2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
提供:トヨタ自動車株式会社
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司会者:今日の登壇者の紹介をいたします。関沢さん、山田さん、鈴木さんになります。よろしくお願いいたします。
関沢省吾氏(以下、関沢):今から説明をしていきますので、みなさんよろしくお願いします。我々からも上位のチャットを見ることができて、すごくおもしろいですね、これ。
司会者:そうなんです(笑)。
関沢:『TOYOTA Developers Night ~UX/UI設計 × ソフトウェア = クルマの運転席?~』ということで、進めます。
まず私の自己紹介です。関沢省吾と申します。トヨタ自動車で商品魅力・ビジネス強化推進室でグループ長をやっています。以前の僕の写真がちょっと暗めで、みんなから逆光感がハンパないとか、ラスボス感ハンパないみたいに言われていたので(笑)、(スライドを示し)この写真は自分の中でも爽やかなものを選んでみました。
私は入社してからレクサスのLFAなどでワイヤーハーネスや電子インフラ、電子プラットフォームなどの先行開発や立ち上げを経験してきています。もともと、いわゆる車の開発屋さんです。途中から先進電子技術の企画・開発などをやっています。
最近では、オリンピックが延期になったため、デモが延びてしまっているんですけれども、北米のCESやモーターショーでも出展したTOYOTA LQという車のAIエージェント開発でプロジェクトマネージャーをやってきています。
入社以来、ずっと先進の電子技術やソフトウェアで車を変えたいなと思っていて、その中で先行技術開発から立ち上げまで、幅広く経験しています。車が好きなのもありますが、やっぱり世の中でたくさん走っていて、みなさまがよく使って目にするプロダクトを開発したいなぁと思い、その意識でずっとやってきました。
第1回は弊社の村田が1人で説明しましたが、今回は3名で説明いたします。できるだけみなさんにお会いしたいということで、このようなかたちとなりました。この3名はコックピット周りのUX/UI開発の東京ロケで、一緒に働いています。
山田薫氏(以下、山田):山田薫と申します。私も関沢と同じく商品魅力・ビジネス強化推進室というところでグループ長をしています。私は主にどちらかと言うとデザイン側、UX/UIデザインの担当をしています。
私自身、実はトヨタには転職組でして、2015年にIT企業から入ってきました。前の企業では主に情報検索のプロジェクトマネージャーや、研究所のコーディネーターなどをやっていました。もともとの専門は自然言語学処理や言語学で、文系出身です。
トヨタに入社してからしばらくは、ずっと車両のビッグデータの分析や、データを使ったサービス開発を担当していました。2019年に現在の部署に異動しまして、そこからUX/UIを担当しています。
鈴木真一氏(以下、鈴木):鈴木です。私はソフトファースト推進グループに所属しています。私は2006年に自分の大好きな車で大規模な分散システムの開発がしたいと思ってトヨタ自動車を選びました。
当時のトヨタ自動車はほかの会社と違い、通信器を車に載せるということを積極的に行っていましたので、研究をするのに良いと思って選びました。実は会社に入って最初にやったのは、その通信器を作って海外に展開するという仕事でした。
私はガジェット系も好きでして、立ち上がったあとに、落ち着いてきたタイミングでいろいろな方のサポートを受けながら、スマートフォンと連携するナビゲーションシステムの企画・開発に携わっています。
その開発が終わったあと、2011年頃に、前回1回目に話をしました村田のチームに配属されました。ナビゲーションシステムのアーキテクチャの企画・開発や、通信仕様の検討・設計をしてきまして、その後ソフトウェアの内製開発の先行検討や、実際に開発を進めるということをやってきました。
お客さまにとってうれしいことを考えの中心に置きながら、ソフトウェアの内製化を進めることで、できるだけ早くお客さまに価値を提供できるようになればよいと思っています。本日はよろしくお願いいたします。
関沢:それでは本題に移ります。改めて本日の内容ですけれども、『UX/UI設計×ソフトウェア=クルマの運転席?』という、いい感じのタイトルをTECH PLAYさんに付けていただきました。
車のUX/UI設計、ユーザーエクスペリエンス・ユーザーインターフェイスとソフトウェア開発の、特にその中でも車の運転席付近、車のコックピットのUX/UIの設計や、それを実現する大規模ソフトウェアの開発の実例を重点に話していこうと思っています。
最近の車は特にコックピット周りのデジタル化が進んできていて、運転席や真ん中に大きめのディスプレイが置かれることも増えてきていると思います。もちろんメカ的なメーカーなどがいい方も多数いるとは思うんですが。
コックピットは、まさにお客さまとの接点であるとともに、またソフトウェアを用いることでさまざまな価値を生み出すことができる場所で、車の開発の中でも特に重要度が増してきています。
前半は、UX/UI設計の重要性やその手法、また車でのUIデザインのポイントを述べて、後半それを実現する大規模ソフトウェアのアジャイル開発のポイントと実践例を説明していこうと思っています。全体の説明の中で開発の流れやポイントを少しでも理解してもらって、少しでもみなさまに役立つ内容であればと思っています。
まずUX/UIとありますが、通常Web系の開発ではUI/UXの順で使われることが一般的であると思います。ですが、我々は社内ではあえてUX/UIの順で使っています。
これは、お客さまが車を使うことをまず考え、ユーザーの体験を設計したうえで、UIのソフトウェアやそれを実現する機能のソフトウェア、そして車のハードウェアに落としていく順で考えることを意識するためです。
まさにこれはソフトからハード、コトからモノの順で考えることと同じであって、イコール、我々トヨタ自動車が現在進めている「ソフトウェアファースト」の考え方と同じことになります。
なぜ車のUXやUIが重要になってきているのでしょうか? その大きな要因はやはり世の中の感覚の変化によるところが大きいと思います。IT技術の発達によって技術の刷新スピードは急激に早くなってきています。みなさんご存知のスマホをはじめとして、情報の通信機器は常にアップデートされることがもはや常識になってきています。
また、これまでメディアで購入することが前提だったコンテンツは、オンラインの配信やサブスクリプション、ストリーミングなどさまざまなかたちで必要なコンテンツを必要なときに入手することが普通になってきています。
では、振り返って車はどうか? これまでの車では購入されたときが最新の状態でした。一部地図などの更新はありますが、基本的にはソフトウェアはアップデートされることはほとんどありません。そしてソフトウェアとして機能が追加されることもほとんどありませんでした。
お客さまが車の使い方に慣れていくという、そういう状況でした。買い替えにもよりますが、長いと10年以上そのような車を使い続けていただくことになります。従来型の車はこのような状態が長く続いていますが、IT技術が発達している今、ユーザーからの期待値や感覚とずれてきているということは我々自動車会社の人間としてもまったく否定できないことです。
そこで我々はこれからの車、そしてモビリティに必要なことを考えています。それは常に最新であることを感じていただけること。そのためにソフトウェアはアップデートが可能であること。そして、新しい発見をしていただけること。なによりユーザーが車に合わせるのではなく、車やモビリティ体験自体がユーザーに寄り添っていくこと。
どれだけユーザーのみなさまに新しい体験を感じていただけるか。そのためにも我々はUX/UIの絶え間ない改善に取り組む必要があると考えています。それは売るまでではなく、売ったあとも含めて絶え間なくです。そこにはハードウェアだけでなくソフトウェアの力をうまく使っていかに価値を与え続けていくかがポイントになってきます。
こういった車やモビリティの良いUXやUIを達成するためには、車の中のソフトウェア、ハードウェアで実現する機能はもちろんですが、外の世界とつながった機能やサービス、まさにコネクティッドな世界が今後ますます重要になると考えられます。
コールセンターであったり、スマートハウスであったり、広げるとスマートシティもその中に入っていくと思われます。その必要な要素としてデータ分析や活用、クラウドの技術、通信やエッジコンピューティング、ソフトウェアアップデートを実現するOTAといったソフトウェアに関する技術が重要なことは、第1回の勉強会で説明があったと思います。
このようなものをうまく活用しながら人を中心として考えて、さまざまなもの、情報とつながることで、便利で安心安全な社会を実現できること。人を中心と考えた体験。まさにUX、ユーザーエクスペリエンスをいかに実現していくことが重要と我々は考えています。
その中で、特に車の中での体験として最も重要になるのがコックピット周辺のUX/UIということになります。まさに車と人がつながるところになります。総じて言うと、コックピットは人とIn-car(車の中)と、Out-car(車の外)の世界をつなぐインターフェイスでもあります。今後、人との接点としてのコックピットの重要性はますます増していくと思います。
なんとなくコックピット周りのUX/UI、ユーザーエクスペリエンス、ユーザーインターフェイスの重要性と広がり感を理解してもらえたでしょうか? いかにここを人中心に入れ込んで、お客さまに安全安心で、かつ価値ある体験を提供できるかがポイントになります。
その開発の手法の実例や、車特有のどのようなことを気にして開発しているのかのポイントなどをこれから説明していきます。ここでちょっと山田薫さんにバトンタッチします。
山田:ありがとうございます。ではここからしばらく、UX/UIの開発の進め方についてお話したいと思います。さっきコメントで「UXというのは何ですか?」という質問があったんですが。言葉としては、ユーザーエクスペリエンスのことを略してUXと書く場合が多くあります。
UXという言葉自体をどう日本語にするのか、けっこういろんな解釈があると思います。私個人としては、使い勝手がよくなることで、UXの改善というところを認識しているつもりです。
では本編のほうに戻ります。(スライドを指して)こちらに示した図なんですが、現在まさに進行中の私たちの工程を簡単に示したものになっています。まずユーザーリサーチから入りまして、そのユーザーリサーチの結果の分析、それから示唆だしといった発見を行います。
その工程を経まして、それをもとにどういったアイデアを出していこうかというアイディエーションの工程を実施します。この時点でいったんまずアイデアやコンセプトの検証を行っていきます。ここまでの工程では、まず重要なのがユーザーに価値を感じていただけるか。ここがポイントになります。
価値検証を経まして、そのあとUIデザインに入ります。ここでもまたもう一周検証のサイクルが入っていますが、ここでは主に前の工程で検証した価値が正しくお客さまに伝わっているか、感じていただけるか。そういったところが重要になっています。
それを経まして、今度は本格的に開発のプロセスに入っていきます。さらにそのあと品質テストや、最終的なユーザーテストを経ましてリリースに向かうという工程を考えています。
ここからフェーズごとに少し深くお話をしたいと思います。まず企画フェーズのところは、ユーザーリサーチと分析、示唆だしの部分になりますね。企画や改善案を立てる際に必要となる材料を探していくことが目的になっています。
ユーザーリサーチという言葉で1つにまとめていますが、実際にはユーザーリサーチと言いましてもいろいろなタイプのものがあります。今、大きく2つの種類を考えていまして、1つは現在のお客さまや、現在の情勢を調べていくパターン。もう1つは、もう少し先の未来の動向を調べていくパターンになっています。
まず、現在の情勢把握のための調査や分析の中から一部ご紹介したいと思います。弊社の理念の1つに現地現物という、現場に行ってものを見なさいというものがあります。実際に、今車両を持っているお客さまにお話をうかがうといった調査を、まず一番重要なこととして実施しています。
エスノグラフィ調査とも呼んでいます。弊社の車のお客さまが実際に運転しているところ、もしくは運転の前後を録画して、その挙動を観察しながら、お客さまがどこが使いにくそうか、なにか迷っている、我々が想定していない利用方法をされているかなど、そういったところを分析しています。
場合によっては録画した動画を一緒に振り返りながらインタビューすることもあります。お客さまご自身も気づいていない深層にある課題などを発見することもできたり、深掘りができるところです。
もちろん弊社の車のユーザーさまだけではなくて、他社の車を利用されているユーザーさまにも同様のことをすることもあります。
あと、いわゆるサービスの満足度調査などに関しては、社内で公開されているものもありますので、そういった資料は定期的にモニタリングはしています。ただ、トヨタでは車の量や種類が本当に多種多様でありますので、これらを集約するだけも実は一苦労ですね。
さらに我々にとってクレームやご意見というのは宝の山だというふうに考えています。弊社ではレクサスにお乗りのお客さま向けのオーナーズデスクというコンシェルジュをしているデスクなど、お客さまからのご意見をいただくコールセンターももちろんありますし。そのほか販売店さん、車を売っていただいているお店さんからお問い合わせを受けるサポートセンターといったさまざまなコールセンターがあります。
耳の痛い意見ももちろんすごくたくさんいただいているのですが、こういったところにも真摯に向き合っている必要性があります。こういったデータは全部蓄積されているので、その中からどこを改善できるか、常に利活用を考えています。
こうした調査を重ねまして、ユーザーの方々がどういったところに、いわゆるペインポイント……使いにくいところですね。を感じるのか。また逆にどういったところに、何に価値を感じてもらっているのかをしっかり掴んでいくことを重要視しています。その場合でも表面的な観察で終わらないように、抽象化して深くまで洞察ができているか、意識して進めているところです。
(スライドを示し)続きまして右側の未来動向のところです。車の開発スパンというのはとても長くて、大変難しいのですが、やはり今取り組んでいる車やコックピットが世の中に出る時の社会情勢を睨んで、ブラッシュアップさせていく必要があります。
そのため、やはり未来洞察や先行技術、またユーザーの価値観の変化などについても合わせて調査を行っています。(スライドには)トライブ調査と書かせていただいています。
エクストリームユーザーや、そういった一般的というよりはかなり先進的なライフスタイルを送っている方をインタビューして、そこからバックキャストといったかたちで、もう少しそれを現代に戻して企画内容を観察するなど。そういったところにも取り組んでいます。
正直なところ、将来を完璧に予想するのはすごく難しいことなんですが、片目でそういったところを睨みつつ、商品が出る頃のユーザーの価値観を探るような取り組みというのを進めています。
続きまして、アイディエーションとコンセプト検証についてお話いたします。先ほどまでの話は、アイディエーションの種とするためのリサーチについてでした。リサーチ結果や社内の先行研究のシーズですね。こちらはどちらかと言うとシーズをもとに新しい企画や、既存の機能の改善案というものを立てていきます。
ちょうど今私たちは、アイディエーションの検証部分をやっているところです。アイディエーションのフェーズでは2つの検証があります。1つはそのアイデアや改善がユーザーに価値を感じていただけるのかといった、価値の検証。そしてそのあとに、その価値はちゃんとユーザーに伝わるUIになっているだろうかという検証が必要だと考えています。
私たちも実は今すごく試行錯誤していて(笑)。実際に今の取り組みや、テスト手法について見ていただこうかなと思います。(スライドを示し)こちらなんですが、これは一番簡易なテストですね。わりとなんとなく雰囲気は出ているかなと思うんですけれども。
スマホやPCなどとは異なりまして、コックピットとなりますと基本的に車の中というシチュエーションが多いので、こういった簡易な設備でもいいので、なるべく現状に近いような設備に近づけてテストをしています。
これはタブレットを左において、前に動画を流しています。実際にはタブレットと車に据え付けの画面というのはサイズやタッチ感も違うのですが、簡単なコンセプト検証だとこれでもだいぶ感じは出ます。
前に流している運転中の動画は、これがあるだけでも実際運転中に視線がどう動くかや、運転をしているときに手を伸ばせるかなど、そういったところを再現できます。思わぬ使いにくさや、運転していないときであれば簡単にできることでも、こういった状況になるとできないなど、そういった発見ができます。
(スライドを示し)こちらはもう少し設備をグレードアップさせたものになります。これはいわゆるドライビングシミュレーターのモックアップなどと呼ばれているもので、ちなみにこれはゲーム用のものですね。先ほどのものと同様ですが、これはもう少し座席やハンドルが本物に近くなっています。
ちなみに何をやっているかと言うと、フロントガラスの上に情報を表示できるヘッドアップディスプレイの実験をしているところです。実際には画面の横にいるデザイナーたちが画面を手動で動かしながら再現しています。
最後にもう1つ、さらなる応用版を。ちょっと(スライドでは)わかりにくいのですが、こちらはVRゴーグルを使っているものになります。VRゴーグルを装着して、仮想現実の中で運転しながら確かめていくパターンになります。こちらは現在まだ絶賛開発中なので、来年(2022年)にはこちらを使ったユーザーテストをもう少し増やしていきたいなと思っています。
これにはいいところがいろいろありまして、例えば天気や状況、あとは道などをわりと自由に自分たちの好きなように作れるというところが1つ。それから360度見渡せるというところもあります。
あとはゴーグルさえあれば世界中どこでも再現できます。例えばアメリカと一緒に開発する場合に、アメリカと日本でそれぞれこのゴーグルを持っていて、両方で検証してみるなどですね。そういったこともできるなど、いろいろなメリットがあります。
実際これはコックピットのモックに入ってもらっているのですが、最低限、椅子さえあればよいので、わりと身軽にできるものでもあります。
全体的にやはりコックピットというのはユーザーが運転しながら操作したり動かしたりといったシチュエーションが多いので、なるべくそれを再現したかたちでリアルに近い状況を生み出して、実際の使われ方とのギャップを埋めたいというところを考えて進めています。
あともう1つは、なるべく簡易にできることを意識していまして、デザイナーやエンジニアが簡単に作ったものをサッと再現して使い勝手を見て、「あ、だめだ。これ」っというふうになってもう1回作り直すなど。なるべく早くサイクルできるというところにも活用していきたいなと思っています。
私からはリサーチの部分が強めになりましたが、お話ししました。では続きまして関沢のほうにまた戻します。
(次回につづく)
トヨタ自動車株式会社
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