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入札情報サービスNJSS対談 星知也様×吉田雄人様(全1記事)

2020.09.15

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コロナ禍に苦しむ企業と地方の意外な活路? 官民連携の視点で読み解く「入札市場」の舞台裏

提供:株式会社うるる

新型コロナウイルスによって国内外にさまざまな経済的な影響が出てきている中、むしろこれから活況になると見込まれているのが、国や自治体の仕事を請け負う入札市場です。景気対策の一環として予算が投じられることもあり、幅広い業種・業界にチャンスがあります。今回は、元横須賀市長として行政に関わったのち、現在は官民の連携による地域課題の解決を目指すGlocal Government Relationz株式会社代表取締役の吉田雄人氏と、入札情報サービス「NJSS(エヌジェス)」を展開する株式会社うるる代表取締役の星知也氏による対談をお届けします。年間22兆円のマーケットで勝つためのノウハウや、官民双方の視点で入札市場のあるべき姿について意見を交わしました。

経済がダメージを受けると、公共事業は増加する

——新型コロナウイルスによって、さまざまな業界が大きな経済的ダメージを受けている状況ですが、入札市場にはどんな影響があるのでしょうか? 

星知也氏(以下、星):まだまだ予想というかたちではあるんですけれども、経済がダメージを受けると、やはり公共事業は増える傾向にあるんです。例えば、2011年に東日本大震災が起こってから、それまで20兆円だった入札市場の年間発注金額が22兆円になりました。だいたい10パーセントくらい増えています。いわゆるニューディール政策的なかたちで、公共からのお仕事は増えてきているんですね。

今回の新型コロナウイルスでどれぐらい増えるかは、まだデータが出ていないのですが、予算も数兆円単位でついておりますので、おそらくこれから民間企業への仕事は増えてくるだろうと。

ただ、とにかく早くやらなければならない仕事は、煩雑な手続きを省くために、随意契約(注:入札を行わずに特定の企業と契約する方式)で予算が使われてきています。

落ち着いてきてからだと思うんですけれども、これから一般競争入札(注:不特定多数の企業の中から、最も有利な条件を提示した企業を契約の相手とする契約方式で、入札案件で一番多く割合を占めるもの)の仕事が出てくると思います。

吉田雄人氏(以下、吉田):そうですね。やはり公共事業で経済を刺激することは、昔ながらの手法とは言え、一定の効果があるのでよく実施されています。

特に今、自治体には地方創生の臨時交付金が第1次と第2次を合わせて3兆円出ています。地方自治体は、これをベースに「どうやってお金を使おうか」と考えているところで、その際には必ずと言っていいほど、入札というプロセスを経てきますね。行政が案件を増やす可能性は高いだろうと思います。

民間企業側の視点で考えると、経済が厳しい時こそ、とても手堅い商売相手であることは間違いないんですね。入金されるまでに少し時間がかかるというデメリットはありますけれども、一度契約をしてきちんと仕事をしていれば、景気が悪化している時でも、必ず支払いをしてくれる相手なんです。

そういった意味で、入札市場がネガティブなイメージばかりではないということを、一旦考えてみる必要はあるんじゃないかなと思いますね。

1案件あたり平均1,000万円の仕事が発注されている

―—実際のところ、入札案件の現状はどうなんでしょうか? 「誤解されがちだけど実は違う」というところがあれば、教えてください。

:入札というと、まだまだ「建設工事でしょう?」とか「大手しかできないよね」というイメージを持たれている方も多いんです。入札案件は「建設工事」と「物品・役務」の2種類あるんですが、建設工事は4割くらいで、それ以外の物品・役務が6割を占めます。半分以上は建設工事以外の仕事なんですね。

マーケットとしても、国や自治体から民間企業に年間22兆円もの仕事が発注されています。これは我々のデータですけれども、入札に参加して落札している企業は40万社ぐらいあるんですよ。

世の中に会社は400万社くらいありますから、入札に参加しているのは10分の1程度です。今、年間だいたい200万案件ぐらい発注されているので、単純に22兆円を200万案件で割ると1,000万円ちょっと。平均で1案件あたり1,000万円という額になります。

よくオリンピックに例えるんですけれども、競技場を造るのは建設工事なんですよ。ただ、広告会社がよく落札するような「開会式を企画してください」というものや、ボランティアの方向けのジャンパーやお弁当を作る仕事なども出てきます。そうすると、服飾やお弁当の会社も参加できます。

大きな1つのイベントの中にも、複数の入札案件が入ってくるので、業種・業界・規模にかかわらず、ありとあらゆる会社が参加できるような仕事が発注されているんです。

また、最近は中小企業庁が中心になって、中小企業も平等に入札に参加できるような仕組みづくりに取り組んでいるので、中小企業の参加が増えてきているんじゃないかなと思っています。

新規参入の企業でも、2年以内に8割が落札に成功

:ただ、まだまだ「入札ってなんぞや」という方も少なくないので、入札についてイチから紹介する冊子を作りました。マーケットのことやランク分け、資格の部分や、データをもとにした落札率を上げるコツなどをご紹介しています。

ほかにもお客様のリアルな声を紹介しています。例えば、家族経営のお惣菜屋さんが、NJSS(入札情報サービス)を導入して3ヶ月後に3,000万円の落札が決まって、「1年間分の売り上げがもう立った」という事例もあります。こういったポジティブな事例もたくさん掲載させていただいています。

今、この冊子の第2バージョンを作っているのですが、マンガでわかる『入札の真実』や、おもしろ案件を載せています。戦闘機とかロケット、おにぎり5万個だったり。「こういう案件もあるんだ」というユニークなものを集めた冊子になります。

吉田:この冊子を見ればもう入札に参加できるという感じなんですね。

――新たに入札を始める企業は、だいたいどれぐらいの期間で落札できるんでしょうか?

:私たちが調査したデータでは、資格を取って入札に参加した会社のうち、1年目で落札実績を出す会社の割合は50パーセントです。2年目までに実績を出す会社は約80パーセントなんですね。入札に参加して1ヶ月で結果が出るかと言ったら、そういうところはやはりまれですが、2年間取り組めば8割の企業が落札実績を出せるというマーケットになっていますね。

吉田:すごいですね。でもね、要はやればできるってことですよね。

:そうなんですよ。だから「みんなやればいいのに」と本当に思うんですけどね(笑)。

「永遠の課題」と言われる入札制度改革

吉田:(笑)。でも本当に、自社のサービスやプロダクトが自治体の課題解決につながることに気づいていない民間企業の方もいますからね。これはすごくもったいないことなんです。地域の課題解決を前に進めるためには、やっぱりどうしても民間の力が必要です。

あとは、自治体側にもできることがあるんだという話です。いわゆる建設工事の案件だと、紙で積み上げた書類や写真が高さ50センチくらいになることもあるんですが、これは必要なデータだとしても、紙で出してもらうんじゃなく、少なくともすべてデジタル化することは自治体側でもできることだと思うんですよね。

自治体にも国の会計検査が入るので、「書類が多い」と言われるのは、どうしようもないところもあるんですけれども、書類の書き方の工夫などは、行政でも多少はお手伝いできる範囲があると思うんです。その辺を民間企業のことを考えてやっていくとか、役所側の姿勢で変えられるものもけっこうたくさんあると思いますね。

——行政側の視点で、今後何か改善できるポイントはあるのでしょうか?

吉田:常にムーブメントはあるんですが、なかなか本流にはたどり着かなくて。入札制度改革というのは、永遠の課題と言われるんですね。例えば、自治体はできるだけ地元にお金を落としたいと思うわけです。なぜなら、それで地域経済が回るから。

でも、入札の大原則としては、どうしても「公平性・透明性・競争性」の3つが求められるわけです。できるだけ安く、できるだけいいものをということになると、地域にだけ落とすわけにもいかなくて、「いやいや、東京の業者を入れたほうがもっと安くなるじゃないか」という話になってしまう。そのシーソーゲームの中で入札制度が語られてしまったりですね。

例外的に入札というプロセスを経ないで契約できることもあって、こうしたものがもっと増えれば、自治体の仕事はもっとスムーズになると思うんですが、ある意味、先ほどの「公平性・透明性・競争性」が邪魔をすることにもなってしまう。

他の町でやっていない取り組みが価値になる

:入札という仕組み自体は、日本に限らず世界中で用いられていて、部分的に見るとまだまだ改善点もあるものの、総合的に考えると、やっぱりこれ以上バランスのとれた仕組みはないなというところに行き着きますよね。

ただ入札の発注や実行といった官公庁側の負担も、今の時代にはもう合わない気がするので、DX化がもっと進まないと行政側も大変だなと思います。

吉田:本当ですね(笑)。説明責任という言葉に収れんしてしまうんですけど、行政の担当者も「なぜその業者と仕事をするのか?」という説明をするときに、「入札で決まりましたから」というのが一番楽なんですよね。

一方で、海外では入札を経ずに契約する競争交渉方式(注:入札から落札者決定までの間に複数の受注候補者と並行的に交渉を行い、その中から最も良い提案を採用し、ベストバリューを追求する方式)も出てきています。

より柔軟な課題解決ができるように、入札以外の選択肢もある世の中にしていきたいとは思いますが、現状の入札に関わる手間をどう減らしていくかは、民間企業側も自治体側もまずは考えなければいけないところだと思っていますね。

:そこはぜんぜん改善の余地はありますよね。

――入札情報がオープン化することで、自治体側の効率化のヒントにつながることはあるんでしょうか?

吉田:私から答えさせてもらうと、間違いなくあると思います。ただ、情報の種類や価値が、企業側と自治体側では少し違ってくると思うんですね。

NJSSはどちらにとっても価値があるものを提供できるとは思うんですが、外部の私から見て、企業にとってはどの案件にどんな競合他社が入っているか、いくらで落札されているかが分かるので、ある種マーケティング的なかたちで、入札結果の情報を活用できる。そうすると経営判断として、いくらの利益を加味しながら入札に対応できるかが分かりますよね。

自治体にとっては、仕様書を作る手間が本当に大変なので、よその自治体で同じような案件が公開されていれば、それをちょっと融通してもらったり、真似させてもらいながら、自分たちの自治体の発注書の仕様書に取り入れることで手間が省けると思います。

また、他の町がやっていないようなことに取り組むことが、逆に価値になってくるような時代なので、NJSSさんのデータベースを探して「あ、これやってないからがんばろうぜ」という気持ちになれたりとか(笑)。

情報を共有することで、課題解決のための選択肢が広がる

:まさに吉田さんが言われたとおり、自治体さん同士でも情報交換をされているでしょうし、自分の町に必要なサービスは、隣の町でも同じように必要だったりしますよね。

例えば少子高齢化や社会福祉などは、日本全国のどの自治体も同じような悩みを抱えているわけです。今はそれらをバラバラにやっていたり、たまたまつながりのある自治体さんと情報交換をしていると思います。

でも、NJSSでは入札に関するありとあらゆる情報を収集していますから、例えば少子高齢化に対しては、どの町がどういう事業をやっているのかが全部わかるんですよ。つながりがあるところからしか得られない情報ではなく、すべてオープンになった情報を一括検索して収集できますから。

NJSSのようなデータベースを活用することで、その自治体の選択肢がすごく広がるはずなので、自治体さんに活用してもらうために今は無料で提供している状況ですね。

僕らはNJSSのサービスを提供して13年になりますが、基本的に13年間分のデータをもう押さえているわけです。国も自治体さんも、早いところは2週間くらいで消してしまうので、この情報はあとから得ようと思っても得られないんです。

過去に遡って情報を集めることができないので、この情報は僕らのサービスの一つの価値でもありますね。

吉田:すごいですね。

――ネガティブな入札案件はよくニュースになりますが、人々の役に立っていたり、暮らしを良くしてくれていることは伝わりにくいと感じています。NJSSさんで好事例を広めていくといったことは考えておられますか。

:NJSSをご利用いただいている民間企業の成功事例は掲載しているんですが、自治体向けのサービスは始まったばかりで、正式にはまだリリースもしていない状況なんです。ただ、事例がたまってきて、正式に事業化する際にはぜひ載せたいと思っていますね。

入札へのハードルを下げるうえで僕たちができることは、啓蒙活動しかないんですよね。「入札ってなんぞや?」という方々に向けたセミナーを開催したり、「入札をやっているけれども、なかなか成果が出ない」という方に成果の出し方をお伝えしています。

吉田:でも、すごく大事なことですよね。新規参入者が増えないと、どれだけ優れた制度であっても、結局は特定の人たちだけが甘い汁を吸うイメージになってしまいますので。やはり地域参入を増やす仕掛けは必要なんじゃないかなと思いますね。

情報を制する者が入札を制す

――民間企業にとって、“利益が出て落札しやすい仕事”を見つける方法はありますか?

:これはまさに、自治体側はとにかく安く発注したい。民間企業側は高く受注したい。ポジションによって真逆の発想になってしまうんですが、まずは落札しやすい案件についてご説明しますね。

誰もが知っているような文部科学省や厚生労働省、経済産業省といった機関の入札案件は、みんながチェックしています。けれども、NJSSで情報収集をしている8,000機関のうち、自治体は約1,800ヶ所で、残りの約6,000ヶ所は、名前も知らないような独立行政法人や研究機構などの国の機関なんです。

国の機関が6,000もあるということが、まず驚きなんですけれども、マイナーなところほど競争率は低いです。例えば派遣というお仕事は、本当に価格勝負なんですが、30社参加している仕事と5社しか参加していない仕事なら、競争倍率が低い方が利益にも繋がりやすくなります。競争倍率が低い仕事の情報収集が1つ大事なことですね。

あとは、先ほど吉田さんがおっしゃったような企画競争案件は、金額だけではなく、いかに付加価値をつけられるかがカギになります。例えばオリンピックの開会式などもそうだと思いますが、「こういうイベントにしますよ」「こんなコンセプトでいきますよ」と提案するものです。企画競争案件自体は全体の2パーセントですが、こういったところを狙って参加する方法もあります。

また毎年同じ時期に同じような入札案件が出ますので、「去年はどの会社がいくらで落札したのか」を知っているかどうかでも、落札率は変わりますし、自分たちが利益の出る案件だけに参加しようという計画を立てられるようになります。

入札は情報戦なので、情報を押さえて使いこなすことで、充分に利益を出すことができます。NJSSでは業界の落札の平均額なども分かるので、いくらで何件の入札に参加して、年間でどれくらいの売上が立てられるかという個別のご相談にも対応しています。

いまだに知られていない「入札の真実」

――最後に、お二人が考える入札制度のあるべき姿を、民間側と行政側の視点で教えていただけるでしょうか。

吉田:あえて極端なことを言うと、私は「本当は入札制度がなくなればいい」と思っているくらいなんです。地域課題は新しい課題が多いので、それに対応するには入札業務だけでなく、もう少し新しいかたちで民間企業と付き合えるようにならなければいけないはずなんですね。

透明性・競争性・公平性という原則に則りながら、価格だけではなくて、技術や提案内容をどれだけ評価できるか。あとは、早い段階で民間企業と一緒になって課題を考えて、事業を創り上げていけるか。

そうしたかたちで自治体側も変わっていくことが、地域のそれぞれの課題解決に繋がるんじゃないかなと思っています。自治体がデジタル化などを進めて、官民の負担を減らし、入札市場に新たな企業が参入しやすくなれば、地域経済の活性化にもつながると思います。

:今までお話ししてきたことの総括になりますけれども、私は「入札って聞いたことはあるけど……」という民間企業の方々に、入札の真実を知っていただいたうえで「やらない」のか「やる」のかを検討をしていただければ、もっと良くなると思っています。セミナーだけでなく個別相談もしていますので、ぜひ参加していただけたらなと。

自治体に関しては、僕らはせっかく大量のデータを蓄積してきているので、このデータをうまく活用して、デジタルトランスフォーメーションを進めていただきたい。そうすれば、より付加価値が高く生産性の高い業務に取り組んでいただくことが可能だと思います。

吉田:そうですね。行政側にも本当にいろいろな活用方法がありますね。

:そうなんですよ。すごく可能性があると思っています。

吉田:またその話もしましょう。

:そうですね、ぜひお願いいたします。

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