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キーノート|トランスフォーメーションの時代に(全2記事)

2020.01.22

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第4次産業革命期における“経営者の心得”ーー「ダボス・マニフェスト2020」をひも解く

提供:SEMIジャパン

2019年12月11日〜13日、東京ビックサイトにて「SEMICON Japan 2019」が開催されました。SEMICONは、世界を代表するエレクトロニクス製造サプライチェーンの国際展示会。半導体製造における最先端技術の展示や、国内外のトップエグゼクティブ、技術エキスパートによる講演などが実施され、3日間で5万人を超える来場者で賑わいました。この記事では、世界経済フォーラム日本代表の江田麻季子氏が講演したオープニングキーノート「トランスフォーメーションの時代に」の模様をお届けします。年次総会で議論されるテーマや 企業が社会に対する責任をまとめた「ダボス・マニフェスト」の意味をひも解きました。第4次産業革命や格差、地政学リスクなどが、これまでにないスピードで日々の生活に影響を及ぼす時代に、企業が果たすべき社会的責任とは?

来年で50年目を迎える年次総会(通称:ダボス会議)、「ステークホルダーがつくる持続可能な結束した世界」に込められた思い

江田麻季子氏(以下、江田):「ダボス会議だけではありませんよ」と言いましたけれども、(時間が)迫ってきておりますので、来年1月の年次総会について少しご紹介をさせていただきたいと思います。

私たちの本拠地はジュネーブにあって、「ダボスじゃないんですか?」って言われるんですけれども。ダボスは実は、チューリッヒから約3時間ぐらいかかる山奥のスキーリゾートにございます。ふだんは1万人の街に3,000人の人が押しかけて、その1週間は非常に大変なことになるわけです。

今までの様子もまとめたビデオがございますので、そちらをご覧ください。

(映像が流れる)

ということで、どうしてもビデオにすると国家元首が映りがちですけれども、主役はほとんどビジネスの方の参加者が多いです。みなさん横同士でつながって、いろんな議論がここで生まれてまいります。

来年1月の年次総会、50周年のテーマでございますけれども、「ステークホルダーがつくる持続可能で結束した世界」というタイトルでございます。英語で言うと「Stakeholders for a Cohesive and Sustainable World」ということで、持続可能な世界だけではなくて、「結束した」というのをわざわざ入れました。

ここにはやはり想いがあって、今こそみんなで協力して解決していかなきゃいけない問題が山ほどあるのに、なかなか世界が結束していない。そこをどうにかできないか、ということでこのテーマにしています。

「ダボス・マニフェスト」に掲げられた企業の在り方 すべては社会全体の利益のために

ちょっと細かいんですけれども、実はこのダボス会議、71年に会議が始まって、73年に「ダボス・マニフェスト」というシュワブ教授がまとめたものがございます。そこに企業の目的、企業はなぜあるべきかという文脈があって。

「利益というのは、経営層がクライアント、株主、従業員、そして社会に還元するための不可欠な手段なのである」「株主のためだけではなくて、社会全体にベネフィットが行き渡らなければいけない。それをするために企業はあるんだ」と。そういった(内容を記載した)「ダボス・マニフェスト」がございました。

ほぼ50年前。そこから何が変わったかというと、私たちは今、第4次産業革命の中にいる。おそらく50年前にこの宣言が出たときには、第3次産業革命。インターネットが出てきて、ここにいるみなさんが技術をどんどんと生み出して、新しい産業がつくられていった時代だと思います。

そこから50年経って今、機械がどんどんとデータを生み、コネクティビティによる産業革新が起こっていて、同時に経済構造であったり社会構造であったり、大きな変化が生まれてきています。

第4次産業革命という言葉自体おそらく、2016年にシュワブが本も出しているんですけれども、そのときにはどんどんと可能なことが増えてきて、すごく「いいことがあるよね」って盛り上がっていたと思うんです。

ただ同時に今のAIに対する、あるいはフェイシャル・レコグニション(顔認証)だったり、個人情報の話であったり、なにかネガティブなこともある。それをどうにかみんなでマネージするようなかたちにして、イノベーションを促していかないといけないんじゃないかと。そんな提唱もしています。

技術は進めるからこそ意味があると思っていますけれども、多くの方に浸透しないと取り残される人が生まれてきて、そこから分断が生まれる。それから「Winner takes all」って言いますけれども、一者だけが潤ってはいけないと考えています。できるだけ多くの人たちが潤うかたちで、そして技術の良さを取り込んでいくにはどうしたらいいか。そんな議論を進めています。

企業は株主だけでなく、全世界の人々に仕える 半世紀の時を経て、新たなマニフェストを制定

そうした中で、今までと同じように「ダボス・マニフェスト」のとおり、企業のあり方というのは私たちのスタンスは変わっていないんですが、外的要因がこの50年で大きく変わった。また今回の1月には、新しいマニフェストを出します。それを表現したビデオがございますので、そちらをまずご覧ください。

(映像が流れる)

ということで、先週2020年版の「ダボス・マニフェスト」を発表いたしました。「企業は株主だけでなく、すべてのステークホルダーに仕える」ということで、ここには時代に合わせるかたちで「公平な競争と平等な機会」「汚職を一切容認せず」「デジタルエコシステム」、それから「スキルアップ」「リスキリング」、そして「サプライチェーンを通じた人権の尊重」「データの安全かつ倫理的、有効な使用」。そういったものを付け加えております。

また、とくに日本はどうかというのはありますけれども、役員報酬ですよね。トップの方と一般社員の方との報酬の差がどんどんと吊り上がっていて、それもまたおかしなことになっていないかということ。

それからグローバル企業は、すべての国々で活動はしていなかったとしても、国境を越えて活動するということは、ステークホルダーはすべての世界であると。目に見えているコミュニティに仕えるのでは十分ではなくて、インターナショナルにオペレーションをするということは、世界の人たちが全員ステークホルダーなのではないか、ということを提唱しています。

今度のダボスでは多くのリーダーの方にご賛同いただいて、また大きなうねりにしていきたいと考えています。

ミドル世代をどうリ・スキルしていくか ダボス会議で議論される、6つの重要項目

1月の総会の重要項目として、6つ挙げています。この6つのテーマに沿ったかたちで議論が形成されていく予定です。

1つ目、「エコロジー」。クライメートアクション(気候変動対策)も今、喫緊で(行わなければいけません)。みなさんの中でもこれは本当に取り組まないと、将来の話をしても将来がないかもしれない、みたいなことになっていますけれども。バイオダイバーシティ(生物の多様性を)含め、このエコロジーの議論をしっかりやっていく。

それから世界経済フォーラムですので、「経済」ですね。長期債務の負担を取り除いて、どうやってインクルージョン、多くの人に参加してもらえる経済設計をしていくのか。

そして「テクノロジー」。第4次産業革命のテクノロジーの展開について、全員が合意を全部することは有り得ないんですけれども、ベースのところをある程度合意して、イノベーションを進め、なおかつテクノロジー戦争みたいなものをどうやって避けていくか。

次の3つのトピックは、先ほどリ・スキルの話もしましたけれども、「社会」ですね。人口はどんどん増えていきますので、私も含め、これからまだまだたぶんウン十年間と働き続けなきゃいけないミドル世代を、どうやってリ・スキルしていくか。流動性をどうやって高めていくか。多くの人たちに経済活動にどうやって参加してもらえるのか。

「地政学」。ここはジオポリティックスと言いますけれど、政治の世界にど真ん中で入っていくということではないですが、世界各地の紛争解決のためにみんなで持ち寄ってアイデアを出しあおう、ということ。ふだん起こり得ないような会話が、トップリーダー同士で起こるのではないかという期待をしています。

そして最後に「産業」。すべての産業が今、デジタル化・機械化の中で大きなインパクトを受けています。ただ産業が育たないと社会も育たないし、人々への恩恵も広がらないということで、産業別にどうやって新しいモデルを構築していくか。そういった議論は活発になるのではないかと思っています。

これは今年の1月の、ダボスでの年次総会。日本の方々の参加状況でございます。5年ぶりに安倍総理に来ていただいて、「Data Free Flow with Trust」ということで、世界に向けてですね。G20のホストでもあるということで、新しいデータフローのかたちであるとか、それからスイスも含めたクライメートアクションへの活動などをお話しいただきました。

そのほか、さまざまな各界のリーダーの方が出ていただいたんですけれども。真ん中にいる若い女性は、私たちのグローバルシェイパー(注:優れた潜在能力または実績を持ち、社会に貢献する強い意思を持つ33歳以下のメンバーで形成されるコミュニティ)、アンダー32のコミュニティの一員です。

徳島県でゼロ・ウェイスト(注:「ごみをゼロにする」ことを目標に、できるだけ廃棄物を減らそうとする活動)のコミュニティを運営している坂野(晶)さんでございます。コ・チェア(共同司会者)の1人として立派に活動をしていただきました。

さまざまなコンテンツを通して、課題や問題意識をシェア

そして最後になりましたけれども、「こういう会議は出る人もいれば出ない人もいるよね」ってよく言われます。「だからよくわかんないんだよね」というご批判もいただきます。

デジタルの時代でございますので、いろんな課題や問題意識を共有するように努めています。例えば、これはストラテジック・インテリジェンス(戦略的知性)といって、ダイナミックなトランスフォーメーションマップ(変革マップ)と呼んでいます。

真ん中にトピックを選んでいただくと、120個トピックがあって、ダイナミックなかたちで物事のつながりが見えてきます。ここには例えば「気候変動」が真ん中にあるとすると、第4次産業革命や各国の動きが連動して見えるようになっています。すべてのイシューはつながっていますので、ここをマウスでクリックすると、ほかのトピックが真ん中にやってくる。

こちらは世界中の専門家の人たちにキュレーションしていただいているんですけれども、同時にAIと機会学習で、どんどん文献とか記事が出ていますので、取り込んでいっています。ですので、非常にダイナミックなトピックになっています。これはパブリックのWebサイトで見られます。ぜひちょっと見ていただくといいかなと思います。

それから、これは典型的な報告書でございますけれども、競争力レポートであったり、おそらく来週に出るジェンダーギャップ。「日本は遅れているんだ」ということでよく使われる数字ですけれども、「遅れている・進んでいる」ではなくて、どうしたらいいのかという議論が活発になればいいなと私は思っております。こういったレポートです。

また、グローバル・リスクレポートというものがあります。これは世界の状況を考えたときに一番のリスクは何かということで、リストしていくわけですけれども。リーマンショックの直後は金融系のリスクが一番多かったんですが、最近はほとんどクライメートの関係と、それからサイバーリスクですね。それがトップに来ています。

ブログの月間訪問者数は500万人 SNSでも積極的に情報を発信

ソーシャルもけっこうがんばっていまして。先ほどお見せしたビデオもFacebookやLinkedInで、問いかけるようなビデオになっているんですけれども。1つ食糧関係のトピックの例として持ってきましたので、こちらをちょっとご覧ください。

(スライドが動かず)いかないですね。じゃあスキップして。

あとはデジタルで、「アジェンダ」というブログをやっていまして。ここは世界中で月に500万の方たちが訪れています。いろんな意見が出ていますので、参考であったりとか、問いかけに使っていただくのがいいかなと思って、少しずつ日本語訳も始めました。

それから真ん中のほうにある、青い画面ですけれども。こちらは実際の会議のようすで、パブリックになっているものの中には、ビデオで流されている会議もございます。様子をうかがっていただくと、またこれもおもしろいかなと思っています。

(スライドを指して)そして一番左側ですけれども、ここはショートなビデオでございまして、1分半とか、そういった長さのものなんですね。それが毎日数本上がっていますので、「このトピック、気にはなってたんだけど」「とか、気がつかなかったようなトピックをこんな人たちが議論してる」というものが出てますので、ぜひご購読いただくと、うれしく思います。

ということで、私の話は以上です。どうもご清聴ありがとうございました。

(会場拍手)

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