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CTO Keynote - LINE DEVELOPER DAY 2020(全2記事)

2020.11.30

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コロナ禍で素早く対応できた背景にはプラットフォームの力 LINEのCTOが語る「ライフインフラであり続ける」ために必要なこと

提供:LINE株式会社

2020年11月25〜27日の3日間、LINE株式会社が主催するエンジニア向け技術カンファレンス「LINE DEVELOPER DAY 2020」がオンラインで開催されました。まずはキーノートとして、LINE株式会社CTOの朴イビン氏と、LINEファミリーサービスの開発を統括するとともにDataLabsの責任者を務める池邉智洋氏、LINEプラットフォーム開発統括の梁ソクホ氏が、LINEが現在取り組んでいることについて紹介しました。 前半は、朴イビン氏が今年発表した新機能を、池邉智洋氏が基盤となるプラットフォームについて紹介しました。

COVID-19に合わせて変化したLINEの機能やサービス

朴イビン氏(以下、朴):LINEのCTOの朴イビンです。LINE DEVELOPER DAY 2020にご参加いただき、誠にありがとうございます。ご覧のように、今年のLINE DEV DAYはオンラインで開催しています。みなさんと直接お会いできないのは残念ですが、オンラインということで、とても多くの国や地域の方に参加していただき、それはまたうれしいことだと思っています。

さてこの1年は、COVID-19によって社会的な問題もたくさん発生し、人々の生活や触れ合い方も大きく変化しました。みなさんの中にも、今在宅勤務をしながらこのセッションを聞いている方も多いと思いますが、このように仕事でもオンラインでのリモート環境が当たり前になりました。

また、これまでデジタル化の発展において一般的になっていたビジネス慣習が一気に崩れたり、ルールが見直されたりしながら、今まで以上にスピーディにデジタル化が進んでいると感じています。コミュニケーションのパターンも変わって、ビデオ通話などのオンラインコミュニケーションがより増えました。

みなさんも、この1年でLINEを多く使った気がしませんか?これはLINEの利用状況のトレンドにも表れています。このグラフはLINEのビデオ通話数ですが、2月以降、ビデオ通話のニーズが徐々に高くなっていって、5月には約235パーセントまで利用が増えました。

増えたのは、友だち同士のやり取りだけではありません。このグラフはオンラインで新規開設されたLINE公式アカウントの数ですが、特に教育や飲食店、サロンなどのアカウント数が増えました。お店がお客さんと直接コミュニケーションするのが難しい今、代わりにみなさんが使っているLINEを通じて、より深くやり取りしていることがわかります。

LINEはこのようなニーズに合わせて、みなさんのオンラインライフをよりサポートするため、さまざまな機能やサービスを素早く提供してきました。このKeynoteでは、そのような事例をいくつか紹介します。

グループで画面を共有できる機能「みんなで見る」

まずLINEアプリの機能として、みなさんのビデオ通話の体験をよりよくするために「みんなで見る」という機能をリリースしました。ふだん家族や友だちと動画を見たりゲームをしたりしているオフラインの体験をオンラインに移動して、LINEグループでビデオ通話をしながら、「画面シェア機能」を通じて、みんなで同じ画面を見たり、YouTubeを一緒に視聴したりするという体験ができるようになりました。

また、これまではLINEの友だちとしかビデオ通話ができなくて、「(単にビデオ通話したいだけの人を)友だちに加えるべきか」と悩んだ方も多いと思います。なので、リンクをシェアするだけで、LINEの友だちではない人とも最大500人までビデオ通話ができるLINEミーティングを8月にリリースしました。LINEさえあれば、リンク作成も2ステップで簡単に作れますし、無料で使うこともできます。

打ち合わせやオンラインヨガスクール、オンライン英会話だけでなく、親戚の集まりなどでも簡単に利用できます。これによって、みなさんの日常のコミュニケーションがオンラインでも親密に続くことを願っています。

LINEの店舗向け機能「LINEで予約」「LINEミニアプリ」

さらに、COVID-19で大きな影響を受けているお店のサポートも進めています。みなさんが馴染みの店でも、ふだんとは違う店舗情報、例えば営業時間が変わったとか、持ち帰りができるようになったとか、リアルタイムで知りたいですよね。そこで7月には、LINE公式アカウントでも音声・ビデオ通話ができるようにして、テキストだけでは難しかったことを、LINEからの通話で簡単に問い合わせができるようになりました。

今月(11月)には「LINEで予約」という機能をリリースして、飲食店の予約がLINEで簡単にできるようになりました(※第1フェーズとして、「ぐるなび」加盟飲食店のうち、席のみ指定でのオンライン即予約に対応している店舗の予約が可能)。さらに、LINEのトークルームからLINE Payで支払いもできるサービスもリリースします。この「支払いリンク」は、今プロトタイプとしてLINE Pay加盟店に提供していますが、年内に正式リリースする予定です。

7月には、LINEミニアプリのエントリーを開始。企業や店舗のみなさんが、さまざまなサービスをWebアプリケーションとして提供できるようになりました。いくつかのサービスをご紹介しましょう。

原宿にある、ある人気のカフェ。そのカフェではLINEでデジタル整理券を発券して、順番待ちができるようになりました。これによって、最大5時間待ちだった行列がゼロになり、その行列を運営するための人件費もゼロになりました。またアイセイ薬局では、LINEで予約すれば待たずに処方された薬を受け取ることができます。アイセイ薬局のLINEミニアプリを利用した人のリピート利用率は約85パーセントと、とても高い割合になっています。

このようにLINEミニアプリを利用することで、COVID-19で一番課題になっている店舗の混雑も解消し、お店のスタッフの負担も減り、リピート率の増加にも役に立っています。

オンライン診療サービス「LINEドクター」とオンライン銀行サービス

ヘルスケア領域でも、新たにオンライン診療サービス「LINEドクター」をリリースする予定です。LINEのビデオ通話を使って医者の診察を受けられるようになり、クリニックの検索から予約、診察、そして決済までをすべてLINE上で行えます。

そして昨年のLINE DEV DAYでも、いろいろな国で銀行サービスを準備しているという話をしましたが、先月ついにLINE初のオンライン銀行サービスである「LINE BK」がタイでオープンしました。振り込みから口座開設、決済、ローン、デビットカードの申請まで、すべて簡単にLINE上で行えるようになって、今まさにたくさんのタイの人たちが使い始めています。日本、台湾、インドネシアでも今開発している最中です。オンライン上でのより便利な体験を楽しみにしていてください。

政府や自治体のLINE利用例

政府や自治体でも、LINEのテクノロジーの活用を進めています。日本では4月に、渋谷区のLINE公式アカウントで住民票などのオンライン申請が可能になりました。渋谷区に住んでいる方は、LINEのチャットボットで質問に答えるだけで申請が簡単にできますし、手数料もLINE Payから支払うことができます。日本の自治体では初めてeKYCを活用されていて、そこにはLINE CLOVAの顔認証技術が活用されています。

みなさん、マスクが非常に手に入りにくい時期がありましたよね。台湾では、政府機関のLINE公式アカウントの利用者が、NHIのオープンデータを活用して、LINE上で提供しているマスクマップの中で、近い薬局のマスクの在庫状況表を確認できるようになりました。

他にも、日本や台湾の政府機関で、LINEのチャットボットが国民の健康状態を遠隔で確認できるようになっています。ここまで紹介したヘルスケアや金融、公共サービスはデジタル化するハードルが一番高い領域だと思っています。LINEはこういった領域でのデジタルトランスフォーメーションも、一歩一歩しっかりと進めています。

ビデオ通話のための「VoIPプラットフォーム」

このように、環境の変化で生まれたさまざまなニーズに合わせて、素早く対応しようとこの1年は取り組んできました。環境の急変にもLINEがこのようにスピーディーに対応できた理由は、もちろんユーザーニーズに早く応えようというLINEのエンジニアの思いによるものもありますが、LINEサービス開発の基盤となっているプラットフォームを粘り強くアップデートしてきたからでもあります。

LINEのプラットフォームのおかげで、いろいろなサービスが早く立ち上がり、LINEのOPEN APIプラットフォームのおかげで、みなさんとのやり取りがスムーズにできたと思っています。ここからは、このいくつかのプラットフォームの中で、最近1年の取り組みについて簡単にお話しします。

まず、最近一番利用されているビデオ通話のための「VoIPプラットフォーム」について簡単に話しましょう。冒頭でも話したように、5月まで約235%の利用が増え、ピークタイムでは通常より約16倍のトラフィックを記録しました。

この16倍というトラフィックは東京のデータセンターのネットワーク上限値に達するようなトラフィックでした。この状況を乗り切るために、性能や仕様がまったく異なる設備を入れた場合でも、その性能が最大化できるようなロードバランシングを提供し、近くのリージョンにあるデータセンターを利用するだけではなく、ネットワーク状況によって、いろいろなリージョンのデータセンターをダイナミックに分散して利用できるよう、いろいろな機能を実装しました。

多様なビジネスニーズをサポートするために、これまでにPaaS系のプラットフォームを準備してきたことで、今回のような医療、教育、金融などでのサービス提供が早くできたと思っています。

ビデオ音声通話だけではなく、画像や動画などのメディアコンテンツのプラットフォームも強化しました。これまでにも、メディアデータをより安定的に高速に転送し、保存するための技術を絶え間なく開発し続けていました。分散ストレージ技術を積極的に活用して、ユーザーがより早くメディアコンテンツを利用できるようにしながら、合わせて災害対策のシステムを構築していたおかげで、このようなトラフィックの増加にも無事に対応できるようになりました。

Antmanプロジェクト

また、増える一方のビデオコンテンツの容量を効率的に保存するために、さまざまなプロジェクトが進んでいました。その中のAntmanというプロジェクトは、ユーザーの環境に合わせて画像のフォーマットを自動的に交換して保持する、そのようなプロジェクトです。

これによって、ユーザーがメディアコンテンツをダウンロードするときに必要なデータ容量を削減できるようになり、メディア・コンテンツを保持するためのストレージ容量も約50パーセント削減できるようになりました。

LINEにとっても、コスト面で本当にいいプロジェクトでしたが、モバイル端末の容量制限でいつも悩んでいるユーザーのみなさんにとっても、本当にいいプロジェクトではないでしょうか?

LINEは、エンジニアが担当システムやプラットフォームのアップデートなど、必要な技術プロジェクトを自ら立ち上げて進める、そういうような文化があります。このAntmanプロジェクトも、そのような流れで自発的に始まり、ずっと取り組んできたプロジェクトの1つです。

次にデータプラットフォームについてお話ししたいと思います。たくさんのLINEのデータエンジニアがユーザーによりよいサービスを提供するため、いろいろな分野のデータを積極的に利用していますが、それをサポートするために、内部でどのようなデータプラットフォームがあるのか。また何が今進んでいるのかなどについて、担当の池邉より具体的にお話ししたいと思います。

そのあとで、今年一番大きな変更があったBlockchainプラットフォームについても共有します。

それではデータプラットフォームについて、池邉さんよろしくお願いいたします。

LINEのデータプラットフォーム「IU」

池邉智洋氏(以下、池邉):LINEの池邉です。データ専門組織であるData Science and Engineeringセンター内のData Labsの責任者をしています。私からはLINEのデータ、そしてデータを活用したAI領域についてのお話ししたいと思います。

さて、改めてになるのですが、こちらがLINEの月間のアクティブユーザー数です。日本、台湾、タイ、インドネシアを合わせて、1億6,700万の月間アクティブユーザーがいます。これだけのユーザーが、日々メッセージや画像、動画などのやり取りをしています。またメッセンジャー機能だけではなく、例えばLINE NEWSにおいても、月間175億ほどのPVがあります。

繰り返しになりますが、今年は生活様式の変化もあり、これらの数字は更に伸びました。その結果、日々非常に多くのログデータが生成されています。(スライドを指して)こちらが、そのデータをどのように蓄積し、サービスの改善に役立てていくのか、それを表した図になっています。ユーザーの日々の行動により、ログデータが生成され、それらのデータを分析、機械学習の学習データとすることで、また新たなサービスの開発や改善につながります。

LINEが非常に大事にしている価値観、LINE STYLEにもAlways Data-drivenという言葉があります。LINEにおいて、データの活用というのは非常に大切なことです。またLINEでは、データの民主化を意識しており、各エンジニアがデータを活用したいと思ったときに、安全かつ便利に自分自身でデータにアクセスする手段を設けています。

そのためのデータプラットフォームを、私たちはInformation Universe、略してIUと呼んで開発・運用しています。あらゆるデータを1ヶ所にまとめることで、データガバナンスも効かせやすく、エンジニアにとって安全に簡単にデータを使える環境を目指しています。

現在のIUの規模感をこちらに紹介しています。270ペタバイト以上の大規模なストレージを保有しており、日々7,000億レコードものデータが増加しています。

LINEの共通機械学習基盤「MLU」

さて、1ヶ所に集めることでデータは利用しやすくなりました。次に集めたデータで機械学習を行うことを考えてみましょう。

LINEにおいて、機械学習を利用するエンジニアはDataLabs内の専門組織だけではありません。各チームが、機械学習を利用する環境を個別に用意するのは、非効率的です。そのため私たちは、エンジニアたちが容易に利用できる共通の機械学習基盤を構築することにしました。この環境に私たちはMachine Learning Universe、略してMLUという名前を付けました。

MLUは、機械学習関連の開発を行うためのノートブック、各種特徴量データへのアクセスを容易にするカタログからなるポータル、並列環境でのコーディングを容易にするライブラリ群、学習を行うGPUクラスタ、またサービスで利用するためのデプロイ、Servingプラットフォームなどから構成されています。このプロジェクトは、グローバルなMLエンジニアが、リモート環境でコラボレーションしながら現在進めています。

LINEのAI技術「LINE CLOVA」

さてここまでで、LINEのエンジニアが使うプラットフォームについてお話ししてきました。ここからは私たちがみなさまに向けて提供するプラットフォームについてお話しします。LINEでは、開発者や事業者のみなさまがLINEを使ってユーザーとつながるプラットフォームを数多く提供してきました。

2016年のLINE DEVELOPER DAYで発表したLINEでチャットボットを作成するための「Messaging API」。このMessaging APIは非常に多く使われていて、現在60万ものチャットボットが日々LINE上でユーザーとやり取りをしています。単純なチャットボットだけではなく、チャットと連動したWebサービスを作成するLIFF、既存のWebサービスにLINEログインを導入し、よりLINEと密接に連携するような例も増えてきました。

先ほどイビンより紹介した「LINEミニアプリ」。これは今年(2020年)新しく提供を開始したものです。今年は更に私たちのAI技術をみなさまに活用していただくため、「LINE CLOVA」、ブロックチェーン技術を提供する「LINE Blockchain」。そして法人向けサービスにおいてLINE APIと接続可能なアプリを提供できる「LINEマーケットプレイス」の提供も始めました。

ではまずLINE CLOVAについてお話しします。まずはじめに技術からちょっと離れますが、いったんブランドのお話を少しさせてください。これまでLINEにおけるAI関連のプロダクトとして、B to B向けのAIサービスである「LINE BRAIN」、AIスピーカーなどを提供している「LINE Clova」、この2つのブランドが存在していました。

今回これら2つをLINE CLOVAというブランドに再定義しました。そしてこのLINE CLOVAのブランドのもと、LINEがこれまでに培ってきたさまざまな技術を企業に提供していきます。LINE CLOVAで提供するサービスは、多岐に渡る領域での研究開発によって支えられていますが、ここで特に重要な3つの要素技術について紹介します。

まずは音声認識技術。現在音声認識技術にディープラーニングにおけるE2Eモデルの導入を試みています。これにより長時間の音声認識を実現し、例えば長時間の議事録の書き起こしなどが可能になります。

次に自然言語処理。LINEは多くのサービスを運営しており、例えばブログなどの情報を学習データとして利用できます。また独自の汎用言語モデルを開発し、日本語・韓国語における処理精度は世界最高水準に到達できると考えています。そしてOCRです。私たちのOCR技術は2019年にICDARという国際会議において4部門で世界No.1を獲得しました。

その精度をさらに高めつつ、読み取るものを事前に設定することなく自動で解析・認識できる特定帳票分野への開発を強化しています。例えばレシートの読み取りなどでは、商品名や金額などを自動で分類できるようになるということです。

要素技術にしては、プロダクトの開発のみならず、アカデミアでの活動も積極的に行っています。ICASSPやInterspeechなど、音声領域でのトップレベルの会議を始め、複数の国際会議に論文が採択されています。

LINE CLOVAの製品ラインナップとしては、要素技術自体をみなさまにお使いいただける「CLOVA Voice」「CLOVA Speech」などのプロダクト。要素技術を使用して世の中の課題を解決していくソリューション型のサービスとして、電話での受け答えをAIで行う「LINE AiCall」。またセキュアで精度の高い本人確認を行う「LINE eKYC」などを提供しています。

LINEでは、人の負担を減らす、人に優しいAIによって、生活やビジネスに潜む煩わしさを解消し、AIが生活やビジネスの一部となるという、これからの当たり前を創出することを目指しています。そのためにも、解決すべき技術的課題はまだまだ多く、積極的な人材、研究開発への投資を通じ、更なる輪をみなさまに与えていきたいと思っています。

私たちが目指すAIの未来に共感いただける方は、ぜひ私たちのプラットフォームに参加してください。

LINE Blockchainプラットフォーム

さて、ここまで私たちがみなさまに提供するAIプラットフォームについてお話ししてきました。最後にもう1つ。今年からみなさまに提供する「LINE Blockchainプラットフォーム」についてお話しします。

ブロックチェーン技術は信頼を重視するLINEにとってなくてはならない技術と考えており、何年も前からブロックチェーン技術を研究し続けていました。そして今年プラットフォームとしてみなさまに提供できるようになりました。LINE Blockchainプラットフォームについては、担当のソクホよりお話しいたします。ソクホさん、よろしくお願いします。

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