2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
提供:サイボウズ株式会社
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野水克也氏(以下、野水):ここから本題です。そもそもやる気が出ない問題どうするかという本題に今から突っ込んでいきたいと思います。
今回「中年エンジン」というタイトルにしているんですが、それを図にしてみました。なぜ中年になると自分の力でなかなか(エンジンを)ブーンと回せないのか。やる気が出ないのか。
これは僕の論なんですけれども、「内燃機関」と「外燃機関」ってわかりますか? 「内燃機関」は、自分の中のプラグに火花を散らしてピストンを動かして動くというものです。「外燃機関」は、蒸気機関車が代表的なんですけど、違うところで火を燃やして、熱をピストンに送り込んで、その熱の力でピストンを回すものです。
外燃機関のエンジンの場合は、自分で回ることができないんですよ。誰かに回してもらわなきゃいけないんですね。40歳までは「外燃機関」なんです。目標や、上司のような自分を引き立ててくれる人がたくさんいて、その人たちが「向こうに走れ、ここに走れ」というおかげで、自分は走れるというのがある。
ところが、その外から来る熱が消えると「あれ? あれ?」となってしまうと思うんですね。もうちょっとわかりやすく言うと、鼻先に人参がない馬ですね。今までは目標とか昇給とかいろんな人参を誰かがぶら下げてくれたんですよ。
誰かがぶら下げてくれた人参に向かって、ガーッと走っていればよかったんですが、人参取り上げられたら、「どこ行こう?」という状態になってしまったりするんじゃないかな、というのが僕の仮説です。
野水:これを話した時に、いい話を萩原さんが挙げてくださったのでご説明をいただきたいです。
萩原雅裕氏(以下、萩原):さっきの鼻先人参の話は、そう言われると「うん、そうかも」と思いますけど、でもやっている時は気付かないんですよ。20年とか25年走っていると、もはやそれが人参だということも忘れている。気が付くとそれが当たり前になってしまっていると、私はこの本(『直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN』)を読んだ時にめっちゃ(実感しました)。
しかもこの文章は、この本の「はじめに」に出てきているんですけれども、それだけで「ああ!」と衝撃を受けたんです。
会社の中での「こういう役割だったらこうあるべきだよね」とか、社会の中で「こういう立場だったらこうあるべきだよね」ということばかり考えていると、ずっと「他人モード」なんだと著者の佐宗邦威さんはおっしゃっているんですけど。
自分が本当はどう感じているかということを忘れちゃう。これは特にミドルマネージャーや上司の立場をやっている方だとわかるんじゃないかなと思うんです。
野水:わかります。すごく高い目標が降りてきて、「行けないんじゃないかな」と思いながらみんなのお尻を叩かなきゃいけないので。
萩原:そうそう。
野水:「おお! エキサイティングだね。ハッピー!」とか言いながら、ペンペンとやっている感じですね。
萩原:自分も「いや、これ厳しくね?」と思っていても、「いやいや、〇〇だから、これが妥当だよね」と言っていると、自分の「行けなくね?」という本心と、どれぐらい行けないと思っていたかという感覚の振れ幅とか、そういうのがどんどん狭まってしまうんですよね。
これをしていくと、下のほうに書いてありますけど、ワクワクするとか感動するとか幸せ感じるという力がどんどん弱まっていってしまう。これが「中年の危機」の本当の正体なんだなと。
萩原:今朝の基調講演でジーンクエストの高橋祥子さんもおっしゃっていましたけど、「理想と現状のギャップがあるから、課題に感じてやる気が出る」というのに近いなと思っています。
中年になるまでの過程で、「現実は理想に近づかない」と大人になってわかってきちゃうじゃないですか。どんどん(理想を現実に)アジャストしていっちゃうと、「こんなもんだよな」と思ってしまうところがすごく多いと思うんですよね。それが「やる気でない問題」の根幹なんじゃないかなという気がします。
野水:忖度が、自分の意志のようになっちゃうんですよね。
萩原:そう。忖度ばかりしていると、自分の意志がそれに上書きされちゃってわかんなくなってしまうところがあるかなという気がします。
野水:正体をズバリ言い当てていただいた。
萩原:みなさん、いろんな役割を果たさなきゃいけないじゃないですか。それをまじめにやろうとすればするほど、自分の思考とか感情とか精神とかが、役割側のほうが上回ってしまって、どんどんわからなくなっていっちゃう。
こういうことがけっこうあるなと、私自身もそう思いました。さっきのような話をすると相談を受けるケースもあるんですけど、(私も含めて)共通しているんじゃないかなという気はしますね。
野水:ということは、エンジンを再びふかすためには、この「自分がないモード」をどうやって変えるかが重要になってくると思うんですけど。その時に重要なのは、「目指すべき状態をどう考えるか」ではないかなと思います。
我々が目指すべき状態としてメディアとかが煽るものは、だいたい何か一定の基準があるんですよ。「お金持ちを目指せ」とか「出世を目指せ」とか、何か世間的な尺度があってそこを駆け上がっていきなさいという、統一価値感で縛られるわけです。
その外部評価軸に頼るのではなくて、自分だけの評価軸を考えた時に、先ほどの萩原さんの話じゃないですけど、「自分はどうありたいのか」を考えることが大事じゃないかなと思います。
野水:とはいえ、これを理解するのはなかなか難しいと思いますので、わかりやすいかどうかわからないですけど、Instagram問題を取り上げてみたいと思います。おっさんのInstagramって、なぜか嫌われるんですよね、いっぱい記事になっています。
FacebookとInstagramって、基本的にはぜんぜん違うものなんですよ。何が違うかというと、Facebookは人とつながるためのツールです。他人とのつながりでグループを作って、近況報告をし合ったりするのが、Facebookの主な使用方法だったりします。
ところが、そのマインドでInstagramに来ると、ぜんぜん違うよという話になるんですね。Facebookは基本的に人とつながるツールなので、誰かと飲み食いして楽しかったとか、今日有名人に会って、「萩原さんと会って一緒に写真撮っちゃた。イエーイ」とか、そういうので書くんですけど、それをInstagramにあげるとアカンという話ですね。
Instagramをやっている若い人に関しては、「上司の武勇伝を聞かされている」とか、「ランニングばかり書いていて、意識の高さに辟易する」とか「外車やタワマンの自慢が鼻につく」とか、こういうことを思っているわけです。要するに価値観が違う人たちなんですよ。
Instagramは何かというと、「部屋」なんですね。インスタグラマーの有名な人に聞いた話なんですけど、Instagramのタイムラインというのは部屋なんだと。自分にとって心地いいものだけでInstagramを埋めたいのに、例えば部屋のインテリアの壁の額縁に、餃子を食っているおっさんを貼るとかありえないでしょ、という話になる。
確かに言われて見ると、女性の部屋の額縁に、自分が餃子を食っている写真があったら相当嫌やろなと、なんとなく想像はつくんですけど。
これが「ありたい状態」なんですよ。自分はこういう状態だったら幸せだというところで、「誰といたら幸せ」とか、「何を食ったら幸せ」「誰と何を食ったら幸せ」という話ではない。このマインドチェンジが非常に大事じゃないかなと思うんですね。
野水:僕が言ってもまだわかりにくいので、これはまた萩原さんに解説していただけるということですね(笑)。
萩原:グサグサ刺さる記事のタイトルがいっぱい出ていましたけど、さっきの画で言うと、心地よいじゃないですか。こうなっていると自分が心地よい。こういうものに囲まれていると心地よいという状態ってありますよね。
これって「価値観」だと思うんですよね。価値観と言うとわかりづらいかもしれないですが、自分がどういうことを大事にしているか。こういう状態だとワクワクするとか、こういう状態だと心地いいなと思うのが、平たく言うとわかりやすい「価値観」の例かなと思うんですね。
それを認識しようと思うと、下の「何が好き」とか「何が嫌」という「感情」をちゃんと認識しないと、自分が本当に大事にしている価値観がわからない。さっきの話のとおりで、それこそ「仕事に感情を持ち込むな」と言われて育つじゃないですか。
そうすると、嫌なことがあっても「嫌だ」と触れてはいけないので、「ちょっと嫌だけど、まあまあ」と。すごくいいことがあっても、「えこ贔屓きしちゃいけないかな、まあまあ」とやっていると、自分の感情の振れ幅がすごく狭くなっているんですよね。
野水:嫌だと思っている自分がおかしいと言われるんですね。
萩原:だからここ(感情)がわかんなくなってしまっていることがあるなと。もう1回自分で、「この好きとこの好きは、どっちがどれくらい好きなんだっけ」とか、これが嫌なのは「確かに嫌だよね」ぐらいなのか、「めっちゃ嫌だわ」ということなのかとか。
自分にもともとあった感情の振れ幅を思い出してくると、「確かにこの状態で『長く働け』と言われたら嫌だな。ちょっと長続きしないな」とか、「この状態だと、けっこう大変な状況でもがんばれるな」とか。(私は)「感情」と向き合うことでちゃんと「価値観」を思い出すプロセスを踏んだんですよ。
野水:これが将来的にはキャリアに結びついていくわけですよね。
萩原:そうですね。これをやったことによって、「自分はこういうふうにありたいんだ」って、まさにさっきのInstagramのように、「自分の心地よい状態はこれなんだ」と、徐々になんとなく言語化できてきたんですよ。
萩原:「こうありたい」というのができると、さっきの「理想」ですね。若い時はプロ経営者みたいなわかりやすい理想だったんですけど、こっちは正直に言うと、もうちょっとフワッとしています。
でも自分の中では大事にしている価値観なので、こうあると自分は心地いいなとか、幸せだなとか、ワクワクするなというのがいくつかあると、いろいろやってみる原動力になっていると感じてます。
野水:それは外部要因にあまり左右されないところにありますよね。
萩原:たまに即物的なものとかも入っていますよ。
野水:(笑)。
萩原:広い家がいいなとかありますけど、それは一部です。例えば僕の人生ビジョンを書き出してあるんですけど、その中には「精神の自由を保ちたい」とか「人が行かない道でも気にせずに行く」ということを書いています。
野水:求道者な感じですね(笑)。言わんとしていることはわかります。
萩原:さっき言ったことを自分の中でやってみたら、「自分はこういうことを大事にしていたんだ」と気付いたので書きました。「自分に対して幸せだと思う」とかが原動力になっているんだなと思うので、いろんなことに手を出してみるところにつながっている気はしますね。
野水:なるほど。もう1枚書いていただいたんですけど、これは価値観の中から自分が(大切にしているものということですか)。
萩原:ここに書いてある全部が、自分がやっていることとかバックグラウンドなんですけど。冒頭で言ったジェネラリストって何かなと考えると、けっこう組み合わせだなと思っています。
“フリーのジェネラリスト”が成り立つかどうかは、まだまだこれから何年かやってみないとわからないです。ただやってみて気付いたのは、私がいろいろと「こんなんやってますわー、こんなことやってきましたわー」とやっていると、私のあの辺(スライドの左側)を見て「ちょっと萩原さん、こんなんできますか」と言ってくれる人も、この辺(右側)を見て「こんなんできます?」と言ってくれる人もいます。
私はいろいろやっているんですけど、「あの人にはこの辺が見えているんだ。こっちの人はこの辺を見てくれているんだな」と。別に自分がスペシャリティがあるわけでもないし、この中のどれをとっても日本一なものは何一つないですけど、でもこう見てくれているんだなと、やっていったら気付いたんです。
逆に、どんなに筋トレしていても、誰も声掛けてこないんだなというのもわかるわけですよ。
野水:(笑)。
萩原:いろいろ発信していると、周りの人が気付いてくれる。「こう見てくれているんだ」と気付いてくると、徐々に「自分はこの辺だったらお仕事になるのかな」とか、「この辺は趣味の世界なんだな」ということが見えてくる感じです。
野水:カオスでいいですよね。『ワーク・シフト』という有名な本の中でも書かれているんですが、今までの人生は「学ぶ、働く、引退する」という3ステップだったわけですよ。
そうすると、学んで働いている途中で、自分のキャリアが完全に決まってしまうんですよね。ところがそれではいけない。変化しない。今は「学ぶ、交わる、挑戦する」というスパイラルのステップをずっと回していって、自分自身も変わってかなきゃいけないよねという。変わり続けること自体が、自分の人生でありワークであると(言っています)。
要するに、変わることを目的にしてもいいくらいだとおっしゃっているわけですよね。先ほどの「ありたい状態」に向かって、萩原さんも自分のスパイラルを回し続けていると思うんですけど。そこに近づくためにどううまいことやるかという方法は、今までも言っていただいていますけど、こんな感じですか?
萩原:これは本当にくだらないように見えるかもしれないんですけど、最近大事だなと思っていまして。これは私が日々使っているツールです。毎日このツールを見ます。ここにグルグルと矢印が書いてあるのは「毎日繰り返しタスク」になっていて、自分の「Visionを確認する」って書いてあるんですね。
野水:1番が、毎日「Visionを確認する」。
萩原:この詳細画面に行くとリンクがあって、(Visionを)パーッと見るわけです。サラッと見る日もあれば、じっくり見て「そうだよな。俺はこれを大事だと思っているよな」と思う日もあって、その日によるんですけど。
これをやると、「何で自分が今このタスクをやっているんだっけ?」とか「何で「コレつらいな」と思いながらも、今がんばっているんだっけ?」というように、乗り越えるための原動力になっているなと思っています。
萩原:『やりぬく力 GRIT』という本が少し前に話題になったと思うんですが、「GRIT」って「粘り強くがんばる」という世界じゃないですか。それができている人は、大きな目標と日々やっていることをちゃんと結びつけている人だと書いてあったんですよ。「これだ」と思って。
理想はふんわりしているから、いつ実現するかわからないけど、逆に「ありたい自分」をイメージすると、なんかがんばれる。これもやってみようかな、あっちもチャレンジしてみようかなということにつながっているのはありますね。
野水:「カオスを受け入れる」というとあれなんですけど。自分の理想の状態を思い描きながら、そこに一直線に行けないという現実はある。でもそれを受け入れながら、「社会の要求」と迷って、人の評価を聞いて、(将来のキャリアを)ずっと変え続けること自体が糧になるということですね。
萩原:いろいろやっていくと、向こう側から反応が返ってきて、「ここはニーズがあるんだ」とわかって、「じゃあそこをもうちょっとがんばるか」とか、「こっちはないので軌道修正するか」と繰り返していく。まさにさっきのスパイラルで繰り返していく感じです。
野水:そこでエンジンが回っていくわけですね。
萩原:今、私自身も別に何かを成し遂げているわけではなくて模索中なんですけど、でも模索する原動力にはなっている感じですね。
野水:ありがとうございます。中年エンジンの回し方としては、まず「ありたい状態」をちゃんと思い浮かべる。それに向かってちゃんと自分が近づいているか、周りの声を聞きながら常にアップデートしていく。それをやると「やるべきこと」とか「やらなきゃいけないこと」とか「やりたいこと」が見えてくるのかな、というまとめになります。
野水:ちなみに僕の理想の状態はと言いますと、萩原さんは「精神の自由を保ちたい」とおうかがいしましたが、僕はもっと即物的なので、60代は日々楽しんで成長を感じられる状態でありたいです。
70代は好きなことをやってたら、イコール役に立つことが一致していたら一番いいな。誰かのためになっていたら一番いいなという状態に持っていきたいなと思っています。
80代は、いろんな人にさり気なく気をかけてもらったらうれしいなという状態に持っていきたい。この順番だったら、たぶんいけるんじゃないかなと思っています。
ただ、日々精進しなきゃいけないことはわかるので、これを考えながら今からのキャリアを考えていきたいなと思っております。
「中年エンジン」というのは、社会に受け入れられるあなただけの価値観を見つけた時に、ガーッと回り出します。あなたにとって一番心地よい状態は何なのかと常に自問自答しながら、もう今日の帰り道から「自分にとって一番気持ちいいのは何だろう」と考えていただけるといいかなと思います。
以上でこちらのセッションは終わりにします。萩原さん、どうも今日はありがとうございました。
萩原:ありがとうございました。
(会場拍手)
サイボウズ株式会社
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