2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
Translational Research最前線SPARKとは(全1記事)
提供:京都リサーチパーク株式会社
リンクをコピー
記事をブックマーク
2020年10月、ヘルスケア分野の新たなイノベーションと出会える、日本随一の英語ピッチ&パートナリングイベント「HVC KYOTO 2020」が開催されました。グローバル展開を目指す国内外の研究者やベンチャー企業から20名以上が登壇し、ヘルスケア部門の新技術についてピッチと講演を行いました。本記事では、筑波大学の⼩栁智義教授とスタンフォード大学のMehrdad Shamloo教授による対談をお届けします。スタンフォード大学の創薬イノベーションプログラムや、研究開発を事業につなげるためのアドバイスについて語りました。
⼩栁智義⽒(以下、小栁):では、ここでSPARKとは何かを少し紹介いたします。その後、Shamloo博士自身のスタートアップのお話について、アクセラレータプログラム「SPARK」と合わせて対談を進めていきます。それでは、SPARK GLOBALについてご紹介します。
SPARKは2006年にスタンフォード大学の教授の一人であるDaria Mochly-Rosen氏によって設立されました。彼女はイスラエルのワイツマン研究所を卒業後、UCバークレーに移り、科学の道でのキャリアをスタートさせました。その後、神戸大学の学部長だった西塚(泰美)先生が発見したプロテインキナーゼCに科学者として魅了されたそうです。
そこで彼女は、科学的成果としてプロテインキナーゼCという分子そのものを理解しようとしました。偶然、プロテインキナーゼCを制御する化合物を手に入れ、その化合物が心臓発作の治療や心臓発作の治療に利用できることに気付いたのです。そして、どうすれば実用的な薬にできるかを考えました。
起業前後に彼女がピッチに使用した資料は右手に見えるようなものです。スライドの左上が未処理のTat、右手がδV1-1です。これは実際のモデルで、心臓発作を起こした時に、処置しなかったものとこの薬剤で処置したものです。左上のパネルには白い部分がたくさんありますが、右上のパネルでは消えています。つまり、私たちの薬は心臓発作に効果があるということです。
下の方にあるのはラットを使った実験結果を示す写真で、実験自体は、京都大学医学部に所属していた稲垣先生が行ったものです。彼女はこの写真を持って、食料品店、電車内、飛行機の中、自分の前に並んでいる人に話しかけました。そうやってたくさんの人に話しかけて、最終的にはベンチャーキャピタルや製薬会社の前で50回以上のプレゼンテーションを行いました。
資金調達は困難でしたが、近所の人のサポートのおかげで、彼女自身への投資も少しずつ入るようになりました。最終的に3億1,500万ドルでアムジェン(アメリカの世界最大の独立バイオテクノロジー企業)に売却し買収されました。
しかし、彼女は、プレゼンテーションはものすごく疲れるうえ、アカデミックな教授が全行程をこなすのは難しいことに気付いたのです。
⼩栁:そこで、彼女は他の教授をサポートすることにしました。KAI Pharmaceuticalsを立ち上げた後は、スタンフォード大学医学部の副学部長として研究を担当することになりました。スタンフォード大学医学部での特許の事業化支援を目指していたんですね。
その頃、約100件の特許がスタンフォード大学からライセンスされておらず、特許の維持管理にはコストがかかるため、維持管理が難しくなっていました。そこでターゲットからリードの特定までのトレーニングを開始しました。その後、バイオテック企業への引き渡しになります。
また、SPARKでは低分子の物質特許や抗体開発のようなヒト化のサポートをする物質特許を作成するために、2年間、各教授にそれぞれ約10万ドル程度の資金援助をしていました。このような活動を通じて、すでに30社近くのバイオ医薬品のスタートアップが設立されています。
(スライドを指して)そして、これは何かというと、まだキュラセン(Shamloo博士が立ち上げたバイオテック・スタートアップ企業)がない頃、Shamloo博士の尽力の以前から、これらの企業はすでに存在していたということです。
スタンフォード大学は素晴らしいですが、彼女はイスラエル出身で、世界の多くの大学が同じ問題に直面していることを知っているので、それをグローバルなネットワークにしようということになりました。
そして、スタンフォード大学のSPARKプロジェクトの10周年を迎えた2016年から、毎年のように国際会議を開催しています。今年は、フィンランドのヘルシンキで開催する予定でしたが、オンラインで開催することにしました。ほぼ70サイト・70大学が世界のSPARKネットワークに参加しています。
キーワードは「国境のないトランスレーショナル科学者」です。お互いに協力し合っていますので、ドイツやHVC KYOTO、フィンランド、台湾などからも招聘しています。特に今回のCOVID-19という厳しい状況の中で、世界の健康問題を解決していくためには、コラボレーションがキーワードの1つになります。そこで、SPARK GLOBALでは、COVID-19のリポジショニング薬の開発も行っています。
⼩栁:(スライドを指して)SPARKプログラムでは「ターゲット・プロダクト・プロファイル」と呼んでいますが、スライド左側の「価値提案」について重要視しています。 どのような製品を開発するかは、プロジェクトの最初の段階から考えておかなければなりません。普通、科学者はどんな薬を開発したらいいのかということを考えていませんが、これはスタンフォード大学のSPARKプログラムで学んだことです。
世界的に見ても、シリコンバレーのようなエコシステムは他にありません。なので、グローバルパートナーが右手側に「事業開発計画」を持っていこうということになりました。そのためにビジネスモデルキャンバスを持っていないといけないし、財務の項目を理解していないといけません。ですから、そうした教育を受けなければなりませんし、おそらく京都でもそういったことをしなければならないでしょう。
私が筑波大学に移ってからは、スタンフォード大学のSPARKプログラムの支援を受けて、Research Studioというプログラムを始めました。才能ある支援者やメンターがいて、スタンフォード大学には150人くらいの支援者がいます。スタンフォード大学では150人ほどのメンターが自分たちのプログラムをサポートしていて、毎週水曜日の夜にはミーティングをして講義をしたり、そのためのメンタートレーニングをしたりしています。
ここまでは私のプレゼンでしたが、SPARKでの経験はどのようだったのでしょうか。Shamloo博士の経験したことで、研修や薬の開発はベイエリアで成功している他の企業との違いは何かあったのでしょうか。
それでは、質問があれば手を挙げて、マイクを持って来てください。アイスブレイクの前に Shamloo教授への質問から始めたいと思います。彼の研究しているサイエンス、スタンフォード大学のSPARKでの経験などについて。Mehrdadさん、聞こえますか。
Mehrdad Shamloo氏(以下、Mehrdad):はい。
⼩栁:あなたはザモテロールといったジェネリック医薬品を使って、すでに認知症のアドレナリン受容体の機能を発見なさっていますが、それは循環器内科の治療に使われることになっています。
とはいえ、こうした薬物のリポジショニングは、薬のもう1つの潜在的な使用法となる可能性があります。しかし、スクリーニングを行って、新薬開発をすることにしたのですね。SPARKのアドバイザーから具体的なアドバイスはありましたか。また、キュラセンとして事業を始めるにあたり、パートナーはどのようにして見つけたのでしょうか。
Mehrdad:SPARKの素晴らしい紹介をありがとうございました。業界での経験があるかどうかに関わらず、また、アカデミックな創薬だけでなく産業界での創薬もそうですが、その区別をつけることが重要だと思います。なので、そのためにコメントをしておきたいと思います。
産業界にいた時は、いつも後ろで手を縛られていると感じていました。「科学者になれ」と言われても、莫大な予算を与えられても、常識にとらわれない発想をすることは許されません。
スタンフォードとアカデミックな環境が科学者に与えてくれるものは、探求するためのありえないほどの自由です。発見を利用するために想像力を働かせることです。そして、科学者は好きなことを何でもできるのです。これは大きなメリットだと思います。少なくとも、そこがアカデミックな環境と企業の大きな違いです。
すべての人に当てはまるとは言い切れませんが、私は大手製薬会社ではなく、50人から200人の会社で働いていました。2007年までは、ベイエリアの小規模なバイオテクノロジー企業で研究していました。90年代後半から2007年までの間です。
もちろん本当に活発でダイナミックな環境ではあるのですが、既成概念にとらわれない発想をすることが許されていないのです。アカデミアの自由度を利用して、たくさんの革新的な新薬の発見をすることもできるとは思います。
Mehrdad:私はイギリスのアストラゼネカという会社の特許が切れていた薬をリパーパシングすることを始めました。実際にはそれ以前にも、心不全のための部分的な作動薬であり、大変安全な薬剤としてザモテロールは開発されたのですが、80年代後半に彼らは膜結合を行っていた細胞膜に局在する受容体のスクリーニング系を持っていなかったことを考えると驚きでした。
資金調達の手続きを始めた時も、大変な経験をしました。会社のピッチ(売り込み)を100回以上行ったのですが、多くの人が私たちの話を聞いてくれず、そのアイデアを信じてくれませんでした。なので、みなさんも努力をあきらめる必要はありません。
あらゆる対話から学んだことは、私はプログラムの価値を昔から知っていたということです。残念ながら、私は数値回りや新薬の存在自体のどちらについても言及できる立場にありませんが、スタートアップや私たちのような段階にいるところに声をかける人は、創業者が所有しているものに投資したいんですね。つまり、物質特許IP(知的財産)を転用することで、という意味です。厳しい状況でした。
最初に資金調達に力を入れた後は何社かに1、2回売り込んで、今でも大規模な製薬会社の業界にいくつかのコンタクトがあります。名前は言えませんが、最初にニューヨークで2つの会社に売り込みをしました。
私の友人たちは、ドラッグリパーパシングとNCE(新規化学物質)の価値観に関する意見をくれました。私が関わったのは、ハイスループットスクリーニングではなく、合理的設計でした。薬理学や化学的な研究がたくさん行われていたので、私たちは幸運でした。これまでβ遮断薬は心血管疾患の薬として開発されたのですが、開発者たちは最近わかってきたcAMPやアレスチンの下流のシグナルについては知らなかったのです。
そこで私たちが行ったのは、その受容体に対する完全に新しいターゲットプロダクトプロファイル(TPP)の開発と、それに基づくスクリーニングです。合理的な設計に基づいて分子を作ったのです。
約500種類の化合物が必要でしたが、最初の100種類の化合物で強力なヒット化合物が得られました。化学的には非常に簡単なことなので、化学者にこれだけの化合物を持たせればいいのです。優秀な化学者が必要ですよ。私は幸運にも優秀な化学者と一緒に仕事ができました。
また、10年間のバイオテクノロジー業界で学んだことですが、元神経薬理学者である私は、化学者を味方につけずには生き残れず、成功することはできませんでした。ですから、私は生物学者として常に化学者とチームを組むようにしていました。私には化学者が関わってくれているんです。私たちが開発している分子の化学的な研究をしてくれています。あなたの質問に答えられたかどうかはわかりませんが。
⼩栁:そうですね、合理的なデザインの500の化合物でも驚くべき結果が得られました。それだけでも非常に小さな数字だと思います。あなたの周りにいる化学者は、とても才能のある化学者なのかもしれませんね。
⼩栁:そこでいくつか質問がありますが、その前にプロジェクトのどの時点で現在のキュラセンの人たちと一緒に仕事をし始めたのですか? つまり、いつビジネスマンがあなたのプログラムに参加したのかどうかを知りたいです。それはSPARKプログラムの中でのことなのか、それとも個人的に彼らと交流を始めたのでしょうか。
Mehrdad:SPARKプログラムに参加したのは(プログラムの立ち上げから)2年でした。
その頃、用途特許(NCEの物質特許ではなく、β遮断薬を認知症治療薬へ応用するという用途特許)のライセンスを希望する会社が現れました。私たちはまだNCEの物質特許を出願していませんでした。私たちがUCIで入手した使用済み化合物の用途特許は、特許が切れていたアストラゼネカの化合物に関するものでした。彼らはライセンスを取得して、何もせずにお蔵入りにしたんです。
ですから、この段階では私たちは待っている状態でした。彼らには到達すべきマイルストーンがあって、それが彼らが特許という「溝のようなもの」であることに気が付きました。特許を拭い去り、そこに鎮座して資産を作ろうとしていることにもです。ニューヨークのあの会社から特許を取り戻そうと、私たちは尽力しました。
私たちがそれを取り戻した時、NCE特許は完成しており、2年以上の特許を取得していました。あまり大成功だったとは言えませんでしたが、学びのある売り込みや資金調達への努力を成し得たと思います。
そして、私はKathleen Glaub氏、新しいビジネスマンであるAnthony Ford氏をCEOに、アフェレントのチームが来てくれたので、新しいチームを結成しました。彼らのリーダーシップに感謝しています。
そして、この旅のもう1つの重要な要素は、この規模のバイオテックのスタートアップを成功させることはできないということでした。5,500万ドルを調達しなければなりませんし、権限と経験を持った人がいなければなりませんが、投資家であれば成功させることができます。アイデアは素晴らしかったと思いますが、それが起こるまで3年ほどあったと思います。正確な期間は覚えていませんが。
⼩栁:なるほど。スタンフォード大学のSPARKでは、500種類の化合物の設計に資金が使われていましたが、最終的にはその物質特許を取得して、同時に現在のチームができて資金調達を始めたということですね。
Mehrdad:SPARKが提供したお金は多くはありません。その時点で米ドルで年間5万か7万5千ドル。化学者に年間約1人分のお金を払っていることなので、大した金額ではありませんが、非常に大事なものです。
実際にSPARKが私のためにしてくれたと感じるのは、従事してくれた2人の化学者です。私はすぐにSPARKのアドバイザーと意気投合しました。私はSPARKで最初のピッチを行ったのですが、みんな私のところに来て「これは素晴らしい、魅力的だ」と言ってくれました。
Mike Green氏とJahangir氏は、ロシュとヘンリー・シャインで働いていて、化学者のようにゲノム管理の売り手を持っています。4回目の本当に大規模な創薬で、化学において私よりもずっとシニアで経験豊富で、私は本当に幸運でした。SPARKには感謝しています。SPARKが私に与えてくれたものは、お金ではなくそこで出会った人たちだと思います。お金ももちろん素晴らしいですが、それ以上に人脈が大きかったと思います。
⼩栁:それは本当に素晴らしいですね。
Mehrdad:また、私の共同創業者であるRobert Boothはロシュの研究責任者でしたが、SPARKで私が講演した後に私のところに来てくれて、その後ランチをして、キュラセンの共同創業者になりました。彼の貢献は非常に大きかったです。
⼩栁:なるほど。
Mehrdad:人と人とのつながりは、SPARKのもう1つの大きなプラス要素であり、多くの人が見ていないものだと思います。一層重要なものだと思います。
⼩栁:そうなんですね。今日のセッションを通して、コミュニティの重要性がわかってきましたね。京都大学もギャップ・ファンディング制度を始めました。お金をどう使うか、お金の使い方を知っている人たちとどうコミュニケーションをとるか。科学的なことも商品開発も大事だと思っています。ありがとうございました。
⼩栁:YouTubeからの質問に入りたいと思います。ご質問ありがとうございました。1つ目の質問は「SPARKプログラムの成功は、スタンフォード大学のリソースがなくてもアカデミアの環境の中で再現できるのか?」ということです。
素晴らしい質問ですね。私たちも努力をしています。Mehrdadさん、アカデミックな環境についてはどう思われますか。なぜSPARKはできるのか、スタンフォード大学には何か特別なリソースがあるのか。
Mehrdad:そんなことはないですね。私はヨーロッパではルンド大学で博士号を取得して学んだんですよ。もちろんスタンフォードのような大学ではありませんが、素晴らしい大学です。ドイツにも行ったことがあって、ヨーロッパのさまざまな大学に行ってきました。ゲストの学生として、研究者として。イノベーションはどこにでもあります。科学者として、私たち全員が心の中にイノベーションにつながるものを持っています。
私たちがやるべきだと思うのは、シリコンバレーの「近さ」(proximity)です。産業界から学界に戻ってくる人もいるかもしれませんから。スタンフォード大学が私をここに連れてきてくれたのかもしれないと思っています。
私の経験を生かして、スタンフォードの多くの人を助けていると思っています。それは、あなたが戻ってきて、誰もが副鼻腔疾患や創薬モデル、動物モデルにアクセスできるように、これを構築するというのが取引の一部でしたが、あなたは自分の研究室で研究を行うことができます。
私は、産業界が学術界に恩返しをしていると思っています。産業界に人材を送り出してきましたが、定年後に何人か人を戻して学術的な支援をしてもらうことは重要な要素です。スタンフォードがユニークだと思うのは、イノベーションがあるからではありません。世界中のどこからでも素晴らしい論文が出てきます。どの大学も素晴らしい論文を持っています。
みんなのサイエンスをトランスレーショナルモードに実現してターゲットにしているだけだと思います。私たちは病気を治すための治療法を開発するためにやっていて、少なくとも私が学生に教えているのはそういうことです。もちろんそれがどのように動作するか仕組みを言えることは非常に重要ですが、患者を助けるためにそれを使用するわけです。
⼩栁:そうですね、スタンフォードは産業知識を得るにはそれほど特別な場所ではないというコメント、ありがとうございました。日本でも製薬会社がたくさんありますからね。
Mehrdad:そうですね、素晴らしい。
⼩栁:ええ、だからそれを利用しなければなりません。もし優秀な人たちをリクルートしているとしたら、学生の何人がバイオテックやバイオ製薬会社に入るのでしょうか。規模はどのくらいで、何人の学生がアカデミアに入るのですか。
Mehrdad:大学院生はいないです。ポスドクはトレーニングを受けています。彼らの大半は2~3年後に大企業に就職していますね。私がスタンフォード大学に来てからの最後の研究室では、2~3人の教授を研究室から輩出しました。何人かは博士号を取得した若い人たちで、「産業界に行きたい」と言ってきます。「薬剤師になりたい」とか。
2年目になって、ローレンスの一人は間違いなく教授になり、オハイオ州の医学部に教授として就職したと言っていました。その人のキャラクターに依存していると思いますし、人と人とのことですね。
一方で、大多数の人は産業界に行って、いい仕事に就いています。それについては、学生かそれともその人の性格なのか、ということだと思います。私も彼らと1年か2年一緒に働く前には、これが学歴のある人なのか、産業界の人なのか分からなかったのです。私の場合は絶対的な定義がありませんでした。何度も行ったり来たりしています。それは簡単ではありませんが、可能なことです。
⼩栁:そうですか。聴衆から、あなたへのもう1つの質問です。「業界での経験がほとんどない、あるいはまったくない研究者に向けて、自らのアイデアをより臨床に近づけるためのアドバイスはありますか」。おそらくアカデミアの基礎研究に携わる方だと思うのですが、基礎科学者がクリニックの情報を含めて製品開発をどう考えたらいいのでしょうか。ご経験はいかがでしょうか。Ph.D.(博士号)でしたよね。
Mehrdad:はい、私はそうです。私が生徒に言うのは、「あなたはヒトの障害を一番に治したいと思っているか?」ということです。その障害の病態生理を内外で理解しなければなりません。その障害が何であるかを理解して、それがどのように起こっているか。そして、もしそれを知らないならば、「それを知らない」ということを知る必要がありますよね。
治療法を開発したいのであれば、少なくとも目標を持たなければなりません。多くの標的や分子がありますが、私たちは理解しようとしています。ターゲットの生物学を理解しなければなりません。(SPARK創始者の)Dariaの場合は、プロテインキナーゼCやアドレナリンβ1などです。それを理解しなければなりませんし、そこには多くの文献がありますが、(難解で)混乱を招く文献もあります。
だから、「宿題」をたくさんやらないといけません。再現しなければなりません。文献を信用してはいけません。研究室ごとに条件が変わるからです。研究室では、自分の手で創薬標的の検証をしなければなりません。疾患の生物学をあなたが理解する。あなたがターゲットにしようとしている分子を非常によく理解することです。
そして、それが薬効があるかどうかを確認します。薬効のあるターゲットは簡単な受容体ですが、プロテインキナーゼはそれほど簡単ではありません。ですが可能です。ホスファターゼ(脱リン酸化酵素)は難しいですが、これも薬が開発されています。
そして、あなたを助けてくれる同じ分野の業界経験のあるコンサルタントを連れてきてください。引退しているかもしれませんが。その人を見つけるためにオンラインフォーラムを駆使してください。CDA(秘密保持契約、NDAとも呼ばれる)を利用することもできますが、人を信用してください。
(他の)学者や私自身も、戻ってきた時にその問題を抱えていたと思うのですが、自分のアイデアをオープンにして話すのはとても大変でした。SPARKは、大学でCDAを受けている多くの専門家をテーブルに連れてきてくれるので、そういった人たちとオープンに話ができます。SPARKの紹介の際に仰っていた、ターゲットプロファイルについて聞かせてください。これは非常に重要です。
⼩栁:なるほど。実は質問があります。おそらく視聴者にとっても普遍的な質問だと思います。あなたとスタンフォード大学の教授たちは、非機密情報(いわゆるノンコン資料)を準備することに慣れてきています。あなたはどの段階で機密性について話し始めますか。つまり、どの段階でCDAに署名するかという質問です。よく洗練されていなければならないのでしょうか。
Mehrdad:私の経験則では、まだ発表していないことについては触れません。サイエンスそのもの、科学的なもの、実験室のもの。リン酸化レベルが変化するといったことは話すことができます。
しかし、私が決して語らないのは、私たちが開発した分子の構造ですよね。CDAは話すことすらしませんでした。誰にも見せません。それが「秘密」というものです。私たちはそれを守っています。
しかし、それ以上に、私が知らないアドバイザーと話をする時はすぐにCDAに署名して、そのコンセプトについて話すようになりました。その人を知らないのであれば、CDAなしで概念については話しません。
でも、「アドレナリン受容体がパーキンソン病にとって重要だ」ということをみんなが知っていれば、いろんなことができると思います。例えば、誰かがあなたのプロジェクトを手伝ってくれるかどうかを知りたいと思ったら、どんな状況なのか心配せずに話をしにいけますからね。
生物学的なことにもよりますが、すでに何か発表されているのであれば、ぜひ話してください。ぜんぜん心配ありません。誰も盗むことはできません。私は発表したことのない構造についてはお見せしません。化学の特許を申請する前には公表しません。完全に特許を取得し、最初に特許が公開されることを確認するまでは、何も公開しません。
⼩栁:スタンフォード大学の教授のやり方ですね。
Mehrdad:いいえ、それは私が「業界」の中で学んだことです。新しい化学物質を持っていれば研究室で開発します。そうでなければ、パターンは通常18ヶ月で公開されます。その18ヶ月間、誰もがその構造を見るわけです。最適化の面で、私たちができることは何でもします。論文を準備し、特許と一緒に発表する時間を取ります。特許が公開されて、誰でも見ることができるからです。でも発表されていなければ、誰にも見せない。それが私の「常識」だと思います。
⼩栁:わかりました。そろそろ時間となってしまいました。この後、たくさんのピッチがあります。それでは、Shamloo教授の素晴らしいプレゼンテーションと、アクセラレーションプログラムでの経験を共有していただき、ありがとうございました。
私たちは、すでにスタートアップの成功のように見えていましたが、製品開発の成功と、最終的にShamloo教授の科学的キャリアの成功のようになることを願っています。ありがとうございます。
Mehrdad:ご清聴ありがとうございました、感謝します、そして幸運を祈ります。
京都リサーチパーク株式会社
2024.10.29
5〜10万円の低単価案件の受注をやめたら労働生産性が劇的に向上 相見積もり案件には提案書を出さないことで見えた“意外な効果”
2024.10.24
パワポ資料の「手戻り」が多すぎる問題の解消法 資料作成のプロが語る、修正の無限ループから抜け出す4つのコツ
2024.10.28
スキル重視の採用を続けた結果、早期離職が増え社員が1人に… 下半期の退職者ゼロを達成した「関係の質」向上の取り組み
2024.10.22
気づかぬうちに評価を下げる「ダメな口癖」3選 デキる人はやっている、上司の指摘に対する上手な返し方
2024.10.24
リスクを取らない人が多い日本は、むしろ稼ぐチャンス? 日本のGDP4位転落の今、個人に必要なマインドとは
2024.10.23
「初任給40万円時代」が、比較的早いうちにやってくる? これから淘汰される会社・生き残る会社の分かれ目
2024.10.23
「どうしてもあなたから買いたい」と言われる営業になるには 『無敗営業』著者が教える、納得感を高める商談の進め方
2024.10.28
“力を抜くこと”がリーダーにとって重要な理由 「人間の達人」タモリさんから学んだ自然体の大切さ
2024.10.29
「テスラの何がすごいのか」がわからない学生たち 起業率2年連続日本一の大学で「Appleのフレームワーク」を教えるわけ
2024.10.30
職場にいる「困った部下」への対処法 上司・部下間で生まれる“常識のズレ”を解消するには
2024.10.29
5〜10万円の低単価案件の受注をやめたら労働生産性が劇的に向上 相見積もり案件には提案書を出さないことで見えた“意外な効果”
2024.10.24
パワポ資料の「手戻り」が多すぎる問題の解消法 資料作成のプロが語る、修正の無限ループから抜け出す4つのコツ
2024.10.28
スキル重視の採用を続けた結果、早期離職が増え社員が1人に… 下半期の退職者ゼロを達成した「関係の質」向上の取り組み
2024.10.22
気づかぬうちに評価を下げる「ダメな口癖」3選 デキる人はやっている、上司の指摘に対する上手な返し方
2024.10.24
リスクを取らない人が多い日本は、むしろ稼ぐチャンス? 日本のGDP4位転落の今、個人に必要なマインドとは
2024.10.23
「初任給40万円時代」が、比較的早いうちにやってくる? これから淘汰される会社・生き残る会社の分かれ目
2024.10.23
「どうしてもあなたから買いたい」と言われる営業になるには 『無敗営業』著者が教える、納得感を高める商談の進め方
2024.10.28
“力を抜くこと”がリーダーにとって重要な理由 「人間の達人」タモリさんから学んだ自然体の大切さ
2024.10.29
「テスラの何がすごいのか」がわからない学生たち 起業率2年連続日本一の大学で「Appleのフレームワーク」を教えるわけ
2024.10.30
職場にいる「困った部下」への対処法 上司・部下間で生まれる“常識のズレ”を解消するには