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Mercari のグローバルプロダクトへの挑戦(全2記事)

2020.12.23

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鈴木健×山田進太郎「なにかを足したら、なにかを引け」 メルカリが考えるグローバルなプロダクトに大切なこと

提供:スマートニュース株式会社

SmartNews Online Meetup#14は「日本発グローバルプロダクトの挑戦」がテーマです。SmartNews CEOの鈴木氏とメルカリCEOの山田氏の2人が、後半はメルカリの誕生から、メルカリ・スマートニュースの今後について話しました。

アメリカの民主主義を感じた1週間

鈴木:2016年に、先ほど説明した大統領選挙のロードトリップに1週間行ったんだけれど、実はそのときの旅の友が山田進太郎でして。一緒に回ったよね。1週間ね。

山田:これはものすごく印象的で、忘れられない旅行の1つですよね。先ほど健さんも言っていましたけど、どっちの候補も話を聞くっていうので、当然トランプの話も聞いたし。もしかしたら当選するかもみたいに言われていましたけど、そうは言っても、みたいな雰囲気があって。だけれども、なんかあれあれ? みたいな感じになっていったのと。あと最終日ですよね。僕らヒラリーのビクトリーパーティーに……。

鈴木:そうそう。勝利宣言をする会場が用意されていてね。

山田:そこに行ったんですが、開票サイトみたいなところで開票結果がどんどん出てきて、どんどん不利になっていくみたいな。

鈴木:周りのヒラリー支持者の人たちの顔が、最初は開票ごとにバンザーイという感じだったのが、だんだん暗くなっていって。最後のほうは、みんな泣き出しちゃってね。

山田:そうね。歌い出したりとかして。寒い日でね。けっこう。ニューヨークのど真ん中だったけど。本当にあれで世界が変わる瞬間を目の当たりにしたことは、健さんに感謝しきれないですね。

鈴木:実際に行ってみると感じることっていっぱいあって。この写真もその中の1つで、Fayettevilleというノースカロライナの街なんですが、公民権運動ですごく重要な街で、シットインという公民権運動のときに、かなり重要な運動をした大学生たちがいて。

そこの大学でオバマが講演するというね。そういうところで強烈だったんだけど。本当に黒人の方ばっかりだったと思う、アジア人僕らだけだったし。逆にトランプさんの会場に行ったときにはほとんどが白人で、僕らだけがアジア人みたいな感じだったよね。

山田:そうですね。トランプは飛行機で来るんですよね。ハンガーという飛行機の倉庫のところに人が集まって、彼がウワーッと飛行機で着陸して、ウワーッと出てきて演説してみたいな。終わったらスパッと去っていくみたいな。

鈴木:プライベートジェットでそのまま行くっていうね。

山田:たぶん、1日に5ヶ所とか6ヶ所とかやってね。ものすごく印象的だったし。本当に健さんが言うように、いろいろな人たちがいろいろな地域にいて、でもやっぱり純粋に自分たちはこういうふうにしてほしいという、ある意味心の声みたいなのを、それぞれの支持者に乗せて応援しているというか。

ある意味すごく健全と言えば健全というか。民主主義って、もともとこういうことなんだなっていう。日本だと、こういうのぜんぜんないじゃないですか。だからすごくおもしろかったです。興味深いっていうか。おもしろいっていうか。

鈴木:まさにアメリカの民主主義を感じた1週間でしたよね。

山田:そうそう。

鈴木:ある種歴史的なイベントだったと思うんだけど。

アメリカでは、とにかくSelling、売るアプリだというコンセプトを出していった

鈴木:今度は日が飛んで2018年になるんですけれども。ジョン・ラーゲリンに入ってきてもらって最初にやったことが、リブランディングですよね。今までは、メルカリというアイコンとかロゴとかも日米で同じだったのですが、アメリカ独自のブランディングでいこうとリブランディングしたと。

そのときに打ち出したのが「The Selling App」っていうコンセプトだったわけですね。売るためのアプリである、というコンセプトをアメリカで打ち出して、リブランディングしたと記憶しているんですけど。このへんは、どういった経緯とか考えでこういうリブランディングしたんですか?

山田:ジョンは本当に古くからの友人で、USに行くと、定期的にご飯とか食べて。彼は当時はFacebookでVPをやっていて、中心人物の1人というか、アメリカでビジネスをするということをすごくわかっている人間だったので。この1年くらい前かな、僕がUSのCEOをやるということを決めたときに、やっぱりジョンみたいな人と一緒にやりたいなと思って、彼をリクルーティングしたんですよね。

一緒に仕事をしてみると、本当にジョン自体のリーダーシップがすばらしくて、僕がやるよりも彼がCEOをやったほうがいいだろうということで、数ヶ月で正式なCEOになりました。僕はそのときに、なにをやってもいいですよと。極端な話、名前すら変えてもいいですという話もして。

彼はまずライトパーソンというか、いい人を採っていき、CMO、Chief Marketing OfficerもGoogleから連れてきました。彼とジョンがいろいろなことを考えて、どういうコンセプトでいくのか、どういうデザインでいくのか、名前は変えるべきなのか。いろいろなことを考えてもらって出てきたのが、こういったリブランディングのプロジェクトです。

やっぱりデザイン自体は日本のデザインではなくて、アメリカで一番受け入れられるであろうアイデアにしようと。いろいろな意見も当然あるとは思うのですが、その1つとして、赤はけっこうアラートみたいなイメージがありました。

アメリカの主要な、とくにセキュアな銀行とかそういうサービスもそうですが、意外にcalmな色というか、青が多かったりするんですよね。それだけじゃないんですが、例えばそういう話があったりとか。

あとコンセプトを伝えるときに、メルカリは売ることもできるし買うこともできますよ、個人が簡単に売り買いするアプリですよということではあるんだけれども。買うのはある種もういろいろなところでできるわけですよね。AmazonだろうがeBayだろうができるので。

ただ売ることを考えたときに、なかなかいいサービス、しかもアプリはなくて。もちろんeBayは個人間から始まったサービスなんですが、このくらいの時代まで経つと、ほとんどパワーセラーと言われるような、もはや個人ではない人たちが物を売る場として使われていて。

なかなか個人がパッと売るところに入りこめていないので。我々のアプリはとにかくSelling、売るアプリなんですというコンセプトを出していった感じですかね。

売る体験って本当にワクワクする

鈴木:日本版のメルカリも、初期のときに出品するとすぐ売れるみたいなところがかなり強かった感じがします。そこの売るほうの気持ちをちゃんと考えて、買うほうだけではなくて売るほうの気持ちを考えてやっていこうという思いが、US版のほうのタグラインにも出ている気がしますね。

山田:そうですね。結局やっぱり物を売るって、100年前200年前とかの昔はけっこう個人が物を売ることをしていて、今でも例えばインドとかに行ったら、道で電車の脇からお茶を売ってくる人とかけっこういるわけじゃないですか。売る体験って、日本だとここ何十年か失われている体験になってきているんですよね。

鈴木:けっこう楽しいんだよね、売るのって。コミケで売り子をやったことがあるけど、楽しいんだよね。

山田:そうですね。僕もリアルなフリーマーケットを学生のときの友だちとやったりとか、コミケは僕はないけれど、売る体験って本当にワクワクするものというのがあって。それを提供できていることが、Stickinessにすごくつながっていた部分があると思うので、まずはそこを体験してもらうのが、日本でもアメリカでも重要なところになっていますよね。

メルカリはまだまだ伸ばしていける

鈴木:ありがとうございます。あと5つくらい質問があるので、ここからはサクサクといければなと思うんだけど。

US、アメリカのメルカリはGMV、月間GMV(流通総額)を1億ドルというのを大事なマイルストーンとして掲げて、資本市場ともそういう対話をしたと思うのですが、そういった中で、実は先週の決算で公約達成。しかも何だこの急激な伸びは! というような前クオーター比でものすごい成長率です。GMV1億ドルを達成しました。これはメルカリUSにとっても、すごく大事なマイルストーンだと思いますけど。今はどんな思いですか?

山田:そういう意味で言うと、去年も株式市場に言ってきたのは2年前に上場したときからだし、1年前にも決算で、今年の方針は勝負の年ということで投資をしていますっていう話をしていました。

ジョンも入ってきてからだと3年くらいですが、いろいろなプロダクトを改善して、ユニットエコノミクスもすごく改善してきたし、使い勝手もよくなってきたところがまず前提としてあります。

去年の終わりくらいから、わりとマーケティングにかなり力を入れていて、オンラインだけじゃなくて、テレビを含めたオフラインのところも始めて、認知度を1~3月のクオーターでかなり引き上げたところがあったんですよね。

そこにCOVID-19の話が出てきて、ある意味既存のお客様もすごく戻ってきたし、新規のお客様もすごく入ってきて、達成できたんですけど。もちろんCOVID-19の影響も大きかったと思いますけど、投資をするって言って、それがある意味実った意味ではすごくいい年になったかなというふうには思っています。

じゃあ一過性なのかっていうと、日米両方なんですけどそういう感じもしなくて、より認められたというか。こういったものはあったほうがいいよねっていうような、これはどちらかと言うとCOVID-19とかも出てきて、世の中の雰囲気が、循環型社会ってすごく重要だよねみたいな流れもあったりします。

こういったサービスは、もっとみんな使っていこうという思いもすごく期待感としてはあるなぁと思っていて、まだまだ伸ばしていけるなと思っていますね。

鈴木:1つ重要なマイルストーンではあるし、すごくすばらしいけど、まだまだきっとUSでメルカリは成長するんだなっていうのを、僕も確信をもっていますので。ぜひ一緒にがんばっていければなと思います。

USメルカリの最大のヒット機能

鈴木:結局その秘訣は何だったのか? USメルカリの最大のヒット機能は何なのか? っていう質問なんですけど、どうですか?

山田:これね~、やっぱりなにか1つっていう感じではないというのが答えになっちゃうんですよね。

鈴木:じゃあ3つ挙げてもいいけど(笑)。

山田:あはは(笑)。けっこう大きかったのが、さっきもお話したようないろいろなことをやってきた前提で言うと、すごく効果があったのは、価格のサジェストとかかなとは思っています。出品するときって、値段がわからないんですよね。

鈴木:たしかに。

山田:日米両方なんですが、そこでやめちゃう人が一定数いるので、これくらいで売れるんじゃないですかというのをマシンラーニングをもとに出してあげるんですよね。そういう売るところに対してのフリクションというか、障害を取り除いてあげることが出品開始してから完了するまでの率を明確に上げています。

あとサジェストすることによって、とんでもない値段、例えば50ドルで売るべきものを100ドルで出しちゃって売れない! みたいな。そういうことも防げるので、これは最大のヒットと言ってもいいんじゃないかなとは思うんですよね。

鈴木:なるほどね~。まさにSellingというか、売るところの障壁をいかに取り除くかがポイントだったんだね。わかりました。

なにかを足したら、なにかを引け

鈴木:次なんですが、これはメルカリからうちに来てくれた、たいろーさん(森山大朗氏)が書いていたツイートをコピペしたんですが(笑)。これけっこういい話で、「なにかを足したら、なにかを引け」というふうに進太郎が言っていたっていう話なんですが。

たいろーさん、書いちゃっていいのか僕は知らないのですが、機能が豊富じゃダメだと。メッセージ機能を入れるときに、チャット機能は残してコメント機能は廃止するみたいなことを言った、と言っていたんですけど、これは本当なの?

山田:これは本当と言えば本当なんですが、一応、僕はこうしろとは言わないので。あくまでシンプルにしてほしい、こういうふうに思いますって言ったのはよく覚えていますが、最終的に決めたのは僕じゃないと思います。

でもやっぱりどんどん物事って複雑になっていっちゃいますよね。エントロピーの法則みたいな話があって。常になにかやるんだったら、なにかをやめないととは思っています。これは経営でもそうですし。広げていくとお客様自体も「何すればいいんだっけ? ここで?」となっちゃうので。これは非常に重要な概念だなとは思いますけどね。重視していることですね。

鈴木:僕も一緒に仕事していたことがあるのですが、進太郎のコミュニケーションの仕方って、決めるのは最終的にはその人だけど、僕だったらこうするよということは伝えるみたいな。そういう感じだったのかなって。

山田:そうですね。

鈴木:今躍進中のメルカリUS事業ですが、メルカリでUS事業に貢献するにはどんな働き方があるのでしょうか?

山田:USに就職するのが一番早いんですが、日本にも社内でUS@Tokyoと言っているUSのチームがあります。そこのチームに入るのが、メルカリにおいては一番ダイレクトなプロダクトチームに入る方法ですね。

もう1つは、そうは言っても日米で共通化している基盤の部分もあるので、そっち側の、どうデータを取るとか、どうデータを活用するかみたいな、AIとかも含めて、というのが1つ、どっちに導入されても結果がよければ……日本でよければUSでも導入みたいにはなっていくので。そういう意味では、けっこう幅広く関われるのかなと思います。

なので、スマートニュースさんは、ひとつのグローバル版プロダクトみたいなかたちでやっていますが、メルカリはそういう意味で言うと、ある意味ゆるやかな連携というようなかたちでやっています。日本のことをやっている人とか、うちだとメルペイのこととかをやっている人もいます。ここは大きな違いかもしれないですね。

鈴木:ありがとうございます。たっぷりと進太郎からメルカリ、その前から含めてのグローバルチャレンジの歴史と今後について話が聞けたんじゃないかなと思います。進太郎、どうもありがとうございました。

山田:ありがとうございます。

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