2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
提供:サイボウズ株式会社
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野水克也氏(以下、野水):日本全国の中年のみなさま、こんにちは。ようこそCybozu Daysへお越しくださいました。本日は9ヶ月ぶりにリアルに人前でしゃべります。目の前にお客さまがいらっしゃることは、こんなに幸せなのかと思いながらのプレゼンです。
コロナになってから、オンラインでのプレゼンばかりをやっていまして。自分の気持ちを盛り上げるために、カメラのモニターを見ながら一生懸命やるんですけれども、隣の部屋でカミさんが台所仕事をしててですね(笑)。
そういう中で「今、日本の人口は……」って言っても締まらないというか。すごく虚しい感じになってしまうというところで。
さて、中年セッションも今回で3回目なんですけれども、「僕たちは変わらなければいけない」と、毎年口を酸っぱくして言っているんですが、大きな環境の変化に対して、私自身がついていけなくてなかなか戸惑っている54歳でございます。今から40分間、よろしくお願いいたします。
(会場拍手)
野水:それではまず、昨年のおさらいからいってみたいと思います。なぜか人気の中年シリーズは、去年はログミーというメディアで長いことアクセス数トップを取ってたんです。
で、3位に社長のセッションの記事が来ていまして。社長の記事より上のランキングに表示されているところで、「うわー⁉」と感じておりますが、それだけ40代以降のみなさんが悩んでるってことなのかなと思っております。
まず今回のテーマである「ミッドライフクライシス」という言葉。去年までこの言葉は使ってなかったんですけど、今年からこれでやってます。
40代は景色が変わります。なぜ景色が変わるかというと、下り坂に向かうってことです。体力とかいろんなものが下り坂になっていく。それまでは普通に努力していれば、必ず登ってたんですよ。ところがある日突然、普通に努力していると下っていくんです。
そういう恐怖に駆られて、いろんなところで「怖ぇー!」となってしまうところが、このミッドライフクライシスをテーマに選んだ一番の要因かなと思います。
でも心配することはありません。みなさんの中で目にした方もおられるかと思いますが、あのキアヌ・リーブスが公園でぼーっとしてる写真がすごい広まりましたよね。
あの写真は、「あれは中年の危機だ。僕にとってのミッドライフクライシスだった」って彼がカミングアウトしてるところがあって、要するに「うつ病じゃないよ」ということを言ってたんです。もうそれぐらい一般的な話だということになるわけですね。
野水:これに対して日本のビジネスマンには、外圧がけっこうかかるわけです。ビジネスマンってずーっと会社の立場上で仕事をしていくところがあって。まず自分の仕事のビジネスモデルが変わっていくという悲哀を味わうと。
加えて、「支援者が消えていく実感」ですよね。要するに、自分を今まで支えてくれた人。自分が今までマネージャーとしてバリバリやってたとしても、それは会社から部下を与えられてやってるわけですよ。
ところがここから先、例えば管理職定年(注:一定の年齢になると、能力にかかわらず自動的に管理職の職務を解かれる制度)みたいになってしまうと、自分の足で立たなきゃいけないと。今まで仕事をくれた人たちが一斉にいなくなってしまいます。
「いやちょっと待って、これでどうやってこれ70歳まで働くの?」みたいなところで、日本の40歳・50歳代の自殺率って実は世界一なんですね。それくらい深刻な問題になってきています。
本当だったら人生で初めての自由なわけですよ。会社に入っても上司の言うことを聞かなくてよくて、自分でがんばれるし、ある程度の自由があるはずなんですけど、逆に戸惑ってしまうわけです。
そこで僕らは、40代からのチームを自分で作らなきゃいけないと思うのです。やっぱり人間は一人で生きられませんから、なんとかして仲間たちと次のミッションをやろうと思うわけですが、今までの会社のヒエラルキーのピラミッド組織というのは、だいたいお金でつながってるチームなんですよね。
ところが、このお金でつながるチームはもう作れないとなると、何でつながるかっていうと「理想」です。理想でつながるチームを作ろうとなるわけです。
でもこの理想を作るのがなかなか難しい。理想を作るにはまず、理想的な自分にいかなきゃいけない。でもなんか自信ないじゃないですか。「俺についてこい」って、無理やり言って嫌われたくない、みたいなところがけっこうあるわけなんですね。
そういう流れで、理想で作られたチームでがんばっていくわけなんですけれども。ここで大事なのが「判断基準が変わっている」ってところです。それまでは勝ち負けがすべてだったんですね。要するに「良いこと」or「悪いこと」があって、会社にとって良いか悪いかで勝負してたわけですが、そうではなくなっていて。
野水:「良し悪し族」ではなく「好き嫌い族」になりなさいと。ミクロな視点と言っていいかもしれません。要するに「100万円か0円か」って言ったら、そりゃ100万円のが良いだろうという話になるんですけど、「クリームソーダかメロンソーダ、どっちがいいのか」って言ったら、これは人の好みって話になるわけですよね。
その「好き」という自分の中の価値観をちゃんと育てましょうと。その中で大事なのが「好き」を極めなきゃいけないというところですね。昔は町一番の知識があれば通用した時代でしたけど、今の時代は町一番の知識なんてインターネットに腐るほど転がってますから。その上をいくために好きを極めましょうと。
ところがそこで邪魔するのが「好奇心の減退」です。人間の好奇心って、中年になってくるとだんだんしぼんでいくんですよ。これは好奇心の法則なんですけれども、好奇心というのは「自分の能力の及ぶ範囲のちょっと先にあるところ」に対して興味を抱くわけです。
ところが時間や場所、家族やお金等のいろんな制約がかかってくると、自分の意識がしぼんでいっちゃうんですね。これが中年の好奇心がしぼむ原因になっていると。
そこで予想と現実の隙間がなくなってゆくいうか。もう情報がぜんぜん入ってこないと。その上、同じ場所、同じ人、同じ習慣でずっと働き続けるわけなので、「そりゃ好奇心もしぼむでしょう」となってくるわけです。今の中年は、いろんな制約から自分を解き放って成長しなければいけないと。
じゃあ、数々の制約を乗り越えて好きなことを「極めましょう」というところで去年は終わったわけです。終わったんですけど、そこだけでは終われないですね。
「好きなことしてる大人はカッコいい」って言う大人も確かにいます。でも「好きなことしてるイタい大人」も同じぐらいたくさんいるわけですね(笑)。
「好きなことをしてるのにイタいという分岐点はどこだろう……」というところですね。これは「好き」=「エゴ」と言い換えてもいいかもしれません。イタいエゴおっさんではなく、「愛されるエゴおっさん」にならなきゃいけないわけです。その愛されるエゴを深掘りしていくのが、今日の40分間のセッションの内容になってきます。
ただ私……実は人に愛されることに自信がありません。ということで、「愛されおじさん」を1人呼んでまいりました。それが本日のゲスト、星野リゾートの久本さんです。
実は久本さん、去年の僕のセッションの発言に対して食いついていただいて、メッセージなどもいただいていました。その過程で、今年は一緒にステージに上がってくださいとなったわけです。
ではみなさま、拍手でお迎えください。星野リゾートの久本さんです。
(会場拍手)
久本英司氏(以下、久本):よろしくお願いします!
野水:まずは星野リゾートさん、絶好調というか。国内の観光業ってけっこう悲惨なところが多いとは思うんですけども、星野リゾートさんはどうですか?
久本:いやぁ〜4月5月はヤバかったですよ。
野水:あ、そうなんですね。
久本:売上が前年比9割減ですからね。今はGoToトラベルキャンペーンの効果も大きくて、多くのホテル事業者さんにお客さまが来ていただいてる状態ですね(※当セッションは2020年11月13日に開催)。
でも第3波が来たら、また4月5月の状況に戻ってしまうことは想像できるので、予断は許されないと思ってます。
野水:従業員のみなさんは忙しくというか、今のところは大丈夫ですか?
久本:今はすごく忙しいですね。GoToトラベルキャンペーンの効果で、平日も含めてお客さんにたくさん来ていただいて。今はほぼ毎日満室の施設もあるぐらいですね。
野水:いい感じですね。いま数日前の代表の星野さんのツイートを画面に出したんですけれども、「チェックアウトを13時にしてみました」と。「チェックアウトを13時にしたらお客さんにはめっちゃ好評です」って。お客さんは午前中もスキーできるようになるのでそりゃ好評でしょう! みたいなことをツイートするんですよね(笑)。
久本:(笑)。
野水:これができるから星野リゾートは強いなって思うんです。ではなぜほかの旅館やホテルは、代表が大々的に13時チェックアウトを公表していくことができないのかと思うんです。このへんの強さの秘密、チームの秘密みたいなものはあるんですか?
久本:実は僕もよく知らない事例なんですけど……(笑)。これ見てると代表はチェックアウトをさらに遅くして、13時から14時にしたいと言ってますね。
野水:そうですね。
久本:「14時にしたいけど社内で反対されてます」って言われてますね(笑)。
野水:だって、基本的にチェックインが15時じゃないですか(笑)。
久本:そうですね(笑)。これ一番大きいのは、恐らく代表の星野がスキーヤーだからですね。年間60日冬山に登ってスキーしているぐらいですから。
野水:そういえば「スキーしながら暮らしてる」って書いてましたね。
久本:そうですね。今はスキーが人生の最優先事項で、その次に仕事のように思えますね(笑)。
野水:なるほど(笑)。
久本:星野はスキーヤーのエゴとして言ってますね。
野水:あぁ、スキーヤーのエゴなんですね。
久本:なので言ってみれば、社会のエゴですね。「社会のエゴを代表して言ってますよ」という話だと思います。私はエゴはニーズみたいなものだと思ってるんですけど。
先程のツイートに関して言えば、スタッフは反対しているようですけど、それは会社のために言っているわけではないですね。14時にチェックアウトしたら、15時にお客さんを迎えることは難しいので、仕事をする個人としてのエゴで「ムリです」と言ってるだけだと思います。
もし会社に法人格というか精神があるとしたら、「従業員はみんながんばって14時までチェックアウト引っ張ろうぜ」って言うだろうなと、これを見て思いました。会社としてはお客さまのニーズに応えたいわけなので。
野水:なるほどなるほど。代表と個人の立場があるけど、このエゴは2つの視点からやるべきだという判断があるんじゃないか? という感じになるんですね。
久本:そうですね。さきほど「代表のエゴ」とか「社会のエゴ」という言葉がありましたけど、この「エゴ」をどういう意味で使われてるのか僕はまだ理解しきれていなくて。簡単に教えてもらっていいですか?
野水:もちろんです。正式な定義をしているわけじゃないので、けっこう広いです。「わがまま」って言い換えてもいいかもしれません。そういう意味から「理想」っていう高いところまで含んでると思います。
kintoneの最近のキャラクターに「きとみちゃん」っていうキャラがいまして(笑)。
久本:(笑)。
野水:今日は後輩の指示で、「がまんしない!」と書かれたTシャツを着ております(笑)。みんなに見られて恥ずかしいと思うんですけれども(笑)。逆に言うと「エゴ」というところに言い換えられるかなと。
久本:なるほど。「きとみちゃん」が言うとなんかこう、わがままもかわいく聞こえますね。
野水:はい。僕が言うとダメですね(笑)。
久本:微妙なラインに入っていっちゃいますね(笑)。
ちょっとわけのわからない資料で申し訳ないんですけど、「エゴ」っていうキーワードだけ聞いて僕がちょっと考えたことは、「本来人間って利己的でいいんだよな」って思ってるところがありますと。これは、昆虫と人間の生存戦略をまとめた資料を持ってきたんですけど。
要するに生存戦略ですね。生き残るための戦略です。左にあるのはハチなんですけど、ハチって「真社会性昆虫」と呼ばれてます。彼らは人間と近い社会を築いているって言われているんですけど、本質的にはぜんぜん違います。
生存戦略としては、ハチはたった一つの遺伝子で、あれだけ多くの社会を築いて後世に残そうとしているんですよね。遺伝子が一つしかないんですよ。だから個体がいくら死んでも、彼らにとっては大した問題じゃないんです。それは虫だからじゃなくて、生存戦略上そうなんですよ。
一方人間は、全員遺伝子が違いますよね。遺伝子が違うのに協力しあって、後世に遺伝子を残そうとしているんです。これってやっぱり人間が個体としてはとても弱かったからだと言われてます。なので、社会を築くことで後世に遺伝子が残る確率を増やしていこうっていう考え方だって言われてます。これが生存戦略の違いです。
野水:所詮人間は一人では生きられないと。
久本:そうですね。そう考えると、「働くって何だろう」と。「他人のために働くのはなぜですか」と問われた時に、僕は「人間の遺伝子がそうさせてるからです」って答えるようにしてるんですね。
もうそれが人間の生存戦略だから考えてもしょうがないって思ってます。それが僕の日々の仕事をする上での根底の考え方になっている感じですかね。
野水:なるほど。そもそもエゴを出していけば、社会的な成果につながっていくということですよね。
久本:そうですね。だから「なんで働く」とか、あんまり悩んじゃいけないんだと思うんですよね。
野水:悩んじゃいけない(笑)。
久本:生存戦略だからって。
野水:悩んでる人いっぱいいますよね(笑)。
久本:そこ悩んでも答えが出ないんで。もう生存戦略なんで(笑)。そういうふうに思ってます。
野水:今回打ち合わせで、このお話を聞いた時に、近江商人の話を思い出したんです。要するに、「自分のため」と「お客さんのため」と「社会のため」。「三方よし」の考え方ですよね。
この「三方よし」って、逆に言うと三方のエゴの重なりあう地点が、ちょうどいい塩梅なんじゃないかって思ったんですよね。
久本:そうですね。自然なエゴは本質的に認められるはずなんだと思うんです。野水さんが言っている「社会のエゴ・個人のエゴ・会社のエゴが重なり合うところを目指すべきだ」っていうのは、基本的にはそれが人間社会の生存戦略上本質だから。そりゃそうだろうな、っていう受け取り方をしてます。
野水:これってさっきの「中年の愛されるエゴ」にも通じるものがあるんじゃないかと思って。
久本:そうですね。
野水:「社会のエゴ」と「チームのエゴ」と、「所属組織のエゴ」があって。もう1つ「自分自身のエゴ」がある。これをうまいこと重なりあわせなきゃいけないんじゃないかなと思います。
久本:はい、そう思います。
野水:ですよね。では次に「マネージャーのエゴ」という話にいきたいと思います。先ほどの星野代表の話だと、「星野リゾート代表としてのエゴ」と「スキーヤーとしてのエゴ」と「お客さんのエゴ」はかなり一致しているわけですよね。
久本:そうですね。彼は星野リゾートという企業の代表として話しているというよりは、「いちスキーヤーとしてこう思う」って広く言いたかったんでしょうね。
野水:代表の考えってけっこうシンプルに言い出せますよね。でも社員の方は「いやいや1時間でチェックアウト・インの準備できるわけないじゃん」ってスタッフのエゴとして出しやすいと思うんですよ。ところが間に挟まるマネージャーのエゴってどうなんだ……みたいなところがあって。
久本:そうですね。
野水:これってけっこう40代の方がここに当てはまりますよね。この辺りが大変だと思うんですけども、久本さんってマネージャーに向いてるほうですか?
久本:正直向いてないと思ってまして(笑)。
野水:(笑)。
久本:実は私のチームのメンバーも会場にいるので、ちょっと言いづらいんですけど(笑)。
なぜ僕が向いてないと思うかと言うと、マネージャーっていろんな役割があると思うんですけど、チームの面倒を見ることも役割としてあるじゃないですか。でも僕、社会人になってもう20数年経つんですけど、「人の面倒を見るのが苦手だね」って延々言われてきてたんですよね。
野水:延々言われてきた(笑)。
久本:最初の会社でも星野リゾートでも言われてますね。なので「苦手なんだろうなぁ」って思ってます。
野水:実は僕も一緒です。僕も「人の面倒を見るのが苦手」って言われ続けたんですよ(笑)。ずっと言われてたんですけれども、マネージャーでい続けているっていうか。
久本:そうですね。先程のセッションで「承認欲求」のお話が出てましたけど、自分にエゴがあるから、それを承認してもらいたい欲求もあるんだっていう。承認欲求的な話をしますと、私はやっぱり社会的な承認欲求を満たしてほしいと思っているんですよね。人間なので。
私の満たしてほしいという思いと周囲の承認が一致してたのが、唯一会社の中でのプロジェクトマネージャー的な役割だけだったんですよ。先ほどいろんな役割があるって言いましたけど、人の面倒を見る役割もあれば、プロダクトのマネジメントをする役割もあるし、組織マネジメントの役割もあると思うんです。
その中で私は、プロジェクトやプロダクトのマネジメントで承認してもらうのが一番うれしかったんですよ。逆に言うとそれ以外がけっこう苦手で、あんまり承認欲求を満たしてくれることがなかった。ある意味、そこにしがみついてる感じです(笑)。
野水:「しがみついてる」ってすごいですね(笑)。僕もずっと「マネージャーに向いてない」って言われ続けたんですけども、僕の場合、30代後半から40代始めにマーケティング部長という立場になったんですね。
その立場の時に、世間的な流行と自分の中のマイブームが一致してるところが多くあったんですよ。あんまり大きな声じゃ言えないんですけど、けっこう勘で仕事してたところがあってですね(笑)。
勘でやった施策に対して、理論やロジックを後付けするようなことをしていたわけなんですけれども、40代になるとこれがけっこう変わってくるというか。
40代になると事業で大ゴケしちゃうんですよね。そして、自分の中にある勘とかセンスを信じられなくなるんですよ。そうすると「俺は何を目指していけばいいんだろう……」みたいなところで、ちょっとぐらつき始めるところがあるわけですね。
久本:なるほど。
野水:すると萎縮して自分の色が出せなくなっちゃうので、なんか変なことやり始めるんですよ。変なことやっていくと、ちょっとイタいおじさんになりかかるっていう。
そういうツラいことになったりするんですけれども、「エゴがない状態」がけっこうツラいというか。でも、エゴを出すと嫌われそう……みたいな状態ですね。おっさんが受容されるエゴって、どういうエゴになるんでしょうね。
久本:野水さんのお話を聞いていて、「自分も似てるなぁ」と思ったんです。僕は先ほど「プロジェクトとかプロダクトをマネジメントするのが上手だと思ってた」と言ったじゃないですか。確かにうまくいったこともあったんですけど、大ゴケしたことも何度もあるんですよ。
なので、承認欲求を得るために、会社の中のシステム担当の中心に居続けたかった気持ちが強いんです。そして自分はプロダクトオーナータイプだと思ってたんです。プロダクトをコントロールするのがうまいと思ってたんです。
でも、社内のメンバーにその話をしてたら、「久本さんはプロダクトオーナーじゃないんじゃないですかねぇ」って言ってきて(笑)。
野水:(笑)。
久本:「それなら僕のほうが上ですよ」って言ってきたんですよ(笑)。
野水:立場がないですね(笑)。
久本:その時に「久本さんはどちらかと言えば、プロデューサータイプじゃないですか?」って言われて。「プロデューサーとしてはすごいと思いますよ」って。
自分ではそういう意識がなかったので、「そうなんだ……」ってけっこう思ったんですよね。そのことを野水さんのお話を聞いてて思いました。
久本:あれ、質問って何でしたっけ。受容……(笑)。
野水:受容されるエゴについてですね(笑)。
久本:そうでした。それを考えると「受容されないエゴって何ですか」という質問のほうが答えは出しやすい気がしますね。
結局エゴって本来、「利己的だ」という意味以外にも、「自我」とか「自尊心」という意味があるじゃないですか。それをなくしちゃ終わりというか、困っちゃうと思ってるんですよね。だから自我とか自尊心を認めてほしい気持ちが承認欲求だとしたら、それってやっぱり普通に持ってるモノだし、持つべきだと思ってるんですよ。
野水:持つべきモノ。
久本:そう思ってます。その上で「受容されないエゴ」って考えた時に、「誰にとって受容されないのか」を考えると、例えば「ポジショントーク」って言葉があるじゃないですか。ポジショントークって悪い言葉として使うケースが多いと思うんですけど、すべての人の発言って、結局ポジショントークだと思って。
野水:すべての発言はポジショントーク。
久本:そうです、すべての発言はポジショントーク。ポジショントーク以外では、人って発言できないんだと思うんですよね。そう考えると、意識してなくてもポジションって必ず自分の発言に影響を与えてると言えると思ってるんです。
先ほど「かわいいわがままですね」みたいな話をしたじゃないですか。でも、わがままがかわいくなくなる時ってありますよね。それって、そのわがままをかわいく言えないポジションに、その人がなっちゃった時なんだと思うんですよ。
野水:これも中年の葛藤の1つだったりしますよね。
久本:そうですね。だから実際ポジションが変わったにも関わらず、自分の感覚が変わらずに、言っちゃいけないポジショントークを言っちゃった……って感じだと思ってるんですよ。
だから「ポジションが変わったことに気づかずに、変わる前のポジショントークをしている」が、結果として受容されないエゴの状態なんじゃないかなと思ってるんです。
久本:そうすると先ほどの「受容されないエゴって何だろう」ですけども、「受容されるエゴってどうすればいいですか」と考える時には、「受容されないエゴを除去すればいいんだ」と思ってまして。
先ほど言ったように、「受容されないエゴ」をポジションで考えた時に、やはり「受容されないエゴゾーン」があることを自分自身で受け容れて、それを見つけ出していくことで、受容してもらえるエゴに近づいていけるんじゃないかな。そういう考え方かなと思ってました。
野水:確かにですね。新入社員の方が「お茶は冷たいのが好きなのに」と言うとそれは「かわいい」で済むんですけど、部長が偉そうな机に座って「俺はお茶が冷たいのが好きなんだけどな」と言うと与える印象がだいぶ変わるというか。
久本:そうですよね、部下は冷たいお茶を調達しにいっちゃうと思います(笑)。
野水:誰かがコンビニに走っていくとか、えらい騒ぎになってしまいますよね(笑)。同じ言葉を軽く言ってるだけなんですけれども、やっぱりポジションによって、言葉の重みや、相手に与える影響度が変わってくるところがあるわけですよね。
久本:僕もよくやっちゃう失敗なんですけど、軽い気持ちで言っちゃったことがチームの行動を変えちゃうんですよね。だから、僕はよくチームメンバーに呼び出されて「久本さん、あの軽い言い方はよくないです」って怒られるんです。そこは反省してます(笑)。
野水:僕もそれでよく部下に怒られました。「私は好きなことが言えますけど、私以外の人はなかなか言えないので、ホイホイ思いつきで言うのやめてください」ってひどく怒られたことがあります。けどまぁ、これが言われてるだけまだマシなんでしょうね(笑)。
久本:そうですね、そういうふうに思うようにしてます(笑)。
野水:ただこれ逆に、「これは自分のエゴではなくて、みんなのために言ってるんだ」と思っているけど、実は周りから見ると「あれは部長のエゴじゃん」ってこともありますよね。
久本:ありますね。
野水:これはけっこうあると思うんですよね(笑)。
久本:あるあるだと思います。自分もたくさんあると思ってます。先ほど「受容できてないエゴ」の話をしたと思うんですけど、「フィットしてないエゴ」になってるんでしょうね。
そのチームの関係性の中で、いいエゴもあれば、フィットしてないエゴもあるんだと思っていて。今のあるあるのケースに陥ってしまうのは、やっぱりエゴがフィットしてなかったんだと思いますね。
サイボウズ株式会社
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