2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
デンソー 社員講演 #2(全1記事)
提供:株式会社デンソー
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加藤直也氏(以下、加藤):「インフラ点検ロボット」について、なぜインフラ点検ロボットを始めたのかと、ロボットがどんな働きをするのかについてお話しします。
最初に自己紹介します。私は1984年に入社しました。このころはバブル期が始まったぐらいで、みなさんが浮かれていて、私も浮かれていましたが、その後いろいろな社会的問題が起こった時代を生きてきたんですね。
最初に設計をやり、そこから研究所に移ってエンジンの研究、ここではF1などのレースエンジンやレクサスエンジンの開発支援などをやりました。リーマンショックのときに、研究所からデンソーに戻ってきて、今後、デンソーはどういうことに取り組むかなどの企画を担当し、その中で挙がった1つであるロボット開発を自分で立ち上げて開発。もう59歳6ヶ月なので、60歳以降を模索中という状況です。
ロボット開発のきっかけについて、先ほど岩井さんが丁寧に語ってくれましたが、少し裏側をお話ししたいと思います。2011年に東北の大震災があり、当時私は技術企画室長としてクルマの将来を考えていたあるとき、(当時の)社長から「デンソーが世の中から『いい会社だなぁ』と言ってもらえる企画をしてほしい」という話がありました。
社長も私も(名前が)加藤なのですが、「社長が思う『いい会社』ってどんな感じですか?」と聞くと、「徳のある会社」とおっしゃったので、僕は「徳は儲かりませんよ」と申し上げました。するとその当時は「儲からないでいいから、いざというときに頼りにされる会社になりたい」と、おっしゃっていたんですね。震災で、いろいろ悲惨な現場を見られたから、そう思うのかなと感じました。
「でも儲けないと浮かばれないじゃないですか」と申し上げたら、「加藤君は浮かばれたいんだっけ?」と言われてしまって、サラリーマンとしての将来を悟り、自分としてはベンチャーの社長みたいになろうとしたんですね。何をやるのか決まるまで紆余曲折はありましたが、先ほど岩井さんが説明したような活動を通して、Work Assist Robotをやろうと軸足を切りました。
2016年からRobotics開発室を立ち上げて、農業は岩井さんにやってもらい、インフラは同じ部署の光田課長に担当してもらいました。
新しいことをはじめるときは、志が大切です。そこで何を志したか? ですが、会社が「クルマ社会の安心安全に貢献する」ことを掲げていました。そして、クルマの安心安全システムにはさまざまなアイテムが企画されていました。
一方で、クルマ社会というからには、クルマが走る環境の安心安全にも貢献すべきだろう、それは道路インフラでしょう、となったんですね。
当時内閣府主体のSIP(Cross-ministerial Strategic Innovation Promotion Program)という「戦略的イノベーション創造プログラム」があって、主テーマの一つにインフラ維持管理・マネジメント技術の開発がありました。このころは日本の道路インフラが老朽化し始めるフェーズだったのです。私たちはこれに乗っかって開発を始めました。
このSIPから、私たち参画企業に期待されたことは3つあります。1つは、いろいろな道路インフラの中で、点検や維持・管理が難しい橋梁とトンネルをターゲットとして技術開発をしてほしい、という期待がありました。
2つ目は高齢化対応です。よく高齢化対応は省人化と言われますが、単なる省人化ではなく、若者が憧れる技術を導入したいと。土木を担う人たちを土方さんという言い方をしてしまいますが、そうではなくて、土木はカッコいい職場として若者が憧れるようにしてほしいということですね。
3つ目は地域実装ですね。道路インフラは全国くまなくあるので、地域の自立を支援するような開発と導入を進めましょうと謳われていました。
点検と維持管理技術開発が目指す目標値として、「インフラ+100年寿命への貢献」を掲げていました。道路インフラはいろいろありますが、ざっくり言うと、ノーメンテナンスでの寿命は50歳くらいなので、これを100年延ばして150年にしましょうということです。これを、今流行りのSDGsの開発に位置づけました。
「造る時代から、維持・メンテの時代へ」ですね。道路をこのまま壊して作り続けても、無駄が起きてしまいます。例えば2018年には、道路の維持・管理の部分にだいたい5兆円ぐらいのお金がかかっていますが、これからどんどん道路年齢が50歳を超えて老朽化していくと、この倍以上の維持・管理費がかかります。
ですが財源には上限があります。例えば人が人間ドックで危ないところを見つけて手を打っていけば、重症化せずに早く安く済むでしょう、というような考え方を基に、道路も壊れる前に保全をすれば、あまりコストを増やすことなく維持・管理ができる、というように、事後保全から予防保全に変えましょうということです。
大きく壊れてしまってからの大改修や架け替えを回避できれば、莫大な費用を削減できるばかりでなく、道路を作り変えるときに起こる渋滞の低減ができるし、大改修や架け替えで出るコンクリートや鉄骨の廃材処理は環境負荷になるのですが、これも削減されます。つまり、今ある道路インフラをちゃんと維持・管理しましょうという考え方です。
11月に行われた社会インフラテックOnline2020というセミナーで、三木先生(東京都市大学学長 三木千壽氏)が、「道路の構造と真の性能を知って的確な点検・診断・措置をすれば構造物は再生可能。プラス100年はいけるんだ」という話をされていました。寿命が50年のものを150年にするということは、単なる老朽化対策とか維持ではないんですね。正しく点検されて、維持・管理の工事が入る度に進化して使われ続ける、カッコよく活躍する超高齢インフラを作りましょうということなんです。
私はもうすぐ定年になる今の自分に重ねていて、カッコよく活躍する高齢者になりたいなと思っています。
ここからは、デンソー製インフラ点検ロボットの話をします。私たちはデンソーの技術開発センターという部署で(インフラ点検ロボットを)開発していましたが、2018年に社会ソリューション推進部という事業を行う部署に変わっています。そして、2019年10月から点検サービスをスタートしました。
まだ十数件とわずかではありますが、スタートできたということが1つの喜びです。ただし、まだ発展途上の技術ですので、国がこの技術の発展と普及を支援するプロジェクトを進めており、デンソーはこれに参加しています。先ほど述べたSIPという技術開発のプロジェクトを17年から18年に、19年からは官民研究開発投資拡大プログラム PRISM(Public/Private R&D Investment Strategic Expansion PrograM)という新技術の地方実装を支援するプロジェクトに入っています。
さらに、福島にロボットテストフィールドというのがあるのですが、復興支援の想いも込めて福島を日本のロボット開発の拠点にしようということで今年の3月に竣工しました。このプロジェクトにも私たちは参画していて、技術開発を進めています。次のチャートに移る前に、2019年の10月に事業をスタートしたときにこの事業がどんな技術で何をするのかを説明するビデオを作り、それがデンソーの公式Facebookで公開されているので、ご覧ください。
見ていただき、ありがとうございます。
ここからは、デンソーが参画している国のプロジェクトについて、お話しします。公共事業なので、国とともに開発する仕組みに入ること・選ばれることがとても大事で、今は2つのプロジェクトをやっています。
1つは福島のロボットテストフィールドです。復興支援が目的のこのプロジェクトにどう貢献するかですが、新しい価値と技術の共創を福島や東北の方々と一緒に開発します。具体的には、自動で飛行撮影をするロボットの制御技術や3Dドローツールを使った損傷解析などの開発を、実験室を1つ借り、試験用橋梁を使わせていただいており進めています。
もう1つはPRISM実証です。命題は地方実装で、このように立派な橋が海沿いや山沿いの地方にはあるのですが、人口減少により税収が少ないのです。鳥取県は日本の人口最小県なので、ここを象徴的な活動拠点として、どうしたら点検、維持管理の技術を実装できるのかを実証実験する取組が行われています。
命題のもう1つとして、ロボットやAIを活用した点検というのは本来どうあるべきなのか、を明確にしたいというのがあります。実際に人がいて目視点検するのとは違うわけで、新たな価値を生むにはどうすればよいか。予防保全のために、ロボットを用いて記録をきちんと残し、AIを用いて診断し、保全の記録をデジタルで残す、いわゆるDX化をして、これを先進的な点検として、次の点検要領の改訂が2024年にあるので、そこで採用されることを目指してがんばっています。
ではここで、鳥取県で行われた実証実験のビデオをご覧いただきます。実証場所は、あるカーメーカーがベタ踏み坂を登るコマーシャルで使った巨大橋梁です。
このように、福島ロボットテストフィールドで技術開発をして、PRISMで実証できた技術とサービスを用いて事業を行っているのが、今の私たちの仕事となります。
最後に、私たちの取り組みを改めて説明させていただきます。私たちはロボット、ドローンというものを開発・製造しているだけではなく、ロボットを用いるインフラ点検システムの社会実装を目指します。
この写真は私たちのUAVが点検中に撮った一枚です。象徴的なのは橋の上に人がいて(スライド参照)、UAVがこの方の目の前数メートルのところを飛んでいるのですが、とても安心した様子で見ておられたんですね。そして、私に「何やっているの?」と聞かれて、「橋の点検?いいね」と言っていただき、ドローンでこんなことができるんだというのを見てもらい、私たちの現場のオペレーションに対して安心感をもって共感してもらえたと感じました。
このようなことを繰り返していき、社会に受け入れられて実装していくことを目指しています。
今日はありがとうございました。
株式会社デンソー
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