2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
提供:サイボウズ株式会社
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野水克也氏(以下、野水):エゴをフィットさせるために、久本さんだと例えばどんなことをされました?
久本英司氏(以下、久本):やっぱりフィットさせるためには、感度をよくしないといけないと思ってるんですよ。感度って何かっていうと、「自分は今フィットしてないエゴを発しちゃってるよ」ということに気付けるかってことですよね。
そのために僕が心がけていることは、「裸の王様にならない装置」を備えることかなと思ってます。
野水:裸の王様にならない装置。
久本:はい。僕の場合は、そこそこ年下で信頼のおけるスタッフに、ダメ出しをしてもらう構造をいくつか作っておりまして。
僕が誰かにとってフィット感が悪いことを言うと、「あれちょっとダメでしたよ」って言ってもらってます。チームメンバーだったりメンバーじゃなかったりするんですけど、何人かそういう人になってもらってる感じですね。それが今、かなり機能してると思ってます。
基本的にその人に言われたことは、自分が信じてやったことでも全部信じるというルールにしてまして。それは先ほどの「きとみちゃん」の例と一緒ですよね。わかんない世界の時には理解しちゃダメだと思って、従うという行動をするようにしてます。
野水:なるほど。僕もわかんないことがあったらもう素直に後輩に聞くようにしてます。サイボウズには「雑談」という制度がありまして、スケジュールに「雑談お願いします」って申し込むんですけど、「ここわかんないんで教えてください」って年下の人に申し込んで、30分とか時間いただくことが本当に多くなりました。
あと僕の場合は、バランス維持装置でSNSを使いますね。
久本:はいはい。
野水:「これ言ってみたらどうだろう」ってFacebookとかで発言してみて。「いいね」がつくじゃないですか。「いいね」の数も大事なんですけど、「いいね」してくれた人を確認するんです。
「この投稿は、この層に対しては受け入れられてるけど、この層はぜんぜん関心がないんだな」とか「ここイマイチだな」ってことを自分で調査したりしますね。
久本:超わかります。僕は順番と時間まで見ちゃったりしますね(笑)。
野水:順番と時間(笑)。
久本:これは、年代によっては「気持ちわるっ」って思われるかもしれないんですけど、我々の年代はそこを見ちゃうのは、しょうがないのかなと思ってますね。
野水:しょうがないですよね。そもそも自分に自信がないですからね(笑)。
久本:そうですね、自信がないんでしょうね(笑)。
久本:だからさっきの「フィットしているかどうかを調べる」と一緒で、我々のこの行動は、感度を高くしてるってことだと思うんですよ。
野水:これも感度を高めることにつながるんですね。「自信がない」で思い出したのですが、例えば「きとみちゃん」のキャラクターですね。
実はこの少女漫画っぽいキャラクターなんですけれども、広告を出す前に後輩に聞かれたんですよ。「こんなの作ったんですがどうですか?」って。なぜ僕を指名してきたかよくわからないんですけど(笑)。
でも、実は僕は15年前に同じような少女漫画キャラクターで朝日新聞に広告を打ってるんですよ。けっこうでっかく。それで大ゴケしてるんですよ(笑)。
過去に大ゴケしてるんで、正直最初は「う〜ん……」って思ったんですよ。思ったんですけど、大ゴケした事実を言ったところで、「でも……」と自分の心にブレーキをかけたんです。
「時代は変わっているし、今だったらこの昭和風のテイストは受け入れられるかもしれない……」と。そんな葛藤があった結果、「やってみたら」と返したんですよ。
おかげでこの広告は今日もいろんなところで出てますし、なんか賞も取ってるんですよ。正直自分でもビックリしてて、あの時「絶対ムリ」とか言わなくてよかった……って心の底で思っちゃったりしてますね(笑)。
久本:本当にそれは正解でしたね。昔、野水さんが失敗したのって日ペンの……美子ちゃんみたいな?
野水:そういうやつです。
久本:それ僕見てますね(笑)。あれコケたんですか?
野水:よかった、覚えてる人がいて! はい、コケました(笑)。
久本:でも、今回のキャラクターが出たのって去年ですよね。
野水:きとみちゃんは今年ですね。
久本:実は去年、Cybozu Daysで見かけた時に、「やっちまったな」って思ってたんですよ(笑)。
野水:やっぱり(笑)?
久本:たぶん感覚が一緒だと思ってました(笑)。
野水:やっちゃいけないことだって、僕らの年代は思ってるということですね(笑)。
久本:そうですね、やっぱり僕らの感覚はダメですね(笑)。
野水:でも、じゃあマネージャーとか中年になったら、エゴなんか出さなくていいんじゃないかってなるかもしれないですけど、エゴを出さないで我慢するのはあんまり生産的ではないですよね。
っていうか、エゴを出さないで我慢して生きてる中年のサラリーマンって、正直あんまり見ていて気持ち良いもんじゃないですよね、っていうところがあって。
久本:そうですね。
野水:そのマネージャーって「いる意味あるの?」というところもあって。我慢が報われにくいだけに、エゴの出し方ってけっこう難しいですよね。
久本:そうですね。もしエゴを出さないように我慢してるとしたら、エゴを出さないことは生存戦略上無理なので、考えちゃいけないと思うんです。
野水:エゴを出さないと考えちゃいけない。
久本:そうですね。「上手にエゴを出す」って考えないといけないですよね。そう考えた時に、やっぱりエゴを出すことを前提にしたほうがいいと思ってまして。
エゴを出すと必ずフィードバックがあるじゃないですか。そのフィードバックをもらうために、エゴを出すことは大事だと思います。ただですね、僕とか野水さんみたいに、よくチームメンバーに怒られちゃうような、共感力や傾聴力が若干足りてない人種は……(笑)。
野水:足りないです、すいません(笑)。
久本:やはりわかんないんだと思うんですよ。だからいきなり出しちゃうと、けっこう大変な状態になっちゃうと思うんです。なので、ちょっとずつ小出しにして反応を見て、ニュアンスを掴んでいくことが大事なんだろうなと思ってます。
野水:なるほど。
久本:先ほどポジションって言いましたけど、ポジションからずれたエゴを出すと、愛されないわがままゾーンにどんどん入っていっちゃうので。やっぱり今の人間関係の中でポジションって作られちゃってますよね。
なので、その人間関係の中で作られてるポジションにフィットしたエゴにアジャストしていくことが大事かなと思ってます。
野水:じゃあ、エゴのアジャストっていうか。部下の言っているエゴを集めて、自分のエゴも集めて、なんとなく価値観っぽいものに仕上げていく作業というのが、マネージャーの仕事と言えるかもしれないですね。
久本:そうですね。今、「価値観」っておっしゃっていただきましたけど、価値観ってやっぱり似通ってるエゴを言語化したものだと思ってるんですよ。
価値観が多様なのは人間の生存戦略の1つなので、ここも仕方ないですよね。だから仕方ないことをあまり悩まず、「そういうもんだ」と考える。価値観もエゴも多様で大丈夫と思うのがいいのかなと思いました。
野水:なるほど。では次に、「私のエゴ」にいきたいと思います。40代って自分のワークシフトだけじゃなくて、ライフのほうもシフトさせなきゃいけないですよね。そうすると「どうしよう、この先」って思うわけですよね。
それで言うと久本さん、けっこう早い時期に自分のライフをシフトさせていますよね。そもそも星野リゾートに入った理由って、「軽井沢に住みたいから」でしたよね。
久本:そうですね。今日も軽井沢から来てるんですけど、軽井沢に移住したくて星野リゾートに入りました。理由は単純というか、それしかなかったという感じでして。
当然移住すると、自分の家ってほしくなるじゃないですか。調べてみたら軽井沢の底値だったので土地だけ買えたんですよ。土地を担保にして住宅のローンが組めるなと思ったんですが、当時ITベンチャー企業にいたんですけど、「ベンチャー企業に貸せるお金は1円もありません」って言われたんですよ(笑)。
野水:ローンを断られるわけですね(笑)。
久本:今はわかんないですけど、当時はすべての銀行に断られまして。それで土地買った不動産屋さんに「どうしましょう」って相談したら、実はもう家の建築が始まっていたので、「借りられないと困る」みたいになってたんですよ。
野水:久本さん、めっちゃ無鉄砲ですね(笑)。
久本:無鉄砲なんですよ(笑)。そしたら不動産屋さんに、「星野リゾートっていう、全国区ではまだまだ知名度はないんだけど、長野でとても有名な会社があります」と言われまして。
「その会社に入れば、長野の地銀だったら住宅ローンが下りると思いますよ」って言われたんです。それで「ベンチャーだからお金払わない」って言った担当者に話を聞きに行ったら、「星野リゾートさんに入社したら、その日に住宅ローン下ろしますよ」って言ってくれたんですよ。
野水:現金な銀行担当者ですね〜(笑)。
久本:そう言ってくれたので、もう入るしかなかった。それが僕の入社のきっかけです。
野水:ひどい理由で入ってますよね(笑)。ちなみにライフは充実されてますよね。写真をいろいろ送っていただいたんですけど、これはすごかった。
久本:私の日曜日の趣味ですね。これ全部燻製料理なんですけど、ソーセージとスモークチキンとベーコンと羊のスモークですね。
野水:日曜日が来るたびに、美味しそうな画像が僕のタイムラインに上がってくるんですよ。これだけじゃないですよね。これはボルダリングですか?
久本:地下室にボルダリングジムを作ってまして。
野水:作ったんですか!
久本:これは登るためというか、「地下にジムがある自分」を承認してもらいたいと思って作ってたんですけども(笑)。
野水:ウケ狙いで作ったんですか(笑)?
「高いところに山があるから登るんだ」って人はいますけど、山に登るためにわざわざ地下に行く人ってあんまりいないですよね(笑)。あとはガーデニングもやっていますよね。
久本:ガーデニングもやってますね。このピンコロ石で作ったアプローチも全部自分で作ったんです。砂利を打ったりは最近やったんですけど。
野水:みなさん、まだまだ続きますよ。
久本:左にあるのが7トンの丸太の原木なんですけど。僕、軽井沢の暖房が全部薪ストーブなんですけど、1年間に7トンぐらい使うんですよ。
野水:7トンも使うんですか⁉
久本:7トン使いますね。毎年1ヶ月かけて割ってます。
野水:あと、絵も描くんですよね。
久本:これもちょっと自慢だけしようかなと思ったんですけど(笑)。
野水:ものすごいエゴの表現セッション(笑)。
久本:これはなんか自慢というより、息子の誕生日のために描いたんですけど。でも息子は別に絵は欲しくなかったみたいで。あとで「おもちゃがほしかった」って言われたりもして。
野水:(笑)。
久本:しかもこれ、完成するのに1年ぐらいかかったんです。「やり始めるけど終わらない」という自分の仕事の特性を表してるなと思ったんで、持ってきました。
野水:エゴ、自己承認、自己実現全開という感じですね。
久本:野水さんもいろいろ素敵なことをやられてますよね。最近すごく憧れてるんですけど、オフィスカーの話を聞きたいなと。
野水:そうですね。え〜去年の12月に工事用の中古のハイエースを買ってですね。これを移動式オフィスにしようということで、半年間かけて工事をしてきまして。
半年間Do-It-Yourselfをした結果が、この右側の図ということになります。キャンピングカー作りって、やり始めてから思ったんですけど、DIYの総合格闘技みたいなもんで。大工知識が必要になるわ、配管知識が必要になるわ、自動車の知識が必要になるわ、電気工事が必要になるわという。めっちゃ大変だったんです(笑)。
ただ、おかげさまでコロナのこともあって、雑誌の『Pen』の取材とか、いろんなところに取り上げていただけるようになって。「社会的な承認を取ったな」みたいなところがありますね。
久本:(笑)。
野水:ただこういうことをするためには、カミさんの承認とかが難しいじゃないですか(笑)。いきなり「キャンピングカー買いたい」とか言ったら「アホ!」とか言われるのがオチなんで。僕もキャンピングカーを買う4ヶ月ぐらい前に「キャンピングカーが欲しい熱が限界を超えようとしている」ってボソッとつぶやいちゃって。これは社内のSNSなんですけど。
「いいね」の数は15件なんですけど、41件のコメントが並ぶっていう。「これヒットする予感ある!」みたいなコメントを観測しながら、SNSとかFacebookで「もしこれを買ったら……」とか「中古で買って自分で作ったら……」と小出しにしていったら、なんとなくみんなが応援してくれるようになった経過があるわけです。
久本:これ、めっちゃうらやましいですよ。
野水:本当ですか、ありがとうございます! やってるほうは相当しんどいんですけどね(笑)。まだ3分の2しか完成してないですが、来月車検なんでがんばりたいと思います。で、これもやっぱりエゴのアジャストっていうか。事前の頭出しの作業ってよくされます?
久本:僕も先に言葉にしてアジャストするタイプなんで、「似てる」と思ってます(笑)。
野水:(笑)。
久本:そもそも軽井沢に移住する時も、やっぱり誰もが賛成してくれたわけじゃなかったんですけど、信用できるちょっと年配の友達に話をしに行ったんです。自分たちの一方的な思いを話すと、その人は「いいじゃない」って言ってくれて、それがすごい勇気になったんです。
「これこれだからいいわよね」とか「これこれこういう判断が新しいわよね」って具体的なコメントを聞いて、なるほどと思って自分の理論武装を強化していったのはありますね。
それは今から振り返るとアジャストだったなと思ってます。言葉にして人と対話することでアジャストできて、強い理論になって、また人に伝えられるようになるのは、その時にけっこう感じたところですね。
野水:なるほど。そろそろ時間になってきましたので、簡単にまとめながら話していこうと思います。
まず久本さんの一番最初の発言によれば、人間は遺伝子的に「人とつながりたい欲求」が備わっていて、それはエゴそのものなんだっていうお話がありました。要するに「社会的承認を得たい」という欲求がエゴそのものなんだという話がありますと。
なので、エゴは持つべきだし、そのエゴが社会的承認を得られるようにアジャストする作業が必要になってくるんじゃないか。そういう話になってきましたね。
久本:はい。例えば会社との関係も、「会社」と「個人」って対比させたりするじゃないですか。でも会社は個人の集合体ですよね。会社に意思はないので。
そうすると結局は、個人とチームしかない状態なんだろうなと思ってるんです。チームってエゴの出し合いによって、初めてチームになっていくところがあると思ってます。なので、エゴをアジャストしていくのは、結局「愛されるエゴ」にしていこうだと思ってるんです。
野水:「愛されるエゴ」にしていくように努力する。
久本:あとは「必要とされるエゴ」ですよね。自分のエゴがチームに必要とされているとか、そういったところにアジャストして育てていく必要があると思うんです。
でも最初はわからないから、小出しにしてアジャストさせて固めて成長させていくと。やっぱり気持ち悪いエゴになっちゃうと、誰もついてこないですからね。
野水:20代だったら1人で突っ走ってもOKでしたが、40代になってからは、やっぱり周りとアジャストしながら自分のエゴを合わせていくっていう。
久本:そうですね。やはり20代の頃は、自分のエゴを出すとそれがチームの中でうまい具合にフィットしていく装置があったんでしょうね。
野水:誰かがやってくれたりする。
久本:立場が上になってきてしまうと、自分のエゴはチームを大きく揺るがしちゃうと思うんですよ。だから自分のエゴをチームに最もフィットさせて、その先に向かう原動力にしていくには、気持ち悪いエゴじゃダメなんだと思うんです。
迎合はもっとダメですけど、気持ち悪いエゴや受け入れられないエゴは、すべてチームの歩みを止めてしまうんだろうなと思ってます。
野水:ということは、今回はエゴ&ピースがテーマですけど、40代ってやっぱりエゴ&チームを意識したほうがいいですよね。エゴ&チームと言い続けてると、自分のエゴもチームに合ってくるような気がいたします。
久本:「チームをうまく機能させるのは、エゴを出す以外にない」って今日話をしていて思いました(笑)。
野水:逆にエゴを出すことで、そのエゴがどうやったら受けられるだろうっていうことを考えながら生きていく。そういう感じですね。
久本:そうですね、そう思います。
野水:ということでそろそろ時間になりました。中年のみなさん、「愛されるエゴイスト」になりましょう。人間というのはそもそもエゴがあって当たり前で、それを隠して生きると逆にロクなことがありませんよねと。
だから自分のエゴが愛される努力をし続けたら、きっといいチームの中で自分が暮らせるんじゃないかな、というふうに思っております。久本さん、本日はありがとうございました。
久本:どうもありがとうございました。
野水:ご清聴ありがとうございました!
(会場拍手)
サイボウズ株式会社
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