2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
kintone AWARD⑥RGC株式会社(全1記事)
提供:サイボウズ株式会社
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當眞大地氏(以下、當眞):こんにちは、よろしくお願いします。本日は「混沌の“るつぼ”から生み出す新しい価値」という題目で、お話しします。沖縄県はRGC株式会社からまいりました、當眞大地と申します。
RGCの営業3課にて、オンラインでの販売を担当しております。もともとITを10年ぐらいやっていて、そのうち4年ぐらいはkintoneの導入支援の仕事をしてました。言うならば、みなさんが“ビジネスの打席”に立つ時に使うための“バット”を作る職人のようなイメージで、ずっと業務改善の支援をしてたんですけど。自分もこのバットでビジネスをやりたいなという思いがあって、2年前から現職になります。ライフワークは、タイポップ。タイの音楽だけをかけるDJと、あとフェスをやったりしています。
私たちはRGC株式会社といいます。ほとんどの方は知らないと思うんですけど、琉球ガラスを作っている会社です。あとは、沖縄県糸満市にある「琉球ガラス村」という観光施設の運営をしていて、県内では一番大きい琉球ガラスの工場・会社になっております。
特徴は、6,600平米ある大きな観光施設を運営していることと、工場にいる職人で現代の名工が3名、工芸士が12名。これは日本全国でもけっこう大きな規模の工芸の会社になるんじゃかないかなと思います。人が多い分、アイテム数もすごく多くて、在庫もたっぷりあります。
なので、RGC株式会社はモノづくりの会社です。琉球ガラス製品の製造、卸、直営店の運営を行っております。あるいは“コトづくり”ですね。ガラスのテーマパーク「琉球ガラス村」を運営しておりますので、こちらでみなさんに沖縄旅行を楽しんでいただくという、コトづくりをしております。
というわけで「混沌のるつぼから生み出す新しい価値」。「るつぼ」というのがわからないんじゃないかと思って、(スライドを指して)写真を用意しました。こういう、水あめ状になってるガラスの原料が入っているつぼを「るつぼ」といいます。今はカオス状態になっている「るつぼ」から、新しい価値を生み出そうというお話をさせていただきます。
當眞:kintone導入のきっかけは、2年前です。消費税の変更と軽減税率の導入にあたって、既存のシステムをリニューアルしようと。でも「やっぱりこういう分析機能がほしい」とか「あれもやりたい」「これもやりたい」と、どんどんコストが上がっていました。そこで私はkintoneに詳しいので「よし、これはkintoneを入れましょう」と。
レジの部分は「スマレジ」を入れることで(kintoneと)API連携ができてコストがだいぶ削減できました。それで「コスト削減できた! やったー!」とよろこんでたんですけど、最初だけでした。
使い始めはいいんですよ。でも使い始めて「活用していこう」という時には、いろいろ壁があります。今まで登壇された方々も言っていたようなことが、私たちにもありました。つまり、商品と会社に関しての情報がかなりの混沌状態・カオス状態になってるという問題です。
しかも、沖縄の観光施設はかなりコロナの影響を受けてしまいまして。売上が一番多い時で、95パーセントダウン。従業員もかなり辞めてしまったので、人数も減ったこの状況でいかに業務を圧縮して、圧縮した分で商品だったりお客さまに向き合う時間を確保するか? ということが急務となります。
繰り返しになるんですけど「kintone歴が長い」という自覚があったので、「任してください。一発逆転ホームラン打ちますよ!」と。……でも、できなかった。なので、ちょっと考え方を変えました。いろんな工場だったり倉庫だったり、営業の現場ごとに「ホームランではなくヒットを積み重ねていくことで、業務をよくしてこう」と切り替えました。
當眞:まずは、よくある問題。「リテラシーの不均衡」「属人化しすぎている情報」「情報資産の埋没」って、どこでもある問題なんですけど。平均年齢47歳の職場で「リテラシー」「属人化」とか言っても通じないので、私たちの言葉に置き換えます。
それが「シークヮーサー問題」「望さんが休み問題」「信用できない理論在庫」。今度は逆にみなさんがピンとこないですよね。ちょっと説明します。
まず「シークヮーサー問題」。沖縄県の特産品で柑橘類のシークヮーサーというものがあるんですけど、県内でも表記がぜんぜん統合されてなくて。伸ばし棒の数だったり、「ア」が小っちゃかったり、「ワ」が小っちゃかったり、めちゃくちゃブレてるんですよ。
それを私たちの事例で置き換えると「シークヮーサー」っていう商品自体はないんですけど、そういったように正規表現。商品名がブレている状態になってました。kintoneでグラフにしようとしても、生産情報だったり販売情報のそれぞれの台帳で壁が立ちはだかります。
シークヮーサーの売上を見ようと思って生産情報で検索かける時に「シークワーサー」って書くんですよ。そうすると、はじかれる。なので「シークヮーサー」と「ワ」を小っちゃくする。これでやっと通るようになります。これが「シークヮーサー問題」です。
つまりkintoneで何が起きたか? っていうと、ルックアップがぜんぜん使いものにならなかったんですよ。ヒットしない。なのでちょっとやり方を変えて、ルックアップキーを「商品名プラスバーコード」にしました。
そうすると「ゴーヤー置物」という商品を作ってるんですけど、「ゴーヤ」って書く場合もあるんですよ。そうするとヒットしない。でもバーコードを入れれば、その一商品しか出てこないのでブレない。
當眞:ブレない入力で解決したけど、なんか使ってもらえない。「なんでですか?」ってよく聞いてみたら、実はkintoneでいろんな形の帳票を出すために、サブテーブルのフィールドがめっちゃ増えてたんですね。そうすると遠い。ブラウザの画面をピューッとやらないといけない。実際こんな感じでした。
(動画を見せながら)販売に利用する帳票のサブテーブル部分ですね。見積書とか出荷指示書を出す時に、「1回右にずらして」「サブテーブルのプラスボタンを押して」「検索かけて」「ヒットしたものを選択して」「もう1回ブラウザを右のほうにグーッとズラして」「プラスボタンを押す」というのに、もう7秒以上かかってたと。
なので、バーコードはいろいろ使い方があるだろうなと思って調べていたところ、バーコード入力で解決できました。(動画を見せながら)商品の内容をバーコードでピッと入れた後に、これ今、商品の情報を入れてます。その後もう1回、ピッピッって何回か音が鳴ってるじゃないですか。これで半分以上短縮できました。
何をやったかというと、商品のバーコードを打った後に、タブをいっぱい押して1押して、タブ押して……みたいなショートカットキーを組み合わせたバーコードを作ったんですね。これを一発ピッてやったら、掛け率も数量も出た上で、サブテーブルの行が1個増えるというショートカットのバーコード入力です。
これはタダでできますし、ライトコースでもできますし。バーコードリーダって2,000円台で買えるので、サブテーブルで悩んでる方はぜひ使ってください。なので「シークヮーサー問題」も「追加のプラスボタンが遠い問題」も、解決することができました。
結果、月間1,200分も短縮できた。塵も積もればってやつですね。慣れてるデバイスで業務効率化することによって、ヒットが打てました。
當眞:続いては「望さんが休み問題」です。望さんは社歴が長くて、倉庫のどこに何が置いてあるかをよく知ってるんですよ。「kintoneで何個、スマレジで何個」って在庫数は出るんですけど、広い敷地の中でそれがどこにあるかわからない。望さんに確認しようと思ったら、望さんは年休。これが「望さんが休み問題」です。
もうどこでもあると思います。スーパープレイヤーがいないことによって、業務の情報がわからない。でも望さんがいない時に、棚卸しの時にこれがどこにあったかという情報は「スマレジを見ればわかりますよ」と、他のスタッフが教えてくれました。「お、データを活用する文化が発生してるぞ」と。
なのでそのデータを活用して、棚卸しするごとに、kintone上にCSVでどこに置いてあるかをアップ。それをすべての伝票に出力する。そうすると、伝票が出ただけでどこに何があるかが誰でもわかる。
「望さんが休み問題」こと「属人化された情報」は、関連してる作業の情報を活用して、わかる言葉でわかる場所に置いておくと、みんなのちゃんとデータを更新しようという意識もアップする、すごくいい成果でした。情報を蓄積して、作業効率を効率化することで、業務量はちょっとよくなるヒットが打てました。
最後は「信用できない理論在庫」ですね。恥ずかしいんですけど、以前の本当の状況は、簡単に言うと「一生在庫が合わない」ような業務フローになってました。なので、理論在庫はあてになりません。検索したところで、その数字を見られないから内線で確認。めちゃめちゃ内線が飛び交ってました。
なのでkintoneのエバンジェリスト・久米さんに相談して、API開発してもらって、うまいことやりました。なんて説明したらいいんだろう……APIがあるおかげでうまいこといったんですよ。
Beforeだと、工場で作った情報をいちいちパソコンに入力しきれないということで、作られたものがカウントされない状況。最悪の場合、今日作ったものの数が3ヶ月後の棚卸しまでカウントされないような、一生合わない在庫になってたんですが。
Web API、CSVを活用することによって、初めて理論在庫が誕生しました。先ほどからお話している「どこに何があるの?」「あれ何個あるの?」という在庫の電話が、かなり業務のストレスになっていました。作業中に電話がかかってくると集中力が下がったりしますが、そういった電話が半分以下になった。それで、信用できない理論在庫と情報資産の埋没というのがちょっとよくなって、ヒットが打てました。
當眞:これで「シークヮーサー問題」「望さんが休み問題」「月に一度の理論在庫」がわかっていただけたと思うんですけど、一般的な言葉を使うよりも、私たちにとっては現場に合わせた言葉に置き換えて共有することがすごく大事だなと気づきました。
コロナの影響で従業員が減ってしまったんですけど、業務量を縮小するヒットの積み重ねで、結果的に人数が半分になってしまった部署でも、以前と同じ業務ができるようになりました。
すごくよかったことがいくつかあって。業務量を圧縮して、余った時間はどうするか? というところですね。新しい価値を作りたい。今までわからなかった新製品の売れ行きを職人さんたちに教えるという、フィードバックができるようになった。
あとは、琉球ガラスってさまざまなものがあるんですけど、模様にシリーズ名をつけていたりとか、どういう色が売れてるかというのも、初めてグラフで見ることができたんですね。なので「これって模様自体も価値があるんじゃないか?」という話になって、模様自体を売り出そうと。
それで新製品として、(スライドを指して)真ん中にあるのが従来から私たちが販売していたガラスの皿です。私たちの制服と同じ型になるんですけど、ガラスを元にして服を作って、それを販売するという新しい価値を創造することができました。
続いて「難易度と貢献度は比例しない」という、アプリ作成の時の気づきのお話をしたいんですけど、もう(他の登壇者から)何回もされていたので短めに。発注管理アプリというのを、対面開発の20分、7フィールドで作ったところ、開発に半年かかったアプリよりも役員と社長に褒められて、うれしいやら悔しいやらだったという話です。
kintoneって、掛け合わせがすごく強いです。kintoneだけですべて集約してやろうとするのもいいんですけど、POSシステムだったらスマレジとWeb APIでつなげるし、バーコードリーダを使うことで、キーボードが苦手な人も伝票が作れるようになる。あるいは、プリントクリエイターで出した紙で集計した後に、最後に入力をするのが合う人もいます。
掛け合わせができるのがすごく強いところなので、ぜひ何かと組み合わせて使うことを考えるのがいいと思います。
今後もいろいろやりたいことがあります。1万点の商品の品番の付け直しが一番やりたくないんですけど、それがたぶんすごい大きなヒットになると思っているので、がんばります。
當眞:まとめです。よく慣用句で「ガラスのハート」っていう、もろく傷つきやすい心のことを言うんですけど。ガラスメーカーからすると、ガラスというのは再利用可能なんですね。かなりめずらしいマテリアルです。なので、折れた・壊れたガラスのハートも、溶解して作り直せばオッケーって考えています。ちなみに、写真に写ってるハートは現品1万1,000円です。
私たち琉球ガラスメーカーは、固まった商品やガラスのくずも、熱量を加えた「るつぼ」で溶かして、新しい商品を作ることができるように、事務の時も固定化された業務や余った情報もkintoneに入れて、新しい価値を作ることができると思っています。
「るつぼ」に必須なのは、熱量です。みなさんの情熱でkintoneに火をつけて、新しい業務、新しい価値を作り出していきましょう。「混沌のるつぼから生み出す新しい価値」、當眞大地でした。
最後にちょっとだけ、今日ぜんぜん言い切れなかった部分を、琉球ガラス村に来ていただいたらもっとたくさん公開するので、社員旅行の際にぜひ琉球ガラス村をご検討ください。お願いします。琉球ガラス村に、めんそーれ。
相馬理人氏(以下、相馬):當眞さん、ありがとうございました。
當眞:ありがとうございました。
相馬:それでは、當眞さんのZoom応援団の方々もお呼びしたいと思います。それではZoom応援団のみなさーん!
當眞:沖縄から。
相馬:いろいろと手に持たれてますね。
當眞:偉いですね。みんな、ちゃんと商品の宣伝を前面に出して。
相馬:そういうことなんですね!(笑)。ありがとうございます。では、お話をおうかがいしたいんですけど。どうしても逆転ホームランを狙いたくなるような部分って、あると思うんですけど。
當眞:狙いたいです。
相馬:そこを「ヒットを積み重ねて」というところで、ものすごい改善をされたと思うんですけど。そのヒットを、野球で例えると「振る球・振らない球」ってあるじゃないですか。ヒットを打っていくコツとして「これはやったほうがいいよな」とか「ここから手を付けよう」みたいな、そういったところってどう考えられて着手されたんですか?
當眞:実際に業務する方が「これならできる」と思うかどうか。実際できるかどうかは別として、モチベーションとして「これならよくなりそう」みたいなのが共有できると、ほぼほぼヒットが生まれるんじゃないかと。
相馬:なるほど。実際に打席に立ってもらって、打てそうかどうかみたいな感じで。
當眞:そうです、そうです。
相馬:なるほど。途中に出てきた属人化とかそういったところも、やっぱり現場に伝わる感じですごい翻訳されていたので、ああいった翻訳をされると自分ごとというか、やらなきゃなとなったり改善したりするので。本当にすごく真似できるところがたくさんあった事例でした。
みなさん、沖縄に行かれる時はぜひRGCの當眞さんにお声がけいただいて、社員旅行で行っていただければと思います。みなさん、今一度大きな拍手をお願いいたします。
當眞:ありがとうございました。
サイボウズ株式会社
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