴だろうなと勝手に思っています。元の状態に戻したい、というイメージですね。

DXのゴールが不明確になりがちな理由

では、DXはどうかというと、困ってないんですよ。明確にダメージがあるわけじゃないんだけど、未来のために、今のうちに何かやっておきたい。「顧客情報を統合したらもっといいサービス提供ができるんじゃないか?」みたいな感じなんですよね。

左側(従来型プロジェクトの場合)は、ケガをして骨を折りました。薬をいただいて元の状態に戻します。

DXの場合はそうじゃなくて、「今はまぁまぁ健康なんだけど、もっと健康になれるかもしれないからランニングしてみようかな」「ちょっと食事を変えてみようかな」とか、そんな感じの印象ですよね。

何が言いたいかというと、左側の場合はゴールがめちゃくちゃ明確なんですよ。機能不全に陥っているものを元に戻す、バラバラな業務プロセスや、すごく煩雑なものを整理整頓するという、到達点がすごくわかりやすいんですよね。

でも、DXのプロジェクトは困ってないので、到達点が不明確なんですよ。健康になりたいけど、どうなったら健康なのかはわからないですよね。

毎日ヨガをやったら健康になれるのか、ビーガンみたいに食事を徹底的に変えるのか、それとも毎日ちょっと走るくらいですごく睡眠が改善されればいいのか、いろんな種類の目指すべき未来があるんですよ。困っていないから、ゴールがすごく不明確になりがちだなと思っています。

DXの本質的な難しさは、ビジョンが不明確なこと

あと、DXのプロジェクトも100パーセント右側(ビジョン駆動型)かというと、そうでもなくて、左側(問題解決型)の要素も入っていたりするんですよ。従来型プロジェクトも、右側の要素がちょっと入っていたりするので厄介なんですが、いったんわかりやすく2つに分けてお話ししています。

まとめるとこういう話です。左側は「問題解決型の取り組み」なんですよね。困っていることがあって、それを正しい状態、ゼロに戻したい。なので、到達点が明確。なぜなら、問題が解決された状態が到達点だからです。

(DXは)「ビジョン駆動型の取り組み」と言っていますが、「健康になりたい」というビジョンを実現するための取り組みですよね。困っていないからゴールがあやふや。そして、人によってゴールがばらけちゃうんですよね。

毎日1時間筋トレできたらいいのか、修行僧みたいな生活をしたらゴールなのか、わからないですよね。ここが決定的な難しさなんだと思うんですよ。

今までの取り組みは、ゴールをはっきりさせなくてもなんとかなっちゃったんですよね。ここがすごく大事だなと思っています。

ビジョンが定まらないと“迷子”になってしまう

これから言えることは、ビジョンがはっきりしていないと、どこに向かっていったらいいかがわからなくなっちゃう。これがDXの難しさなのでは? ということです。

厄介なのは、同じ取り組みでも、人によっては「今回の取り組みって問題解決をするための取り組みだよね」と思っている人もいれば、「いやいや。将来の飯の種を作っていく、将来の顧客基盤をちゃんと作っていくためのビジョン駆動型の取り組みだな」と思っている人もいて。

これがバラバラだと、なお収拾がつかないです。今回はどっち寄りの取り組みなのか、どんなビジョンが大事なのかが合意できないと、相当つらいなと思っています。

ということで、DXの案件で決定的に大事なのは、目指すべきビジョンを明らかにすることなんじゃないかなと我々は思っているんです。

何が実現できたらいいのか、何を得たいのか。ここが合わないと、当然道に迷うよねという話です。

DXとは「ビジョン駆動型の案件」

ということで、ビジョンがないと全員が道に迷うという話をしました。「ビジョンを描く」ということが、いかに重要か。もちろん昔のプロジェクトでも大事だったんです。だけど、DXのプロジェクトだと、なお重要になるということです。

DX案件を言い換えると「ビジョン駆動型の案件」。「DX」という表現がよくないですね。ビジョンで駆動していくタイプの案件・プロジェクトで、何を大事にしているかという話に入っていきたいと思います。

DXはビジョン駆動型の取り組みだと置き換えて考えた時に、大事な3ステップ、7つのポイントを書いてみました。

(1つ目のステップは)当たり前ですが、ビジョンを描く。(ビジョンを描くためには)3つのポイントがあります。

ビジョンを描いたあとに、「いいね、それやりなよ!」と言ってもらわないとプロジェクトにならないので、支援を得る必要があります。それでようやくプロジェクトとして立て付けて、実行していくという、大きく3段階になります。

従来のプロジェクトの進め方は通用しない

従来型のプロジェクトは、ここ(3つ目のステップの「実現させる」)からやればよかったんですよ。もちろん、1つ目(「ビジョンを描く」)、2つ目(「支援を得る」)も必要だったんですが、基本は3つ目からでよかったんですよね。なぜなら、ビジョンはもう明らかだからです。

困っている・元の状態に戻したいと、みんなそれがまずいとわかっているので、「良くないよね」「お客さんに迷惑もかかっているし、それは直さなきゃいけないよね」ということで、すぐにここ(「実現させる」)から入れたんですよ。

でもビジョン駆動型の取り組みは、ビジョンをちゃんと描いて、「いいね」と言ってもらってようやくプロジェクトという、前2段階が増えちゃったんですよね。

これが、DXを難しくしている要因の1つだと思っています。今までどおりのプロジェクトをやればいいんじゃないんですよね。ここが難しい。

ビジョンは「手段」ではなく「世界観」を語る

ポイントをかいつまんでお話ししていきたいなと思います。ビジョン駆動型だと言っていますので、まずはビジョンを描かなきゃいけないんですね。ビジョンをどう描くべきかという話ですが、ビジョンは具体的な絵姿で語るのが1つ目のポイントです。

どうしても手段を語ってしまうんですが、手段じゃなくて、実現された先の世界観を語りたいんですよね。それがすごくポイントだなと思っています。

これは、NASAが1974年に描いたスペースコロニー構想です。『ガンダム』の世界にもスペースコロニーがありますよね。

宇宙にシリンダーを浮かべて、(右側の画像のように)内側でグルグル回転させながら雲が発生していて、人が住んで、太陽光が入って……みたいな。こんなイメージで世界を作っていきたい、こんなコロニーを宇宙に浮かべたいんだよっていう絵なんですよ。

絵がいいと言っているわけじゃないんですが、けっこうイメージしやすいですよね。「こんな世界観を作りたいんだな」ってわかるじゃないですか。

Slack導入の背景にも、目指したい「世界観」があった

ここでは技術の話はぜんぜん語っていないんですよ。「重力を発生させるための技術が」「宇宙に建造物を作る技術を使います」とか、そういうことは言っていなくて。酸素を発生させる技術があるかどうか、そんなことはいいんですよ。

「こんな世界で人類を生活させたい」というビジョンなんです。伝わるじゃないですか。手段は最後で、まずは絵姿を描きたい。

これは壮大な構想なので、身近な例に置き換えてみます。今、ケンブリッジのIT環境ではSlackを使っているんですが、もともとはSlackじゃないものを使っていたんですよね。

うちのITを作ってくれているチームが、Slackを導入する時に語ってくれた世界観があります。これがおもしろいので紹介したいと思います。彼らは「ケンブリッジのIT環境でSlackを使いたい」とは言わなかったんですよ。なぜならSlackは手段でしかないからです。

彼らは「Slackで会話するようにコミュニケーションをする世界を作りたいんですよ。」と言ってくれたんです。

まずはビジョンを語り、手段の話はそれから

今まではメールで「おはようございます」「お世話になっています」という文言から始まって、長い文章を打って、ファイルを添付して、パスワードが……とか。

「今から打ち合わせをしようか」と言ったら、会議室を1時間予約して、会議室まで移動してようやく話せるという世界だったじゃないですか。(実現したいのは)そうじゃないんですって言ってくれたんですよね。

Slackで「今から話せる?」とパパッと打って、「いいよ。じゃあ今から5分、話をしようか」とZOOMを立ち上げて、あたかも隣りにいるかのようにその場で話が始まる。なんならBoxとかで同時編集をしながら、目の前にいるかのように話が進む。

そういう世界を作りたいんです、そのためにはSlackがいいんじゃないかなと思っています、という順番で話してくれたんです。ビジョンを描くというのは、こういうことです。

さっきのスペースコロニー構想もすごくいいですが、身近な例に置き換えるとこういうことなんです。これ、きっと伝わりますよね。「Slackを使いたいんです」と言うのと、「こういう世界を作りたいんです。そのためにSlackがいいんじゃないかなと思っています」と言うのは、ぜんぜん違いますよね。

「顧客データを統合して活用したい」というあるある

大事なのでもう1個。こういう例もあります。「顧客データを統合して活用したいんです」、これもめちゃくちゃよく聞くんですよ。

これもケンブリッジの中の話なんですが、マーケティングチームと一緒に「ケンブリッジのマーケティングをこんなふうに変えていきたいんだ」という話をしていたんです。

「顧客データをデジタルマーケティングに活用したい。具体的には、いきなり1to1マーケティングを仕掛けるのではなくて、まずはメルマガとかでノウハウを定期的に配信できるような仕掛けを作りたい」と。今、実際にそうなっているんですけど、実は配信したコンテンツの閲覧状態とかがわかるんですよね。

アクティブに情報を見てくれている方とか、そうじゃない方がわかって、何を見ているかがわかったら、さらに興味があるところにフォーカスした情報を提供できるんじゃないかと。

そうすると関心を持ってくださって、いろんなところを見てくださるんじゃないか。そんなふうにして、ケンブリッジの中身を知ってもらうようなマーケティングをしていきたい。そのためには、今はない顧客データをこんなふうに統合して、こういうふうに使いたいんだよと話してくれました。

意外とできていない「ビジョン」の目線合わせ

顧客データ統合は手段ですよね。やりたいことを実現する前提条件でしかないので、「こんな世界を作るために、事前情報としてこんなふうに整備したい」という順番で話してくれているんですよ。ここまで(ビジョンを)描かないと、何がしたいかわからないんですよ。

顧客データ統合って本当にどこでも聞くんですが、その先でやりたいことは会社によってまったく違うはずだし、もしかしたら人によっても考えていることはぜんぜん違うはずなんですよね。

そこに共感ができなかったら、顧客データを統合しても意味がないわけです。まずはここからビジョンをちゃんと合わせてほしい。当たり前のようですが、意外とできていない。このくらい具体的に、「こんな世界を作りたい」と語ってほしいなということです。

まとめです。ビジョンは具体的な絵姿で語る。くどいですけど、「統合して活用する」は、手段・前提条件でしかないんですよね。

その先で実現される世界は何か、それによって誰がうれしくなるのか、お客さんにどんな価値を提供できるのか。従業員に対してでもいいんですが、まずはそういうことを考えるのが一番最初に重要です。

これって自分たちの話なので、SIerやシステムを作ってくださる人たちに丸投げしてもできるわけないですよね。自分たちがどういう健康な状態になりたいかがわからないのに、医者に行ってもしょうがないわけですよね。

「失われるもの」まで見据えてビジョンを描く

「世界観の有無チェック」。もしみなさんがプロジェクトをやられているなら、こういうことを自問してほしいです。例えば、顧客データを統合することによって何ができるようになるんだっけ? 関わる人たちの活動はどう変わる? 誰がうれしいんだっけ?

そういう問いにスパッと答えられないなら危ないし、プロジェクトに関わっている3人、4人に聞いて、全員から同じ答えが返ってこないようだと危ないですよね。ビジョンが合っていないということです。

大事なのは、何かを変えることによって失われるものは当然あるはずです。ほとんどの人が「何も失われない」と思っているんですけど、必ず失われるものがあるので、「何が失われるんだろう?」というところまで描いてビジョンにしてほしいなと思います。こんなところを押さえていただけると、非常にありがたいなと思います。

(視聴者からも)チャットをたくさんいただいていて、非常にありがたいですね。「たいていの場合は、顧客データを統合しなくてもビジョンが達成できることがほとんど」。本当にそうなんですよ(笑)。

あとは顧客データの統合も、レベル感にめちゃくちゃ幅がありますよね。どういうデータをどんなふうに統合するか、どんな構造で統合するか、リアルタイム性がどこまでか、正確性がどこまでかという話も当然出てくるんですね。

それって、やりたいことによってどこまでのレベルで整えるかが変わるはずなので、本当はビジョンがないと統合できるわけがないんですが、それが失われていると思います。

(視聴者からのコメントで)「ただ、最後にひっくり返される可能性も多々……」。でも、それはしょうがないです。最初に(ビジョンを)描いておいて「いや、この時話したじゃないですか」と、後から言えると、またずいぶん違いますよね。そんなふうにも使えるかなと思います。

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