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Corporate ITの実態、これまでの「情シス」と何が違うのか?(全2記事)

2019.12.23

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情シスとCorporate IT、何が違うの? Web系巨大IT企業4社が語る、社内システムエンジニアの仕事

提供:LINE株式会社

2019年11月23日、LINE株式会社にて、LINE・ミクシィ・DMM.com・アカツキの4社が参加するCorporate ITエンジニアのためのイベント「Web系企業 Corporate IT meetup」が開催されました。Web系企業におけるCorporate ITエンジニアたちはどのように働き、どのような課題を解決しているのか? 大規模・急成長を遂げるIT企業の担当者たちが、自社での知見について語ります。パネルディスカッションでは、AnityA 代表取締役でラクスルでも活躍する中野仁氏をモデレーターに、4社の担当者たちがリアルな実情を語ります。前半パートとなる今回は、情シスとCorporate ITの違いや、Web系企業におけるCorporate ITとして働く魅力について語りました。

Corporate ITの今

中野仁氏(以下、中野):それでは後半のパネルディスカッションを始めていきたいと思います。私は中野と申します。

先に自己紹介をさせていただきます。

2019年10月からラクスルで働いていまして、その他には個人の会社もやっています。いわゆるWebサービス系の企業のCorporate IT領域の相談をを受けたり、最近はメディアのお仕事もやっています。

いわゆるCorporate IT領域を中心にやっているのですが、なぜ今日私がモデレーターで出ているのかというと、経歴としてはですね……。私、転職回数が結構多いんですよ。色々とやっていまして(笑)。

新卒のときは営業職に近くて、そのあとはSIerでエンジニアをやっていました。金融系を中心にやったあと、社内SEとして事業会社に移って、その後オーディオテクニカという会社に行ってから、Web系企業に移りました。

分野としてはアプリ、インフラ、ヘルプデスクなど、いわゆるCorporate ITのだいたい全領域をやってきました。いわゆるSI産業構造も下流から上流へと登っていった感じです。

得意とするのは、いわゆるスモールビジネスが終わって上場前くらいですね。100人、200人、300人くらいになってきて、組織をエンタープライズのかたちに仕組み化しなければいけないフェーズが得意です。

個別導入したシステムが限界です・情シスを立ち上げたいですといった状況で入ることが多いです。だいたいそういったことを4回ほどやっています。

こんな感じで、分野としては基幹系、情報系、インフラとそれぞれやってきました。

それと、一時期外資系にいたこともありまして、外資系の企業で会社のシステムのエンジニアをやっていました。外資にいた経験は大きかったです。

外資系のシステムって本当によくできてるんですよね。あれは完全に海外で勝つための仕組みなんです(笑)。とくに北米系はそうですね。あと企業の色合いとしてもブラックからホワイトまで知ってます(笑)。

情シスとCorporate ITの違い

中野:先にお話聞きたいんですが、この中でWeb系の会社にお勤めの方はどれくらいいらっしゃいますか?

(会場挙手)

わりとWebなんですね。ではWeb以外の方は?

(会場挙手)

やっぱり半分くらいはWebの方なんですね、ありがとうございます。続いて会社の大きさについてですが、300人以下の会社の方?

(会場挙手)

なるほど。では、100人以下の会社の方?

(会場挙手)

半分くらいは非Webで規模としてはスモールビジネスが多いと。では、それを踏まえて、情シスとCorporate IT、何が違くて何が同じなのかということについてお話させていただきたいと思います。

情シスと言っているのは、いわゆる非Webのシステム系の会社ですね。これは完全に独断と偏見です。私はメーカーの情シスに6年くらいいたので、そのときの感覚をもとに、Webの会社のCorporate ITとの違いを比較してみました。

技術的には、情シスは比較的レガシーシステムが多いですね。一方のコーポレートITは、会社自体も若いせいかレガシーシステムは少なめです。クラウド系のサービスを使うことに躊躇がありません。むしろオンプレは最初から選択肢に入れないみたいな人が多いです。

仕事の仕方としては、情シス系は外部に開発を外に投げることを前提としますが、Web系の会社ではサービス自体は社内で作るケースが多いので、社内に対しても内製志向は強めですね。

その他には、情シスのコミュニティはないこともないですが、あまり外部交流に積極的ではありません。外に出る人は出るんですけどね。業界にもよりますが転職もそれほど活発ではない感じです。それぞれの会社の業務要件に密結合しているというか、安定志向は強めかなと思います。

私がメーカーに入ったときに驚いたのが、チームの平均年齢の高さなんです。昔は電算室だったんだよみたいな話がでる。それこそ汎用機も何回かリプレイスしたことある。みたいなそういう世界だったのでけっこう驚きました。

一方で、Corporate ITは、外部交流はそこそこします。あとは転職もそれなりにしますね。サービスサイドのエンジニア程ではないですが。同じ業界のご近所でグルグル回っている感はありますね(笑)。

まとめると、Corporate ITは、レガシーシステムの数は少なめです。インターネットがないと呼吸ができない人たちが大量にいます。クラウド利用は大前提で、クラウドファーストについてことさら言うまでもないという感じです。比較的内製志向が高く、自分たちでやる、ないしは人が足りないので中々できないけどやりたいという意思はある感じの方が多いです。

これはラクスルの社内ITの現状です。わりとスモールビジネスからミッドビジネスまでのサービスが多いのですが、ちょうどラクスルがその規模感です。いろんな会社の話を聞いてますが、同じぐらいのフェーズのWeb企業とオーソドックスかなと思います。これからエンタープライズに向けてという感じのフェーズですね。こういったことがWebの会社の社内系システムにはすごく多いです。

最近は最近はシングルサインオンは入ってる会社さんが多いですね。

じゃあ、情シスとCorporate ITの同じところはどこかというと、基本的に守備範囲は同じです。サービスサイド以外のシステムは全部ですね。エスタブリッシュな会社だと、CIOの下にサービス系の物流や販売、場合によってはECを持ってるケースもあります。

逆にWebの場合、Corporate IT領域ってサービス以外を全部見る、みたいなこと多いです。基本的に「電気が通るもの全部」みたいな感じですね。たまに机や椅子みたいなファシリティ周りの電気通ってないだろ、みたいなものまで関知することになります。規模的に何でもやる事になりがちで電気通るものはだいたい全部見ますみたいな感じです。あとは、守備領域に対する人数はやっぱりちょっと少なめではあります。いわゆる独り情シスになりやすい。

スモールビジネスとエンタープライズでやることが違う

中野:もう1つお話ししたいのは、スモールビジネスとエンタープライズについてです。要するに、会社規模によって同じWeb系でもポイントになる話がだいぶ異なります。

スモールビジネスだとそれこそ一番最初に問題になってくるのは「ヘルプデスクをどうするか」とか、「パソコンの調達はどうするか」「セキュリティを最低限ちゃんとしないといけないよね」とか、「ネットワークをちゃんとしないとダメだね」といった、インフラ、ヘルプデスク領域がポイントになることが多いです。

一方エンタープライズになってくると、上場の話とかになってくるんです。そうすると「ガバナンスはどうするか。ワークフローがマズい」「会計システムがやばい」とか、「人事システムというかちゃんとした人事マスターがない」とか、「スプレッドシートで社員を管理するのは限界だ」とか。至極当たり前のことの問題に直面します。つまり、アプリケーション領域に急激に範囲が広くなっていくんですね。

あとは、アカツキさんのプレゼンにも出ましたが、例えば個別のシステムをシングルサインオンさせましょう、みたいな話になってくると、なぜかすごくお高くなったりするんですね。シングルサインオンしたいだけなのになぜそんなに高いのかと。後、それぞれの部門が雑に導入していたSlackを統合しようと思うと、なぜかライセンス費用の規模が変わる話とかもあります。

(会場笑)

見積りを観て「ん!?」みたいな。シングルサインオンに対応するだけで、なぜかライセンス費用が1.5倍から2倍なることがよくあります。でも、エンタープライズでは必要なんですよね。管理が必要になる数と精度が上がってくるので。

あとは関係者が増えるので、交渉の難易度があがります。単純にステークホルダーが増えるんですよ。スモールビジネスの場合は自分たちと経営、技術領域でまだ比較的完結できる話が多かった。まあ、それでも大変だったのに、それに加えてビジネス側・事業部・子会社を含めたステークホルダーとの交渉や、経営状況を踏まえて判断しなければいけません。

規模とフェーズが変わることで単純に全体把握が難しくなります。Web系企業でも規模によってはやってることが違うなと思います。

最初の段階はシステムやデータのあたりだけ見ていればよかったのに、最終的には「そもそもセキュリティポリシーって何だっけ?」みたいな話とか、「ガバナンスの方針どうするんだっけ?」みたいな話を考えなければいけません。Policyの話ですね。

そして、1人でやっていたところを組織化しなければいけないというPeopleの問題も考える必要があるのが、この過渡期だと思います。

 今回はこの4社さん、小さい会社さんから大きくなって上場して、エンタープライズになっていった感じですね。ミクシィさんやアカツキさんは上場してこれから1,000人超えてゆくというエンタープライズへの過渡期の会社さんです。

DMMさん、LINEさんは押しも押されぬエンタープライズの会社さんという規模なので、それも考慮してお話できたらおもしろいだろうなと思いました。

ちょっとでも良くする、を継続する

中野:では、パネルディスカッションに移りたいと思います。トピックがいくつかあります。最初に仕事全体のお話をしていただいて、次にWebサービスのCorporate ITについて、あとはサービス開発のエンジニアやSEがCorporate IT部門で活かせるスキルについてお聞きしたいと思います。

では、片野さんから。

片野秀人氏(以下、片野):1番と2番についてざっと回答したいと思います。

最初のセッションでもお話しましたが、私はもともとライブドアという会社に入って、そのときはインフラ全般を見ていました。それに加えてDevOps、SREみたいなところの担当だったので、サービスを継続させるためのなにかをずっとやっていました。

その前はSIerだったんですが、そのときは業務アプリケーションの開発をやっていたので、ひと通りやってきたかなと思います。

Corporate ITやってみてどうかというところでは、私はもともとサービス開発にいたので、社内のサービスを受ける側でした。もう少しこうしてほしいとか、ああしてほしいとかが色々ありましたね。ファイルサーバが障害を起こして原因が不明とか、メールサーバーのメンテナンスが昼間に行われるとか。なぜ昼間? みたいなことがあって(笑)。

そんな不満をなんとかしたいと思って、気が付けば自分で担当するようになりました。やってみた感想としては、自分もいろんなこと言っていましたが、まあみんないろんなことを言ってくるなぁと(笑)。

基本的には期待されているんだと思います。これをなんとかしてほしいというのは、なにか変えてくれるという期待があっていろいろ言ってきていると思うので。

なので100パーセントは改善できませんが、ちょっとでも良くしていくということをやっています。いきなり全部は良くならないですけど、今よりもちょっとでも良くしていくということを継続的にやっていくのが大事だと思っています。

中野:ありがとうございます。

「やってあげる」という意識は違う

加藤徳英氏(以下、加藤):私のバックグラウンドはインターネットプロバイダーなのでネットワークエンジニアですね。そこから派生して購買などを担当しました。昔はサーバーをすごい数買っていて、年間何千台みたいな感じだったので、そこがバックグラウンドですね。

別の業種から来ているという意味で、WebサービスのCorporate ITをやってみてどうかと言うと、よく転職の理由で「環境を変えたい」みたいなところあると思いますが、私の場合は変えなくても勝手に環境が変わるという(笑)。

3年くらいすると別の会社みたいになってたりするので、環境を変えるという意味では転職する必要がないのがいいところなのかなと思います。そこが楽しめる人にはいいところですね。

もっと良くしていきたいところは、サービス開発のエンジニアの方もスキルを活かせる点として、まだ我々は事業側の仕事や、あるいは同じコーポレートでも経理とか法務などの業務をもっと良くしてあげることまでは手が回ってないので、そういったところまで関われるようにしたいと考えています。

ただ、資料にも書かせていただきましたが「やってあげる」というのとはちょっと違うかなと思っています。どのようにアプローチしていくかは、やはりやっている人にしかわからないことがすごくあると思います。

やってあげるということではないかたちでそこに関わろうと思うと、実際やっていた人やっている人を巻き込まなければいけません。そこで実際にサービス開発をやっていた方のスキルとして活かせる事は本当に無数にあるのかなと思っています。

ブレーキを掛けすぎない程度に自由な環境を作る

浦田智樹氏(以下、浦田):DMMの浦田です。経験した職種というと、情報システム一筋でやっていました。どちらかと言うとインフラ寄りですね。社内ネットワークやPCの調達とか、ヘルプデスクも片手間にやっていました。

その中でちょっと特殊な経験をさせて頂いたのは、途中で総務部長も兼任したので、ヘルプデスクから株主総会まで(笑)。会社の様々なところをやっていたことに大きく影響を受けています。

あとはM&Aで会社買ったりするので、「システムの受け入れをおこなうなど、そういったところで幅広く知識がついたことが今も活かされています。

Corporate ITやってみてどうかなんですが、先ほど中野さんが書いてくださっていた情シスとCorporate ITは、まさに私が比較になるというか。もともと情シス畑だったのでコミュニケーションはメールを使って、何をどうやって入れたらどうやって伝わるんだ、みたいなつらさだったところが、Slackで完結するというのは個人的にはイノベーションでした。それでいいんだ、という経験ができたのも非常に嬉しかったことでした。

Corporate ITの良いところなんですが、やはりDMMはすごく自由にやらせていただいているのですが、それでもちょっとブレーキが必要になる場面もあります。開発者や事業の営業メンバーがブレーキをかけすぎない程度に自由な環境を作っていきたいなと考えています。

Corporate ITは常に新鮮さのある仕事

徳山文晟氏(以下、徳山):アカツキの徳山です。自分が経験した職種だと、もともとはエンジニア、プログラマーというか。10数年前ですが、PHPを自力で勉強しながら仕事をするところから始まったので、Web系といえばWeb系ですね。

そのころはガラケーのサービスづくりをやっていましたね。自分で担当するサーバーの物理ラッキング、配線からやって、Linuxをインストールして、みたいなところからやったりしていました。そのあとだと社内のインフラ的なことをやったり、ネットワーク周りのこともやりながら覚えてみたいな感じです。

得意分野はあんまりなくて、広く浅くみたいな感じです。いろいろやってきて幅広く知見はあるけど、めちゃくちゃ深いところまではやっていないという感じです。今となってはそれが役立っている部分もありますが、これが得意というほどのことはないですね。出身業界は先ほど言ったとおりWeb系です。

Corporate ITの良いところは、やはりスピード感がみんな共通認識としてあるので、よりよいものだったりよりよいサービスを取り入れるということをベースとしていることが多いです。自分としてもそういうところをキャッチアップしていけるので、新鮮さが常にあります。

もっと良くしていきたいところは、弊社で言うとぜんぜんできてないところがたくさんあります。すごく面倒くさいワークフローになっていたり、メールでのやり取りも一部でまだ残っていたりします。

スプレッドシートやエクセルで管理するみたいなものもあるので、中の人たちが本来集中できる、業務に集中べきところにもっと集中できるかたちを作っていきたいなと思います。それはコーポレート部門全般もそうですし、事業部のほうもそうですね。

中野:みなさんいろいろなバックボーンを持ってらっしゃいますね。Webだと多いのは、インフラ系を見てらっしゃる片野さんのように、インフラ系のエンジニアからなんとなく社内システムやることになって、そのままコーポレートIT系に行くという方はすごく多い気がします。

あともう1つIT系のマネージャーであるパターンは、プロセスやアプリケーション系の方。いわゆるエンタープライズの領域になってきたときに社内系のシステムを全部統合していくとか、ERP入れるぞみたいなときに入ってきた人がそのままIT系のマネージャーになるみたいなケースもありますよね。

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